整数の性質|除法の性質と整数の分類について
今回は除法の性質と整数の分類についてです。頻出の単元なので、十分に演習をこなしておきましょう。
除法の性質と整数の分類
この単元では、以下のような事柄を学習します。
- 整数の割り算
- 余りによる整数の分類
まずは文言通りに定義を正しく覚えることが大切です。
整数の割り算
教科書や参考書などで、除法という用語が用いられることがありますが、それは割り算のことです。中学以降では除法と言うことが増えてくるので注意しましょう。
整数の表し方
整数の表し方として、素因数分解を学習しました。もちろん、因数分解でも表すことができます。ここでは、別な表し方を学習します。
整数 $a$ と自然数 $b$ について、一般に以下のようなことが成り立ちます。
\begin{align*}
&\text{整数 $a$ と自然数 $b$ について、} \\[ 5pt ]
&\quad a = b \times q + r \quad ( 0 \leqq r \lt b ) \\[ 5pt ]
&\text{を満たす $q$ と $r$ がただ1通りに定まる。}
\end{align*}
このような関係が成り立つとき、$q$ のことを $a$ を $b$ で割った商、$r$ のことを $a$ を $b$ で割った余りと言います。
たとえば、$a=-17 \ , \ b=4$ のときを考えてみましょう。
\begin{align*}
&\text{整数 $-17$ と自然数 $4$ について、} \\[ 5pt ]
&\quad -17 = 4 \times (-5) + 3 \\[ 5pt ]
&\text{より、$-17 \div 4$ の商は $-5$ で、余りは $3 \ ( \lt 4 )$}
\end{align*}
割られる数である整数が負の数であっても問題ありません。ただし、余りの条件に気をつけましょう。余りは割る数よりも小さくなります。以上のことから、整数は、割り算したときの商と余りを使って表せることがわかります。
余りによる整数の分類
整数を余りによって分類することができます。整数の分類は、数列の問題でよく出てくるので、とても大切な事項です。
一般に、以下のように分類できます。
\begin{align*}
&\text{すべての整数は、自然数 $m$ で割ったときの余りを用いて、} \\[ 5pt ]
&\quad mk \ , \ mk+1 \ , \ mk+2 \ , \ \cdots \ , \ mk+(m-1) \\[ 5pt ]
&\text{に分類できる。ただし、$k$ は整数。}
\end{align*}
たとえば、整数を3で割ったとき、その余りは必ず0 , 1 , 2のいずれかになります。ですから、整数を以下のように分類できます。
\begin{align*}
&\text{すべての整数を、自然数 $3$ で割ったときの余りを用ると、} \\[ 5pt ]
&\quad 3k \ , \ 3k+1 \ , \ 3k+2 \\[ 5pt ]
&\text{に分類できる。ただし、$k$ は整数。}
\end{align*}
3で割ったときであれば3通りですが、整数を4で割ったときの余りに注目すれば、4通りに分類できます。どんな自然数で割るかによって、整数の分類が変わるので注意しましょう。
なお、整数の余りについては、合同式の知識を持っているとさらに解きやすくなるでしょう。
次は除法の性質や整数の分類を扱った問題を実際に解いてみましょう。
除法の性質や整数の分類を扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
-10を4で割った商と余りを求めよ。
問(2)
整数 $a \ , \ b$ を5で割ると余りがそれぞれ3 , 1であるとき、$a-b$ を5で割ったときの余りを求めよ。
問(3)
整数 $n$ について、$n^{\scriptsize{2}}+1$ は3では割り切れないことを証明せよ。
問(1)の解答・解説
-10を4で割った商と余りを求めよ。
問(1)は整数の割り算を扱った問題です。筆算して実際に割ってみると良いでしょう。
\begin{align*}
&\text{$-10 \div 4$ を計算すると、} \\[ 5pt ]
&\quad -10 = 4 \times (-3) + 2 \\[ 5pt ]
&\text{より、商は $-3$ で、余りは $2 \ ( \lt 4 )$}
\end{align*}
余りの条件 $0 \leqq 2 \lt 4$ を満たしていることを確認しましょう。
問(2)の解答・解説
整数 $a \ , \ b$ を5で割ると余りがそれぞれ3 , 1であるとき、$a-b$ を5で割ったときの余りを求めよ。
問(2)は、整数の割り算を扱った問題ですが、問(1)よりも難易度の高い問題です。整数 $a \ , \ b$ を商と余りで表せることに気づけば、それを利用して $a-b$ を式で表してみようという発想が出てきます。
\begin{align*}
&\text{整数 $a \ , \ b$ は} \\[ 5pt ]
&\quad a = 5k + 3 \\[ 5pt ]
&\quad b = 5l + 1 \\[ 5pt ]
&\text{と表せる。ただし、$k \ , \ l$ は整数。} \\[ 5pt ]
&\text{これより、$a-b$ は} \\[ 5pt ]
&\quad a-b = (5k+3)-(5l+1) \\[ 5pt ]
&\text{これを整理すると、} \\[ 5pt ]
&\quad a-b = 5(k-l)+2 \\[ 5pt ]
&\text{よって、$a-b$ を $5$ で割ると $2$ 余る。}
\end{align*}
5で割り切れる部分とそうでない部分が分かるように、式を共通因数の5でくくって整理しましょう。問(2)は中学でも出題される問題なので、確実に解けるようにしておきましょう。
問(2)を合同式で解くとどうでしょうか。
\begin{align*}
&\text{整数 $a \ , \ b$ を $5$ で割ると余りは $3 \ , \ 1$ となるので、} \\[ 5pt ]
&\quad a \equiv 3 \pmod 5 \\[ 5pt ]
&\quad b \equiv 1 \pmod 5 \\[ 5pt ]
&\text{と表せる。} \\[ 5pt ]
&\text{これと合同式の性質より、$a-b$ は} \\[ 5pt ]
&\quad a-b \equiv 3-1 \pmod 5 \\[ 5pt ]
&\text{これを整理すると、} \\[ 5pt ]
&\quad a-b \equiv 2 \pmod 5 \\[ 5pt ]
&\text{よって、$a-b$ を $5$ で割ると $2$ 余る。}
\end{align*}
合同式を用いた解き方では、新たな文字の定義がなく、式変形もないので、簡素な答案を作成できます。
- $a+c \equiv b+d \pmod m$
- $a-c \equiv b-d \pmod m$
- $ac \equiv bd \pmod m$
- 自然数(0以上の整数も可) $n$ に対し $a^n \equiv b^n \pmod m$
合同式でよく利用する性質です。そのまま使わなくても、検算に使えるので覚えておくと良いでしょう。
整数 $n$ について、$n^{\scriptsize{2}}+1$ は3では割り切れないことを証明せよ。
問(3)は、割り切れないことを証明する問題です。整数 $n$ を3で割った余りで分類し、それぞれについて実際に割り切れないことを示します。
\begin{align*}
&\text{整数 $n$ は $3k \ , \ 3k+1 \ , \ 3k+2$ のいずれかで表せる。} \\[ 5pt ]
&\text{(i) $n=3k$ のとき} \\[ 5pt ]
&\quad n^{\scriptsize{2}}+1 = ( 3k )^{\scriptsize{2}}+1 \\[ 5pt ]
&\text{より、} \\[ 5pt ]
&\quad n^{\scriptsize{2}}+1 = 3(3k^{\scriptsize{2}}) + 1 \\[ 10pt ]
&\text{(ii) $n=3k+1$ のとき} \\[ 5pt ]
&\quad n^{\scriptsize{2}}+1 = (3k+1)^{\scriptsize{2}}+1 \\[ 5pt ]
&\text{より、} \\[ 5pt ]
&\quad n^{\scriptsize{2}}+1 = 3(3k^{\scriptsize{2}}+2k) + 2 \\[ 10pt ]
&\text{(iii) $n=3k+2$ のとき} \\[ 5pt ]
&\quad n^{\scriptsize{2}}+1 = (3k+2)^{\scriptsize{2}}+1 \\[ 5pt ]
&\text{より、} \\[ 5pt ]
&\quad n^{\scriptsize{2}}+1 = 3(3k^{\scriptsize{2}}+4k+1) + 2 \\[ 10pt ]
&\text{(i)~(iii)より、$n^{\scriptsize{2}}+1$ は $3$ では割り切れない。}
\end{align*}
3で割り切れる部分とそうでない部分が分かるように、式を共通因数の3でくくって整理しましょう。整数を分類して場合分けするのは、証明問題ではよくやる解き方です。答案を一通り書けるようにしておきましょう。
問(3)も合同式で解いてみましょう。
\begin{align*}
&\text{整数 $n$ を $3$ で割ったときの余りは、$0 \ , \ 1 \ , \ 2$ のいずれかであるので、} \\[ 5pt ]
&\quad n \equiv 0 \ , \ 1 \ , \ 2 \pmod 3 \\[ 5pt ]
&\text{ここで、} \\[ 10pt ]
&\begin{array}{c|cccc}
n & 0 & 1 & 2 \\
\hline
n^2 & 0 & 1^2 \equiv 1 & 2^2 \equiv 1 \\
\hline
n^{\scriptsize{2}}+1 & 1 & 2 & 2
&\end{array} \\[ 10pt ]
&\text{表より、$n^{\scriptsize{2}}+1 \equiv 1 \ , \ 2 \pmod 3$} \\[ 5pt ]
&\text{よって、整数 $n$ について、$n^{\scriptsize{2}}+1$ は $3$ では割り切れない。}
\end{align*}
ある整数の余りから他の数や式の余りを求めるとき、表を利用すると早く簡単に答案を作成できます。やはり合同式を利用すると、文字の定義や式変形がないので、簡素な答案を作成できます。
難関大の2次試験では、合同式を利用して解く問題が出題されているようなので、難関大を志望している人はマスターしておきましょう。
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初級編20題、中級編5題、上級編6題。
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少し難易度の高い教材ですが、難関大を目指す理系志望者なら候補に入れて良いでしょう。
[affi id=60]
さいごにもう一度まとめ
- 整数を商と余りを使って表せるようになろう。
- 整数は余りに注目すると分類できる。ただし、何通りもあるので注意しよう。
- 余りに注目するとき、合同式を利用すると答案作成が簡単。