数学2
今回は、剰余の定理について学習しましょう。剰余の定理を扱った問題は、入試ではマーク形式と記述形式のどちらでも頻出です。しっかりマスターしましょう。
剰余の定理
剰余の定理は、整式の割り算、もう少し詳しく説明すると、整式を割り算したときの余りについての定理です。
剰余の定理を紹介する前に、整式の定義を確認しておきましょう。
整式の表し方
x の整式を P(x) , Q(x) などと書く。また、x に数 k を代入したときのP(x) の値を P(k) と書く。
整式の表し方は予め定義されていることが多いので、それを参考に記述しましょう。
整式を1次式で割ったときの余り
ある整式を1次式で割ったときの余りを考えます。この余りについて成り立つ定理が剰余の定理です。
剰余の定理では、以下の2つの事柄が成り立ちます。
剰余の定理
1⃣ 整式 P(x) を 1 次式 x−k で割ったときの余りはP(k)(剰余の定理)2⃣ 整式 P(x) を 1 次式 ax+b で割ったときの余りはP(−ba)
2つ目の事柄は、剰余の定理を一般化したものです。1次式であれば、同じように成り立ちます。
なぜこのような事柄が成り立つのかを考えてみましょう。
剰余の定理を導く
剰余の定理を導いてみましょう。その前に商や余りを定義しておきます。
剰余の定理を導く 1⃣
整式 P(k) を x−k で割ったときの商をQ(x) とおく。また、このときの余りは0 次式以下、つまり数 R とおける。
1次式で割ったときの余りは、1次式よりも次数の低い式でなければなりません。このことは「整式の割り算」という単元ですでに学習しています。ですから、1次式で割ったときの余りは定数になります。
整式を商や余りを用いて表すと、等式を導くことができます。
剰余の定理を導く 2⃣
⋮整式 P(x) を商や余りを用いて表すと、等式P(x)=(x−k)Q(x)+Rが得られる。
得られた等式のxに数kを代入します。
剰余の定理を導く 3⃣
⋮P(x)=(x−k)Q(x)+R⋮この等式の両辺に x=k を代入するとP(k)=0⋅Q(k)+RよってP(k)=Rこれより、整式 P(x) を x−k で割ったときの余りは P(k) となる。
右辺のQ(x)は商です。商を含む項はx=kのとき0になってしまうので、右辺には定数の余りだけが残ります。
剰余の定理の利点は、整式を1次式で割った余りが、式の値を求めることで分かるところです。ただし、代入するxの値は、1次式の値が0となる値です。
整式の割り算では筆算が基本ですが、計算ミスをしやすいのが難点です。余りを求めるだけの問題であれば、筆算よりも剰余の定理を優先しましょう。
一般化された定理でも同じように導けます。
剰余の定理を導く 4⃣
整式 P(x) を ax+b (a≠0) で割ったときの商を Q(x)、余りを R とすると、等式P(x)=(ax+b)Q(x)+Rが成り立つ。この等式の両辺にx=−baを代入するとP(−ba)={a(−ba)+b} Q(−ba)+RよってP(−ba)=0⋅Q(−ba)+R∴
一般化された定理でも、商を含む項が0となるので、残るのは定数の余りだけです。
剰余の定理を使ってみよう
次の例題を考えてみましょう。
例題
次の整式を、[ \ ] 内の 1 次式で割ったときの余りを求めよ。
\begin{align*}
&(1) \quad x^{\scriptsize{3}}+2x-1 \quad [ x-3 ] \\[ 7pt ]
&(2) \quad 2x^{\scriptsize{3}}-x^{\scriptsize{2}}+3x+1 \quad [ x+1 ] \\[ 7pt ]
&(3) \quad 2x^{\scriptsize{4}}+3x^{\scriptsize{3}}-3x^{\scriptsize{2}}-2x+3 \quad [ x-1 ] \\[ 7pt ]
&(4) \quad x^{\scriptsize{3}}-5x^{\scriptsize{2}}+4 \quad [ 2x-1 ]
\end{align*}
例題(1)の解答・解説
例題(1)
次の整式を、[ \ ] 内の 1 次式で割ったときの余りを求めよ。
\begin{equation*}
\quad x^{\scriptsize{3}}+2x-1 \quad [ x-3 ]
\end{equation*}
整式を1次式で割ったときの余りを求めるので、剰余の定理を利用することができます。
1次式x-3で割るので、与式にx=3を代入します。このときの式の値が求める余りです。
例題(1)の解答例
\begin{align*}
&\quad P(x)=x^{\scriptsize{3}}+2x-1 \\[ 7pt ]
&\text{とすると、剰余の定理より} \\[ 5pt ]
&\quad P(3)=3^{\scriptsize{3}}+2 \cdot 3-1 \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad P(3)=32 \\[ 7pt ]
&\text{よって、求める余りは $32$}
\end{align*}
整式に代入する値さえ間違えなければ、単なる式の値を求める計算です。
例題(2)の解答・解説
例題(2)
次の整式を、[ \ ] 内の 1 次式で割ったときの余りを求めよ。
\begin{equation*}
\quad 2x^{\scriptsize{3}}-x^{\scriptsize{2}}+3x+1 \quad [ x+1 ]
\end{equation*}
1次式x+1で割るので、与式にx=-1を代入します。このときの式の値が求める余りです。
例題(2)の解答例
\begin{align*}
&\quad P(x)=2x^{\scriptsize{3}}-x^{\scriptsize{2}}+3x+1 \\[ 7pt ]
&\text{とすると、剰余の定理より} \\[ 5pt ]
&\quad P(-1)=2 \cdot \left(-1 \right)^{\scriptsize{3}}-\left(-1 \right)^{\scriptsize{2}}+3 \cdot \left(-1 \right)+1 \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad P(-1)=-5 \\[ 7pt ]
&\text{よって、求める余りは $-5$}
\end{align*}
代入する値が負の数なので注意しましょう。
例題(3)の解答・解説
例題(3)
次の整式を、[ \ ] 内の 1 次式で割ったときの余りを求めよ。
\begin{equation*}
\quad 2x^{\scriptsize{4}}+3x^{\scriptsize{3}}-3x^{\scriptsize{2}}-2x+3 \quad [ x-1 ]
\end{equation*}
1次式x-1で割るので、与式にx=1を代入します。このときの式の値が求める余りです。
例題(3)の解答例
\begin{align*}
&\quad P(x)=2x^{\scriptsize{4}}+3x^{\scriptsize{3}}-3x^{\scriptsize{2}}-2x+3 \\[ 7pt ]
&\text{とすると、剰余の定理より} \\[ 5pt ]
&\quad P(1)=2 \cdot 1^{\scriptsize{4}}+3 \cdot 1^{\scriptsize{3}}-3 \cdot 1^{\scriptsize{2}}-2 \cdot 1+3 \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad P(1)=3 \\[ 7pt ]
&\text{よって、求める余りは $3$}
\end{align*}
例題(4)の解答・解説
例題(4)
次の整式を、[ \ ] 内の 1 次式で割ったときの余りを求めよ。
\begin{equation*}
\quad x^{\scriptsize{3}}-5x^{\scriptsize{2}}+4 \quad [ 2x-1 ]
\end{equation*}
1次式2x-1で割るので、与式にx=1/2を代入します。このときの式の値が求める余りです。
例題(4)の解答例
\begin{align*}
&\quad P(x)=x^{\scriptsize{3}}-5x^{\scriptsize{2}}+4 \\[ 7pt ]
&\text{とすると、剰余の定理より} \\[ 5pt ]
&\quad P \left(\frac{1}{2} \right)=\left(\frac{1}{2} \right)^{\scriptsize{3}}-5 \cdot \left(\frac{1}{2} \right)^{\scriptsize{2}}+4 \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad P \left(\frac{1}{2} \right)=\frac{23}{8} \\[ 7pt ]
&\text{よって、求める余りは $\frac{23}{8}$}
\end{align*}
代入する値が分数なので注意しましょう。
次は、剰余の定理を扱った問題を実際に解いてみましょう。