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複素数と方程式|複素数の除法について

数学2

今回は、複素数の除法について学習しましょう。複素数の除法では、特に、負の数の平方根についての知識も必要なので、それも合わせて学習しましょう。

負の数の平方根

複素数は、実数と虚数を含む数です。特に、虚数の場合、虚数単位iを用いて表します。

虚数単位の定義

虚数単位を i とするとi2=1を満たす。

虚数単位の定義から分かるように、虚数単位は-1の(正の)平方根と言えます。これを利用すれば、負の数の平方根を表すことができます。

負の数の平方根

i を虚数単位とする。a>0 のときa=a1=a i特に1=iよって、負の数 a の平方根は±aすなわち±a i

-1の(正の)平方根である虚数単位を上手に用いることによって、負の数の平方根も表すことが可能となります。

負の数の平方根を扱ってみよう

負の数の平方根について、次の計算をしてみましょう。

例題1

次の計算をせよ。(1)25(2)218(3)327

与式を見ると、負の数の平方根があることに気付きます。負の数の平方根の扱いに注意して計算しましょう。

例題1(1)の解答・解説

例題1(1)

次の計算をせよ。25

負の数の平方根の定義を利用して計算します。

(1)では、-25の平方根を25の平方根と-1の平方根に分解します。

例題1(1)の解答例

25=25×(1)=251=5i

-1の平方根を分離して、正の数の平方根になれば、これまで通りの扱いができます。

例題1(2)の解答・解説

例題1(2)

次の計算をせよ。218

(2)も同様です。2の平方根との乗算よりも、-18の平方根を先に処理します。

例題1(2)の解答例

218=218×(1)=2181=232 i=6i

負の数の平方根では、何よりもまず-1の平方根を作りましょう。

例題1(3)の解答・解説

例題1(3)

次の計算をせよ。327

(3)でも与式から虚数単位iとなる-1の平方根を取り出します。

例題1(3)の解答例

327=3×(1)27×(1)=31271=3 i33 i=333 i2=9(1)=9

3の平方根、-1の平方根、27の平方根、-1の平方根と順に並ぶ式が得られますが、この式は乗算だけの式です。

乗算だけの式では、交換法則や結合法則が成り立ちます。交換法則を利用すると、虚数単位iの2乗(i2)ができます。

複素数を扱う際、虚数単位と、虚数単位以外の部分とを分けて考えるのがポイント。

負の数の平方根を扱うと言っても、虚数単位以外の部分ではこれまで通りの平方根です。ですから、平方根の性質も知っておかなければなりません。

負の数の平方根を扱うときの注意点

負の数の平方根を扱った計算では、以下のような間違いが多々あります。これまでと同じように扱ってしまう場合です。

負の数の平方根でよくある間違い

33=(3)×(3)=9=3(間違い)

この2つの平方根の積は、一見すると正しいように思えます。しかし、この計算は間違いです。

定義から考えてみても、-3の平方根の2乗なので、計算結果は-3になるはずです。ということは、計算のやり方を間違えているということです。

数学1で学習した定義を思い出してみましょう。平方根の積を求めるとき、根号の中の数を乗算できるのは、ともに正の数の平方根の場合です。

正の数の平方根の積

a>0 , b>0 のときab=ab

公式や定理を覚えるときに気を付けたいことは、公式や定理が成り立つ条件も併せて覚えるということです。単に式だけを覚えていても、それが使える状況ではなければ間違ってしまいます。

ここで扱う平方根は、負の数の平方根です。ですから、数学1で学習した平方根の性質を、そのまま利用することができません。

これまでと同じ扱いをするためには、負の数の平方根を正の数の平方根と虚数単位iに分ける必要があります。

正しくは以下のような計算になります。

負の数の平方根を分解する

33=3131=3 i3 i=(3)2 i2=3(1)=3

先ほども述べましたが、与式は-3の平方根の2乗を表します。そのことに気付けば、以下のように解くこともできます。

負の数の平方根の定義を利用する

33=(3)2=3

平方根の定義を正しく理解していれば、計算は不要だったでしょう。

負の平方根にもっと慣れよう

次の計算をしてみましょう。

例題2

次の計算をせよ。(4+5)(35)

平方根の乗算が出てきます。先に負の数の平方根を処理しましょう。式を展開するのは、負の数の平方根を正の数の平方根と虚数単位iに分けてからです。

例題2の解答例

(4+5)(35)= (4+5 i)(35 i)= 125 i(5)2 i2= 125 i5(1)= 125 i+5= 175 i

-1の平方根を虚数単位iにすると、文字xなどと同じ扱いができるので、展開が楽になります。負の数の平方根が出てきたら、真っ先に正の数の平方根と虚数単位iに分けることから始めましょう。

複素数の除法

負の数の平方根の扱い方を学習した後は、複素数の除法についてです。次の計算を解いてみましょう。

例題3

次の計算をせよ。(1)1+2i2i(2)3+2i2+ii12i

例題を見ると分かるように、複素数を含む分数式になっています。このような場合、分母の有理化を参考にして計算します。

分母の有理化では、以下の乗法公式を利用します。

有理化するための乗法公式

(a+b)(ab)=a2b2

この乗法公式と、複素数の定義を利用すれば、分母を実数化することができます。

分母の実数化

(a+bi)(abi)=a2b2i2=a2b2(1)=a2+b2

分母を実数化するには、分母の複素数に共役な複素数を掛ければ良いことが分かります。

分母にある平方根(無理数)を有理数にするのが、分母の有理化。分母にある複素数(虚数を含む)を実数にするのが、分母の実数化。

これを利用して例題を解いてみましょう。

例題3(1)の解答・解説

例題3(1)

次の計算をせよ。1+2i2i

分母の複素数に共役な複素数を掛けて、分母を実数化します。分母と分子をそれぞれ展開して整理します。

例題3(1)の解答例

1+2i2i=(1+2i)(2+i)(2i)(2+i)=2+5i+2i222+12=2+5i25=5i5=i

虚数単位iを文字扱いすれば、これまでの式変形とそれほど変わりません。

例題3(2)の解答・解説

例題3(2)

次の計算をせよ。3+2i2+ii12i

(2)も分母の実数化を優先して計算します。平方根の有理化と同じ要領です。

例題3(2)の解答例

3+2i2+ii12i= (3+2i)(2i)(2+i)(2i)i(1+2i)(12i)(1+2i)= 6+i2i222+12i+2i212+22= 6+i+25i25= 8+i(i2)5= 105= 2

問題によっては、個別に分母を実数化しなくても良い場合があります。そのような場合、平方根の有理化でもあったように、通分によって分母を実数化できます。

分母の実数化を各分数ですべきか通分ですべきかは、与式をよく観察して決めましょう。

次は、複素数の除法や負の数の平方根を扱った問題を実際に解いてみましょう。