大学入試|大学入学共通テストのポイント(数学の場合)
新しい大学入試は大学入学共通テストと言います。この共通テストでは、国語と数学で記述形式の問題が出題されるということで話題になりました。
前回の記事で国語の問題を確認しました。ここでは、数学の問題を確認してみましょう。
ここが変わる大学入学共通テスト
従来のセンター試験では「用意されている選択肢の中から唯一の正解を選び出す」問題が出題されていました。もちろん、このような問題も出題されますが、それだけではありません。
大学入学共通テストでは、「設問が求めている内容を、自分なりにまとめて表現する」問題も出題されるようになります。このような問題は、国語と数学で記述形式の問題という形で出題されます。
先ほども言いましたが、現在のところ、記述式問題の導入は見送りになっています。
ただ、マーク形式であっても、「思考力・判断力・表現力」を評価するための問題であることには変わりません。ですから、難易度的には、記述式レベルを想定しておいた方が無難でしょう。
以降は、記述形式の問題に関する話ではあります。しかし、問題のねらいや難易度を知ることができるので、共通テストの対策をする上で無駄になることはありません。
また、二次試験などの記述形式の試験にも通じるところもあるので、全く役に立たないわけではないでしょう。
記述形式の問題が加わることによる変更点(数学の場合)
記述形式の問題が出題されることになり、国語と同じように、数学でもいくつか変更点が見られます。
数学の変更点
- 内容:数学1で記述形式の小問が3問出題
- 時間:「数学1・A」が60分から70分に変更
- 評価:記述形式の問題についても配点(段階別評価ではない)
時間は10分だけ延びています。これは記述式問題の導入が見送られても変わっていません。ということは、難易度的には上がった、または上がる可能性があります。あるいは、問題数が少し増える可能性もあります。
また、評価について、記述形式の問題にも点数が割り振られているということです。ここは、国語と異なるところなので注意しましょう。このような変更点を踏まえて、数学でも試行調査が行われています。
大学入試センターでは、新テストの円滑かつ確実な実施に向けて、従前より様々な観点から具体的な検討準備を進めており、平成29年4月には、組織体制の抜本的な強化を図るため、「新テスト実施企画部」を整備しました。今後も新テストに関する検証や試行調査(プレテスト)の実施を通じ、平成32年度からの円滑な導入に向けて取り組んでいきます。
大学入試センターより抜粋
この試行調査で出題された問題は、大学入試センターのサイトで閲覧することができます。問題だけでなく、正答例や問題のねらいなども掲載されているので、目を通しておいて損はないでしょう。
数学の変更点を実際の問題で確かめてみましょう。
試行調査から分かるポイント
画像は平成30年度に行われた試行調査の問題です。記述形式の問題で特に注意するのは、解答を記述するにあたっての条件です。この条件を無視すると、全く評価されないので注意が必要です。
小問が連続して出題されるのではなく、マーク形式の問題の一つが記述形式に変わったと捉えるとイメージしやすいでしょう。
小問(あ),(い)は大問1で出題されています。小問(あ)では、数学的な表現ができるかを問われています。小問(い)では、学校の「階段」という題材について考察し、また数学的な表現を用いて説明することを問われています。
小問(う)では、過程を振り返り、そこから考えた結果を数学的な表現を用いて説明することを問われています。
正答例
小問(う)の正答例は以下のようになります。
小問(う)の正答例
- 正答例1:時刻によらず、S1=S2=S3である。
- 正答例2: 移動を開始してからの時間をtとおくとき,移動の間におけるすべてのtについてS1=S2=S3である。
正答例は2つ挙げてありました。複数の解答が正答となる可能があります。
正答の条件(留意点)
小問(う)について、正答の条件(留意点)は以下のようになります。
正答の条件(留意点)
- 時刻によって面積の大小関係が変化しないことについて言及していないものは誤答とする。
- S1,S2,S3の値が等しいことについて言及していないものは誤答とする。
- 移動を開始してからの時間を表す文字を説明せずに用いているものは誤答とする。
- 前後の文脈により正しいと判断できる書き間違いは基本的に許容するが、正誤の判断に影響するような誤字・脱字は誤答とする。
日頃から記述する習慣があれば、それほど厳しい条件ではありません。二次試験を意識した学習を心掛けることが大切です。
また、正確に説明するためには、数学的な表現を知っていることだけでなく、国語の力も必要だと考えられます。
記述形式の問題の配点
平成30年度の試行調査では、配点は各5点になっています。記述形式の問題だけで計15点ですから、大問1つ並みの配点です。
共通テストでも同じになるかは分かりませんが、合否に関わる点数なので無視できません。
数学の記述形式の問題で求められていること
この問題で求められているのは、以下の2つです。
数学の記述式問題で求められていること
- 問題の本質を見抜く目
- 問題の本質を手持ちの道具(=知識)を用いて表現する表現力
- どの道具を用いて表現し、解決していけば良いかを判断する判断力
教科書の例題を解くことは、パターン演習です。この演習で「公式や定理を正しく適用する」能力を身につけることはできます。これは数学の基礎学力としては必要です。
ただし、パターンに当てはまらない問題に出会うと、散々な結果になってしまいます。そうならないためには、ここから次の段階の演習が必要になります。次の段階の演習として、類題や入試レベルの問題をこなすと良いでしょう。
さいごに
数学の問題を一通り眺めてみると気付きますが、社会生活や日常生活に結びつけた問題が増えています。この傾向は記述形式以外の問題にも当てはまります。そうなると、定理や公式を覚えただけでは太刀打ちできない可能性があります。
たとえば、大問1[2]では、記述形式の問題は出題されていませんが、2次関数のグラフをコンピュータでプロットする話が取り上げられています。
問題をよく読めば、コンピュータ自体には意味がないことが分かります。しかし、教科書レベルのパターン演習だけであれば、このような目先を変えた問題にはなかなか対応できないでしょう。
このような問題で役立つのが、問題の本質を見抜く目です。これを養うためには、出題者の視点に立って、問題を分析することが必要です。
様々なレベルや形式の問題を解いて、たくさんの演習をこなすうちに、出題者の意図を理解することができるようになります。そうすることで、問題の本質に気付くでしょう。
また、入試では、教科書レベルよりも難易度の高い問題が出題されます。ですから、日頃から教科書内容にとどまらず、応用的な問題を多くこなす必要があるでしょう。
さらには、国語と同じように、日頃から「書く」ことを意識した学習も必要でしょう。解答の正誤よりも、採点者が読める答案になっているかに重きを置く視点が大切です。
大学入学共通テストの傾向や対策に役立つ書籍
記述力や思考力を鍛えよう
記述力や思考力は、日頃からの訓練の成果です。短期間であれば、コツくらいは掴めるかもしれません。しかし、完全に習得するとなると時間が掛かるでしょう。だからこそ価値があります。
身に付けるのは簡単ではありませんが、育成の仕方を知っておくことは大切です。日常学習の際に、無自覚にこなすのではなく、意識的に取り組むことができるからです。
大学入試を知ろう
仕組みを知らないまま受験するのは、あまり良いことだとは思いません。情報がなければ適切な対策を立てられないからです。
期間や難易度などの情報を知らなければ、中途半端な準備しかできません。また、進学したい大学や学部についての情報がなければ、有名大学に進学できたとしても後悔するかもしれません。
少なくとも高校3年間を準備に費やします。また、自分の将来にも大いに関わります。義務教育ではないので、先生や親任せでなく、自分で行動しなければなりません。後悔しないためにも情報収集をしっかり行いましょう。