数と式|整式の言い方や表し方について

今回は、整式についてもう少し掘り下げます。
整式は特定の情報に着目すると、その言い方や表し方が変わってしまいます。ですから、着目の仕方によって他人よりも多くの情報を得ることができます。
整式の言い方は着目するもので異なる
整式は何に着目するかで、その言い方が異なります。
たとえば、積や和に着目した場合、整式は単項式や多項式などと言われます。また、整式の次数に着目した場合、単項式や多項式の区別なく「~次式」と言います。
同じ整式であっても、着目するものが変われば言い方も変わるので注意しましょう。
整式の次数や文字に着目
以下の2つの単項式を考えます。
単項式
単項式は、数や文字の積だけで表され、1つのかたまりとして扱う式です。
次数に注目したときの分かること・分からないこと
掛け合わされた文字の個数である次数を数えると、次数は左の式から順に1,3です。
次数に着目した場合、左式を1次式、右式を3次式と言います。整式を実際に見なければ、文字が何種類あるのかや、単項式か多項式かを「~次式」という言い方から知ることはできません。
次数に着目するとき、注意したいのは複数の文字を含む単項式や項があるときです。
複数の文字を含む単項式や項
例に挙げた3次式には、3個の文字(xが1個とyが2個)があり、これらが掛け合わされて単項式ができています。
ただ単に次数だけを知りたいのであれば、3次式と言うだけで足ります。しかし、3個の文字が同じ種類なのか異なる種類なのかまでは分かりません。
つまり「~次式」という名称では、文字の種類までは判別できません。
- 文字の個数が分かる。多項式なら最高次数の項の文字の個数が分かる。
- 文字が何種類あるかは分からない。
特定の文字に着目したときの分かること・分からないこと
そこで、特定の文字に着目した言い方があります。この言い方であれば、整式のより詳しい情報を知ることができます。
特定の文字に着目する
上式について、文字xに着目した場合、文字xは1個なので、この整式を「xについての1次式」と言います。それに対して、文字yに着目した場合、文字yは2個なので、この整式を「yについての2次式」と言います。
同じ3次式を見ていたはずですが、特定の文字に注目すると、整式の言い表し方が変わってしまいます。単項式か多項式かを知ることはできませんが、注目した文字の数だけは分かります。
特定の文字に注目したことが分かるように、「xについての」や「yについての」という文言を忘れない。
- 特定の文字の個数が分かる。多項式なら最高次数の項にある特定の文字の個数が分かる。
- 文字が何種類あるかは分からない。
着目しない文字の扱い
特定の文字に着目する場合、着目しない文字の扱いに注意する必要があります。
この場合、着目しない文字を数と同じように扱います。たとえば、xについて着目していれば、yは数と同じ扱いをします。
このときに何が変わるかというと、係数が変わってきます。
xについて着目すると、yは数扱い
文字xに着目した場合、文字yを数と同じように扱います。このとき、文字xを項の一番後ろに配置すると、係数である $5{ y }^{ 2 }$ が分かりやすくなります。
また、文字yに着目した場合、文字xを数と同じように扱います。このときの係数は、$5x$ です。
特定の文字に着目するメリットは、式の扱いやすさです。後から学習しますが、整式の展開や因数分解のときに分かります。
特定の文字に着目する場合、着目しない文字は係数の一部になります。慣れないうちは間違えやすいので、注目する文字に下線を引いて区別できるようにしましょう。ミスを減らせます。
多項式のときは慎重に
整式が多項式のとき、単項式よりも慎重に扱う必要があります。たとえば以下の整式を考えます。
多項式の一例
この多項式には、文字を含む項が3つ、定数項が1つあります。最高次数は1,2番目の項の次数で、それぞれ2です。ですから、この整式は2次式です。
しかし、単に2次式という呼び方では、文字が2個あるというだけで、種類までは分かりません。
多項式で特定の文字に着目する
この多項式でも特定の文字に着目して考えてみます。単項式のときよりも利点が分かるかもしれません。
文字xに着目した場合
文字xに着目する
最高次数は、文字xが2個ある1番目の項の次数となるので、「xについての2次式」と言います。他にx以外の文字があるのか分かりませんが、多項式の最高次数の項にxが2個あることは分かります。
2番目の項には文字yが含まれますが、この項でもxだけが文字扱いで、yは数扱いです。この項の係数は $2y$ となります。ですから、2番目の項の次数は、xについて着目すると2ではなく、1となります。
3番目の項も次数が1なので、2番目と3番目の項はxについての同類項となります。同類項であれば、1つの項にまとめることができます。
文字xに着目して同類項をまとめる
分配法則を利用すると、同類項を1つにまとめることができます。4つの項からなる多項式が、3つの項からなる多項式になりました。元の式よりもすっきり見えます。
特定の文字に着目すると項の数を減らせる
多項式を扱うとき、項の数が少ないのは良いことです。また、注目した文字について、降べきの順に並べると、多項式を見やすくなります。式の判読性が上がれば、扱いやすさも格段に変わります。
- 特定の文字について、整理する(降べきの順に並べる)ことができる。
- 同類項があれば、項の数を減らせる。
整式の表し方
今後、複数の種類の文字を含む整式を扱うことが多くなります。その際に、特定の文字に着目し、同類項をまとめたり、降べきの順に並べたりして整式を整理します。少しでも扱いやすくするためです。
降べきの順に並べるのは、特定の文字に着目しなくても行うのが一般的です。暗黙のルールなので習慣にしておきましょう。
ここで学習した内容は、高校数学では特に指示がなくても行います。特に、これから学習する展開や因数分解の単元では必修なので、ここでマスターしておくとスムーズに取り組めるでしょう。整式、特に多項式を見たら、とにかく特定の文字に着目して式を整理しましょう。
さいごにもう一度まとめ
- 同じ整式でも言い表し方が変わる場合があるので注意しよう。
- 着目する文字によって、次数や係数が異なる。
- 着目しない文字は数と同じ扱いになり、係数の一部となる。
- 特定の文字に着目すると、同類項が存在する場合がある。
- 特定の文字に着目すると、項の数を減らせる場合がある。
- 多項式では、降べきの順に並べる習慣をつけよう。