複素数と方程式|2つの2次方程式の解の種類の判別について

数学2

2つの2次方程式の解の種類の判別を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

\begin{align*} &\text{$a$ を整数とするとき、$2$ つの $2$ 次方程式} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}-ax+3 = 0 \\[ 7pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}+ax+2a = 0 \\[ 7pt ] &\text{の一方は実数解を、他方は虚数解をもつという。} \\[ 5pt ] &\text{このような $a$ の値をすべて求めよ。} \end{align*}

問題文を注意深く読み、与式をよく観察しましょう。2つの2次方程式の係数や定数項には、文字aが含まれています。

問の解答・解説

問題文には、「2つの2次方程式の一方は実数解を、他方は虚数解をもつ」とあります。ここで注意したいのは、一方や他方がどの方程式を指し示しているかです。

特定の方程式を指して一方と言っているわけではありません。ですから、1番目の方程式を一方とすれば、2番目の方程式が他方になります。もちろん、その逆も言えます。そこで、2つの2次方程式がもつ解を分類してみます。

2つの2次方程式がもつ解の分類

  1. (1番目,2番目)=(実数解,実数解)
  2. (1番目,2番目)=(実数解,虚数解)
  3. (1番目,2番目)=(虚数解,実数解)
  4. (1番目,2番目)=(虚数解,虚数解)

題意を満たすのは、2,3番目の組合せのときです。このことを踏まえて、判別式の値の条件を考えましょう。

問の解答例 1⃣

\begin{align*} &\quad x^{\scriptsize{2}}-ax+3 = 0 \\[ 7pt ] &\text{の判別式を $D_{1}$ とし、} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}+ax+2a = 0 \\[ 7pt ] &\text{の判別式を $D_{2}$ とすると} \\[ 5pt ] &\quad D_{1} = \left(-a \right)^{\scriptsize{2}}-4 \cdot 1 \cdot 3 \\[ 7pt ] &\qquad =a^{\scriptsize{2}}-12 \\[ 7pt ] &\qquad = \left(a-2 \sqrt{3} \right) \left(a+2 \sqrt{3} \right) \\[ 10pt ] &\quad D_{2} = a^{\scriptsize{2}}-4 \cdot 1 \cdot 2a \\[ 7pt ] &\qquad =a^{\scriptsize{2}}-8a \\[ 7pt ] &\qquad = a \left(a-8 \right) \end{align*}

2つの方程式の一方だけが虚数解をもてば良いことに注目します。とりあえず、虚数解をもつときの条件から、文字aの値の範囲ををそれぞれ求めます。

問の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\qquad = \left(a-2 \sqrt{3} \right) \left(a+2 \sqrt{3} \right) \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\qquad = a \left(a-8 \right) \\[ 7pt ] &\text{$D_{1} \lt 0$ から} \\[ 5pt ] &\quad \left(a-2 \sqrt{3} \right) \left(a+2 \sqrt{3} \right) \lt 0 \\[ 5pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad -2 \sqrt{3} \lt a \lt 2 \sqrt{3} \quad \cdots \text{①} \\[ 5pt ] &\text{$D_{2} \lt 0$ から} \\[ 5pt ] &\quad a \left(a-8 \right) \lt 0 \\[ 5pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad 0 \lt a \lt 8 \quad \cdots \text{②} \end{align*}

それぞれの方程式が虚数解をもつときの定数aの値の範囲を導くことができました。

ここで間違いが多いのが、虚数解をもつ範囲の和集合を求めることです。単純に和集合を求めたり、共通部分を求めたりしないことです。

和集合であれば共通部分も含むことに気付かなければなりません。共通部分では、2つの方程式はともに虚数解をもちます。

一方だけが虚数解をもつとき、他方は実数解をもちます。ともに虚数解をもつことはないので、共通部分を除外しなければなりません。一方だけが虚数解をもつ範囲だけを探しましょう。

問の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad -2 \sqrt{3} \lt a \lt 2 \sqrt{3} \quad \cdots \text{①} \\[ 5pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad 0 \lt a \lt 8 \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\text{ここで、$2$ つの方程式の一方だけが虚数解を} \\[ 5pt ] &\text{もつので、①と②の一方だけが成り立つ $a$ の} \\[ 5pt ] &\text{範囲を求めれば良い。} \\[ 5pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad -2 \sqrt{3} \lt a \leqq 0 \ , \ 2 \sqrt{3} \leqq a \lt 8 \\[ 5pt ] &\text{求める整数 $a$ の値は} \\[ 5pt ] &\quad a=-3 \ , \ -2 \ , \ -1 \ , \ 0 \ , \ 4 \ , \ 5 \ , \ 6 \ , \ 7 \end{align*}

整数であるaの値を求めるので、範囲を求めて終わりにしないように注意しましょう。

平方根の値は概数でも良いので、自分で調べることができるようにしておきましょう。

平方根の値の求め方

\begin{align*} &\quad 2 \sqrt{3} = \sqrt{12} \\[ 7pt ] &\text{より} \\[ 5pt ] &\quad \sqrt{9} \lt \sqrt{12} \lt \sqrt{16} \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad 3 \lt 2\sqrt{3} \lt 4 \\[ 7pt ] &\text{また、これの辺々に $-1$ を掛けると} \\[ 5pt ] &\quad -4 \lt -2\sqrt{3} \lt -3 \end{align*}

問の別解

上述の解答例はスマートな解法ですが、少し分かりにくいかもしれません。

解の種類を分類した(2)と(3)を求めた方が直接的で分かりやすいかもしれません。

2つの2次方程式がもつ解の分類

  1. (1番目,2番目)=(実数解,実数解)
  2. (1番目,2番目)=(実数解,虚数解)
  3. (1番目,2番目)=(虚数解,実数解)
  4. (1番目,2番目)=(虚数解,虚数解)

判別式を求めるところまでは上述の解答例と同じです。それ以降は、場合分けします。

共通範囲を求めたり、範囲を合わせたりするとき、不等式だけでなく、数直線で図解しながら作業しましょう。

問の別解例

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\qquad = \left(a-2 \sqrt{3} \right) \left(a+2 \sqrt{3} \right) \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\qquad = a \left(a-8 \right) \\[ 7pt ] &\text{条件から} \\[ 5pt ] &\quad ( \ D_{1} \geqq 0 \ \text{かつ} \ D_{2} \lt 0 \ ) \quad \text{または} \quad ( \ D_{1} \lt 0 \ \text{かつ} \ D_{2} \geqq 0 \ ) \\[ 5pt ] &\text{が成り立てば良い。} \\[ 5pt ] &[1] \ D_{1} \geqq 0 \ \text{かつ} \ D_{2} \lt 0 \ \text{のとき} \\[ 5pt ] &\quad \left(a-2 \sqrt{3} \right) \left(a+2 \sqrt{3} \right) \geqq 0 \quad \text{かつ} \quad a \left(a-8 \right) \lt 0 \\[ 7pt ] &\text{より} \\[ 5pt ] &\quad \left(a \leqq -2 \sqrt{3} \ \text{または} \ 2 \sqrt{3} \leqq a \right) \quad \text{かつ} \quad 0 \lt a \lt 8 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad 2 \sqrt{3} \leqq a \lt 8 \\[ 7pt ] &\text{$a$ は整数であるので} \\[ 5pt ] &\quad a=4 \ , \ 5 \ , \ 6 \ , \ 7 \\[ 7pt ] &[2] \ D_{1} \lt 0 \ \text{かつ} \ D_{2} \geqq 0 \ \text{のとき} \\[ 5pt ] &\quad \left(a-2 \sqrt{3} \right) \left(a+2 \sqrt{3} \right) \lt 0 \quad \text{かつ} \quad a \left(a-8 \right) \geqq 0 \\[ 7pt ] &\text{より} \\[ 5pt ] &\quad -2 \sqrt{3} \lt a \lt 2 \sqrt{3} \quad \text{かつ} \quad \left(a \leqq 0 \ \text{または} \ 8 \leqq a \right) \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad -2 \sqrt{3} \lt a \leqq 0 \\[ 5pt ] &\text{$a$ は整数であるので} \\[ 5pt ] &\quad a=-3 \ , \ -2 \ , \ -1 \ , \ 0 \\[ 5pt ] &[1] \ , \ [2] \ \text{から、条件を満たす整数 $a$ の値は} \\[ 5pt ] &\quad a=-3 \ , \ -2 \ , \ -1 \ , \ 0 \ , \ 4 \ , \ 5 \ , \ 6 \ , \ 7 \end{align*}

答案が長くなりましたが、場合分けした方が取り組みやすくなります。

この単元で混乱しやすいのは、複数の条件の関係についてです。これらの条件の関係が、「かつ」の関係なのか「または」の関係なのかをきちんと考えることが大切です。

また、範囲の共通部分や和集合を求める際には、数直線を上手に使うことも大切です。

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さいごにもう一度まとめ

  • 解の種類の話では、判別式を意識しよう。
  • 2次方程式と判別式には、1対1の対応関係がある。
  • 2つ以上の条件があるとき、「かつ」と「または」に注意しよう。
  • 2つの条件が同時に成り立つ必要があれば「かつ」、一方だけで良ければ「または」