02/10/2020
粒子性と波動性
電子ボルト
電子を1Vの電位差で加速したときに電子が得るエネルギーを1電子ボルト〔eV〕といい、エネルギーの単位として用いる。
\begin{equation*}
\quad 1 \ eV =1.60 \times 10^{\scriptsize{-19}} \ J
\end{equation*}
光子
振動数ν〔Hz〕の光(X線やγ線も含む)は、hν〔J〕のエネルギーをもつ光子と呼ばれる粒子の集まりである。光の波長をλ〔m〕、光の速さ(光速、光速度)をc〔m/s〕とすると、光子のエネルギーE〔J〕と運動量pは、次の式で示される。
\begin{align*}
&\quad E=h \nu=h \frac{c}{\lambda} \\[ 7pt ]
&\quad p=\frac{E}{c}=\frac{h \nu}{c}=\frac{h}{\lambda}
\end{align*}
ただし、hはプランク定数で
\begin{equation*}
\quad h=6.6 \times 10^{\scriptsize{-34}} \ J \cdot s
\end{equation*}
光電効果
金属に光を当てると電子が飛び出す現象を光電効果という。電子を金属原子から引き離す仕事をW〔J〕(これを仕事関数という)とすると、ν〔Hz〕の光を当てたときに飛び出す電子の運動エネルギーの最大値は、次の式で示される。
\begin{equation*}
\quad \frac{1}{2} m\upsilon^{\scriptsize{2}} =h \nu-W
\end{equation*}
X線の発生
高速の電子を金属に衝突させると、X線が発生する。1個の電子のもつ運動エネルギーがすべて1個のX線光子のエネルギーになるとき、X線の振動数ν〔Hz〕が最大(波長λ〔m〕は最小)になる。
\begin{equation*}
\quad \frac{1}{2} m\upsilon^{\scriptsize{2}} =h \nu=\frac{hc}{\lambda}
\end{equation*}
物質波
電子のような質量をもつ粒子も波動性をもつ。これを物質波という。質量m〔kg〕の粒子が速度v〔m/s〕で運動しているときの物質波の波長λ〔m〕は、次の式で示される。
\begin{equation*}
\quad \lambda=\frac{h}{m\upsilon}
\end{equation*}
原子の構造
水素原子のスペクトル
水素原子のスペクトル線の波長λ〔m〕には、次のような規則性がある。
\begin{align*}
&\quad \frac{1}{\lambda}=R\biggl( \frac{1}{n^{\scriptsize{2}}}-\frac{1}{m^{\scriptsize{2}}} \biggr) \\[ 7pt ]
&\quad ( n=1, \ 2, \ \cdots \ ; \ m=n+1, \ n+2, \ \cdots )
\end{align*}
ただし、Rはリュードベリ定数と呼ばれ、
\begin{equation*}
\quad R=1.10 \times 10^{\scriptsize{7}} \ m^{\scriptsize{-1}}
\end{equation*}
水素原子の構造
原子核まわりの電子の運動
水素原子の原子核(陽子)は+e〔C〕の電荷をもち、そのまわりを-e〔C〕の電荷をもつ電子が円運動している。電子の軌道半径をr〔m〕、電子の速さをv〔m/s〕、質量をm〔kg〕とすると、電子の運動方程式は、次の式で示される。
\begin{equation*}
\quad m \frac{\upsilon^{\scriptsize{2}}}{r}=k \frac{e^{\scriptsize{2}}}{r^{\scriptsize{2}}}
\end{equation*}
ただし、kはクーロンの法則の定数
量子条件
電子の軌道としては、その円周が電子波の波長の整数倍に等しい長さのものだけが存在する。
\begin{equation*}
\quad 2 \pi r=n \frac{h}{m \upsilon}
\end{equation*}
振動数条件
量子条件の式のnを量子数といい、量子数nのときの原子のエネルギーEnをエネルギー準位という。原子がエネルギー準位EmからEn(Em>En)に移るとき、そのエネルギー差に等しいエネルギーをもつ光子を放出する。光子の振動数をνとすると、放出された光子のもつエネルギーは、次の式で示される。
\begin{equation*}
\quad h \nu=E_{m}-E_{n}
\end{equation*}
核とエネルギー
質量とエネルギー
質量とエネルギーは同等で、互いに移り変わることができる。m〔kg〕の質量がE〔J〕のエネルギーに変わるとすると、次の関係が成り立つ。
\begin{equation*}
\quad E=mc^{\scriptsize{2}}
\end{equation*}
ただし、cは真空中の光速で
\begin{equation*}
\quad c=3.0 \times 10^{\scriptsize{8}} \ m/s
\end{equation*}
質量欠損と結合エネルギー
原子核の質量は、原子核を構成している核子がばらばらになっているときの質量の和より小さい。この質量の減少分を質量欠損という。この質量欠損に相当するエネルギーを原子核の結合エネルギーという。核反応が起こると、結合エネルギーの差に等しいエネルギーが放出あるいは吸収される。
原子核の構成
核子
原子核を構成する陽子と中性子を総称して核子という。
- 陽子:正の電気素量をもつ。質量は電子の質量のおよそ1836倍である。ほとんどの水素原子核は陽子1個からなる。
- 中性子:質量は陽子よりわずかに大きい。電荷はもっていない。
原子番号
原子核中に含まれる陽子の数を原子番号という。
質量数
原子核を構成する核子(陽子と中性子)の数を質量数という。
同位体
原子番号が等しく、質量数の異なる原子を同位体という。
放射線の種類
α線
高速のヘリウム原子核 ${}^{\scriptsize{4}} _{\scriptsize{2}} He$ の流れ。
放射線崩壊
α崩壊
原子核からα線を放出し、原子番号が2減少し、質量数が4減少した原子核になる現象のこと。
β崩壊
原子核からβ線を放出し、原子番号が1減少し、質量数は元と同じ原子核になる現象のこと。
注意
γ線を放出しても、原子番号、質量数は変化しない。
半減期
放射性原子核の数が元の数の半分になるまでの時間を半減期という。放射性原子核の数がN0の状態から時間t〔s〕経過したときの放射性原子核の数Nは、半減期をT〔s〕とすると、次の式で表される。
\begin{equation*}
\quad N=N_{\scriptsize{0}} \biggl( \frac{1}{2} \biggr)^{\frac{t}{T}}
\end{equation*}
物理・物理基礎のオススメ本
- 宇宙一わかりやすい高校物理(力学・波動)
- 宇宙一わかりやすい高校物理(電磁気・熱・原子)
物理入門者や、物理を苦手にしている人に導入書としておすすめです。教科書が学習の中心であるべきですが、どうしても教科書で理解できない箇所が出てきたら本書で補完すると良いでしょう。イラストが豊富なので独学でも使えます。
分冊になっているので、力学と波動以外の分野はもう1冊の方になります。
- 秘伝の物理講義[力学・波動]
- 秘伝の物理講義[電磁気・熱・原子]
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