式と証明|割り算と整式の決定について その2(恒等式)

数学2

数学2 式と証明

今回は割り算と整式の決定について学習しましょう。

すでに割り算と整式の決定について学習済みですが、ここでは恒等式の考え方を用いて整式を決定しようと言う内容です。

整式の割り算では、割り算の基本公式を用いるのが基本的な解法です。これに恒等式の考え方も合わせることで、整式を決定することができます。

割り算の基本公式

整式の割り算を扱った問題では、余りの情報が与えられるので、割り算の基本公式を用いるのが基本的な解法です。

割り算の基本公式

同じ $1$ つの文字についての $2$ つの整式 $A \ , \ B \ (B \neq 0)$ において、

$A$ を $B$ で割ったときの商を $Q$、余りを $R$ とすると

\begin{equation*} \quad A = BQ + R \end{equation*}

ただし、$R$ は $0$ か、$B$ より次数の低い整式

ことばで表せば、以下のようになります。

割り算の基本公式

(割られる式) = (割る式) × (商) + (余り)

割り算の基本公式を用いれば、等式を導くことができます。両辺はともに同じ整式であるはずなので、等式は恒等式となるはずです。

問題では、割り算の基本公式から導いた等式が恒等式であることを利用して、定数の値や商を求めることになります。

割り算と整式の決定との関係が分かったところで、例題を解いてみましょう。

例題を解いてみよう

次の例題を解いてみましょう。

例題

$x$ についての整式 $x^{\scriptsize{4}}+ax^{\scriptsize{2}}+3x-2$ を $x^{\scriptsize{2}}-2x+2$ で割ると余りが $9x-12$ となるように、定数 $a$ の値を定め、そのときの商を求めよ。

例題の解答・解説

割り算の問題であり、割る式余りが与えられています。

割り算の基本公式を用いて、立式します。このとき、適切な次数の商を自分で定義しなければなりません。

一般に、次数について以下の関係が成り立ちます。

次数の関係

\begin{equation*} \quad (m \ \text{次式}) \times (n \ \text{次式}) = (m+n) \ \text{次式} \end{equation*}

この関係を参考にすると、4次式を2次式で割るので、商は2次式となることが分かります。また、商の2次の項について、割られる式の4次の項の係数を見ると、係数を1と定めることができます。

商を定義するとき、次数だけでなく、最高次数の項の係数にも注意しよう。

例題に戻って、割り算の基本公式を用いて立式します。

例題の解答例 1⃣

\begin{align*} &\text{求める商を} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}+bx+c \\[ 7pt ] &\text{とすると、条件から} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{4}}+ax^{\scriptsize{2}}+3x-2 = \left(x^{\scriptsize{2}}-2x+2 \right) \left(x^{\scriptsize{2}}+bx+c \right) + 9x-12 \\[ 7pt ] &\text{と表せる。} \\[ 5pt ] &\text{この等式は $x$ についての恒等式である。} \end{align*}

導いた等式の両辺は同じ式であるので、xについての恒等式となります。恒等式であれば、係数比較法数値代入法を用いることができます。

右辺を展開してxについて整理します。

例題の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad x^{\scriptsize{4}}+ax^{\scriptsize{2}}+3x-2 = \left(x^{\scriptsize{2}}-2x+2 \right) \left(x^{\scriptsize{2}}+bx+c \right) + 9x-12 \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\text{右辺を展開して整理すると} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{4}}+ax^{\scriptsize{2}}+3x-2 \\[ 7pt ] &\qquad = x^{\scriptsize{4}}+\left( b-2 \right)x^{\scriptsize{3}}+ \left( -2b+c+2 \right)x^{\scriptsize{2}} + \left( 2b-2c+9 \right)x+2c-12 \end{align*}

両辺の同じ次数の項の係数を比較します。

例題の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad x^{\scriptsize{4}}+ax^{\scriptsize{2}}+3x-2 \\[ 7pt ] &\qquad = x^{\scriptsize{4}}+\left( b-2 \right)x^{\scriptsize{3}}+ \left( -2b+c+2 \right)x^{\scriptsize{2}} + \left( 2b-2c+9 \right)x+2c-12 \\[ 7pt ] &\text{両辺の同じ次数の項の係数は等しいので} \\[ 5pt ] &\quad \left\{ \begin{array}{l} 0&=b-2 &\quad \cdots \text{①} \\ a&=-2b+c+2 &\quad \cdots \text{②} \\ 3&=2b-2c+9 &\quad \cdots \text{③} \\ -2&=2c-12 &\quad \cdots \text{④} \end{array} \right. \end{align*}

4つの方程式からなる連立方程式を導くことができました。

式の数が多いですが、計算ミスがないように連立方程式を解きます。定数の値がすぐに分かる式から手をつけましょう。また、加減法代入法を上手に用いましょう。

例題の解答例 4⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \left\{ \begin{array}{l} 0&=b-2 &\quad \cdots \text{①} \\ a&=-2b+c+2 &\quad \cdots \text{②} \\ 3&=2b-2c+9 &\quad \cdots \text{③} \\ -2&=2c-12 &\quad \cdots \text{④} \end{array} \right. \\[ 7pt ] &\text{①,④から} \\[ 5pt ] &\quad b=2 \ , \ c=5 \\[ 7pt ] &\text{これらと②から} \\[ 5pt ] &\quad a=3 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad a=3 \ , \ b=2 \ , \ c=5 \\[ 7pt ] &\text{したがって} \\[ 5pt ] &\quad a=3 \\[ 7pt ] &\quad \text{商} \ x^{\scriptsize{2}}+2x+5 \end{align*}

式の数が多くても難しい連立方程式ではありません。慌てず丁寧に計算しましょう。

問題では、整式の割り算の結果をもとに等式を導出します。そして、等式が恒等式であることから、係数比較法を用いて方程式を導きます。

導いた方程式を連立して解くと、定数の値や商を定めることができます。

例題の別解例

例題の解答・解説では、模範的な解法を紹介しましたが、別解があります。

割られる式割る式が与えられているので、実際に割り算することができます。

筆算すると、余りを得ることができます。余りの情報と照らし合わせれば、定数の値や商を定めることができます。

予め筆算して、商や余りを求めておきます(筆算は省略)。

例題の別解例

\begin{align*} &\text{割り算すると、} \\[ 5pt ] &\quad \text{商} \ x^{\scriptsize{2}}+2x+\left(a+2 \right) \\[ 7pt ] &\quad \text{余り} \ \left( 2a+3 \right)x -2 \left(a+3 \right) \\[ 7pt ] &\text{である。} \\[ 5pt ] &\text{余りは $9x-12$ に等しいので} \\[ 5pt ] &\quad 2a+3=9 \\[ 7pt ] &\quad -2 \left(a+3 \right) = -12 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad a=3 \\[ 7pt ] &\text{また、商は} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}+2x+5 \end{align*}

商を定義することなく実際に割り算をすれば良いので、こちらの方が直接的で分かりやすいかもしれません。

実際の割り算で得られた余りが、与えられた情報と一致すれば良いので、これも一種の恒等式のようなものです。

係数を比較して、定数aについての方程式を導出できれば、あとは同じ要領で解きます。

恒等式が成り立つ

(筆算で得られた余り)=(問題で与えられた余り)

次は、割り算と整式の決定を扱った問題を実際に解いてみましょう。