大学入試|すでに変わっている大学入試問題
大学入試改革によって制度が変更され、新しい大学入試が行われるようになります。この制度変更では、主にセンター試験が大学入学共通テストと名前を変えるのに伴って、中身も変わります。
大学別の個別試験には変化がないのかと言うと、そうでもありません。大学入試改革は、センター試験だけでなく、大学入試全体の改革なので、個別試験、いわゆる二次試験にも影響があります。
大学入試改革による問題の傾向
大学入学共通テストは、2021年から導入されます。ですから、今現在はちょうど移行の時期に当たります。
制度変更に伴い、大学側も何もしないわけではありません。すでに一部の大学では、大学入試改革の思想が反映された、従来よりもさらに思考力や表現力を問うような問題が出題されています。
大学入試で問われるもの
知識はもちろん、思考力・判断力・表現力に加え、主体性・多様性・協働性が問われる。
センター試験だけではく、二次試験の方でも制度変更の影響が現れています。大学入試改革の内容を踏まえて対策しなければ、過去問を解いただけでは効果は薄いかもしれません。
入試改革の影響の少ない過去問だと、難易度の確認はできるでしょう。しかし、それだけで十分な対策とは言えないかもしれません。
大学入試を変える意図
そもそも、どうして大学入試を変えようとしているのか疑問に思うかもしれません。これにはそれなりの理由があります。
近年の教育改革では、これからの社会で必要な学力を3つの柱で定義しています。
学力の定義
- 知識・技能
- 思考力・判断力・表現力
- 多様な人々と協働して学ぶ態度
高校までの教育課程と大学とを接続するのが大学入試ですが、この大学入試のあり方について、学力の定義にそぐわない部分が出てきたことから見直されています。今の大学入試は教育改革前の制度であり、思想が異なるでしょうから、そぐわない部分が出てきて当たり前です。
それを見直すための一環として、以下のようなことが進められています。
大学入試見直しの一環として進められていること
- より深い思考力・判断力・表現力を問うための出題を工夫する。
- 主体的に学ぶ力を適切に評価する入試制度のあり方を検討する。
このような背景があるので、大学別の二次試験でも、それに見合った問題が出題されるようになってきたわけです。
思考力・判断力・表現力が問われる近年の入試問題
すべての二次試験で変化が見られるわけではありませんが、一部の大学ではすでに出題されています。
画像は、2019年度の名古屋大学の二次試験で出題された国語の問題(古文)です。問三では「文章から推察できることを説明せよ」とあります。この問題では、読解力だけでなく、より深い思考力や表現力が求められています。
その時代の知識があれば推察しやすかったかもしれません。仮に知識が足りなくても、推察できるだけの情報が文章中にあったはずです。それらをきちんと読み取り、それらから考えうる事柄をまとめる必要があります。
また、一橋大学の国語では、問題文に続く内容を「論理的に推定」して説明する問題が出題されています。こちらも同じように、従来の読解問題よりも、もっと踏み込んだ思考力や表現力を問う問題になっています。
どちらもかなり難易度の高い問題だと思います。センター試験のような選択肢問題の演習では太刀打ちできないでしょう。日頃から学習内容を要約したり、考察したりして書き出すことが必要でしょう。
これまでは知識のインプットで何とかなる部分がありましたが、これからはインプットした知識を適切にアウトプットできるかが重要になってきます。
今は入試改革の途中なので、出題傾向が急に変わることが十分に考えられます。突然の変化に柔軟に対応できるだけの応用力を、日常学習で養う必要があります。
学習スタイルをインプット学習からアウトプット学習へ進化させよう。
小論文の出題傾向
小論文の問題と言えば、文章を読み、問いに答える問題が一般的です。近年では、小論文の出題傾向に変化が見られます。
特に注目したいのは「資料提示型」の問題です。「資料提示型」の小論文では、資料や図表から特徴や課題などを読み取らなければなりません。
画像は、2019年度の九州大学(共創学部前期)で出題された小論文の問題の一部です。驚くのは、グラフや図表を含む資料がとても多いことです。
資料提示型の問題では、多数の資料から情報を抽出して、比較や関連付けを行い、考えを組み立てることが求められています。1つ2つの資料なら比較や関連付けも難しくないでしょうが、多数の資料ではかなりの訓練を必要とします。
図表読解のコツ
図表を読解するときのコツとしては、特徴的な数値に着目することです。
たとえば、特定の年齢層で数値が突出していれば、そこに着目します。そして、その年齢層がなぜ突出しているのかを考えます。このとき、図表で扱っている事柄に対して、ある程度の知識を持っていなければなりません。
課題を見出し、それを解決する力を問う問題のコツ
問題によっては、グラフや図表から課題を見出し、それを解決する力を問う問題が出題されます。近年では特に頻出の傾向です。日頃からニュースに目を通し、現実の問題に対する見聞を深めておくことが大切です。
また、メディアなどでアンケート結果が発表されますが、その結果を鵜呑みにせず、自分で考察してみると訓練になるでしょう。
メディアの出した結論が妥当なのか、アンケートの選択肢に誘導がないか、など自分なりに考察してみると良いでしょう。
思考力・判断力・表現力を問う問題に対応するために
このように大学別の二次試験でも入試改革の影響が現れていることが分かりました。これからの大学入試でますます重視されるのは、以下のような事柄です。これは小論文にも当てはまります。
大学入試で重視される事柄
- 知識を応用して深い思考を展開する力
- 展開した思考を採点者に明確に伝える力
このようなことが求められる問題に対応するには、日頃から事柄に対して自分なりに考え、それを書き出すことが大切です。
自分なりの結論を出すには、情報が足りなければできないので、事柄に対する知識が必要です。その知識は数学かもしれないし、社会かもしれません。
どの科目も満遍なく取り組んで知識を増やし、その知識を駆使して考え、自分なりに納得できる結論を導く、このサイクルが日常学習に取り込まれていれば、自ずと思考力・判断力・表現力は養われていくでしょう。
結論がすぐに出ないことも多々あったり、結論が正しくなかったりするかもしれません。大切なことは「思考を止めない」ことです。
思考を止めない
「思考を止めない」ことは、簡単なようで意外と難しいです。たとえば、全く解けない問題に出会ったときを考えるとよく分かります。
解くことを諦めた人は、思考が止まった人です。諦めずに部分点を稼ごうとしたり、何とか突破口を考えたりする人は、思考を止めない人です。
この二者の差は、これからの大学入試では大きな差になるでしょう。つねに思考し続けることで、知識の活用の仕方を知り、深い思考力・判断力・表現力を養うことができます。
思考力・判断力・表現力を養うには、知識を増やし、思考を止めないこと。
大学入学共通テストの傾向や対策に役立つ書籍
記述力や思考力を鍛えよう
記述力や思考力は、日頃からの訓練の成果です。短期間であれば、コツくらいは掴めるかもしれません。しかし、完全に習得するとなると時間が掛かるでしょう。だからこそ価値があります。
身に付けるのは簡単ではありませんが、育成の仕方を知っておくことは大切です。日常学習の際に、無自覚にこなすのではなく、意識的に取り組むことができるからです。
大学入試を知ろう
仕組みを知らないまま受験するのは、あまり良いことだとは思いません。情報がなければ適切な対策を立てられないからです。
期間や難易度などの情報を知らなければ、中途半端な準備しかできません。また、進学したい大学や学部についての情報がなければ、有名大学に進学できたとしても後悔するかもしれません。
少なくとも高校3年間を準備に費やします。また、自分の将来にも大いに関わります。義務教育ではないので、先生や親任せでなく、自分で行動しなければなりません。後悔しないためにも情報収集をしっかり行いましょう。