複素数と方程式|複素数の加法・減法・乗法について

数学2

複素数の加法・減法・乗法を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

\begin{align*} &\text{次の計算をせよ。} \\[ 5pt ] &(1) \quad ( 4+5i )-( 4-5i ) \\[ 7pt ] &(2) \quad ( -6+5i ) ( 1+2i ) \\[ 7pt ] &(3) \quad ( 2-5i ) ( 2i-5 ) \\[ 7pt ] &(4) \quad ( 3+i )^{\scriptsize{3}} \\[ 7pt ] &(5) \quad \left( \sqrt{2}+i \right)^{\scriptsize{2}}-\left( \sqrt{2}-i \right)^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ] &(6) \quad 1+i+i^{\scriptsize{2}}+i^{\scriptsize{3}} \end{align*}

複素数を文字 i の1次式と捉えれば、これまでの文字式の四則計算と変わりません。複素数の加法・減法・乗法の式もあるので、式に当てはめて計算しましょう。

問(1)の解答・解説

問(1)

\begin{align*} &\text{次の計算をせよ。} \\[ 7pt ] &\quad ( 4+5i )-( 4-5i ) \end{align*}

互いに共役な複素数の差を求める計算です。互いに共役な複素数の差は実数にはならないので注意しましょう。

複素数の減法

\begin{align*} &\text{$a \ , \ b \ , \ c \ , \ d$ を実数、$i$ を虚数単位とする。} \\[ 7pt ] &\quad ( a+bi )-( c+di ) = ( a-c )+( b-d )i \end{align*}

複素数の減法の式に当てはめます。実部どうし、虚部どうしをそれぞれ減算します。

問(1)の解答例

\begin{align*} &( 4+5i )-( 4-5i ) \\[ 7pt ] = \ &( 4-4 )+\left\{ 5- (-5) \right\}i \\[ 7pt ] = \ &10i \end{align*}

計算結果から分かるように、共役な複素数の差は、実数にならず、純虚数となることが分かります。

問(2)の解答・解説

問(2)

\begin{align*} &\text{次の計算をせよ。} \\[ 5pt ] &\quad ( -6+5i ) ( 1+2i ) \end{align*}

複素数の乗法の式に当てはめて計算します。

もし、忘れてしまっても、複素数を文字iの1次式と考えて、分配法則乗法公式で展開します。展開した後は実部と虚部をそれぞれ整理します。

複素数の乗法

\begin{align*} &\text{$a \ , \ b \ , \ c \ , \ d$ を実数、$i$ を虚数単位とする。} \\[ 5pt ] &\quad ( a+bi ) ( c+di ) = ( ac-bd )+( ad+bc )i \end{align*}

乗法の式に当てはめて展開します。

問(2)の解答例

\begin{align*} &( -6+5i ) ( 1+2i ) \\[ 7pt ] = \ &( -6 \cdot 1-5 \cdot 2 )+( -6 \cdot 2+5 \cdot 1 )i \\[ 7pt ] = \ &-16-7i \end{align*}

分配法則で展開する計算が最も取り組みやすいかもしれません。

問(2)の別解例

\begin{align*} &( -6+5i )( 1+2i ) \\[ 7pt ] = \ &-6-12i+5i+10i^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ] = \ &-6-7i+10 \cdot (-1) \\[ 7pt ] = \ &-6-7i-10 \\[ 7pt ] = \ &-16-7i \end{align*}

虚数単位の定義には気をつけましょう。

虚数単位の定義

\begin{align*} &\text{虚数単位を $i$ とすると} \\[ 5pt ] &\quad i^{\scriptsize{2}} = -1 \\[ 7pt ] &\text{を満たす。} \end{align*}

問(3)の解答・解説

問(3)

\begin{align*} &\text{次の計算をせよ。} \\[ 5pt ] &\quad ( 2-5i ) ( 2i-5 ) \end{align*}

後ろのカッコ内の複素数について、実部と虚部の順序が入れ替わっています。入れ替えてしまえば、問(2)と同じように計算できます。もちろん、そのままで分配法則を利用しても構いません。

問(3)の解答例

\begin{align*} &( 2-5i )( 2i-5 ) \\[ 7pt ] = \ &( 2-5i )( -5+2i ) \\[ 7pt ] = \ &\left\{ 2 \cdot ( -5 )-( -5 ) \cdot 2 \right\}+\left\{ 2 \cdot 2+( -5 ) \cdot ( -5 ) \right\}i \\[ 7pt ] = \ &( -10+10 )+( 4+25 )i \\[ 7pt ] = \ &29i \end{align*}

問(3)については、共役な複素数を作って計算することもできます。

問(3)の別解例

\begin{align*} &( 2-5i )( 2i-5 ) \\[ 7pt ] = \ &( 2-5i )( 2i+5i^{\scriptsize{2}}) \\[ 7pt ] = \ &( 2-5i )( 2+5i ) \ i \\[ 7pt ] = \ &( 2^{\scriptsize{2}} + 5^{\scriptsize{2}} ) \ i \\[ 7pt ] = \ &( 4+25 ) \ i \\[ 7pt ] = \ &29i \end{align*}

数の並びから、共役な複素数をイメージできます。ただし、虚数単位の定義を上手く利用しないとこの解法では計算できません。共役な複素数を作った後は、積の式に当てはめて計算します。

問(4)の解答・解説

問(4)

\begin{align*} &\text{次の計算をせよ。} \\[ 5pt ] &\quad ( 3+i )^{\scriptsize{3}} \end{align*}

3次式の展開公式に当てはめる解法が取り組みやすいでしょう。

3次式の展開公式

\begin{align*} &( a+b )^{\scriptsize{3}} \\[ 7pt ] = \ &a^{\scriptsize{3}}+3a^{\scriptsize{2}}b+3ab^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{3}} \end{align*}

展開公式に当てはめて計算します。

問(4)の解答例

\begin{align*} &( 3+i )^{\scriptsize{3}} \\[ 7pt ] = \ &3^{\scriptsize{3}}+3 \cdot 3^{\scriptsize{2}} \cdot i+3 \cdot 3 \cdot i^{\scriptsize{2}}+i^{\scriptsize{3}} \\[ 7pt ] = \ &27+27i-9-i \\[ 7pt ] = \ &18+26i \end{align*}

虚数単位iの3乗や2乗の取扱いに注意しましょう。

虚数単位の累乗

\begin{align*} &\quad i^{\scriptsize{2}} = -1 \\[ 7pt ] &\quad i^{\scriptsize{3}} = i \cdot i^{\scriptsize{2}} = i \cdot (-1) = -i \end{align*}

問(5)の解答・解説

問(5)

\begin{align*} &\text{次の計算をせよ。} \\[ 5pt ] &\quad \left( \sqrt{2}+i \right)^{\scriptsize{2}}-\left( \sqrt{2}-i \right)^{\scriptsize{2}} \end{align*}

それぞれ乗法公式を利用して整理する解法が最も無難でしょう。ここでは、乗法公式による展開ではなく、因数分解を利用して計算します。

問(5)の解答例

\begin{align*} &\left( \sqrt{2}+i \right)^{\scriptsize{2}}-\left( \sqrt{2}-i \right)^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ] = \ &\left\{ \left( \sqrt{2}+i \right)+\left( \sqrt{2}-i \right) \right\} \left\{ \left( \sqrt{2}+i \right)-\left( \sqrt{2}-i \right) \right\} \\[ 7pt ] = \ &2\sqrt{2} \cdot 2i \\[ 7pt ] = \ &4\sqrt{2}i \end{align*}

入試にも出てくる計算ですが、別解例のように計算できる人は意外と少ないです。展開するのが習慣になっているからです。

展開するよりも簡単な計算で済むので、意外と重宝します。ぜひともマスターしておきたい解法です。

因数分解の公式

\begin{equation*} a^{\scriptsize{2}}-b^{\scriptsize{2}} = ( a+b )( a-b) \end{equation*}

いつも展開すれば良いわけではない。因数分解した方が良いときもある。

問(6)の解答・解説

問(6)

\begin{align*} &\text{次の計算をせよ。} \\[ 5pt ] &\quad 1+i+i^{\scriptsize{2}}+i^{\scriptsize{3}} \end{align*}

虚数単位の累乗の取扱いに注意して計算します。

問(6)の解答例

\begin{align*} &1+i+i^{\scriptsize{2}}+i^{\scriptsize{3}} \\[ 7pt ] = \ &1+i-1-i \\[ 7pt ] = \ &0 \end{align*}

特に難しい計算ではありませんが、符号のミスに注意しましょう。

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さいごにもう一度まとめ

  • 複素数の四則計算では、虚数単位を文字と考えて計算しよう。
  • 虚数単位の累乗に注意しよう。
  • 複素数の加法や減法では、実部どうし、虚部どうしをそれぞれ加減算しよう。
  • 複素数の乗法では、分配法則や乗法公式を利用して展開しよう。
  • 共役な複素数の和と積は実数になることに注意しよう。