整数の性質|1次不定方程式について

1次不定方程式を扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
問
(1) 方程式 2x−3y=1 の整数解をすべて求めよ。
(2) 方程式 2x−3y=4 の整数解をすべて求めよ。
問(1)の解答・解説
問(1)
方程式 2x−3y=1 の整数解をすべて求めよ。
右辺が1である1次不定方程式はよく見かけるので、問(1)は基本的な問題と言えます。手順通りに進めていきましょう。
まず、1組の整数解を見つけましょう。
文字x,yに値を代入して、両辺が等しくなるかどうかを確かめます。両辺が等しくなる、ここでは左辺の値が1となれば、そのときのx,yの値が整数解の1つです。
問(1)の解答例 1⃣
2x−3y=1⋯①において、x=2 , y=1 のとき
(左辺)=2⋅2−3⋅1=1より、等式が成り立つ。
よって
x=2 , y=1は整数解の 1 組。
整数解を見つけたら、この整数解を①式に代入します。
問(1)の解答例 2⃣
2x−3y=1⋯①⋮x=2 , y=1⋮この整数解を①に代入すると
2⋅2−3⋅1=1⋯②②式の左辺は整数解を代入しただけにしておきましょう。
次に、①式を②式(整数解の1組を①に代入した式)で減算します。右辺が0となることを確認しましょう。
問(1)の解答例 3⃣
2x−3y=1⋯①⋮2⋅2−3⋅1=1⋯②①-②より
2x−3y=1−)2⋅2−3⋅1=12(x−2)−3(y−1)=0減算した後の式を変形しておきます。
問(1)の解答例 4⃣
⋮2(x−2)−3(y−1)=0これを変形すると
2(x−2)=3(y−1)⋯③③式を導出したら、左辺と右辺の関係を調べます。
左辺は2の倍数で、右辺は3の倍数です。2と3が互いに素であることから、右辺のx-2は3の倍数となることが分かります。
問(1)の解答例 5⃣
⋮2(x−2)=3(y−1)⋯③③において、2 と 3 は互いに素である。
よって、x−2 は 3 の倍数である。
これより、k を整数とすると
x−2=3k⋯④と表せるので
x=3k+2xの値を求めることができました。③,④式からyの値を求めます。
問(1)の解答例 6⃣
⋮2(x−2)=3(y−1)⋯③⋮x−2=3k⋯④⋮x=3k+2④を③に代入すると
2⋅3k=3(y−1)これを y について変形すると
y=2k+1したがって、求める整数解は
x=3k+2 , y=2k+1 ( k は整数)問(1)の記述例は以下のようになります。過程を省略している箇所があります。
問(1)の記述例
2x−3y=1⋯①x=2 , y=1 は①の整数解の 1 組であるので
2⋅2−3⋅1=1⋯②①-②より
2(x−2)−3(y−1)=0よって
2(x−2)=3(y−1)⋯③③において、2 と 3 は互いに素であるので
x−2=3k ( k は整数)⋯④また、④を③に代入すると
y−1=2k⋯⑤④,⑤より、求める整数解は
x=3k+2 , y=2k+1 ( k は整数)1組の整数解を見つけたら、決まった手順で進めていきます。繰り返し演習をこなせば、このくらいの答案を作成することは難しくありません。
一般解の式はいくつもある?
問(1)では、1組の整数解がx=2,y=1であるとして一般解を求めました。しかし、見つけた整数解がx=-1,y=-1やx=5,y=3などである場合もあります。
実は、見つけた整数解によって一般解の式が変わります。ですから、模範解答と異なっていても間違いではない場合があります。
見つけた整数解によって一般解が決まるので、その表し方はいくつもあります。それでも、全く問題ありません。他の整数解も含めて表せるのが一般解だからです。
解答例で得られた一般解で確認してみましょう。整数kに色々な値を代入してみると、他の整数解が分かります。
一般解の確認
2x−3y=1の整数解を
x=3k+2 , y=2k+1 ( k は整数)とする。
k=−1 のとき
x=−1 , y=−1また、k=1 のとき
x=5 , y=3自分の求めた一般解でも他の整数解をきちんと求めることができています。整数解を1次不定方程式に代入すると、等式が成り立つことを確認できます。
どうしても不安であれば、kに整数を代入して、他の整数解が得られるかを確認すると良いでしょう。
問(2)の解答・解説
問(2)
方程式 2x−3y=4 の整数解をすべて求めよ。
問(2)の与式は、問(1)と少し関係があります。右辺の値が4に変わっています。
基本的には自分で1組の整数解を探しますが、それが難しいときもあります。ここでは、問(1)の結果を利用する解法を紹介しておきます。
方程式2x-3y=1において、整数解の1組がx=2,y=1でした。これを方程式2x-3y=1に代入します。
問(2)の解答例 1⃣
(1) より
2x−3y=1の整数解の 1 組は
x=2 , y=1であるので
2⋅2−3⋅1=1右辺が1なので、このままだと問(2)の方程式ではありません。両辺にそれぞれ4を掛けて、問(1)の右辺に揃えます。
問(2)の解答例 2⃣
⋮2⋅2−3⋅1=1両辺に 4 をそれぞれ掛けると
4(2⋅2−3⋅1)=1⋅4両辺に4を掛けた後、両辺を整理します。このとき、左辺に注意しましょう。整理の仕方にコツがあります。
問(2)の解答例 3⃣
⋮4(2⋅2−3⋅1)=1⋅4両辺をそれぞれ整理すると
2⋅(2⋅4)−3⋅(1⋅4)=4よって
2⋅8−3⋅4=4これは整数解の1組を代入したときの式である。
したがって、与式の整数解の 1 組は
x=8 , y=4左辺の整理では、交換法則と結合法則を利用しています。以上のことから、方程式2x-3y=4の整数解の1組はx=8,y=4であることが分かります。
問(1),(2)の関係のように次の条件を満たすとき、この解法を利用できます。
問(1)の結果を上手に利用しよう
- 1次不定方程式の整数解の1組がすでに見つかっている。
- 2つの1次不定方程式の左辺が同じで、右辺の数だけが異なる。
このような条件を満たすとき、与式を整数倍するだけで1組の整数解を求めることができます。1組の整数解が見つかれば、同じ手順通りに一般解を求めます。
問(2)の記述例は以下のようになります。過程を省略している箇所があります。
問(2)の記述例
2x−3y=4⋯⑥(1) の②より、両辺を 4 倍すると
4(2⋅2−3⋅1)=1⋅4よって
2⋅8−3⋅4=4⋯⑦これより、x=8 , y=4 は⑥の整数解の 1 組である。
⑥-⑦より
2(x−8)−3(y−4)=0よって
2(x−8)=3(y−4)⋯⑧⑧において、2 と 3 は互いに素であるので
x−8=3k ( k は整数)⋯⑨また、⑨を⑧に代入すると
y−4=2k⋯⑩⑨,⑩より、求める整数解は
x=3k+8 , y=2k+4 ( k は整数)入試レベルであっても、1組の整数解を見つけるのはそれほど難しくありません。問題なのは、問(2)のような右辺が1ではない場合です。そんなときのために覚えておいて損はないでしょう。
どうしても見つからないとき、以下の手順で整数解を探しましょう。
右辺が1でないときの整数解の見つけ方
- 右辺が1のときの1次不定方程式を考えて、1組の整数解を見つける。
- 整数解が見つかったら、その方程式に代入する。
- 右辺が与式に揃うように、両辺を整数倍する。
- 左辺を整理すれば、見つけたかった整数解が分かる。
問(1),(2)の解法にはこのような使い方もあります。めったにないでしょうが、入試で慌てずに済みます。
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さいごにもう一度まとめ
- 1次不定方程式の解は無数にある。
- 1次不定方程式のすべての整数解は、一般化されて表される。
- 一般解は、式の2つの係数が互いに素であることを利用して得られる。
- 1次不定方程式を解くとき、まず整数解の1組を見つけることから始めよう。