式と証明|不等式の証明について(基本)
今回は不等式の証明について学習しましょう。不等式の証明では、大小関係があることを利用して証明します。等式の証明よりも方針が分かりやすいので、コツを掴めば扱いやすいでしょう。
不等式の証明についての考え方やその方法
不等式の証明で扱われる式
不等式は、基本的に左辺と右辺に大小関係のある式です。たとえば、不等式は以下のような式です。
\begin{align*}
&\quad \frac{a}{1+a} \gt \frac{b}{1+b} \\[ 10pt ]
&\quad \bigl( a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}} \bigr) \bigl( x^{\scriptsize{2}}+y^{\scriptsize{2}} \bigr) \geqq \bigl( ax+by \bigr)^{\scriptsize{2}} \\[ 10pt ]
&\quad a^{\scriptsize{2}}+3b^{\scriptsize{2}} \geqq 3ab
\end{align*}
不等式によっては、大小関係だけでなく、両辺が等しい場合もあります。この場合、等号が成り立つ場合を示す必要があります。
証明でよくある間違い
等式や不等式の証明について、勘違いをしている人がいます。たとえば、等式を証明する問題で、与式(等式)をそのまま用いて証明する人がいます。これは致命的な間違いです。
問題「$A=B$ であることを証明せよ。」
(証明)
$A=B$
より、(左辺を変形して)
$B=B$
よって、等式は成り立つ。
等式を用いるということは、両辺が等しいということです。問題では「与式の等式が成り立つかどうか分からない。だから実際に調べてほしい」と言われているのです。もとから成り立っている等式を用いるのは、等式の証明にはなりえません。
与式の等式が成り立つのは確定しています。しかし、式だけなので、実際に本当かどうかは分かりません。ですから、左辺と右辺が等しい、つまり等式が成り立つことを実際に見せてあげるのです。そのため、証明の段階では、左辺と右辺はともに等しいかどうか分からないものとして扱う必要があるのです。
分かりやすい等式の証明を例に挙げましたが、他の証明問題でも基本的なスタンスは同じです。たとえ結論が成り立つとしても、それを実際に示してあげることが大切だということを忘れないようにしましょう。
不等式の基本的な証明のやり方
不等式であれば、与式のような大小関係になるのは確定しています。しかし、証明ではその大小関係が分からないものとして扱います。実際に計算してみて、与式通りの大小関係があることを示す必要があります。
そのために大小関係があることを利用します。たとえば、不等式 A > B を証明する場合、左辺 A の方が右辺 B よりも大きいことが分かります。ですから、左辺から右辺を引いた差を求めると、その差は必ず0より大きくなるはずです。
(左辺)>(右辺) (証明したいこと)
⇒左辺の方が右辺よりも大きくなるはず。
⇒ (左辺)-(右辺)を計算すると、(左辺)-(右辺)>0となるはず。
⇒左辺と右辺の大小を比べよう。
これを逆にして、証明では
左辺と右辺の大小を比べる。
⇒(左辺)-(右辺)を計算して、その値を調べると(左辺)-(右辺)>0
⇒よって、左辺の方が右辺よりも大きくなる。
⇒したがって、(左辺)>(右辺)
以上のことから、不等式を証明するには、左辺と右辺の大小を比較し、左辺と右辺の差が0より大きい(または0以上となる)ことを実際に示せば良いことが分かります。
大小を比較するために、差をつくる
$A \gt B \ \Longleftrightarrow \ A-B \gt 0$
証明問題では、結論が予め分かっています。その結論が正しいことを実際に示してあげるのが、証明問題ですべきことです。困ったときは、結論から逆算して考えましょう。
実数の性質、正の数の大小・平方の大小
不等式を証明するには、実数の性質や、正の数の大小・平方の大小を知っておく必要があります。
実数の性質
任意の2つの実数については、3つの関係のうち必ずどれか1つの関係だけが成り立ちます。
任意の2つの実数 $a \ , \ b$ について、
$\quad a \gt b \ , \ a=b \ , \ a \lt b$
のうち、どれか1つの関係だけが成り立つ。
この大小関係をもとに、色々な大小関係が得られます。実数について、大小関係の基本的な性質は以下のようになります。
\begin{align*}
&(1) \quad a \gt b \ , \ b \gt c \ \Longrightarrow \ a \gt c \\[ 10pt ]
&(2) \quad a \gt b \ \Longrightarrow \ a+c \gt b+c \ , \ a-c \gt b-c \\[ 10pt ]
&(3) \quad a \gt b \ , \ c \gt 0 \ \Longrightarrow \ ac \gt bc \ , \ \frac{a}{c} \gt \frac{b}{c} \\[ 10pt ]
&(4) \quad a \gt b \ , \ c \lt 0 \ \Longrightarrow \ ac \lt bc \ , \ \frac{a}{c} \lt \frac{b}{c} \\[ 10pt ]
&(5) \quad a \gt 0 \ , \ b \gt 0 \ \Longrightarrow \ a+b \gt 0 \ , \ ab \gt 0
\end{align*}
それぞれ条件があり、その条件の下で大小関係が成り立つことに注意しましょう。
また、大小関係と差の正負については以下のようになります。
\begin{align*}
&(6) \quad a \gt b \ \Longleftrightarrow \ a-b \gt 0 \\[ 10pt ]
&(7) \quad a \lt b \ \Longleftrightarrow \ a-b \lt 0
\end{align*}
さいごに、実数の平方です。不等式の証明ではよく用いられる関係です。
\begin{align*}
&(8) \quad a^{\scriptsize{2}} \geqq 0 \quad \text{等号が成り立つのは $a=0$ のとき} \\[ 10pt ]
&(9) \quad a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}} \geqq 0 \quad \text{等号が成り立つのは $a=b=0$ のとき}
\end{align*}
正の数の大小・平方の大小
正の数の大小と平方の大小の関係です。平方するものに条件があるので注意しましょう。
\begin{align*}
&\text{$a \gt 0 \ , \ b \gt 0$ のとき} \\[ 5pt ]
&\quad a^{\scriptsize{2}} \gt b^{\scriptsize{2}} \ \Longleftrightarrow \ a \gt b \\[ 5pt ]
&\text{また} \\[ 5pt ]
&\quad a^{\scriptsize{2}} \geqq b^{\scriptsize{2}} \ \Longleftrightarrow \ a \geqq b
\end{align*}
この関係は、主に平方根を含む不等式を証明するときに用いられます。
不等式の証明では、これらの大小関係が成り立つことを利用します。
例題を解いてみよう
例題から不等式の証明でのポイントを確認してみましょう。
\begin{align*}
&\text{次の不等式を証明せよ。} \\[ 5pt ]
&\text{また、(2) , (3)の等号が成り立つのはどのようなときか。} \\[ 5pt ]
&(1) \quad \text{$a \gt b \gt 0$ のとき} \quad \frac{a}{1+a} \gt \frac{b}{1+b} \\[ 10pt ]
&(2) \quad \bigl( a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}} \bigr) \bigl( x^{\scriptsize{2}}+y^{\scriptsize{2}} \bigr) \geqq \bigl( ax+by \bigr)^{\scriptsize{2}} \\[ 10pt ]
&(3) \quad a^{\scriptsize{2}}+3b^{\scriptsize{2}} \geqq 3ab
\end{align*}
例題(1)の解答・解説
\begin{align*}
&\text{次の不等式を証明せよ。} \\[ 5pt ]
&(1) \quad \text{$a \gt b \gt 0$ のとき} \quad \frac{a}{1+a} \gt \frac{b}{1+b}
\end{align*}
例題(1)では、与式から左辺の方が右辺よりも大きくなることが分かります。ですから、(左辺)-(右辺)>0を導くことができれば、不等式を証明することができます。
左辺から右辺を引き算します。差が0よりも大きくなることを示せるはずです。
\begin{align*}
&\text{(左辺)-(右辺)} \\[ 5pt ]
= \ &\frac{a}{1+a} – \frac{b}{1+b}
\end{align*}
引き算した式は誰でも書けます。問題は、ここからです。誰が見ても差が0より大きいと言える形を導かなければなりません。
分数式なので通分して1つの分数式に整理します。
\begin{align*}
&\text{(左辺)-(右辺)} \\[ 5pt ]
= \ &\frac{a}{1+a} – \frac{b}{1+b} \\[ 10pt ]
= \ &\frac{a(1+b)}{(1+a)(1+b)} – \frac{b(1+a)}{(1+b)(1+a)} \\[ 10pt ]
= \ &\frac{a(1+b)-b(1+a)}{(1+a)(1+b)} \\[ 10pt ]
= \ &\frac{a+ab-(b+ab)}{(1+a)(1+b)} \\[ 10pt ]
= \ &\frac{a-b}{(1+a)(1+b)}
\end{align*}
差を求めることができました。文字 a , b の条件をもとに差の値を調べます。
\begin{align*}
&\quad \text{(左辺)-(右辺)} = \frac{a-b}{(1+a)(1+b)} \\[ 10pt ]
&\text{ここで、$a \gt b \gt 0$ より} \\[ 5pt ]
&\quad a-b \gt 0 \ , \ 1+a \gt 0 \ , \ 1+b \gt 0 \\[ 5pt ]
&\text{であるので} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{a-b}{(1+a)(1+b)} \gt 0 \\[ 10pt ]
&\text{より} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{a}{1+a} – \frac{b}{1+b} \gt 0 \\[ 10pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{a}{1+a} \gt \frac{b}{1+b}
\end{align*}
差を調べるとき、予め与えられた条件を利用します。もちろん、与えられた条件から成り立つ関係を利用しても構いません。
\begin{align*}
&\text{$a \gt b$ ならば} \\[ 5pt ]
&\quad a-b \gt 0 \\[ 10pt ]
&\text{$a \gt 0 \ , \ b \gt 0$ ならば} \\[ 5pt ]
&\quad a+1 \gt 0 \ , \ b+1 \gt 0 \ , \ (a+1)(b+1) \gt 0
\end{align*}
例題(1)は、不等式の証明の中では最も基本的な問題なので、差を素直に計算するだけで済みます。
例題(2)の解答・解説
\begin{align*}
&\text{次の不等式を証明せよ。} \\[ 5pt ]
&\text{また、(2) , (3)の等号が成り立つのはどのようなときか。} \\[ 5pt ]
&(2) \quad \bigl( a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}} \bigr) \bigl( x^{\scriptsize{2}}+y^{\scriptsize{2}} \bigr) \geqq \bigl( ax+by \bigr)^{\scriptsize{2}}
\end{align*}
例題(2)も基本的な方針は例題(1)と変わりません。例題(2)では、与式から左辺の方が右辺と等しいか、右辺よりも大きくなることが分かります。ですから、(左辺)-(右辺)≧0を導くことができれば、不等式を証明することができます。
左辺から右辺を引き算します。差が0以上になることを示せるはずです。
\begin{align*}
&\text{(左辺)-(右辺)} \\[ 5pt ]
= \ &\bigl( a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}} \bigr) \bigl( x^{\scriptsize{2}}+y^{\scriptsize{2}} \bigr) – \bigl( ax+by \bigr)^{\scriptsize{2}}
\end{align*}
誰が見ても差が0以上であると言える形を導かなければなりません。展開して整理します。
\begin{align*}
&\text{(左辺)-(右辺)} \\[ 5pt ]
= \ &\bigl( a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}} \bigr) \bigl( x^{\scriptsize{2}}+y^{\scriptsize{2}} \bigr) – \bigl( ax+by \bigr)^{\scriptsize{2}} \\[ 10pt ]
= \ &\bigl( a^{\scriptsize{2}}x^{\scriptsize{2}}+a^{\scriptsize{2}}y^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}}x^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}}y^{\scriptsize{2}} \bigr) – \bigl( a^{\scriptsize{2}}x^{\scriptsize{2}}+2abxy+b^{\scriptsize{2}}y^{\scriptsize{2}} \bigr) \\[ 10pt ]
= \ &a^{\scriptsize{2}}y^{\scriptsize{2}}-2abxy+b^{\scriptsize{2}}x^{\scriptsize{2}} \\[ 10pt ]
= \ &\bigl( ay-bx \bigr)^{\scriptsize{2}}
\end{align*}
差を求めることができました。文字 a , b , x , y についての条件は特にありませんが、これらが実数であることをもとに差の値を調べます。
\begin{align*}
&\quad \text{(左辺)-(右辺)} = \bigl( ay-bx \bigr)^{\scriptsize{2}} \\[ 10pt ]
&\text{ここで、$a \ , \ b \ , \ x \ , \ y$ は実数であるので} \\[ 5pt ]
&\quad \bigl( ay-bx \bigr)^{\scriptsize{2}} \geqq 0 \\[ 5pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad \bigl( a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}} \bigr) \bigl( x^{\scriptsize{2}}+y^{\scriptsize{2}} \bigr) – \bigl( ax+by \bigr)^{\scriptsize{2}} \geqq 0 \\[ 5pt ]
&\text{したがって} \\[ 5pt ]
&\quad \bigl( a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}} \bigr) \bigl( x^{\scriptsize{2}}+y^{\scriptsize{2}} \bigr) \geqq \bigl( ax+by \bigr)^{\scriptsize{2}}
\end{align*}
実数の性質を利用すると、差が0以上になることが分かります。これで不等式が成り立つことを示すことができました。
次に、等号が等号が成り立つときを調べます。等号が成り立つのは、差が0となるときです。
\begin{align*}
&\text{また、等号が成り立つのは} \\[ 5pt ]
&\quad \bigl( ay-bx \bigr)^{\scriptsize{2}}=0 \\[ 10pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad ay-bx = 0 \\[ 5pt ]
&\text{のときである。よって} \\[ 5pt ]
&\quad ay=bx \\[ 5pt ]
&\text{のとき等号が成り立つ。}
\end{align*}
文字の値に関する条件が何もない場合、ほとんどが実数の平方を利用すると上手くいきます。
\begin{equation*}
a^{\scriptsize{2}} \geqq 0 \quad \text{等号が成り立つのは $a=0$ のとき}
\end{equation*}
例題(3)の解答・解説
\begin{align*}
&\text{次の不等式を証明せよ。} \\[ 5pt ]
&\text{また、(2) , (3)の等号が成り立つのはどのようなときか。} \\[ 5pt ]
&(3) \quad a^{\scriptsize{2}}+3b^{\scriptsize{2}} \geqq 3ab
\end{align*}
例題(3)も基本的な方針は例題(1) , (2)と変わりません。例題(3)では、与式から左辺の方が右辺と等しいか、右辺よりも大きくなることが分かります。ですから、(左辺)-(右辺)≧0を導くことができれば、不等式を証明することができます。
左辺から右辺を引き算します。差が0以上になることを示せるはずです。
\begin{align*}
&\text{(左辺)-(右辺)} \\[ 5pt ]
= \ &a^{\scriptsize{2}}+3b^{\scriptsize{2}} – 3ab
\end{align*}
誰が見ても差が0以上であると言える形を導かなければなりません。しかし、例題(2)と異なり、展開することもできません。
ここで問題に戻ると、文字の値に関する条件がありません。ですから、実数の平方をつくります。しかし、式全体では因数分解して実数の平方を作れません。このような場合、実数の平方をいくつか作ります。
\begin{align*}
&\text{(左辺)-(右辺)} \\[ 5pt ]
= \ &a^{\scriptsize{2}}+3b^{\scriptsize{2}} – 3ab \\[ 10pt ]
= \ &\underline{a^{\scriptsize{2}} – 3ab}+3b^{\scriptsize{2}} \\[ 10pt ]
= \ &\underline{\bigl(a-\frac{3}{2} b \bigr)^{\scriptsize{2}} -\frac{9}{4}b^{\scriptsize{2}} }+3b^{\scriptsize{2}} \\[ 10pt ]
= \ &\bigl(a-\frac{3}{2} b \bigr)^{\scriptsize{2}} -\frac{9}{4}b^{\scriptsize{2}}+\frac{12}{4}b^{\scriptsize{2}} \\[ 10pt ]
= \ &\bigl(a-\frac{3}{2} b \bigr)^{\scriptsize{2}} +\frac{3}{4}b^{\scriptsize{2}}
\end{align*}
基本的には、実数の平方が複数必要な場合、実数の平方を2つ作るのがほとんどです。すべての項を用いるのではなく、特定の文字について2次の項と1次の項を用いて平方完成します(下線部分を参照)。ここで注意したいのは、必ず和の形にすることです。差の形では、式の値がつねに0以上になるとは限らないので気を付けましょう。
求めた差の値を調べます。
\begin{align*}
&\quad \text{(左辺)-(右辺)} = \bigl(a-\frac{3}{2} b \bigr)^{\scriptsize{2}} +\frac{3}{4}b^{\scriptsize{2}} \\[ 10pt ]
&\text{ここで、$a \ , \ b$ は実数であるので} \\[ 5pt ]
&\quad \bigl(a-\frac{3}{2} b \bigr)^{\scriptsize{2}} \geqq 0 \ , \ \frac{3}{4}b^{\scriptsize{2}} \geqq 0 \\[ 5pt ]
&\text{より} \\[ 5pt ]
&\quad \bigl(a-\frac{3}{2} b \bigr)^{\scriptsize{2}} +\frac{3}{4}b^{\scriptsize{2}} \geqq 0 \\[ 5pt ]
&\text{であるので} \\[ 5pt ]
&\quad a^{\scriptsize{2}}+3b^{\scriptsize{2}} – 3ab \geqq 0 \\[ 10pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad a^{\scriptsize{2}}+3b^{\scriptsize{2}} \geqq 3ab
\end{align*}
実数の性質を利用すると、差が0以上になることが分かります。これで不等式が成り立つことを示すことができました。
次に、等号が等号が成り立つときを調べます。等号が成り立つのは、差が0となるときです。
\begin{align*}
&\text{また、等号が成り立つのは} \\[ 5pt ]
&\quad \bigl(a-\frac{3}{2} b \bigr)^{\scriptsize{2}} +\frac{3}{4}b^{\scriptsize{2}}=0 \\[ 10pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad \bigl(a-\frac{3}{2} b \bigr)^{\scriptsize{2}} = 0 \quad \text{かつ} \quad \frac{3}{4}b^{\scriptsize{2}}=0 \\[ 5pt ]
&\text{のときである。よって} \\[ 5pt ]
&\quad a-\frac{3}{2} b=0 \quad \text{かつ} \quad b=0 \\[ 5pt ]
&\text{より} \\[ 5pt ]
&\quad a=b=0 \\[ 5pt ]
&\text{のとき等号が成り立つ。}
\end{align*}
実数の平方の和を作る場合、平方完成を利用します。式全体で平方を作ろうとしても上手くいかないので気を付けましょう。2次の項と1次の項を用いて平方完成します。
\begin{equation*}
a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}} \geqq 0 \quad \text{等号が成り立つのは $a=b=0$ のとき}
\end{equation*}
3つの例題は、不等式の証明では基本的な問題です。このレベルの問題では、左辺と右辺の差は3パターンのどれかに当てはまります。
- 条件が与えられており、それをもとに差の値を調べる。(整理するだけで変形らしい変形がない)
- 条件がなく、差を因数分解して、実数の平方を作る。(式全体で因数分解できる)
- 条件がなく、いくつかの項で平方完成して、実数の平方の和を作る。(式の一部を用いる)
次は、不等式の証明を扱った基本的な問題を実際に解いてみましょう。