式と証明|2つ以上の文字を含む整式の割り算について

数学2

数学2 式と証明

今回は、2つ以上の文字を含む整式の割り算について学習しましょう。

文字が1種類だけの整式であれば扱いやすいですが、文字が2つ以上になると扱い辛くなるので、計算ミスが多くなります。

また、どの文字に着目するかで、割り算の結果が変わってしまいます。2つ以上の文字を含む整式では、これまで以上に注意して計算する必要があります。

2つ以上の文字を含む整式

2つ以上の文字を含む整式は、以下のような式です。

2つ以上の文字を含む整式の一例

\begin{align*} &\quad x^{\scriptsize{3}}+(y+1)x+2x^{\scriptsize{2}}-y \\[ 7pt ] &\quad a^{\scriptsize{3}}-2ab^{\scriptsize{2}}+4b^{\scriptsize{3}} \end{align*}

どちらの式も2種類の文字を含んでいます。このような整式について割り算するときを考えてみましょう。

2つ以上の文字を含む整式の割り算

\begin{align*} &\quad x^{\scriptsize{3}}+(y+1)x+2x^{\scriptsize{2}}-y \\[ 7pt ] &\text{を $x^{\scriptsize{2}}+y$ で割った商と余り} \end{align*}

この整式にはxとyの2種類の文字が使われています。ですから、xについての3次式、またはyについての1次式という2通りの見方ができます。

割り算をするには、降べきの順に整理しておかなければなりません。それぞれの文字について降べきの順に整理します。

降べきの順に整理する

\begin{align*} &\quad x^{\scriptsize{3}}+(y+1)x+2x^{\scriptsize{2}}-y \\[ 7pt ] &\text{を $x^{\scriptsize{2}}+y$ で割った商と余り} \\[ 10pt ] &\text{$x$ について降べきの順に整理したとき} \\[ 5pt ] &\text{(割られる式)} \quad x^{\scriptsize{3}}+2x^{\scriptsize{2}}+(y+1)x-y \\[ 7pt ] &\text{(割る式)} \quad x^{\scriptsize{2}}+y \\[ 10pt ] &\text{$y$ について降べきの順に整理したとき} \\[ 5pt ] &\text{(割られる式)} \quad (x-1)y+x^{\scriptsize{3}}+2x^{\scriptsize{2}}+x \\[ 7pt ] &\text{(割る式)} \quad y+x^{\scriptsize{2}} \end{align*}

割られる式だけでなく、割る式についても降べきの順に整理することを忘れないようにしましょう。

文字xに着目したときの割り算は以下のようになります。文字xに着目するので、文字yを定数と同じように扱います

文字xに着目したときの商と余り

\begin{align*} &\text{$x$ に着目したとき、筆算より} \\[ 5pt ] &\text{商は} \\[ 5pt ] &\quad x+2 \\[ 7pt ] &\text{余りは} \\[ 5pt ] &\quad x-3y \end{align*}
xに着目した割り算
xに着目したときの割り算

また、文字yに着目したときの割り算は以下のようになります。文字yに着目するので、文字xを定数と同じように扱います

文字yに着目したときの商と余り

\begin{align*} &\text{$y$ に着目したとき、筆算より} \\[ 5pt ] &\text{商は} \\[ 5pt ] &\quad x-1 \\[ 7pt ] &\text{余りは} \\[ 5pt ] &\quad 3x^{\scriptsize{2}}+x \end{align*}
yに着目した割り算
yに着目したときの割り算

割り算の結果から、着目する文字によって商や余りが異なる場合があります。

このような場合、問題では着目する文字が指定されています。ですから、指定された文字について、降べきの順に整理してから割り算しましょう。

2つ以上の文字を含む整式の割り算

  • 着目する文字について降べきの順に整理する。
  • 着目しない文字は定数として扱う。
  • 着目する文字によって、商や余りが異なる場合がある。

商や余りが同じになる場合もあるのですが、それについては後述します。

着目する文字が指定されていないときの割り算

2つ以上の文字を含む整式の割り算であっても、問題によっては着目する文字が指定されていない場合があります。このような場合、商や余りがどのようになるのかを考えてみましょう。

2つ以上の文字を含む整式の割り算

\begin{align*} &\quad a^{\scriptsize{3}}-2ab^{\scriptsize{2}}+4b^{\scriptsize{3}} \\[ 7pt ] &\text{を $a+2b$ で割った商と余り} \end{align*}

着目する文字が指定されていなければ、自分の扱いやすそうな文字を選ぶと良いでしょう。ここでは、文字aに着目します。

降べきの順に整理する

\begin{align*} &\quad a^{\scriptsize{3}}-2ab^{\scriptsize{2}}+4b^{\scriptsize{3}} \\[ 7pt ] &\text{を $a+2b$ で割った商と余り} \\[ 10pt ] &\text{$a$ について降べきの順に整理すると} \\[ 5pt ] &\text{(割られる式)} \quad a^{\scriptsize{3}}-2ab^{\scriptsize{2}}+4b^{\scriptsize{3}} = a^{\scriptsize{3}} \underline{-2b^{\scriptsize{2}}a} +4b^{\scriptsize{3}} \\[ 7pt ] &\text{(割る式)} \quad a+2b \end{align*}

文字aに着目したとき、文字bを定数として扱うので、係数と分かるように整理します(下線部分)。

文字aに着目したときの割り算は以下のようになります。

文字yに着目したときの商と余り

\begin{align*} &\text{$a$ に着目したとき、筆算より} \\[ 5pt ] &\text{商は} \\[ 5pt ] &\quad a^{\scriptsize{2}}-2ab+2b^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ] &\text{余りは} \\[ 5pt ] &\quad 0 \end{align*}
aに着目した割り算
aに着目したときの割り算

割り算の結果から、余りが0となりました。文字bに着目した場合でも、商と余りが同じ結果になります。

割り切れるときの商について

\begin{align*} &\text{割り算の基本公式より} \\[ 5pt ] &\quad a^{\scriptsize{3}}-2b^{\scriptsize{2}}a+4b^{\scriptsize{3}} = (a+2b)(a^{\scriptsize{2}}-2ba+2b^{\scriptsize{2}}) +0 \\[ 7pt ] &\text{これより、$b$ に着目したとき} \\[ 5pt ] &\quad 4b^{\scriptsize{3}}-2ab^{\scriptsize{2}}+a^{\scriptsize{3}} = (2b+a)(2b^{\scriptsize{2}}-2ab+a^{\scriptsize{2}}) +0 \\[ 7pt ] &\text{となるので、商と余りは $a$ に着目したときと一致する。} \end{align*}

このことから、割り切れる割り算であれば、どの文字に着目しても商は同じになることが分かります。

つまり、着目する文字が指定されないということは、割り切れる割り算なので、どの文字に着目しても結果が同じになるということです。ですから、自分の扱いやすそうな文字に着目して割り算すれば良いことが分かります。

また、着目する文字が指定されなければ、割り切れる割り算であり、かつ商は同じとなることが事前に分かるので、計算ミスにも気付くことができます。

割り切れる割り算では、どの文字に着目しても商は一致する。つまり、着目する文字が指定されない場合、割り切れる割り算だと予想しよう。

次は、2つ以上の文字を含む整式の割り算を実際に解いてみましょう。

2つ以上の文字を含む整式の割り算を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

$(1) \quad 2x^{\scriptsize{2}}+3xy+4y^{\scriptsize{2}}$ を $x+y$ で割った商と余りを求めたい。

(ア) $x$ についての整式とみて求めよ。

(イ) $y$ についての整式とみて求めよ。

$(2) \quad 2x^{\scriptsize{2}}+xy-6y^{\scriptsize{2}}-2x+17y-12$ を $x+2y-3$ で割った商と余りを求めよ。

2種類の文字を含む整式を扱うので、どの文字に着目するのかをしっかり確認しましょう。

問(1)の解答・解説

問(1)

$2x^{\scriptsize{2}}+3xy+4y^{\scriptsize{2}}$ を $x+y$ で割った商と余りを求めたい。

(ア) $x$ についての整式とみて求めよ。

(イ) $y$ についての整式とみて求めよ。

問(1)(ア)の解答・解説

問(1)(ア)では、文字xに着目します。与式を文字xについて降べきの順に整理します。

問(1)(ア)の解答例 1⃣

\begin{align*} &\text{与式を $x$ について降べきの順に整理すると} \\[ 5pt ] &\quad 2x^{\scriptsize{2}}+3xy+4y^{\scriptsize{2}} = 2x^{\scriptsize{2}}+3yx+4y^{\scriptsize{2}} \\[ 5pt ] &\text{これを $x+y$ で割り算すれば良い。} \end{align*}

文字xについての整式とみて筆算して、商と余りを求めます。

問(1)(ア)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\text{$x$ に着目したとき、筆算より} \\[ 5pt ] &\text{商は} \quad 2x+y \\[ 7pt ] &\text{余りは} \quad 3y^{\scriptsize{2}} \end{align*}
問(1)(ア)の筆算
(ア)xに着目したときの割り算

問(1)(イ)の解答・解説

問(1)(イ)では、文字yに着目します。与式を文字yについて降べきの順に整理します。

問(1)(イ)の解答例 1⃣

\begin{align*} &\text{与式を $y$ について降べきの順に整理すると} \\[ 5pt ] &\quad 2x^{\scriptsize{2}}+3xy+4y^{\scriptsize{2}} = 4y^{\scriptsize{2}}+3xy+2x^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ] &\text{これを $y+x$ で割り算すれば良い。} \end{align*}

文字yについての整式とみて筆算して、商と余りを求めます。

問(1)(イ)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\text{$y$ に着目したとき、筆算より} \\[ 5pt ] &\text{商は} \quad 4y-x \\[ 7pt ] &\text{余りは} \quad 3x^{\scriptsize{2}} \end{align*}
問(1)(イ)の筆算
(イ)yに着目したときの割り算

(ア),(イ)の結果から、どちらの場合でも割り切れません。このような場合、着目する文字が変わると商と余りが異なることが分かります。

問(2)の解答・解説

問(2)

$2x^{\scriptsize{2}}+xy-6y^{\scriptsize{2}}-2x+17y-12$ を $x+2y-3$ で割った商と余りを求めよ。

問(2)では、着目する文字が指定されていません。このような割り算では、余りが0となって割り切れることが予想されます。

どの文字に着目しても商が一致する可能性が高いので、計算しやすそうな文字xに着目して割り算します。

問(2)の解答例 1⃣

\begin{align*} &\text{与式を $x$ について降べきの順に整理すると} \\[ 5pt ] &\quad 2x^{\scriptsize{2}}+xy-6y^{\scriptsize{2}}-2x+17y-12 = 2x^{\scriptsize{2}}+(y-2)x-6y^{\scriptsize{2}}+17y-12 \\[ 7pt ] &\text{これを $x+2y-3$ で割り算すれば良い。} \end{align*}

文字xについての整式とみて筆算して、商と余りを求めます。

問(2)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\text{$x$ に着目したとき、筆算より} \\[ 5pt ] &\text{商は} \quad 2x-3y+4 \\[ 7pt ] &\text{余りは} \quad 0 \end{align*}
問(2)の筆算
問(2)xに着目したときの割り算

事前に予想した通り、余りが0となって割り切れました。

文字yに着目した場合でも、割り切れ、商が一致します。割り切れることは事前に分かっているので、丁寧に筆算し、計算ミスのないようにしましょう。

筆算での計算を難しく感じるかもしれませんが、丁寧に計算しましょう。文字扱いするのはxだけです。yは定数扱いします。

問(2)の筆算

商が $2x$ のときの計算

\begin{align*} \quad &(x+2y-3) \times 2x \\[ 7pt ] = \ &x \times 2x + (2y-3) \times 2x \\[ 7pt ] = \ &2x^{\scriptsize{2}} + (4y-6)x \end{align*}

商が $-3y+4$ のときの計算

\begin{align*} \quad &(x+2y-3) \times (-3y+4) \\[ 5pt ] = \ &x \times (-3y+4) + (2y-3) \times (-3y+4) \\[ 5pt ] = \ &(-3y+4)x-6y^{\scriptsize{2}}+17y-12 \end{align*}
問(2)の筆算
問(2)xに着目したときの割り算

文字が2つ以上になると、複雑になったような感じがしますが、実際にはそれほど複雑ではありません。むしろ、複雑にならないように、特定の文字に着目し、それ以外の文字を定数として扱うわけです。

このような整式の割り算を難しく感じる原因は、演習の少なさにあります。

演習が少ないと習熟度が上がりません。その結果、数式を思うように扱えなくなります。そして、段々と苦手意識をもつようになります。そうならないためには、学習しているうちに徹底的に演習することが大切です。

式と証明で学習する内容は、これから扱う数式に慣れるための演習のようなものです。今後はもっと複雑で量の多い計算が増えます。

ここで慣れておかないと、数式を扱う段階で躓いてしまうので、学習すべきことに意識を割くことができなくなります。そのときになって後悔しないためにも、しっかり演習をこなしておきましょう。

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さいごにもう一度まとめ

  • 2つ以上の文字を含む場合、着目する文字について降べきの順に整理しよう。
  • 着目する文字によって、商や余りが異なる場合があるので注意しよう。
  • 割れれる場合、着目する文字にかかわらず、商は一致する。