数列の極限|無限大にも程度の違いがある

数学3

数学3 数列の極限 無限大にも程度の違いがある

今回は数学3「数列の極限」の発散の程度について学習しましょう。数列の極限とは直接関係ありませんが、気分転換に読むと良いでしょう。

極限を取ったとき、無限大に発散する場合は色々あります。どれも発散するのは同じですが、はたして発散の程度も同じなのでしょうか。

無限大に発散する例

n,n2,n3を例に考えてみましょう。

例1

\begin{align*} &\quad n \to \infty \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\text{のとき} \\[ 5pt ] &\quad n^{\scriptsize{2}} \to \infty \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\quad n^{\scriptsize{3}} \to \infty \quad \cdots \text{③} \end{align*}

①~③はどれも無限大に発散しています。しかし、発散の程度は同じではありません。これはグラフを見るとよく分かります。

発散の程度の違い
発散の程度の違い

同じxに対するyの値の移り変わりに違いがあります。累乗の指数が大きくなるにつれて、その値も飛躍的に大きくなります。

また、①~③のことを言葉で言うとすれば、以下のように、異なる言い回しになります。

発散の程度を言葉で言い表す

  • nと同じくらいの∞を1次の無限大
  • 2と同じくらいの∞を2次の無限大
  • 3と同じくらいの∞を3次の無限大

同じ無限大の記号∞を使っていますが、言葉にすれば無限大の程度が異なることが分かります。

無限大の程度の違いを知ろう

無限大の程度が違うことをもっと体感するために、次の極限を考えてみましょう。

例2

\begin{align*} &\displaystyle \lim_{n \to \infty} {\frac{n^{\scriptsize{3}}}{n^{\scriptsize{2}}} } \quad \cdots \text{④} \\[ 10pt ] &\displaystyle \lim_{n \to \infty} {\frac{n^{\scriptsize{2}}}{n^{\scriptsize{3}}} } \quad \cdots \text{⑤} \end{align*}

まず、④式の極限を求めます。

④式の極限

\begin{align*} \displaystyle \lim_{n \to \infty} {\frac{n^{\scriptsize{3}}}{n^{\scriptsize{2}}} } &= \displaystyle \lim_{n \to \infty} n \\[ 10pt ] &= \infty \end{align*}

次に、⑤式の極限を求めます。

⑤式の極限

\begin{align*} \displaystyle \lim_{n \to \infty} {\frac{n^{\scriptsize{2}}}{n^{\scriptsize{3}}} } &= \displaystyle \lim_{n \to \infty} {\frac{1}{n} } \\[ 10pt ] &= 0 \end{align*}

④,⑤式はともに分母と分子が無限大に発散する不定形です。

不定形ではありますが、実際に極限をとると、一方は無限大に発散し、他方は0に収束します。これは、無限大に程度の違いがあり、n3 の方がn2よりも速く無限大になることを示しています。

不定形

\begin{align*} &\quad \frac{\infty}{\infty} \ , \ \infty – \infty \\[ 7pt ] &\text{の形になるものを不定形という。} \end{align*}

無限大の程度の違いを利用しよう

このように同じ無限大に発散するとしても、発散の程度に違いがあることを知っていると、極限値の予想や確認を簡単に行うこともできます。

発散の程度の違いを利用した例

\begin{align*} &\quad \displaystyle \lim_{n \to \infty} {\frac{n^{\scriptsize{2}}-n+2}{2n^{\scriptsize{2}}+3} } \\[ 10pt ] &\text{について、分母、分子の $1$ 次の項と} \\[ 5pt ] &\text{定数項を無視して} \\[ 5pt ] &\quad \displaystyle \lim_{n \to \infty} {\frac{n^{\scriptsize{2}}-n+2}{2n^{\scriptsize{2}}+3} } \ \fallingdotseq \ \displaystyle \lim_{n \to \infty} {\frac{n^{\scriptsize{2}}}{2n^{\scriptsize{2}}} } \\[ 10pt ] &\text{と考えても、ともに同じ極限を得る} \\[ 5pt ] &\text{ことができる。} \end{align*}

1次の項や定数項は、2次の項に比べて無限大の程度が小さいと考えています。その考えをもとに、分母や分子にある1次の項や定数項を無視して、極限を求めます。

不要な項を無視したときの極限

\begin{align*} \displaystyle \lim_{n \to \infty} {\frac{n^{\scriptsize{2}}-n+2}{2n^{\scriptsize{2}}+3} } \ &\fallingdotseq \displaystyle \lim_{n \to \infty} {\frac{n^{\scriptsize{2}}}{2n^{\scriptsize{2}}} } \\[ 10pt ] &= \displaystyle \lim_{n \to \infty} {\frac{1}{2} } \\[ 10pt ] &= \frac{1}{2} \end{align*}

1次の項や定数項を省略せずに、もとの式から極限を求めます。

もとの式での極限

\begin{align*} \displaystyle \lim_{n \to \infty} {\frac{n^{\scriptsize{2}}-n+2}{2n^{\scriptsize{2}}+3} } &= \displaystyle \lim_{n \to \infty} {\cfrac{1-\cfrac{1}{n}+\cfrac{2}{n^{\scriptsize{2}}} }{ 2+\cfrac{3}{n^{\scriptsize{2}}} } } \\[ 10pt ] &= \frac{1}{2} \end{align*}

不要な項を無視しても、もとの式での極限と同じ結果になります。

なお、与式は∞/∞となる不定形ですが、分母と分子を分母の最高次の項で割るのは、無限大の程度の違いを考えているからです。

これまでは何となく式変形をしていたと思います。今後は、無限大の程度の違いを利用したものだと意識しながら式変形できるでしょう。

また、1次の項や定数項を無視するのは、乱暴な感じがするかもしれません。

しかし、もとの式での極限で分かるように、最高次である2次の項で割って極限を取れば、1次の項や定数項は0に収束します。最終的に0に収束することを知っているので、先に省略しても構わないことが分かります。

1次の項や定数項を省略するのは、無限大の程度の違いを知っているからできることです。

さいごに

極限を調べる問題では、以上のように無限大の程度の違いを考えて、極限値の予想や答えの確かめに利用することができます。無限大の程度に違いがあれば、不要な項を省略することもできます。

ただし、乱暴に感じたのは当然で、このことを利用するのは限定的にしておきましょう。便利ではありますが、あくまでも予想や確認にとどめておくことです。間違っても答案として記述しないように気を付けましょう。

極限の予想や確認に便利ではあるが、あくまでも簡易的な予想や確認に利用する程度にしておこう。

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Posted by kiri