式と証明|相加平均・相乗平均の大小関係を利用するときのよくある間違い

05/08/2019数学2式と証明,相加平均,相乗平均

数学2 式と証明

今回は相加平均と相乗平均の大小関係を利用するときのよくある間違いについて学習しましょう。

相加平均と相乗平均を利用することはそれほど難しくありません。しかし、よく理解していないと誤った使い方をしてしまいます。

相加平均と相乗平均の大小関係

積が定数となる正の数の和について、以下のような関係が成り立ちます。

積が定数となる正の数の和

\begin{align*} &\text{$a \gt 0 \ , \ b \gt 0$ のとき} \\[ 5pt ] &\quad \frac{a+b}{2} \geqq \sqrt{ab} \\[ 7pt ] &\text{が成り立つ。} \\[ 5pt ] &\quad \frac{a+b}{2} \\[ 7pt ] &\text{を相加平均、} \\[ 7pt ] &\quad \sqrt{ab} \\[ 7pt ] &\text{を相乗平均と言う。} \end{align*}

不等式の左辺を相加平均、右辺を相乗平均と言います。

問題では、この大小関係が成り立つとして利用することができますが、証明できるようになっておきましょう。証明については前回の記事で解説しています。

相加平均と相乗平均の大小関係を利用する問題

次の例題は、前回の記事でも扱いましたが、よく間違える問題です。

例題

\begin{align*} &\text{$x \gt 0$ のとき、次の不等式を証明せよ。} \\[ 5pt ] &\text{また、等号が成り立つのはどのようなときか。} \\[ 5pt ] &\quad \left(x+\frac{1}{x} \right) \left(x+\frac{4}{x} \right) \geqq 9 \end{align*}

正しい解答例は以下のようになります。

例題の解答例

この問題では、まず左辺を展開して整理することからスタートします。そして、相加平均と相乗平均の大小関係を利用します。

例題の解答例

\begin{align*} &\text{与式の左辺を展開すると} \\[ 5pt ] &\quad \left(x+\frac{1}{x} \right) \left(x+\frac{4}{x} \right) = x^{\scriptsize{2}} +\frac{4}{x^{\scriptsize{2}}} +5 \\[ 7pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}} \gt 0 \ , \ \frac{4}{x^{\scriptsize{2}}} \gt 0 \\[ 7pt ] &\text{であるので、相加平均と相乗平均の大小関係より} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}} +\frac{4}{x^{\scriptsize{2}}} \geqq 2\sqrt{x^{\scriptsize{2}} \cdot \frac{4}{x^{\scriptsize{2}}}} = 2 \cdot 2 = 4 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}} +\frac{4}{x^{\scriptsize{2}}} \geqq 4 \\[ 7pt ] &\text{両辺に $5$ を加えると} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}} +\frac{4}{x^{\scriptsize{2}}} +5 \geqq 9 \\[ 7pt ] &\text{したがって} \\[ 5pt ] &\quad \left(x+\frac{1}{x} \right) \left(x+\frac{4}{x} \right) \geqq 9 \\[ 7pt ] &\text{また、等号が成り立つのは} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}} = \frac{4}{x^{\scriptsize{2}}} \\[ 7pt ] &\text{のときである。これを解くと} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{4}} = 4 \\[ 7pt ] &\text{$x \gt 0$ であるので} \\[ 5pt ] &\quad x = \sqrt{2} \end{align*}

左辺には、2つのカッコ内にそれぞれ逆数の和があります。ですから、それぞれに対して相加平均と相乗平均の大小関係を利用しても良さそうです。しかし、そのようには解きません。なぜでしょうか。

例題の間違った解答例

逆数の和がカッコの中にあるので、それぞれに対して、相加平均と相乗平均の大小関係を利用します。

間違い例 1⃣

\begin{align*} &\quad x \gt 0 \ , \ \frac{1}{x} \gt 0 \ , \ \frac{4}{x} \gt 0 \\[ 7pt ] &\text{であるので、相加平均と相乗平均の大小関係より} \\[ 5pt ] &\quad x + \frac{1}{x} \geqq 2\sqrt{x \cdot \frac{1}{x}} = 2 \\[ 7pt ] &\quad x + \frac{4}{x} \geqq 2\sqrt{x \cdot \frac{4}{x}} = 2 \cdot 2 = 4 \\[ 7pt ] &\text{より、} \\[ 5pt ] &\quad x + \frac{1}{x} \geqq 2 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad x + \frac{4}{x} \geqq 4 \quad \cdots \text{②} \end{align*}

①,②式を導くことができました。これらの辺々を掛けて与式を作ります。

間違い例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad x + \frac{1}{x} \geqq 2 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad x + \frac{4}{x} \geqq 4 \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\text{①,②の辺々を掛けると} \\[ 5pt ] &\quad \left(x+\frac{1}{x} \right) \left(x+\frac{4}{x} \right) \geqq 2 \cdot 4 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad \left(x+\frac{1}{x} \right) \left(x+\frac{4}{x} \right) \geqq \underline{8} \quad \cdots \text{③} \end{align*}

特に間違ったことを行ったようには見えませんが、③式の右辺が与式と異なります。ですから、この解法では、不等式を証明することができません。

なぜ、この解法では証明することができないのかを考えてみましょう。

①,②式において、等号が成り立つ条件を求めます。

間違い例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad x + \frac{1}{x} \geqq 2 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad x + \frac{4}{x} \geqq 4 \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\text{①について、等号が成り立つのは} \\[ 5pt ] &\quad x = \frac{1}{x} \\[ 7pt ] &\text{のときである。これを解くと} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}} = 1 \\[ 7pt ] &\text{$x \gt 0$ であるので} \\[ 5pt ] &\quad x = 1 \\[ 7pt ] &\text{②について、等号が成り立つのは} \\[ 5pt ] &\quad x = \frac{4}{x} \\[ 7pt ] &\text{のときである。これを解くと} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}} = 4 \\[ 7pt ] &\text{$x \gt 0$ であるので} \\[ 5pt ] &\quad x = 2 \end{align*}

等号が成り立つのは、①式ではx=1のときで、②式ではx=2のときです。つまり、①,②式の等号が成り立つのは、異なるxの値のときです。

x=1のとき、①式の等号は成り立ちますが、②式の等号は成り立ちません。同じように、x=2のとき、②式の等号は成り立ちますが、①式の等号は成り立ちません。

このように等号が成り立つxの値がただ1つに決まりません。このとき、③式の等号を成立させるxの値は存在しません

実際に③式の左辺に値を代入して確認してみます。

間違い例 4⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \left(x+\frac{1}{x} \right) \left(x+\frac{4}{x} \right) \geqq \underline{8} \quad \cdots \text{③} \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\text{$x=1$ のとき、③の左辺は} \\[ 5pt ] &\quad \left(1+\frac{1}{1} \right) \left(1+\frac{4}{1} \right) = 2 \cdot \underline{5} = 10 \neq 8 \\[ 7pt ] &\text{また、$x=2$ のとき、③の左辺は} \\[ 5pt ] &\quad \left(2+\frac{1}{2} \right) \left(2+\frac{4}{2} \right) = \underline{\frac{5}{2}} \cdot 4 = 10 \neq 8 \end{align*}

どちらの場合でも、③式の右辺と同じ値になりません。このことからもx=1のときもx=2のときも、③式の等号を成立させる値ではないことが分かります。

(相加平均)≧(相乗平均)の式を辺々掛けることはやめよう。

間違い例から分かるように、式変形には間違いがないので、等号が成立する条件を調べないと誤った解答であることに気付きません。

特に、式の最小値を求める問題では、不等式の証明とは異なり、右辺の値が分かりません。ですから、ここで解説したことを知らないと簡単に間違えてしまいます。

このような間違いをなくすには、指示がなくても等号が成り立つ条件を確認すると良いでしょう。

(相加平均)≧(相乗平均)を利用するとき、指示がなくても、等号成立条件を確認しよう。

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さいごにもう一度まとめ

  • 逆数の和の積は、展開しよう。
  • (相加平均)≧(相乗平均)の式を辺々掛けることはやめよう。
  • (相加平均)≧(相乗平均)を利用するとき、指示がなくても等号成立条件を調べよう。