式と証明|二項定理の利用について

今回は二項定理の利用について学習しましょう。二項定理を式の展開に用いながら、他の数量についても考えます。
どちらかと言うと、記述形式の試験に出題されるような内容なので、少し難しく感じるかもしれません。しかし、二項定理の式の使い方を覚えれば、それほど難しくありません。完答を目指して取り組みましょう。
二項定理の利用について
二項定理を利用する問題は、主に2パターンあります。
二項定理を利用する問題は主に2パターン
- 桁に関する問題
- 余りに関する問題
桁に関する問題として、例えば以下のような問題が出題されます。
例題1(桁に関する問題)
101100 の 下位 5 桁を求めよ。
流石に101100を素直に計算するのは大変です。このようなときに二項定理を利用します。
また、余りに関する問題として、たとえば以下のような問題が出題されます。
例題2(余りに関する問題)
2945 を 900 で割った余りを求めよ。
こちらも2945を素直に計算した後に、900で割るのは現実的ではありません。このようなときにも二項定理を利用します。
実は似たようなことは、中学数学や数学1ですでに学習しています。たとえば、1012の計算です。そのまま計算しようと思えばできますが、少し工夫すると暗算できます。
工夫して計算する
二項定理を利用する問題でも、これと同じ発想で解きます。
数だけの計算では、なぜか公式を使わずに筆算しがちです。しかし、公式に当てはまりさえすれば、数や文字に関係なく公式を使うことは全く問題ありません。展開に限らず、因数分解でもそうです。
工夫して計算する
因数分解すると、計算が一歩後退するように感じるかもしれません。しかし、筆算よりも遥かに簡単に計算できるときもあります。
このようなことが二項定理でもできます。そのことをここでは学習します。
例題の解答・解説
例題を通して、どのように二項定理を利用するのかを確認してみましょう。
例題1の解答・解説
例題1(桁に関する問題)
101100 の 下位 5 桁を求めよ。
例題1は、桁に関する問題です。二項定理を利用するので、二項式で表す必要があります。与式を二項式に変形します。
例題1の解答例 1⃣
桁を考えるとき、100の累乗よりも10の累乗の方が扱いやすいです。このことを考慮して変形しておきましょう。
また、102は、二項式において2番目の項にしておきましょう。
その理由は、組合せの添字と累乗の指数との対応関係を考えたとき、1番目の項にしたときに比べて、多少は記述ミスを減らせるからです。それに、1は何乗しても1なので、指数のミスは気になりません。しかし、102の指数を間違うと大変なことになります。
桁に関する問題では、10の累乗を利用しよう。
二項式に変形できたので、二項定理を利用して展開します。
例題1の解答例 2⃣
展開した後は、下位5桁の数を求めれば良いので、下位5桁に影響する項と影響しない項を調べます。
例題1の解答例 3⃣
104は5桁の数です。106になると7桁の数になるので、下5桁に影響しません。このことを考慮すると、展開式の4項目以降には、必ず106が含まれるので、下位5桁に影響を与えない項となります。
展開式の4項目以降は必要ないと確実に分かるので、文字kを使ってまとめておきます。そうすると展開式を簡潔に表すことができます。このような処理をするためには、102を2番目の項にしておかないとかなり大変です。
必要のない項は文字でまとめてしまおう。
1~3項目を整理してみると、下位5桁に関係する項は1,2番目の項だと分かります。
例題2の解答・解説
例題2(余りに関する問題)
2945 を 900 で割った余りを求めよ。
例題2は、余りに関する問題です。900が302であることに注目します。
二項定理が利用できるように、29を二項式(30-1)に変形します。30という共通の数が出てきます。
例題2の解答例 1⃣
組合せの添字と累乗の指数とが揃うように、30を2番目の項にしておきます。
二項式に変形できたので、二項定理を利用して展開します。
例題2の解答例 2⃣
2945を900で割るということは、展開式を900で割るということです。
展開式は多項式なので、各項をそれぞれ900で割り算することになります。このとき、900で割り切れる項と割り切れない項とがでてきます。
900で割り切れる項には、900、言い換えると302が含まれるはずです。それに対して、900で割り切れない項には、302が含まれないので余りが出てきます。これらを調べて展開式を変形します。
例題2の解答例 3⃣
展開式の3項目以降には、必ず302が含まれることに注目します。3項目以降の各項は、必ず900の倍数となるので、3項目以降をひとまとめにしておきます。
302を含む項と含まない項とを区別することができました。しかし、ここで答えを急いではいけません。
1349は900よりも大きい数です。1349は900で割ったときの余りではないこと注意しましょう。
例題2の解答例 4⃣
1349を900で割ると、商が1で余りが449となります。さらに整理すると、解答例4⃣の最後の式になります。
この式が表すのは「2945を900で割った商はk+1で、余りは449になる」ということです。余りに関する問題では、最後で間違える人が多いので気をつけましょう。
余り<割る数となる。「割られる数=割る数×商+余り」の形で表そう。
次は、より実践的な問題を解いてみましょう。