式と証明|多項定理について

数学2

数学2 式と証明

今回は、多項定理について学習しましょう。

二項定理と同じように、多項定理も式の展開に関する定理です。この定理を利用すれば、展開後の式を求めることができます。

どちらかと言うと、展開式を求める問題ではなく、特定の項における係数を求める問題がよく出題されます。

考え方は二項定理に準ずるので、多項定理のことを理解できなければ、一旦、二項定理の方へ戻ってみると良いでしょう。

多項定理について

多項定理は、二項定理における二項式を多項式に対して一般化したものです。多項式であることから、複数の項をもつ式を展開します。

多項式を展開することを考えると、かなり不安になるかもしれませんが、そこまで心配することはありません。高校数学では、多項定理は三項式の展開に関するものとして学習します。

また、展開式よりも一般項をどのように表すかに注目して学習します。

多項定理における一般項

\begin{align*} &\text{$( a+b+c )^{\scriptsize{n}}$ の一般項は} \\[ 5pt ] &\quad \frac{n!}{p!q!r!} a^{\scriptsize{p}} \ b^{\scriptsize{q}} \ c^{\scriptsize{r}} \\[ 10pt ] &\text{ただし、$p \ , \ q \ , \ r$ は整数で} \\[ 5pt ] &\quad p \geqq 0 \ , \ q \geqq 0 \ , \ r \geqq 0 \\[ 7pt ] &\quad p + q + r = n \end{align*}

係数は階乗を用いて表されていますが、これは組合せの考え方を利用して導出されているからです。そのことを確認してみましょう。

多項定理の一般項の導出

多項式a+b+cは3つの項からなる式です。この多項式をn乗したときの展開式を考えます。

展開するには、n個の多項式a+b+cを乗算します。

多項式の展開

\begin{align*} &(a+b+c)^{\scriptsize{n}} \\[ 7pt ] = \ &(a+b+c) \times (a+b+c) \times (a+b+c) \times \cdots \cdots \times (a+b+c) \end{align*}

この計算では、n個のカッコ内から、それぞれa,b,cのいずれかを取り出します。そして、それらを掛け合わせて和を求めます。そうすることで、多項式をn乗したときの展開式を導くことができます。

また、一般項の係数は、n個のカッコ内からaをp個、bをq個、cをr個選ぶ場合の数となります。このときの場合の数の求め方は2通りあります。

カッコ内の項の選び方

  • 組合せを考えた場合の数
  • 同じものを含む順列を考えた場合の数

組合せを考えた場合の数は以下のようになります。

組合せによる場合の数 1⃣

$n$ 個の $(a+b+c)$ から $a$ を取り出す $p$ 個の選び方は

\begin{align*} \quad {}_n \mathrm{ C }_p \quad \text{(通り)} \end{align*}

残りの $(n-p)$ 個の $(a+b+c)$ から $b$ を取り出す $q$ 個の選び方は

\begin{align*} \quad {}_{n-p} \mathrm{ C }_q \quad \text{(通り)} \end{align*}

残りの $(n-p-q)$ 個の $(a+b+c)$ からすべて $c$ を取り出す選び方は

\begin{align*} \quad {}_{n-p-q} \mathrm{ C }_{n-p-q} = 1 \quad \text{(通り)} \end{align*}

であるので、$(a+b+c)^{\scriptsize{n}}$ の係数は

\begin{align*} \quad {}_n \mathrm{ C }_p \times {}_{n-p} \mathrm{ C }_q \times 1 \quad \text{(通り)} \end{align*}

この場合の数を整理すると、以下のようになります。

組合せによる場合の数 2⃣

\begin{align*} &{}_n \mathrm{ C }_p \times {}_{n-p} \mathrm{ C }_q \times 1 \\[ 10pt ] = \ &\frac{n!}{p!(n-p)!} \cdot \frac{(n-p)!}{q!(n-p-q)!} \\[ 10pt ] = \ &\frac{n!}{p!q!(n-p-q)!} \\[ 10pt ] = \ &\frac{n!}{p!q!r!} \quad ( \because \ n-p-q = r) \end{align*}

これが一般項の係数になる。

これが一般項の係数となります。同じものを含む順列で考えた場合であれば、式を整理することもなく一発で導出することができます。

同じものを含む順列による場合の数

$n$ 個のうち $a$ が$p$ 個、$b$ が $q$ 個、$c$ が $r$ 個あるときの順列の総数は

\begin{align*} \quad \frac{n!}{p!q!r!} \quad \text{(通り)} \end{align*}

次は、多項定理を扱った問題を実際に解いてみましょう。