大学入試|英語の対策

大学入試,英語

新しい大学入試 大学入学共通テストの傾向と対策

大学入試改革によって制度が変更され、新しい大学入試が行われるようになります。この制度変更の影響を最も受けるのが英語かもしれません。

2019年11月1日、萩生田光一・文科相から「2020年度の英語民間試験導入を2024年度に延期する」と発表されました。

以降は延期前に決定されていた内容ですが、概念的なものはほとんど変わりません。

近年の入試傾向

新しい大学入試を見すえた学習に取り組むにあたって、英語の入試傾向の変化に注目することはとても大切です。

従来のセンター試験との違い

従来のセンター試験では、設問にある内容が本文の内容と合致しているかを問う問題(事実発問)が中心でした。これに加えて、大学入学共通テストでは以下のような問題も出題される見込みです。

推論発問

  • 内容を「事実」と「意見」に分類させる問題。
  • 読んだ物語がどのような読者に受け入れられるかを考える問題。
  • ある段落を書いた筆者の意図を推察させる問題

このような「推論発問」と言われる問題では、書いてある内容を理解する従来の読解力だけでは足りません。読解力に加え、もう一歩踏み込んだ思考力や判断力が必要となります。

たとえば、試行調査の英語では、このような問題も出題されています。例に挙げたのは、大問5のある設問です。選択肢を1つだけ選ぶのではなく、複数選ぶ問題です。

平成30年度試行調査|英語(筆記)の設問例
推論発問の一例

消去法を利用できないので、本文を丁寧に読み進める必要があります。しかし、試験時間は有限なので、これまでと同じ時間で読み解かなければなりません。ですから、読解には、より深い思考力判断力が必要になります。

民間の資格試験や検定試験の変化

志望する大学によっては、民間の資格試験や検定試験を受ける必要があります。ほとんどの高校生であれば、英検(実用英語技能検定®)を受検するでしょう。

英検では、級によってはライティングテストが課されるようになりました。

例)英検 ライティングの内容

  • 1級・準1級:エッセイ型自由英作文
  • 2・準2級・3級:質問に理由を2つ挙げて答える形式の自由英作文

ライティングのword数

  • 1級:200~240words
  • 準1級:120~150words
  • 2級:80~100words(2016年から開始)
  • 準2級:50~60words(2017年から開始)
  • 3級:25~35words(2017年から開始)

注目したいのは、2016年から設問数に関係なく、各技能にスコアが均等に配分されるようになったことです。これは無視できないポイントです。

ライティングの出題数はわずか1問なので、捨てても良いだろうと考えてしまいがちです。しかし、それではマズいことが分かります。ライティングの1問が一次試験の1/3をウエイトを占めることになるからです。

資格試験や検定試験の仕組みを確認し、それに合わせた対策を立てることが大切です。

和文英訳から自由英作文へ

大学ごとに実施される個別試験、いわゆる二次試験の英語では、英作文が出題されます。この英作文にも変化が見られます。

変化として見られるのは、「ある課題について理解した上で、自分はどう考えるのか」をロジカルに表現する力が問われるようになってきたことです。

このような表現力を問うために、単なる和文英訳ではなく、自由英作文が多く出題されています。主に、自分の考えを書かせる問題や、グラフから読み取れる内容を複数書かせる問題になっています。

グラフから読み取れる内容を複数書かせる問題は、総合問題小論文に多く見られます。しかも、近年では、英作文にも出題されているので要注意です。

文型志望だからと言って、グラフが読めなくても良いというわけにもいかなくなりました。グラフの読み取りに慣れるには、グラフがよく用いられる理系科目を疎かにしないことが大切です。

入試傾向を踏まえた学習を

4技能取得を目指した学習スタイル

入試傾向から分かるように、「書く・読む・聞く・話す」の4技能を問うための、様々な形式の問題が出題されています。ですから、今の英語の学習スタイルが、4技能を取得できるものかをしっかり見直す必要があります。

英語の学習と言えば、英単語・英熟語や英文法のインプット、教科書の英文を訳すなどが中心ではないでしょうか。

これを1年間続けても、「読む」技能を鍛えることができても、その他の技能を鍛えることができません。入試傾向を踏まえつつ、4技能を鍛えることができる学習スタイルを確立しなければなりせん。

また、英単語・英熟語や英文法を覚えるインプット学習だけで終わらないことも大切です。英語の4技能から分かるように、「演習」中心のアウトプット学習に取り組みながら、インプット学習に取り組んでいきましょう。

学校で配布される教材を上手に活用しよう

学校から色々な教材が配布されますが、きちんと活用できているでしょうか?

市販の教材の方が特別に優れているわけではありません。要は、本人の使い方次第です。教材ごとに使い方が説明されています。その通りに使っているでしょうか?

英語で言えば、配布される補助教材のほとんどに音源が付いています。そのような教材を使う際には、必ず音源も活用すべきです。音源を聞きながらそれを真似して発音するシャドーイングを意識的に行えば、「聞く・話す」技能を鍛えることができます。

教材に添付される付録(音源など)は、必ず活用しよう。

ジャンルや形式にこだわらずに読もう

入試傾向から分かるように、様々なジャンルの英文を扱った記述式・客観式の問題を解くことが必要です。もちろん、補助教材にも収録されていることでしょう。

そのような教材を、単に課題をこなす意識で使っても得るものがほとんどありません。問題形式について分析したり、テーマについての要約を頭に入れたりするような取り組みが必要です。

様々なジャンルの英文を読むことのメリットの1つに、苦手な科目や分野が分かることが挙げられます。このことは、現代文の学習にも言えるでしょう。

問題で扱われるテーマはジャンルを問いません。文系だからと言って、科学や産業の話が出てこないわけではありせん。

もし、読解問題を苦手にしているのであれば、読解できなかった題材がどの科目に関係するかを調べてみましょう。ほとんどの場合、苦手な科目や分野だと分かります。日頃から敬遠しているせいで、題材に対する予備知識がないからです。

以上のことから、様々なジャンルの英文を読むことは、文系・理系にかかわらず苦手科目を作らないことにつながります。

結局のところ、どの科目もまんべんなく取り組まないと、どこかで足を引っ張ります。その逆も言えます。ジャンルを問わず英文を読むことで、他の科目の学習にもきっと良い影響を与えるはずです。

苦手科目があれば他の科目の足を引っ張る。好き嫌いせずに満遍なく取り組もう。

英語4技能を鍛える

大学入学共通テストでは「読む」「聞く」の2技能が問われます。また、民間試験では「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能がほぼ同じ比重で問われます。

英語の学習をする際には、単語・熟語や文法を覚えることも大切ですが、これまで以上に4技能のことを意識しながら取り組むべきでしょう。ただ、どのように取り組めば良いのかが分からず、不安になるかもしれません。

学校配布の教材だけでは足りないと感じるときは、しっかりとしたカリキュラムが準備された教材を購入したり、講座を受講したりすると良いでしょう。受験生にもお馴染みのZ会、旺文社、スタディサプリなどが講座を開講しています。無理のない範囲で活用してみると良いでしょう。

さいごに

英語は、従来から合否を左右するくらい重要な科目でしたが、制度変更によって要求されるレベルがより高くなった印象があります。入試傾向も制度変更の影響を受けているので、注意を払っておいた方が良いでしょう。

また、民間試験については、賛否両論あるようですが、大学入試に活用できることは大きな利点です。級やグレードによっては満点扱いになります。

経済的なことを考えれば、何度も受検できるわけではありません。しかし、入試と違って何回もトライできるので、精神的にすごく楽です。

日常学習のモチベーションや実益を考えると、英語学習では資格・検定取得を中心に据えた方が効率的でしょう。準備が早ければ、高校2年生までには英検準1級ないしは1級を取得できるでしょう。

直近の具体的な目標になるので、モチベーションを維持しやすい利点があります。そういう面では、英語学習に取り組みやすくなったかもしれません。

大学入学共通テストの傾向や対策に役立つ書籍

記述力や思考力を鍛えよう

記述力や思考力は、日頃からの訓練の成果です。短期間であれば、コツくらいは掴めるかもしれません。しかし、完全に習得するとなると時間が掛かるでしょう。だからこそ価値があります。

身に付けるのは簡単ではありませんが、育成の仕方を知っておくことは大切です。日常学習の際に、無自覚にこなすのではなく、意識的に取り組むことができるからです。

大学入試を知ろう

仕組みを知らないまま受験するのは、あまり良いことだとは思いません。情報がなければ適切な対策を立てられないからです。

期間や難易度などの情報を知らなければ、中途半端な準備しかできません。また、進学したい大学や学部についての情報がなければ、有名大学に進学できたとしても後悔するかもしれません。

少なくとも高校3年間を準備に費やします。また、自分の将来にも大いに関わります。義務教育ではないので、先生や親任せでなく、自分で行動しなければなりません。後悔しないためにも情報収集をしっかり行いましょう。