大学入試|大学入学共通テストのポイント(国語の場合)

大学入試

新しい大学入試 大学入学共通テストの傾向と対策

新しい大学入試は大学入学共通テストと言います。この共通テストでは、国語と数学で記述形式の問題が出題されます。

具体的にどのような問題が出題されるのかを確認してみましょう。

国語と数学の記述式問題は、2025年度以降の導入が見送りになりました。

大学入試センター:大学入学共通テストの記述式問題の導入見送りについて

文部科学省:大学入学共通テストの記述式問題について

ここが変わる大学入学共通テスト

従来のセンター試験では「用意されている選択肢の中から唯一の正解を選び出す」問題が出題されていました。もちろん、このような問題も出題されますが、それだけではありません。

大学入学共通テストでは、「設問が求めている内容を、自分なりにまとめて表現する」問題も出題されるようになります。このような問題は、国語と数学で記述形式の問題という形で出題されます。

先ほども言いましたが、現在のところ、記述式問題の導入は見送りになっています。

ただ、マーク形式であっても、「思考力・判断力・表現力」を評価するための問題であることには変わりません。ですから、難易度的には、記述式レベルを想定しておいた方が無難でしょう。

以降は、記述形式の問題に関する話ではあります。しかし、問題のねらい難易度を知ることができるので、共通テストの対策をする上で無駄になることはありません。

また、二次試験などの記述形式の試験にも通じるところもあるので、全く役に立たないわけではないでしょう。

記述形式の問題が加わることによる変更点(国語の場合)

記述形式の問題が出題されることになり、国語ではいくつか変更点が見られます。

国語の変更点

  • 内容:記述形式の小問が出題(20~30字40~50字80~120字の3問)
  • 時間:80分から100分に変更
  • 評価:小問ごとに4段階、総合で5段階表示(80~120字は1.5倍の重みをつける)

このように変更点がいくつかありますが、いきなり共通テストを実施するのは大学入試センター側も不安です。万全を期すために、試行調査というものが平成29年度から行われています。いわゆるモニター調査です。

大学入試センターでは、新テストの円滑かつ確実な実施に向けて、従前より様々な観点から具体的な検討準備を進めており、平成29年4月には、組織体制の抜本的な強化を図るため、「新テスト実施企画部」を整備しました。今後も新テストに関する検証や試行調査(プレテスト)の実施を通じ、平成32年度からの円滑な導入に向けて取り組んでいきます。

大学入試センターより抜粋

この試行調査で出題された問題は、大学入試センターのサイトで閲覧することができます。問題だけでなく、正答例問題のねらいなども掲載されているので、目を通しておいて損はないでしょう。

なお、令和3年(2021年)1月に行われた共通テストでは、記述式問題は導入されていないので、試験時間は従来通りの80分でした。

国語の変更点を実際の問題で確かめてみましょう。

試行調査から分かるポイント

画像は平成30年度に行われた試行調査の問題です。記述形式の問題で特に注意するのは、解答を記述するにあたっての条件です。この条件を無視すると、全く評価されないので注意が必要です。

この問いでは、資料、文章I、文章IIの3つの文章をそれぞれ読解する必要があります。問題文や資料を短時間で正確に読み取る必要があります。小問(1),(2)では、字数の条件があります。

平成30年度試行調査|国語小問(1)(2)
記述式問題の一例

小問(3)では、字数の条件だけでなく、複数の条件が提示されています。これらを踏まえて解答を記述しなければなりません。

平成30年度試行調査|国語小問(3)
記述式問題の一例

小問(3)では、二文で解答しなければなりません。また、一文目と二文目にそれぞれ書き出しの条件があります。これらを意識しながら、定められた字数でまとめる必要があります。

なお、文章については、著作権を考慮して省略しました。気になる方は公式サイトをご確認下さい。

正答例

小問(3)の正答例は以下のようになります。

小問(3)の正答例

正答例1

話し手が地図上の地点を指さすことで、指示されているのは地図そのものではなく、地図が表している場所であることが聞き手には理解できる。それが理解できるのは、他者の視点に立つ能力があるからである。(95字)

正答例2

地図上の地点を指差して「ここに行きたい」と言った場合、「ここ」が示しているのは地図の実際の場所である。それが理解できるのは、指さした人間の位置に身を置くことで、指さされた人間が指さした人間と同一のイメージをもつことが可能になるからである。(119字)

正答例3

地図上の地点を指差して「ここに駅がある」と言った場合、「ここ」が示しているのは地図に対応している実際の駅である。それが理解できるのは、指さされた人間が指さした人間の視点に立つことで、実際に示したいものを想像するからである。(111字)

正答例は3つ挙げてありました。このように複数の解答が正答となる可能があるので、評価する側にとってはかなり負担になりそうです。

正答の条件

正答の条件(留意点)は以下のようになります。

正答の条件(留意点)

  1. 80字以上、120字以内で書かれていること。
  2. 二つの文に分けて書かれていて、二文目が「それが理解できるのは」で書き始められ、「からである。」で結ばれていること。ただし、二文目が「理解ができるからである。」で結ばれているものは正答の条件2を満たしていないこととなる。
  3. 一文目に、話し手が地図上の地点を示しているということが書かれていること。
  4. 一文目に、話し手が指示しようとする対象が実際の場所だということが書かれていること。
  5. 二文目に、次のいずれかが書かれていること。なお,両方書かれていてもよい。
    • 指差した人間の視点に立つということ。
    • 指差した人間と同一のイメージを共有できるということ。

記述の条件はもちろんですが、要点となる箇所が解答に含まれていることも正答の条件になっています。

国語の記述形式の問題で求められていること

この問題で求められているのは、以下の2つです。

国語の記述式問題で求められていること

  • 分量の多い問題文や資料を短い時間で正確に読み取る読解力
  • 要点を端的にまとめ、与えられた条件を満たしながら相手にわかりやすく伝える記述力

これらはマーク形式の問題を解くだけでは身につきにくい力です。特に、記述力を身に付けるには、日頃から「書く」訓練が必要でしょう。

また、よくよく考えてみると、これらは共通テストに限ったことではなく、二次試験などにも求められる能力です。

さいごに

記述式問題の導入が延期されたことで、試験時間に変更はありませんでした。しかし、これまで以上に「思考力・判断力・表現力」を意識した問題が出題されるでしょう。

実施直後は従来のセンター試験を意識して、そこまで大幅な変化はないかもしれません。それでも少しずつ出題の傾向は変わっていくでしょう。

センター試験では正答が選択肢の中にあったので、「何となく読める」レベルでも対応できました。しかし、そのレベルでは対応できない問題が増えるでしょう。

新傾向の問題にきちんと対応するために、内容を正確に読み取る力を身につける必要があります。さらには、条件を踏まえて、定められた字数で要点をまとめる力も必要です。

読解力や記述力を短期間で習得することはとても難しいです。日頃から自分の考えをアウトプットすることを意識して学習に取り組むことが大切ではないかと思います。

大学入学共通テストの傾向や対策に役立つ書籍

記述力や思考力を鍛えよう

記述力や思考力は、日頃からの訓練の成果です。短期間であれば、コツくらいは掴めるかもしれません。しかし、完全に習得するとなると時間が掛かるでしょう。だからこそ価値があります。

身に付けるのは簡単ではありませんが、育成の仕方を知っておくことは大切です。日常学習の際に、無自覚にこなすのではなく、意識的に取り組むことができるからです。

大学入試を知ろう

仕組みを知らないまま受験するのは、あまり良いことだとは思いません。情報がなければ適切な対策を立てられないからです。

期間や難易度などの情報を知らなければ、中途半端な準備しかできません。また、進学したい大学や学部についての情報がなければ、有名大学に進学できたとしても後悔するかもしれません。

少なくとも高校3年間を準備に費やします。また、自分の将来にも大いに関わります。義務教育ではないので、先生や親任せでなく、自分で行動しなければなりません。後悔しないためにも情報収集をしっかり行いましょう。