積分法|不定積分チートシート
関数の特徴に注目しよう
三角関数や指数関数などの関数を苦手にしている人は意外と多いです。そのため、これらの積分の計算も難しく感じているようです。
積分の計算を苦手に感じるのは、積分のやり方が決まっているケースがあるにもかかわらず、それらをまだ覚えきれていないのが原因かもしれません。
複雑な関数になっても積分のやり方が決まっているケースは意外と多く、それは関数の特徴に注目することで分類できます。関数をよく観察して、特徴ごとにどのように積分の計算をすれば良いかを覚えましょう。
教科書や参考書の例題が基本的なケースなので、例題をマスターすることから始めよう。
積分の計算に必要な手段
複雑な関数の不定積分(または定積分)の計算では、主に2つの手段を使います。それぞれの計算のやり方を単純な関数を使って確実にマスターしておきましょう。
積分に必要な手段は主に2つ
- 部分積分
- 置換積分
部分積分や置換積分を使って積分の計算をしますが、関数を見てこれらを使い分けます。
三角関数が入っているか
関数を見て最初に考えることは「三角関数が入っているか」です。
三角関数のみでできているか
三角関数が入っていれば、その関数が「三角関数のみでできているか」を考えます。
三角関数のみでできていれば、以下の3つのパターンのどれに当てはまるかを考えます。ただし、関数によっては、2倍角や半角の公式、または積・和の公式を利用して式を変形する必要があります。
三角関数のみの計算パターン
このような計算をする不定積分には、以下のようなものがあります。
三角関数のみの不定積分の例
EX.3はEX.2のパターンでも計算できる(式変形が必要)ので、得意な方で計算しよう。
三角関数のみでできていなければ、三角関数と他の関数との組合せになっていると考えられます。もし、関数が以下のような形になっていれば、部分積分を使って計算します。
三角関数のみではない計算パターン
このような計算をする不定積分には、以下のようなものがあります。
三角関数のみではない不定積分の例
指数関数や対数関数が入っているか
三角関数が入っていなければ、「指数関数や対数関数が入っているか」を考えます。
指数関数や対数関数が入っていれば、以下の2つのパターンのどちらに当てはまるかを考えます。
指数関数や対数関数がある場合の計算パターン
このような計算をする不定積分には、以下のようなものがあります。
指数関数や対数関数がある不定積分の例
根号が入っているか
三角関数や指数・対数関数が入っていなければ、「根号が入っているか」を考えます。
根号が入っていれば、以下の4つのパターンのどれに当てはまるかを考えます。
根号がある場合の計算パターン
このような計算をする不定積分には、以下のようなものがあります。
根号がある不定積分の例
分数の形になっているか
三角関数や指数・対数関数が入っておらず、さらに根号が入っていなければ、「分数の形になっているか」を考えます。
分数の形になっていれば、以下のパターンに当てはまるかを考えます。
分数の形の計算パターン
分母を因数分解して、部分分数に分解する。
ただし、(分子の次数)>(分母の次数) のときは、まず分子の次数下げをする。
$\cdots EX.11 \ , \ EX.12$
このような計算をする不定積分には、以下のようなものがあります。
分数の形の不定積分の例
まとめ
関数の特徴に注目して不定積分のやり方を分類すると、以下のようにまとめることができます。
- 三角関数が入っているか
- YES
三角関数のみでできているか- YES
- $\frac{f'(x)}{f(x)}$ の形
- $t = \sin x$ または $t = \cos x$ とおく
- $t = \tan {\frac{x}{2}}$ とおく
- NO
(三角関数) $\times \ f(x)$ の形であれば、部分積分
- YES
- NO
「指数関数や対数関数が入っているか」へ
- YES
- 指数関数や対数関数が入っているか
- YES
- $\frac{f'(x)}{f(x)}$ の形
- (指数関数) $\times \ f(x)$ または (対数関数) $\times \ f(x)$ の形であれば、部分積分
- NO
「根号が入っているか」へ
- YES
- 根号が入っているか
- YES
- $\sqrt{({\scriptsize \text{1次式}})}$ のとき $\sqrt{({\scriptsize \text{1次式}})} = t \ \text{または} \ {\scriptsize \text{1次式}} = t$ とおく
- $\sqrt{({\scriptsize \text{2次式}})}$ のとき $\quad {\scriptsize \text{2次式}} = t$ とおく
- $\sqrt{({\scriptsize \text{2次式}})} = t$ とおく
- $x + \sqrt{({\scriptsize \text{2次式}})} = t$ とおく
- NO
「分数の形になっているか」へ
- YES
- 分数の形になっているか
- YES
分母を因数分解して、部分分数に分解する。
ただし、(分子の次数)>(分母の次数) のときは、まず分子の次数下げをする。
- YES
飲み込みの速い人ならば、頭の中で自然と整理してしまうので必要はないでしょう。しかし、要領があまり良くないと思っている人であれば、このフローチャートが指針となるかもしれません。
初めのうちは面倒だと思うかもしれませんが、定石となる思考法を学べるのでマスターしておいて損はありません。
Recommended books
微分・積分を基本から学習できる教材です。まずは参考書3冊。
オススメその1-『崖っぷちシリーズ 数学3の微分積分の検定外教科書 改訂第三版』
ボリューム満点なので、辞書的に利用すると良い教材です。
考え方や解き方を載せている教材は多いですが、どういう解法を選択すれば良いかという視点も解説されています。受験生にとってはありがたい教材です。
オススメその2-『マンガでわかる微分積分 微積ってなにをしているの?どうして教科書はわかりにくいの?』
文字ばかりの参考書が苦手な人向け。マンガと言うよりも挿絵に近い感じですが、イメージを掴むには良いでしょう。
オススメその3-『使い道がわかる微分積分 物理屋が贈る数学講義』
物理でも微積を利用しますが、物理屋さんが微分・積分を丁寧に解説してくれています。数式や計算の前に、基本的な概念から学習できます。
次は問題集を紹介。どれも有名な教材なので、自分に合った1冊を仕上げましょう。
オススメその4-『数学3 基礎問題精講』
コンパクトに収まっているので手回しの良い教材です。ただし、基礎と言っても入試基礎なので注意しましょう。
オススメその5-『1対1対応の演習/数学3(微積分編)新訂版』
こちらも『数学3 基礎問題精講』と同レベル帯の問題集です。解説の分かりやすさで選ぶと良いでしょう。
オススメその6-『微積分/基礎の極意』
難関大なら上の2冊よりもこちらか『数学3 標準問題精講』の方が良いかもしれません。