複素数と方程式|虚数解からの係数決定について

数学2

今回は、虚数解からの係数決定について学習しましょう。前回、実数解からの係数決定を学習しましたが、それとの違いを意識しながら学習しましょう。

これまでは2次方程式が中心でしたが、ここでは、主に虚数解を用いて、3次方程式や4次方程式などの高次方程式の係数を決定します。

方程式とその解との関係

方程式とその解との関係は、実数解と同じように、虚数解であっても成り立ちます。

方程式とその解との関係 1⃣

\begin{align*} &\text{$x=\alpha$ が $f(x)=0$ の解であるとき} \\[ 5pt ] &\quad f(\alpha)=0 \end{align*}

当たり前ですが、解を方程式に代入すると等式が成り立ちます。右辺が0なので、解を代入すると左辺も0となります。等式が成り立つのは、解を方程式に代入したときだけです。

実数解であれば、以下の事柄も成り立ちます。

方程式とその解との関係 2⃣

\begin{align*} &\text{$x=\alpha$ が $f(x)=0$ の解であるとき} \\[ 5pt ] &\quad f(\alpha)=0 \\[ 7pt ] &\text{したがって、$f(x)$ は $x-\alpha$ を因数にもつ。} \end{align*}

これは剰余の定理や因数定理を考えると理解できるでしょう。

左辺に解を代入すると、式の値が0となります。剰余の定理から、左辺を1次式x-αで割った余りが0となるということです。

1次式x-αで割った余りが0となるので、因数定理が成り立ちます。ですから、左辺は1次式x-αを因数にもつことが分かります。

方程式とその解との関係まとめ

\begin{align*} &\text{$x=\alpha$ が $f(x)=0$ の解} \\[ 5pt ] \Longleftrightarrow \quad &f(\alpha)=0 \\[ 7pt ] \Longleftrightarrow \quad &\text{$f(x)$ は $x-\alpha$ を因数にもつ。} \end{align*}

方程式の解のうち実数解が分かれば、方程式とその解との関係(まとめ)を用いて、方程式の係数を決定することができます。ただし、虚数解が分かっている場合、以下の事柄も利用します。

複素数の相等

\begin{align*} &\text{$A \ , \ B$ が 実数のとき} \\[ 5pt ] &\quad A+Bi=0 \quad \Longleftrightarrow \quad A=0 \ \text{かつ} \ B=0 \end{align*}

方程式に虚数解を代入すると、等式が成り立ちます。方程式の右辺は0なので、左辺を実部虚部に整理すれば、複素数の相等を利用できます。

複素数の相等によって、それぞれ係数についての方程式を2つ導くことができます。2つの方程式を連立して解けば、係数を決定することができます。

解から係数を決定してみよう

解から係数を決定してみましょう。ここでは、主に虚数解を用います。

例題

\begin{align*} &\text{$3$ 次方程式} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{3}}+ax^{\scriptsize{2}}+bx+10=0 \\[ 7pt ] &\text{の $1$ つの解が $x=2+i$ である。} \\[ 5pt ] &\text{このとき、定数 $a \ , \ b$ の値と他の解を求めよ。} \end{align*}

例題の解答・解説

3次方程式の係数を解を用いて決定します。ここでは虚数解が与えられています。

方程式の左辺に虚数解を代入して、左辺を実部虚部に整理します。

例題の解答例 1⃣

\begin{align*} &\quad x^{\scriptsize{3}}+ax^{\scriptsize{2}}+bx+10=0 \\[ 7pt ] &\text{$x=2+i$ が方程式の解であるので} \\[ 5pt ] &\quad \left(2+i \right)^{\scriptsize{3}}+a\left(2+i \right)^{\scriptsize{2}}+b\left(2+i \right)+10=0 \\[ 7pt ] &\text{ここで} \\[ 5pt ] &\quad \left(2+i \right)^{\scriptsize{3}}=2^{\scriptsize{3}}+3 \cdot 2^{\scriptsize{2}}i+3 \cdot 2i^{\scriptsize{2}}+i^{\scriptsize{3}} =2+11i \\[ 7pt ] &\quad \left(2+i \right)^{\scriptsize{2}}=2^{\scriptsize{2}}+2 \cdot 2i+i^{\scriptsize{2}}=3+4i \\[ 7pt ] &\text{となるので} \\[ 5pt ] &\quad 2+11i+a\left(3+4i \right)+b\left(2+i \right)+10=0 \\[ 7pt ] &\text{これを $i$ について整理すると} \\[ 5pt ] &\quad 3a+2b+12+\left(4a+b+11 \right)i=0 \end{align*}

左辺は複素数ですが、実部と虚部はそれぞれ実数です。ですから、複素数の相等を利用することができます。因数の話にならないので注意しましょう。

虚数解を代入したら、複素数の相等へ。

複素数の相等から方程式を2つ導きます。そして、これらを連立して解きます。

例題の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad 3a+2b+12+\left(4a+b+11 \right)i=0 \\[ 7pt ] &\text{$3a+2b+12 \ , \ 4a+b+11$ は実数であるので} \\[ 5pt ] &\quad 3a+2b+12=0 \\[ 7pt ] &\quad 4a+b+11=0 \\[ 7pt ] &\text{これを解くと} \\[ 5pt ] &\quad a=-2 \ , \ b=-3 \\[ 7pt ] &\text{よって、方程式は} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{3}}-2x^{\scriptsize{2}}-3x+10=0 \end{align*}

複素数の相等を利用する場合、実部と虚部が実数であることの断りを必ず記述しましょう。

複素数の相等は、実部と虚部が実数であるときに成り立つ。

係数が決定したので、方程式から残りの解を求めます。剰余の定理を利用すると、1次式で割った余りを式の値から求めることができます。このことを利用して、左辺の値が0となるxの値を調べましょう。

この結果から余りが0となるときの1次式、つまり因数が分かるので、因数定理を利用することができます。

例題の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad x^{\scriptsize{3}}-2x^{\scriptsize{2}}-3x+10=0 \\[ 7pt ] &\text{方程式より} \\[ 5pt ] &\quad f(x)=x^{\scriptsize{3}}-2x^{\scriptsize{2}}-3x+10 \\[ 7pt ] &\text{とすると} \\[ 5pt ] &\quad f(-2)=\left(-2 \right)^{\scriptsize{3}}-2 \cdot \left(-2 \right)^{\scriptsize{2}}-3 \cdot \left(-2 \right)+10=0 \\[ 7pt ] &\text{よって、$f(x)$ は $x+2$ を因数にもつので} \\[ 5pt ] &\quad f(x)=\left(x+2 \right)\left(x^{\scriptsize{2}}-4x+5 \right) \end{align*}

因数の1次式が分れば、左辺を因数分解します。このとき、解答例では省略していますが、組立除法を利用しましょう。筆算するよりも簡単です。

まだ2次式が残っていますが、方程式は虚数解をもつことがすでに分かっています。ですから、これ以上、因数分解できません。

これ以降は、実数解のときと変わりません。方程式に戻した後、新たに方程式を導いて解を求めます。これが与式の解になります。

例題の解答例 4⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad f(x)=\left(x+2 \right)\left(x^{\scriptsize{2}}-4x+5 \right) \\[ 7pt ] &\text{よって、方程式は} \\[ 5pt ] &\quad \left(x+2 \right)\left(x^{\scriptsize{2}}-4x+5 \right)=0 \\[ 7pt ] &\text{これより} \\[ 5pt ] &\quad x+2=0 \quad \text{または} \quad x^{\scriptsize{2}}-4x+5=0 \\[ 7pt ] &\text{これを解くと} \\[ 5pt ] &\quad x=-2 \quad \text{または} \quad x=2 \pm i \\[ 7pt ] &\text{したがって、他の解は} \\[ 5pt ] &\quad x=-2 \ , \ 2-i \end{align*}

2次方程式が複素数を解にもつとき、共役な複素数も解にもつことを知っておきましょう。計算せずに他の解を求めることができます。

また、1次の項の係数が偶数であることに注目すると、応用版の解の公式を利用できます。慣れると暗算で解を求めることができるので、マスターしておくと便利です。

共役な複素数を利用する

実数を係数とする方程式が虚数解をもつとき、共役な複素数も解となります。このことを利用すると、上述とは異なる解法で例題を解くことができます。

例題の別解その1

例題の別解例その1

\begin{align*} &\text{虚数解を $\alpha$ とし、共役な複素数を $\overline{\alpha}$ とする。} \\[ 5pt ] &\text{$\alpha$ と $\overline{\alpha}$ が解であるので、方程式の左辺は} \\[ 5pt ] &\quad \left(x-\alpha \right)\left(x-\overline{\alpha} \right) \\[ 7pt ] &\text{すなわち} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}-\left(\alpha+\overline{\alpha} \right)x+\alpha \overline{\alpha} \\[ 7pt ] &\text{で割り切れることを利用する。} \end{align*}

これをもとに解いてみましょう。与えられた虚数解から共役な複素数と、それを因数にもつ2次式を導きます。

例題の別解例その1 1⃣

\begin{align*} &\text{実数を係数とする $3$ 次方程式が虚数解 $2+i$ をもつので、} \\[ 5pt ] &\text{共役な複素数 $2-i$ もこの方程式の解である。} \\[ 5pt ] &\text{よって、方程式の左辺 $x^{\scriptsize{3}}+ax^{\scriptsize{2}}+bx+10$ は} \\[ 5pt ] &\quad \left\{ x-\left(2+i \right) \right\}\left\{ x-\left(2-i \right) \right\} \\[ 7pt ] &\text{すなわち} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}-4x+5 \\[ 7pt ] &\text{で割り切れる。} \end{align*}

この2次式で方程式の左辺を割り算します。1次式での割り算ではないので、組立除法ではなく、筆算します。

例題の割り算
3次式を2次式で割る

係数に文字が含まれると、計算ミスが多くなります。項の間に余白を取ると計算ミスを減らせます。

例題の別解例その1 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}-4x+5 \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\text{これで割り算した商は $x+(a+4)$ で、余りは} \\[ 5pt ] &\quad \left(4a+b+11 \right)x-5a-10 \\[ 7pt ] &\text{となり、これが $0$ に等しいので} \\[ 5pt ] &\quad 4a+b+11=0 \quad \text{かつ} \quad -5a-10=0 \end{align*}

割り算のとき注意したいのは、係数が不明なので、割り切れずに余りが出てくることです。

あくまでも形式的に出てくるだけで、実際には割り切れるはずです。このことから新たに方程式を導くことができます。これを解くと、方程式の係数を決定できます。

割り算の余りが0であることから、係数・定数項についての方程式を導こう。

係数が決定できると、割り算した商も分かります。割る2次式と商は、ともに方程式の左辺の因数です。このことを利用して、左辺の3次式を因数分解します。因数分解は割り算の結果を上手に利用しましょう。

例題の別解例その1 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad 4a+b+11=0 \quad \text{かつ} \quad -5a-10=0 \\[ 7pt ] &\text{これを解くと} \\[ 5pt ] &\quad a=-2 \ , \ b=-3 \\[ 7pt ] &\text{よって、方程式は} \\[ 5pt ] &\quad \left(x^{\scriptsize{2}}-4x+5 \right)\left(x+2 \right)=0 \\[ 7pt ] &\text{これより} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}-4x+5=0 \quad \text{または} \quad x+2=0 \\[ 7pt ] &\text{これを解くと} \\[ 5pt ] &\quad x=2 \pm i \quad \text{または} \quad x=-2 \\[ 7pt ] &\text{したがって、他の解は} \\[ 5pt ] &\quad x=-2 \ , \ 2-i \end{align*}

すでに気付いている人もいるかもしれませんが、一般に、実数を係数とする3次方程式は、少なくとも1つの実数解をもつことが知られています。

例題の別解その2

別解の2つ目です。

例題の別解例その2

\begin{align*} &\text{$3$ つ目の解を $k$ として、$3$ 次方程式の解と係数の} \\[ 5pt ] &\text{関係を利用する。共役な複素数を $\overline{\alpha}$ とする。} \\[ 5pt ] &\text{また、$3$ 次方程式 $ax^{\scriptsize{3}}+bx^{\scriptsize{2}}+cx+d=0$ の解を} \\[ 5pt ] &\text{$\alpha \ , \ \beta \ , \ \gamma$ とする。} \\[ 5pt ] &\text{このとき} \\[ 5pt ] &\quad \alpha+\beta+\gamma=-\frac{b}{a} \\[ 7pt ] &\quad \alpha \beta+\beta \gamma+\gamma \alpha=\frac{c}{a} \\[ 7pt ] &\quad \alpha \beta \gamma=-\frac{d}{a} \\[ 7pt ] &\text{が成り立つ。} \end{align*}

2つ目の解法では、3次方程式の解と係数の関係を用います。この関係はもう少し後で学習するので、ここでは解説しません。

次は、虚数解からの係数決定を扱った問題を実際に解いてみましょう。