積分法|不定積分チートシート

数学3

不定積分チートシート

関数の特徴に注目しよう

三角関数や指数関数などの関数を苦手にしている人は意外と多いです。そのため、これらの積分の計算も難しく感じているようです。

積分の計算を苦手に感じるのは、積分のやり方が決まっているケースがあるにもかかわらず、それらをまだ覚えきれていないのが原因かもしれません。

複雑な関数になっても積分のやり方が決まっているケースは意外と多く、それは関数の特徴に注目することで分類できます。関数をよく観察して、特徴ごとにどのように積分の計算をすれば良いかを覚えましょう。

教科書や参考書の例題が基本的なケースなので、例題をマスターすることから始めよう。

積分の計算に必要な手段

複雑な関数の不定積分(または定積分)の計算では、主に2つの手段を使います。それぞれの計算のやり方を単純な関数を使って確実にマスターしておきましょう。

積分に必要な手段は主に2つ

  • 部分積分
  • 置換積分

部分積分置換積分を使って積分の計算をしますが、関数を見てこれらを使い分けます。

三角関数が入っているか

関数を見て最初に考えることは「三角関数が入っているか」です。

三角関数のみでできているか

三角関数が入っていれば、その関数が「三角関数のみでできているか」を考えます。

三角関数のみでできていれば、以下の3つのパターンのどれに当てはまるかを考えます。ただし、関数によっては、2倍角や半角の公式、または積・和の公式を利用して式を変形する必要があります。

三角関数のみの計算パターン

\begin{align*} &\bullet \quad \frac{f'(x)}{f(x)} \ \text{の形} \quad \cdots EX.1 \\[ 10pt ] &\bullet \quad t = \sin x \ \text{または} \ t = \cos x \ \text{とおく} \quad \cdots EX.2 \\[ 10pt ] &\bullet \quad t = \tan {\frac{x}{2}} \ \text{とおく} \quad \cdots EX.3 \end{align*}

このような計算をする不定積分には、以下のようなものがあります。

三角関数のみの不定積分の例

\begin{align*} &EX.1 \quad \int \tan x \ dx \\[ 10pt ] &EX.2 \quad \int {\sin^{\tiny{3}} x \ \cos x} \ dx \\[ 10pt ] &EX.3 \quad \int {\frac{1}{\cos x}} \ dx \\[ 10pt ] \end{align*}

EX.3はEX.2のパターンでも計算できる(式変形が必要)ので、得意な方で計算しよう。

三角関数のみでできていなければ、三角関数と他の関数との組合せになっていると考えられます。もし、関数が以下のような形になっていれば、部分積分を使って計算します。

三角関数のみではない計算パターン

\begin{align*} &\quad ({\scriptsize \text{三角関数} }) \times f(x) \\[ 10pt ] &\text{の形であれば、部分積分} \quad \cdots EX.4 \end{align*}

このような計算をする不定積分には、以下のようなものがあります。

三角関数のみではない不定積分の例

\begin{align*} &EX.4 \\[ 10pt ] &\quad \int {(3x+1) \sin x} \ dx \\[ 10pt ] &\quad \int {e^{x} \cos 2x} \ dx \end{align*}

指数関数や対数関数が入っているか

三角関数が入っていなければ、「指数関数対数関数が入っているか」を考えます。

指数関数や対数関数が入っていれば、以下の2つのパターンのどちらに当てはまるかを考えます。

指数関数や対数関数がある場合の計算パターン

\begin{align*} &\bullet \quad \frac{f'(x)}{f(x)} \ \text{の形} \quad \cdots EX.5 \\[ 10pt ] &\bullet \quad ({\scriptsize \text{指数関数} }) \times f(x) \ \text{または} \ ({\scriptsize \text{対数関数} }) \times f(x) \\[ 5pt ] &\qquad \text{の形であれば、部分積分} \quad \cdots EX.6 \end{align*}

このような計算をする不定積分には、以下のようなものがあります。

指数関数や対数関数がある不定積分の例

\begin{align*} &EX.5 \quad \int { \frac{e^{x}}{e^{x} + 1} } \ dx \\[ 10pt ] &EX.6 \quad \int {x^{\tiny{3}} \log x} \ dx \end{align*}

根号が入っているか

三角関数や指数・対数関数が入っていなければ、「根号が入っているか」を考えます。

根号が入っていれば、以下の4つのパターンのどれに当てはまるかを考えます。

根号がある場合の計算パターン

\begin{align*} \bullet \quad &\sqrt{({\scriptsize \text{1次式}})} \ \text{のとき} \\[ 5pt ] &\quad \sqrt{({\scriptsize \text{1次式}})} = t \ \text{または} \ {\scriptsize \text{1次式}} = t \ \text{とおく} \quad \cdots EX.7 \\[ 10pt ] \bullet \quad &\sqrt{({\scriptsize \text{2次式}})} \ \text{のとき} \\[ 5pt ] &\quad {\scriptsize \text{2次式}} = t \ \text{とおく} \quad \cdots EX.8 \\[ 10pt ] \bullet \quad &\sqrt{({\scriptsize \text{2次式}})} = t \ \text{とおく} \quad \cdots EX.9 \\[ 10pt ] \bullet \quad &x + \sqrt{({\scriptsize \text{2次式}})} = t \ \text{とおく} \quad \cdots EX.10 \end{align*}

このような計算をする不定積分には、以下のようなものがあります。

根号がある不定積分の例

\begin{align*} &EX.7 \quad \int { \frac{1}{ \sqrt{x} – 1 } } \ dx \\[ 10pt ] &EX.8 \quad \int { x \sqrt{ x^{ \tiny{2} } -3 } } \ dx \\[ 10pt ] &EX.9 \quad \int { \frac{dx}{ x \sqrt{ x^{\tiny{2}} +1 } } } \\[ 10pt ] &EX.10 \quad \int { \frac{dx}{ \sqrt{ x^{\tiny{2}} + 4 } } } \end{align*}

分数の形になっているか

三角関数や指数・対数関数が入っておらず、さらに根号が入っていなければ、「分数の形になっているか」を考えます。

分数の形になっていれば、以下のパターンに当てはまるかを考えます。

分数の形の計算パターン

分母を因数分解して、部分分数に分解する。

ただし、(分子の次数)>(分母の次数) のときは、まず分子の次数下げをする。

$\cdots EX.11 \ , \ EX.12$

このような計算をする不定積分には、以下のようなものがあります。

分数の形の不定積分の例

\begin{align*} &EX.11 \quad \int { \frac{x}{ x^{\tiny{2}} +x -6 } } \ dx \\[ 10pt ] &EX.12 \quad \int { \frac{ 3x^{\tiny{2}} -2x + 4 }{x} } \ dx \end{align*}

まとめ

関数の特徴に注目して不定積分のやり方を分類すると、以下のようにまとめることができます。

不定積分チートシート
  1. 三角関数が入っているか
    • YES
      三角関数のみでできているか
      • YES
        • $\frac{f'(x)}{f(x)}$ の形
        • $t = \sin x$ または $t = \cos x$ とおく
        • $t = \tan {\frac{x}{2}}$ とおく
      • NO
        (三角関数) $\times \ f(x)$ の形であれば、部分積分
    • NO
      「指数関数や対数関数が入っているか」へ
  2. 指数関数や対数関数が入っているか
    • YES
      • $\frac{f'(x)}{f(x)}$ の形
      • (指数関数) $\times \ f(x)$ または (対数関数) $\times \ f(x)$ の形であれば、部分積分
    • NO
      「根号が入っているか」へ
  3. 根号が入っているか
    • YES
      • $\sqrt{({\scriptsize \text{1次式}})}$ のとき $\sqrt{({\scriptsize \text{1次式}})} = t \ \text{または} \ {\scriptsize \text{1次式}} = t$ とおく
      • $\sqrt{({\scriptsize \text{2次式}})}$ のとき $\quad {\scriptsize \text{2次式}} = t$ とおく
      • $\sqrt{({\scriptsize \text{2次式}})} = t$ とおく
      • $x + \sqrt{({\scriptsize \text{2次式}})} = t$ とおく
    • NO
      「分数の形になっているか」へ
  4. 分数の形になっているか
    • YES
      分母を因数分解して、部分分数に分解する。
      ただし、(分子の次数)>(分母の次数) のときは、まず分子の次数下げをする。

飲み込みの速い人ならば、頭の中で自然と整理してしまうので必要はないでしょう。しかし、要領があまり良くないと思っている人であれば、このフローチャートが指針となるかもしれません。

初めのうちは面倒だと思うかもしれませんが、定石となる思考法を学べるのでマスターしておいて損はありません

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