式と証明|絶対値を含む不等式の証明について

数学2

数学2 式と証明

絶対値を含む不等式の証明を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

\begin{align*} &\text{不等式} \\[ 5pt ] &\quad \left| a+b \right| \leqq \left| a \right| + \left| b \right| \\[ 7pt ] &\text{を利用して、次の不等式を証明せよ。} \\[ 5pt ] &(1) \quad \left| a-b \right| \leqq \left| a \right| + \left| b \right| \\[ 7pt ] &(2) \quad \left| a-c \right| \leqq \left| a-b \right| + \left| b-c \right| \\[ 7pt ] &(3) \quad \left| a+b+c \right| \leqq \left| a \right| + \left| b \right| + \left| c \right| \end{align*}

絶対値を含む不等式の証明問題です。すでに証明された不等式が与えられています。この結果を利用して、例題(2)の別解と同じ要領で各問を解いていきます。

問(1)の解答・解説

問(1)

\begin{align*} &\text{不等式} \\[ 5pt ] &\quad \left| a+b \right| \leqq \left| a \right| + \left| b \right| \\[ 7pt ] &\text{を利用して、次の不等式を証明せよ。} \\[ 5pt ] &\quad \left| a-b \right| \leqq \left| a \right| + \left| b \right| \end{align*}

与えられた不等式と、証明したい不等式とをよく見比べましょう。どの文字をどのように置き換えれば良いか気付くはずです。

問(1)の解答例

\begin{align*} &\quad \left| a+b \right| \leqq \left| a \right| + \left| b \right| \\[ 7pt ] &\text{について、$b$ を $-b$ に置き換えると} \\[ 5pt ] &\quad \left| a+(-b) \right| \leqq \left| a \right| + \left| -b \right| \\[ 7pt ] &\text{$\left| -b \right|=\left| b \right|$ より} \\[ 5pt ] &\quad \left| a-b \right| \leqq \left| a \right| + \left| b \right| \end{align*}

文字1つだけの単純な置き換えです。特に難しくありません。絶対値の性質③を利用しています。

絶対値の性質③

\begin{equation*} \quad \left| a \right| = \left| -a \right| \end{equation*}

問(2)の解答・解説

問(2)

\begin{align*} &\text{不等式} \\[ 5pt ] &\quad \left| a+b \right| \leqq \left| a \right| + \left| b \right| \\[ 7pt ] &\text{を利用して、次の不等式を証明せよ。} \\[ 5pt ] &\quad \left| a-c \right| \leqq \left| a-b \right| + \left| b-c \right| \end{align*}

問(1)と同じように、2つの不等式をよく見比べます。特に、それぞれの右辺をよく見比べましょう。

問(2)の解答例

\begin{align*} &\quad \left| a+b \right| \leqq \left| a \right| + \left| b \right| \\[ 7pt ] &\text{について、$a$ を $a-b$ に、$b$ を} \\[ 5pt ] &\text{$b-c$ に置き換えると} \\[ 5pt ] &\quad \left| (a-b)+(b-c) \right| \leqq \left| a-b \right| + \left| b-c \right| \\[ 7pt ] &\text{これを整理すると} \\[ 5pt ] &\quad \left| a-c \right| \leqq \left| a-b \right| + \left| b-c \right| \end{align*}

問(2)では、2つの文字a,bをそれぞれ置き換える必要がありました。少し工夫が必要なので難しいかもしれませんが、良問だと思います。

問(3)の解答・解説

問(3)

\begin{align*} &\text{不等式} \\[ 5pt ] &\quad \left| a+b \right| \leqq \left| a \right| + \left| b \right| \\[ 7pt ] &\text{を利用して、次の不等式を証明せよ。} \\[ 5pt ] &\quad \left| a+b+c \right| \leqq \left| a \right| + \left| b \right| + \left| c \right| \end{align*}

問(1),(2)と同じように、2つの不等式をよく見比べます。右辺を見比べると、項が2つから3つに増えています。かなりの工夫が必要です。

問(3)の解答例 1⃣

\begin{align*} &\quad \left| a+b \right| \leqq \left| a \right| + \left| b \right| \\[ 7pt ] &\text{について、$a$ を $a+b$ に、$b$ を} \\[ 5pt ] &\text{$c$ に置き換えると} \\[ 5pt ] &\quad \left| (a+b)+c \right| \leqq \left| a+b \right| + \left| c \right| \\[ 7pt ] &\text{より} \\[ 5pt ] &\quad \left| a+b+c \right| \leqq \left| a+b \right| + \left| c \right| \quad \cdots \text{①} \end{align*}

これまでと同じ要領で絶対値の中の項を置き換えました。左辺は同じになりましたが、右辺が同じになりませんでした。

①式の右辺を見ると、与えられた不等式の左辺があります。与えられた結果をもう一度利用します。

問(3)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \left| a+b+c \right| \leqq \left| a+b \right| + \left| c \right| \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\text{これと $\left| a+b \right| \leqq \left| a \right| + \left| b \right|$ より} \\[ 5pt ] &\quad \left| a+b \right| + \left| c \right| \leqq \left| a \right| + \left| b \right| + \left| c \right| \quad \cdots \text{②} \end{align*}

与えられた不等式の両辺に、0以上の数を加えても大小関係は変わりません。このことを利用して、②式が導かれました。

①式の右辺と、②式の左辺は共通です。このことを利用すれば、①式の左辺と②式の右辺との大小関係を導くことができます。

問(3)の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \left| a+b+c \right| \leqq \left| a+b \right| + \left| c \right| \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \left| a+b \right| + \left| c \right| \leqq \left| a \right| + \left| b \right| + \left| c \right| \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\text{①,②より} \\[ 5pt ] &\quad \left| a+b+c \right| \leqq \left| a \right| + \left| b \right| + \left| c \right| \end{align*}

問(3)も差のつきやすい良問でした。問(3)では、一回の置き換えでは与式を導けないので、右辺だけ、左辺だけと片方ずつ同じになるように段階を踏んでいます。一回で上手く置き換えできなくても、慌てずに段階を踏んでみましょう。

絶対値を含む不等式の証明問題では、例題や演習問題から分かるように、大まかに2種類あります。

絶対値を含む不等式の証明問題のパターン

  • 平方の差をつくって証明する問題
  • 予め与えられた結果を利用して、不等式を証明する問題

特に、与えられた結果を利用する問題は、難易度の高い問題が多く、入試にも頻出なので注意しましょう。

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さいごにもう一度まとめ

  • 根号や絶対値を含む不等式の証明では、左辺の平方と右辺の平方の差をつくろう。
  • 平方の差を整理するとき、平方完成を意識しよう。
  • 絶対値の性質を利用しよう。
  • 絶対値の性質は、多項式の場合、分かりにくいので注意しよう。
  • 絶対値を含む不等式の証明問題では、文字の置き換えて証明することもある。