複素数と方程式|2次方程式の解が存在する範囲について

数学2

今回は、2次方程式の解が存在する範囲について学習しましょう。

2次方程式の係数と、解の符号との関係をすでに学習していますが、その応用になります。応用的な内容なので難しく感じるかもしれませんが、じっくり腰を据えて取り組みましょう。

2次方程式の解の存在範囲

2次方程式の解の存在範囲については、数学1の単元(2次不等式)で基本的な事柄を学習しています。2次関数のグラフとx軸の共有点の位置についてです。

ここでは、2次方程式の解が、特定の実数との大小関係を満たして存在する範囲を調べます。これまでであれば、判別式や軸の方程式などから条件を導きました。ここでは、2次方程式の解に注目します。

本題に入る前に、2次関数のグラフを用いた調べ方を確認しておきましょう。以下、2次関数のグラフを単に「放物線」と言うことがあります。

2次関数のグラフ(放物線)を用いた調べ方

2次関数の式において、y=0とおくと、xについての2次方程式となります。この2次方程式が実数解α,βをもつときを考えます。

y=0のときのxの値が2次方程式の実数解です。これは、放物線とx軸との共有点のx座標に相当します。

放物線と2次方程式にはこのような対応関係があるので、放物線とx軸の位置関係を考えれば、実数解α,βが存在する範囲を調べることができます。このことは、実数解の符号でも同じ要領で調べています。

2次方程式の実数解とある実数kとの大小関係を考えるとしましょう。このとき、大小関係は3通り考えられます。

実数解とある実数との大小関係は3通り

  • 2つの実数解α,βがともに実数kより大きい
  • 2つの実数解α,βがともに実数kより小さい
  • 2つの実数解α,βの間に実数kがある

それぞれの場合について、どんな条件が成り立つのかをグラフを用いて考えます。このとき、考えやすいように2次の係数を正にしておき、下に凸のグラフで考えます。

2つの実数解がともに実数kより大きい場合

2つの実数解がともに実数kより大きい場合を考えてみましょう。放物線を図示すると以下のようになります。

解α,βがともに実数kよりも大きい

放物線とx軸の位置関係から、3つの条件を導くことができます。

[1] 2つの実数解がともに実数kより大

\begin{align*} &\text{$2$ 次方程式} \\[ 5pt ] &\quad ax^{\scriptsize{2}}+bx+c=0 \\[ 7pt ] &\text{の $2$ つの解を} \\[ 5pt ] &\quad \alpha \ , \ \beta \quad (\alpha \lt \beta) \\[ 7pt ] &\text{とする。} \\[ 5pt ] &\text{また、判別式を $D$ とし、} \\[ 5pt ] &\quad f(x)=ax^{\scriptsize{2}}+bx+c \quad (a \gt 0) \\[ 7pt ] &\text{とする。} \\[ 5pt ] &\text{$2$ 次方程式 $f(x)=0$ の実数解 $\alpha \ , \ \beta$ が} \\[ 5pt ] &\text{ともに実数 $k$ より大きくなるのは} \\[ 5pt ] &\quad D \geqq 0 \\[ 7pt ] &\quad \text{軸} \ -\frac{b}{2a} \gt k \\[ 7pt ] &\quad f(k) \gt 0 \\[ 7pt ] &\text{が成り立てばよい。} \\[ 5pt ] &\text{したがって} \\[ 5pt ] &\quad \alpha \gt k \ \text{かつ} \ \beta \gt k \\[ 7pt ] &\quad \Leftrightarrow \ D \geqq 0 \ , \ \text{軸} \ -\frac{b}{2a} \gt k \ , \ f(k) \gt 0 \end{align*}

判別式の条件については、「異なる2つの~」という文言がないので等号を含みます(以下、同様です)。

2つの実数解がともに実数kより小さい場合

2つの実数解がともに実数kより小さい場合を考えてみましょう。放物線を図示すると以下のようになります。

解α,βがともに実数kよりも小さい

放物線とx軸との位置関係から、3つの条件を導くことができます。

[2] 2つの実数解がともに実数kより小

\begin{align*} &\text{$2$ 次方程式} \\[ 5pt ] &\quad ax^{\scriptsize{2}}+bx+c=0 \\[ 7pt ] &\text{の $2$ つの解を} \\[ 5pt ] &\quad \alpha \ , \ \beta \quad (\alpha \lt \beta) \\[ 7pt ] &\text{とする。} \\[ 5pt ] &\text{また、判別式を $D$ とし、} \\[ 5pt ] &\quad f(x)=ax^{\scriptsize{2}}+bx+c \quad (a \gt 0) \\[ 7pt ] &\text{とする。} \\[ 5pt ] &\text{$2$ 次方程式 $f(x)=0$ の実数解 $\alpha \ , \ \beta$ が} \\[ 5pt ] &\text{ともに実数 $k$ より小さくなるのは} \\[ 5pt ] &\quad D \geqq 0 \\[ 7pt ] &\quad \text{軸} \ -\frac{b}{2a} \lt k \\[ 7pt ] &\quad f(k) \gt 0 \\[ 7pt ] &\text{が成り立てばよい。} \\[ 5pt ] &\text{したがって} \\[ 5pt ] &\quad \alpha \lt k \ \text{かつ} \ \beta \lt k \\[ 7pt ] &\quad \Leftrightarrow \ D \geqq 0 \ , \ \text{軸} \ -\frac{b}{2a} \lt k \ , \ f(k) \gt 0 \end{align*}

実数kより大きい場合との違いは、軸の条件(符号の向きが異なる)です。

2つの実数解が実数kの間にある場合

2つの実数解が実数kの間にある場合を考えてみましょう。放物線を図示すると以下のようになります。

2つの実数解が実数kの間にある

放物線とx軸との位置関係から、ただ1つの条件を導くことができます。

[3] 2つの実数解が実数kの間る

\begin{align*} &\text{$2$ 次方程式} \\[ 5pt ] &\quad ax^{\scriptsize{2}}+bx+c=0 \\[ 7pt ] &\text{の $2$ つの解を} \\[ 5pt ] &\quad \alpha \ , \ \beta \quad (\alpha \lt \beta) \\[ 7pt ] &\text{とする。} \\[ 5pt ] &\text{また、判別式を $D$ とし、} \\[ 5pt ] &\quad f(x)=ax^{\scriptsize{2}}+bx+c \quad (a \gt 0) \\[ 7pt ] &\text{とする。} \\[ 5pt ] &\text{$2$ 次方程式 $f(x)=0$ の実数解 $\alpha \ , \ \beta$ が} \\[ 5pt ] &\text{実数 $k$ の間にあるのは} \\[ 5pt ] &\quad f(k) \lt 0 \\[ 7pt ] &\text{が成り立てばよい。} \\[ 5pt ] &\text{したがって} \\[ 5pt ] &\quad \alpha \lt k \lt \beta \\[ 7pt ] &\quad \Leftrightarrow \ f(k) \lt 0 \end{align*}

2つの実数解α,βが実数kの間にある場合、条件は1つだけです。このとき、2次方程式の解は必ず異なる2つの実数解となるので、判別式の条件は不要です。

3通りの場合について、まとめると以下のようになります。

2次方程式の解の存在範囲

\begin{align*} &\text{$2$ 次方程式} \\[ 5pt ] &\quad ax^{\scriptsize{2}}+bx+c=0 \\[ 7pt ] &\text{の $2$ つの解を} \\[ 5pt ] &\quad \alpha \ , \ \beta \quad (\alpha \lt \beta) \\[ 7pt ] &\text{とする。} \\[ 5pt ] &\text{また、判別式を $D$ とし、} \\[ 5pt ] &\quad f(x)=ax^{\scriptsize{2}}+bx+c \quad (a \gt 0) \\[ 7pt ] &\text{とする。} \\[ 5pt ] &[1] \ \alpha \gt k \ \text{かつ} \ \beta \gt k \\[ 7pt ] &\qquad \Leftrightarrow \ D \geqq 0 \ , \ \text{軸} \ -\frac{b}{2a} \gt k \ , \ f(k) \gt 0 \\[ 10pt ] &[2] \ \alpha \lt k \ \text{かつ} \ \beta \lt k \\[ 7pt ] &\qquad \Leftrightarrow \ D \geqq 0 \ , \ \text{軸} \ -\frac{b}{2a} \lt k \ , \ f(k) \gt 0 \\[ 10pt ] &[3] \ \alpha \lt k \lt \beta \\[ 7pt ] &\qquad \Leftrightarrow \ f(k) \lt 0 \\[ 7pt ] &\text{ただし、$[3]$ のとき、$D \gt 0$ が成り立つので、} \\[ 5pt ] &\text{判別式の条件は不要。} \end{align*}
2次方程式の解の存在範囲まとめ

以上が数学1で学習した内容になります。ここからがこの単元の本題になります。

2つの実数解の和と積を用いるのは間違い

2次方程式の実数解と実数kとの大小関係を考えるとき、実数解の和と差を利用するとします。簡単そうに見えますが、そうでもありません。

2次方程式の実数解の符号のときと同じようにはいきません。同じ要領で得られた条件は間違いです。この間違いは意外と多いので要注意です。

よくある間違い

\begin{align*} &\text{$2$ 次方程式 $f(x)=0$ の実数解がともに} \\[ 5pt ] &\text{実数 $k$ より大きくなるのは、判別式を} \\[ 5pt ] &\text{$D$ とすると} \\[ 5pt ] &\quad D \geqq 0 \\[ 7pt ] &\quad \alpha+\beta \gt 2k \\[ 7pt ] &\quad \alpha \beta \gt k^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ] &\text{が成り立てばよい。} \end{align*}

2つの実数解α,βがともに実数kよりも大きくなるので、和が2kよりも大きくなり、積がk2よりも大きくなれば良いと考えてしまいます。確かにこのことは間違いではありません。しかし、その逆は成り立つでしょうか?

2つの実数解α,βの和が2kよりも大きく、積がk2よりも大きいとき、2つの実数解α,βがともに実数kよりも大きくなるでしょうか。実数kを具体的な数で考えてみると間違いに気付きます。

よくある間違い 例)k=2のとき

\begin{align*} &\text{$2$ 次方程式 $f(x)=0$ の実数解がともに} \\[ 5pt ] &\text{$2$ より大きくなるとき、} \\[ 5pt ] &\quad \alpha \gt 2 \ , \ \beta \gt 2 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad \alpha \gt 2 \ , \ \beta \gt 2 \\[ 7pt ] &\quad \Rightarrow \ \alpha+\beta \gt 4 \ , \ \alpha \beta \gt 4 \\[ 7pt ] &\text{は成り立つ。この逆を考えると}\\[ 5pt ] &\quad \alpha+\beta \gt 4 \ , \ \alpha \beta \gt 4 \\[ 7pt ] &\quad \Rightarrow \ \alpha \gt 2 \ , \ \beta \gt 2 \\[ 7pt ] &\text{は成り立たない。反例は}\\[ 5pt ] &\quad \alpha=1 \ , \ \beta=5 \\[ 7pt ] &\text{がある。} \\[ 5pt ] &\text{したがって、$\alpha \gt k \ , \ \beta \gt k$ のとき} \\[ 5pt ] &\quad \alpha+\beta \gt 2k \ , \ \alpha \beta \gt k^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ] &\text{は等価な条件にはならない。} \end{align*}

実数kを具体的な値で考えてみると、2つの実数解の和と積を用いた場合、もとのαとβの条件を満たさない組み合わせまで含んでしまうことが分かります。

2次方程式の実数解と実数kとの大小関係では、単純に実数解の和と積を用いた条件に置き換えるのは誤りです。

実数解の和と差を利用できるのは、正負の判断くらいで特定の値との大小関係には向かない。単純に実数解の和と積を用いた条件に置き換えるのは絶対にダメ。

次は、実数解の和と差の正しい利用法を解説します。

2次方程式の実数解の符号問題へと帰着させる

このままだと実数解の和と差を用いた条件に置き換えることができません。しかし、前回の学習内容を利用すればそれが可能になります。「2次方程式の実数解の符号問題へと帰着させる」ことが正しい置き換え方です。

2次方程式の実数解の符号が正か負か」という話であれば、逆も成り立つので、実数解の和と積を用いた条件で表すことができます。そのために、放物線を平行移動させます。

2次方程式の実数解の符号問題へと帰着させる

たとえば、2つの実数解α,βがともに実数kより大きい場合、共有点が直線x=kよりも右側にあります。この直線x=kは、x軸方向に-kだけ平行移動させると、y軸に重なります。

このような平行移動の結果、共有点のx座標はα-k,β-kへと変わります

放物線を平行移動させることによって、以下のように話を置き換えることができます。

2次方程式の実数解の符号問題への帰着

2つの実数解α,βがともに実数kより大きい

⇒ 2つの実数解α-k,β-kの符号がともに正

実数解の符号についてであれば、実数解の和と積を用いて条件を導くことができます。ただし、実数解と言っても、平行移動した後の共有点のx座標α-k,β-kを用いることに注意しましょう。

3通りの場合についてまとめると以下のようになります。

2次方程式の解の存在範囲

\begin{align*} &\text{$2$ 次方程式} \\[ 5pt ] &\quad ax^{\scriptsize{2}}+bx+c=0 \\[ 7pt ] &\text{の $2$ つの解を} \\[ 5pt ] &\quad \alpha \ , \ \beta \quad (\alpha \lt \beta) \\[ 7pt ] &\text{とする。} \\[ 5pt ] &\text{また、判別式を $D$ とする。} \\[ 5pt ] &[1] \ \alpha \gt k \ \text{かつ} \ \beta \gt k \\[ 7pt ] &\quad \alpha-k \gt 0 \ \text{かつ} \ \beta-k \gt 0 \\[ 7pt ] &\quad \Leftrightarrow \ \begin{cases} D \geqq 0 \\[ 7pt ] \left(\alpha-k \right)+\left(\beta-k \right) \gt 0 \\[ 7pt ] \left(\alpha-k \right) \left(\beta-k \right) \gt 0 \end{cases} \\[ 10pt ] &[2] \ \alpha \lt k \ \text{かつ} \ \beta \lt k \\[ 7pt ] &\quad \alpha-k \lt 0 \ \text{かつ} \ \beta-k \lt 0 \\[ 7pt ] &\quad \Leftrightarrow \ \begin{cases} D \geqq 0 \\[ 7pt ] \left(\alpha-k \right)+\left(\beta-k \right) \lt 0 \\[ 7pt ] \left(\alpha-k \right) \left(\beta-k \right) \gt 0 \end{cases} \\[ 10pt ] &[3] \ \alpha \lt k \lt \beta \\[ 7pt ] &\quad \alpha-k \lt 0 \lt \beta-k \\[ 7pt ] &\quad \Leftrightarrow \ \left(\alpha-k \right) \left(\beta-k \right) \lt 0 \end{align*}

実数解の符号問題へ帰着させず、単純に実数解の和と差を用いる間違いが非常に多いので気を付けましょう。

正しい解法が分かったので、2次方程式の解が存在する範囲を扱った問題を実際に解いてみましょう。