物理の要点|力と運動その2

公式・定理,物理

物理の要点

仕事と力学的エネルギー

仕事

物体の移動する方向が力の向きと角 $\theta$ をなしているとき、力Fのした仕事 $W \ \mathrm{[J]}$ は、次のように表される。
\begin{equation*} \quad W=F s \cos \theta \end{equation*}

仕事率

力が単位時間あたりにする仕事を仕事率という。単位はワット $\mathrm{[W]}$ である。時間 $t \ \mathrm{[s]}$ の間に $W \ \mathrm{[J]}$ の仕事をするときの仕事率 $P \ \mathrm{[W]}$ は、次のように表される。
\begin{equation*} \quad P=\frac{W}{t} \end{equation*}

エネルギー

エネルギーをもっている
物体が他の物体に対して仕事をすることができる状態にあるとき、その物体はエネルギーをもっているという。エネルギーの単位は仕事の単位と同じジュール $\mathrm{[J]}$ である。
運動エネルギー
質量 $m \ \mathrm{[kg]}$ の物体が速さ $\upsilon \ \mathrm{[m/s]}$ で運動しているとき、その物体のもつ運動エネルギー $E_{k} \ \mathrm{[J]}$ は、次の式で表される。
\begin{equation*} \quad E_{k}=\frac{1}{2} m{\upsilon}^{\scriptsize{2}} \end{equation*}
重力による位置エネルギー
質量 $m \ \mathrm{[kg]}$ の物体が基準点から $h \ \mathrm{[m]}$ の高さにあるとき、物体のもつ重力による位置エネルギー $E_{p} \ \mathrm{[J]}$ は、次の式で表される。
\begin{equation*} \quad E_{p}=mgh \end{equation*}
弾性力による位置エネルギー(弾性エネルギー)
ばね定数 $k \ \mathrm{[N/m]}$ のばねが $x \ \mathrm{[m]}$ だけ伸びて(縮んで)いるとき、ばねのもつ弾性エネルギー $E_{p} \ \mathrm{[J]}$ は、次の式で表される。
\begin{equation*} \quad E_{p}=\frac{1}{2} kx^{\scriptsize{2}} \end{equation*}

力学的エネルギーの保存

力学的エネルギー
運動エネルギー $E_{k}$ と位置エネルギー $E_{p}$ の和を力学的エネルギーという。
力学的エネルギー保存の法則
物体に保存力(重力や弾性力など)以外の力が仕事をしなければ、物体のもつ力学的エネルギーの総和は変わらない。このことを力学的エネルギー保存の法則という。単に、力学的エネルギー保存則ともいう。

運動量と力積

運動量と力積

力積
物体に働いた力 $\overrightarrow{F} \ \mathrm{[N]}$ と、その力の働いた時間 $\varDelta t \ \mathrm{[s]}$ との積 $\overrightarrow{ F } \cdot \varDelta t \ \mathrm{[N \cdot s]}$ を力積という。力積はベクトルである。
運動量
質量 $m \ \mathrm{[kg]}$ の物体が速度 $\overrightarrow{ \upsilon } \ \mathrm{[m/s]}$ で運動しているとき、物体のもつ運動量 $\overrightarrow{p} \ \mathrm{[kg \cdot m/s]}$ は、次の式で表される。運動量もベクトルである。
\begin{equation*} \quad \overrightarrow{p}=m \overrightarrow{\upsilon} \end{equation*}
運動量と力積の関係
速度 $\overrightarrow{ \upsilon_{\scriptsize{1}} } \ \mathrm{[m/s]}$ で運動している質量 $m \ \mathrm{[kg]}$ の物体に力 $\overrightarrow{F} \ \mathrm{[N]}$ を時間 $\varDelta t \ \mathrm{[s]}$ だけ加えたとき、物体の速度が $\overrightarrow{ \upsilon_{\scriptsize{2}} } \ \mathrm{[m/s]}$ になったとすると、次の関係が成り立つ。
\begin{equation*} \quad m \overrightarrow{\upsilon_{\scriptsize{2}}}-m \overrightarrow{\upsilon_{\scriptsize{1}}}=F \cdot \varDelta t \end{equation*}
この式は「物体は加えられた力積だけ運動量が増加する」ことを表している。
【注意】運動量と力積の単位は同じものである。

運動量保存の法則

2個以上の物体が互いに力を及ぼし合って運動が変化したとき、運動の変化の前後で、運動量の総和は変わらない。これを運動量保存の法則という。単に運動量保存則ともいう。
速度 $\overrightarrow{ \upsilon_{\scriptsize{A}} } \ , \ \overrightarrow{ \upsilon_{\scriptsize{B}} }$ で運動している物体A(質量 $m_{\scriptsize{A}}$ )と、物体B(質量 $m_{\scriptsize{B}}$ )が衝突して、衝突後の速度が $\overrightarrow{ {\upsilon_{\scriptsize{A}}}’ } \ , \ \overrightarrow{ {\upsilon_{\scriptsize{B}}}’ }$ になったとすると、次の関係が成り立つ。
\begin{equation*} \quad m_{\scriptsize{A}} \ \overrightarrow{\upsilon_{\scriptsize{A}}}+m_{\scriptsize{B}} \ \overrightarrow{\upsilon_{\scriptsize{B}}}=m_{\scriptsize{A}} \ \overrightarrow{{\upsilon_{\scriptsize{A}}}’}+m_{\scriptsize{B}} \ \overrightarrow{{\upsilon_{\scriptsize{B}}}’} \end{equation*}

反発係数(はね返り係数)

速度 $v_{\scriptsize{A}} \ , \ v_{\scriptsize{B}}$ で一直線上を運動している、物体A(質量 $m_{\scriptsize{A}}$ )と、物体B(質量 $m_{\scriptsize{B}}$ )が衝突して、衝突後の速度が ${\upsilon_{\scriptsize{A}}}’ \ , {\upsilon_{\scriptsize{B}}}’$ になったとすると、このときの物体A,Bの反発係数(はね返り係数)eは、速度の符号を含めて、次のように表される。
\begin{equation*} \quad e=-\frac{{\upsilon_{\scriptsize{B}}}’-{\upsilon_{\scriptsize{A}}}’}{\upsilon_{\scriptsize{B}}-\upsilon_{\scriptsize{A}}} \end{equation*}
また、$e$ の値は $0 \leqq e \leqq 1$ の範囲にあり、値によって次のようにいう。
  • $e=1$ のとき、弾性衝突(完全弾性衝突)
  • $0 \lt e \lt 1$ のとき、非弾性衝突
  • $e=0$ のとき、完全非弾性衝突

慣性力

慣性力

観測者が加速度 $a$ で運動しているとき、質量 $m$ の物体には、観測者の加速度と逆向きに大きさ $ma$ の力が働いているように見える。このような力を慣性力という。

物理・物理基礎のオススメ本

おすすめ その1
  • 宇宙一わかりやすい高校物理(力学・波動)
  • 宇宙一わかりやすい高校物理(電磁気・熱・原子)

物理入門者や、物理を苦手にしている人に導入書としておすすめです。教科書が学習の中心であるべきですが、どうしても教科書で理解できない箇所が出てきたら本書で補完すると良いでしょう。イラストが豊富なので独学でも使えます。

分冊になっているので、力学と波動以外の分野はもう1冊の方になります。

おすすめ その2
  • 秘伝の物理講義[力学・波動]
  • 秘伝の物理講義[電磁気・熱・原子]

YouTubeで完全公開されている講義を再現したのが本冊です。また、別冊の「動画テキスト兼ポイント集」で物理の「わからない」を解決できます。公開模試、学校平均点全国No.1を取らせた実力派教師の講義は一読の価値あり。独学にも向き、標準以上も対応可能です。

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おすすめ その3

物理教室(河合塾series)

所有していますが、これ1冊で基礎から応用まで十分対応できます。理系志望者は一読してほしいのが本書です。

物理の内容が分野ごとに章立てされており、各分野ごとに筋道を通した理解ができます。網羅性が高いのは当然ですが、「物理的な見方や考え方」が自然に身につくように丁寧に解説されています。

また、入試を意識して問題を多く扱っているのも特徴で、問題集代わりにも使えます。基礎を身に着けたい人は参考書として、応用力を養いたい人は問題集として、実力に応じて使いこなせる構成になっています。

問題集の『物理のエッセンス』は有名ですが、同じ河合塾seriesなので相性も良いです。

おすすめ その4

Newton大図鑑シリーズ 物理大図鑑

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