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式と証明|恒等式の係数決定(係数比較法)について

数学2

数学2 式と証明

今回は恒等式の係数決定について学習しましょう。

恒等式は扱い自体はそれほど難しい式ではありません。ただ、方程式に似ているので、恒等式が方程式の一種だと勘違いしている人がいます。

しかし、恒等式は、方程式とは全く意味が異なる式です。恒等式と方程式との違いを知り、使い分けできるようにしましょう。

恒等式とは

恒等式とは、式に含まれている各文字にどのような値を代入しても、その両辺の式の値が存在する限り、つねに成り立つ等式のことです。等式がつねに成り立つとき、その等式をそれらの文字についての恒等式と言います。

文字にどのような値を代入しても等式が成り立つのは、両辺の式がともに同じときです。また、一方の式の係数が不明であっても、恒等式になるのであれば、係数が他方の式のものと同じでなければなりません。

恒等式の定義を踏まえて、以下の等式が恒等式かどうかを調べてみましょう。

例題1

次の等式が恒等式であるかどうかを調べよ。(1)(x1)2=x2+1(2)(a+b)2+(ab)2=2(a2+b2)

例題1(1)の与式について、左辺を展開して、右辺と比べてみましょう。

例題1(1)の解答例

与式の左辺を展開すると、(左辺)=x22x+1よって、右辺と一致しないので恒等式ではない。

例題1(1)の等式では、左辺と右辺が一致しないので、特定の値でしか等式は成り立ちません。

ちなみに、x=0のとき、等式は成り立ちます。これは方程式の解になります。特定の値のときだけ等式が成り立つものが方程式です。

恒等式と方程式とは全く別物なので、混同しないように気を付けましょう。

文字にどんな値を代入しても等式が成り立つのが恒等式、文字に特定の値を代入すると等式が成り立つのが方程式。

例題1(2)の与式について、左辺を展開して、右辺と比べてみましょう。

例題1(2)の解答例

与式の左辺を展開すると

(左辺)=a2+2ab+b2+a22ab+b2=2(a2+b2)

よって、右辺と一致するので恒等式である。

例題1(2)の等式では、左辺と右辺が一致しました。ですから、aやbにどんな値を代入しても等式が成り立ちます。

恒等式では、等式を満たす文字の値を考えるのではありません。恒等式となるために、左辺や右辺の係数がどのようになれば良いかを考えます

恒等式の性質

恒等式にはいくつか性質があります。その性質を利用して問題を解いていきます。2つの整式がxについての式であるときを考えます。

恒等式の性質その1

P , Qx についての整式であるとき

P=0 が恒等式 ⇔ P の各項の係数はすべて 0 である。

P=Q が恒等式 ⇔ PQ の次数は等しく、両辺の同じ次数の項の係数はそれぞれ等しい。

性質その1の①では、右辺が0であるので、xにどんな値を代入しても等式が成り立つためには、係数がすべて0でなければなりません

性質その1の②では、両辺がxについての整式であるので、たとえば、左辺が3次式であれば、右辺も3次式でなければなりません。また、次数だけでなく、同じ次数の項の係数はともに等しくなければなりません

他にも性質があります。

恒等式の性質その2

P , Qx についての n 次以下の整式であるとき、等式 P=Q(n+1) 個の異なる x の値に対して成り立つならば、等式 P=Qx についての恒等式である。

この性質は少し分かりづらいですが、恒等式と方程式の違いを理解していれば分かる性質です。

証明は省きますが、一般に「n次方程式の異なる解はn個以下である」ことが知られています。たとえば、2次方程式は、最大で2個の解をもちます。

等式P=Q、すなわちP-Q=0は、恒等式か方程式のどちらかだと考えられます(厳密に言えば、定数=0のときもある)。

ここで、もし、等式P-Q=0が方程式であれば、n個の異なるxの値だけで成立します。

しかし、(n+1)個の異なるxの値で等式が成立したとすれば、等式は方程式ではありません。方程式の異なる解の条件を満たさないからです。このような等式が恒等式です。

2次式であれば、3個の値を代入し、3次式であれば、4個の値を代入して、等式が成り立つか調べよう。

未定係数法

恒等式の未知の係数のことを未定係数と言います。この未定係数を求めるには、恒等式の性質を利用します。求め方には2通りの方法があります。

未定係数法は2通り

  • 係数比較法
  • 数値代入法

係数比較法は、恒等式の性質その1を利用した方法です。この方法では、両辺の同じ次数の項の係数がそれぞれ等しいことを利用します

また、数値代入法は、恒等式の性質その2を利用した方法です。この方法では、両辺に適当な数字をいくつか代入して、連立方程式などを解きます

こちらの方が直接的で、とっつきやすいですが、注意点があります。結局、係数を求めるために特定の値しか代入していないので、必要条件が成り立つだけで、十分ではありません。ですから、逆の確認が必要になります。

詳しくは別記事で解説します。

ここでは係数比較法を取り上げます。

係数比較法を利用して解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

例題2

次の等式が x についての恒等式となるように、定数 a , b , c の値を定めよ。

3x22x1=a(x+1)2+b(x+1)+c

例題の解答・解説

係数比較法を利用するために、等式の右辺を展開して整理します。

例題2の解答例 1⃣

等式の右辺を x について整理すると、(右辺)=ax2+(2a+b)x+a+b+cであるので、与式は3x22x1=ax2+(2a+b)x+a+b+c

左辺はxについて降べきの順に整理されているので、右辺も同様に整理します。

両辺にある同じ次数の項について、係数を比較します。同じ次数の項では、係数がともに等しくなるので、係数の関係式を導出することができます。

例題2の解答例 2⃣

3x22x1=ax2+(2a+b)x+a+b+c両辺の同じ次数の項の係数を比較すると{3=a2=2a+b1=a+b+cこの連立方程式を解くとa=3 , b=8 , c=4

3つの方程式を連立した連立方程式であっても、解き方は2つのときと変わりません。連立方程式の解き方の基本は、代入法や加減法を利用して、文字を1種類ずつ消去していくことです。

解答例2⃣で省略した計算は以下のようになります。

連立方程式の計算

{3=a2=2a+b1=a+b+c①を②に代入して2=6+bよってb=8これと①を③に代入して1=38+cよってc=4したがってa=3 , b=8 , c=4

係数比較法を利用する場合、連立方程式を解くことが中心になります。未知の係数のぶんだけ式が必要で、それらを上手に使って係数を決定します。たいていは3つの方程式を連立して解きます。

次は、恒等式の係数比較法を扱った問題を実際に解いてみましょう。