式と証明|割り算と整式の決定について その2(恒等式)

数学2

数学2 式と証明

割り算と整式の決定を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

$x$ についての整式 $2x^{\scriptsize{3}}+ax+10$ を $x^{\scriptsize{2}}-3x+b$ で割ると余りが $3x-2$ となるように、定数 $a \ , \ b$ の値を定めよ。また、そのときの商を求めよ。

問の解答・解説

問題で指示されているのは2つです。

問題の指示

  • 条件を満たす定数a,bの値を定める。
  • 定数a,bの値が定まったときの商を求める。

割る式余りが与えられています。割り算の基本公式を用いるために、適切な次数の商を自分で定義します。

3次式を2次式で割るので、商は1次式です。また、商の1次の項について、割られる式の3次の項を参考にすると、その係数は2と決まります。

問の解答例 1⃣

\begin{align*} &\text{求める商を} \\[ 5pt ] &\quad 2x+c \\[ 7pt ] &\text{とすると、条件から} \\[ 5pt ] &\quad 2x^{\scriptsize{3}}+ax+10 = \left(x^{\scriptsize{2}}-3x+b \right) \left(2x+c \right) + 3x-2 \\[ 7pt ] &\text{と表せる。} \\[ 5pt ] &\text{この等式は $x$ についての恒等式である。} \end{align*}

導いた等式の両辺は同じ式であるので、xについての恒等式となります。恒等式であれば、係数比較法数値代入法を用いることができます。

右辺を展開してxについて整理します。

問の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad 2x^{\scriptsize{3}}+ax+10 = \left(x^{\scriptsize{2}}-3x+b \right) \left(2x+c \right) + 3x-2 \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\text{右辺を展開して整理すると} \\[ 5pt ] &\quad 2x^{\scriptsize{3}}+ax+10 \\[ 7pt ] &\qquad = 2x^{\scriptsize{3}}+\left(c-6 \right)x^{\scriptsize{2}}+ \left(2b-3c+3 \right)x + bc-2 \end{align*}

両辺の同じ次数の項の係数を比較します。

問の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad 2x^{\scriptsize{3}}+ax+10 \\[ 7pt ] &\qquad = 2x^{\scriptsize{3}}+\left(c-6 \right)x^{\scriptsize{2}}+ \left(2b-3c+3 \right)x + bc-2 \\[ 7pt ] &\text{両辺の同じ次数の項の係数は等しいので} \\[ 5pt ] &\quad \left\{ \begin{array}{l} 0&=c-6 &\quad \cdots \text{①} \\ a&=2b-3c+3 &\quad \cdots \text{②} \\ 10&=bc-2 &\quad \cdots \text{③} \end{array} \right. \end{align*}

3つの方程式からなる連立方程式を導くことができました。

導いた方程式を連立して解きます。定数の値がすぐに分かる式から手をつけましょう。

問の解答例 4⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \left\{ \begin{array}{l} 0&=c-6 &\quad \cdots \text{①} \\ a&=2b-3c+3 &\quad \cdots \text{②} \\ 10&=bc-2 &\quad \cdots \text{③} \end{array} \right. \\[ 7pt ] &\text{①から} \\[ 5pt ] &\quad c=6 \\[ 7pt ] &\text{これと③から} \\[ 5pt ] &\quad b=2 \\[ 7pt ] &b \ , \ c \ \text{と②から} \\[ 5pt ] &\quad a=-11 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad a=-11 \ , \ b=2 \ , \ c=6 \\[ 7pt ] &\text{したがって} \\[ 5pt ] &\quad a=-11 \ , \ b=2 \\[ 7pt ] &\quad \text{商} \ 2x+6 \end{align*}

問の別解例

実際に割り算して商と余りを求めておきます。

筆算から得られた余りは、問題で与えられた余りに等しくなるはずです。恒等式の考えから、係数を比較します。

問の別解例

\begin{align*} &\text{割り算すると、} \\[ 5pt ] &\quad \text{商} \ 2x+6 \\[ 7pt ] &\quad \text{余り} \ \left(a-2b+18 \right)x +10-6b \\[ 7pt ] &\text{である。} \\[ 5pt ] &\text{余りは $3x-2$ に等しいので} \\[ 5pt ] &\quad a-2b+18=3 \\[ 7pt ] &\quad 10-6b = -2 \\[ 7pt ] &\text{これを解くと} \\[ 5pt ] &\quad a=-11 \ , \ b=2 \\[ 7pt ] &\text{また、商は} \\[ 5pt ] &\quad 2x+6 \end{align*}

整式を割り算(筆算)する方法はすでに学習しています。別解で紹介した解法も必要に応じて利用しましょう。

Recommended books

計算力は重要な要素となります。試験では考える時間を多く取るために、いかに計算を手早く行うかが重要です。

計算力の有無は、数学2・Bや数学3では顕著になります。計算に時間がかかりすぎては解けるものも解けません。後悔しないためにも日頃からしっかり鍛えておきましょう。

これから紹介する教材で気になるものがあれば、ぜひ一読してみて下さい。気に入ったら最後まで徹底的にこなしましょう。

オススメその1『合格る計算数学1・A・2・B

オススメその2『鉄緑会 基礎力完成 数学Ⅰ・A+Ⅱ・B

大事なことは、自分に合った教材を徹底的に活用することです。どの教材を選ぶにしても、自分の目で中身を確認し、納得してから購入することが大切です。

さいごにもう一度まとめ

  • 割り算の問題では、割り算の基本公式を上手に利用しよう。
  • 商を自分で定義するとき、次数と係数に注意しよう。
  • 等式が得られたら、係数比較法を用いて、定数の値を定める。