複素数と方程式|2乗すると○○になる複素数について
数学2
2乗すると指定された数になる複素数を扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
問
\begin{align*}
&\text{$2$ 乗すると $i$ になるような複素数} \\[ 5pt ]
&\quad z=x+yi \quad \text{($x \ , \ y$ は実数)} \\[ 7pt ]
&\text{はちょうど $2$ つ存在する。} \\[ 5pt ]
&\text{この $z$ を求めよ。}
\end{align*}
例題と同じ要領で解きます。複素数の相等を利用するので、実部と虚部の条件に気を付けましょう。
問の解答・解説
題意に沿って等式を立式します。
問の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\text{$z$ を $2$ 乗すると $i$ となるので} \\[ 5pt ]
&\quad z^{\scriptsize{2}} = i
\end{align*}
この等式の左辺に与式を代入し、左辺を虚数単位について整理します。
問の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad z^{\scriptsize{2}} = i \\[ 7pt ]
&\text{ここで、$z=x+yi$ より} \\[ 5pt ]
&\quad \left(x+yi \right)^{\scriptsize{2}}=i \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}-y^{\scriptsize{2}}+2xyi = i
\end{align*}
複素数を求めるためには、実部と虚部を求めれば良いので、複素数の相等を利用します。このとき、実部と虚部がともに実数であることを断っておきましょう。
問の解答例 3⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}-y^{\scriptsize{2}}+2xyi = i \\[ 7pt ]
&x \ , \ y \ \text{は実数であるので、} \\[ 5pt ]
&x^{\scriptsize{2}}-y^{\scriptsize{2}} \ , \ 2xy \ \text{も実数である。} \\[ 5pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}-y^{\scriptsize{2}}=0 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\quad 2xy=1 \quad \cdots \text{②}
\end{align*}
複素数の相等を利用して実部と虚部を比較すると、実数x,yについての方程式が2つ得られます。これらを連立させて解きます。
問の解答例 4⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}-y^{\scriptsize{2}}=0 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\quad 2xy=1 \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ]
&\text{①より} \\[ 5pt ]
&\quad \left(x+y \right)\left(x-y \right)=0 \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad x = \pm y \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad y = \pm x
\end{align*}
①式を実数xについての2次方程式と考えると因数分解できます。すると、実数xの解±yが得られます。②式に代入したとき、実数yを消去したいので、最後に手を加えてyについて変形しています。
①式で得られた結果は2通りあるので、場合分けして②式に代入します。
問の解答例 5⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad y = \pm x \\[ 7pt ]
&\text{$y=x$ のとき、②より} \\[ 5pt ]
&\quad 2x^{\scriptsize{2}}=1 \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad x = \pm \frac{1}{\sqrt{2}} \\[ 7pt ]
&\text{これより、} \\[ 5pt ]
&\quad x=\frac{1}{\sqrt{2}} \ \text{のとき} \quad y=\frac{1}{\sqrt{2}} \\[ 5pt ]
&\quad x=-\frac{1}{\sqrt{2}} \ \text{のとき} \quad y=-\frac{1}{\sqrt{2}} \\[ 5pt ]
&\text{また、$y=-x$ のとき、②より} \\[ 5pt ]
&\quad -2x^{\scriptsize{2}}=1 \\[ 7pt ]
&\text{これを満たす実数 $x$ は存在しない。} \\[ 5pt ]
&\text{したがって、求める複素数は} \\[ 5pt ]
&\quad z=\frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{1}{\sqrt{2}}i \ , \ -\frac{1}{\sqrt{2}}-\frac{1}{\sqrt{2}}i
\end{align*}
②式に代入すると、実数xの値が2つ得られるので、ここでも場合分けして実数yの値を求めます。
平方根が出てきますが、平方根も実数です。自分で等式を立式する必要がありますが、複素数の相等を扱った問題とほとんど変わりません。
連立方程式を代入法で解いたとき
例題の別解例のように、代入法を利用して連立方程式を解いてみましょう。
問の別解例 1⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}-y^{\scriptsize{2}}=0 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\quad 2xy=1 \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ]
&\text{②より $x \neq 0$ であるので} \\[ 5pt ]
&\quad y=\frac{1}{2x} \\[ 7pt ]
&\text{これを①に代入すると} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}-\left(\frac{1}{2x} \right)^{\scriptsize{2}}=0 \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad 4x^{\scriptsize{4}}-1=0
\end{align*}
分母を払うと、4次方程式が得られます。
問の別解例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad 4x^{\scriptsize{4}}-1=0 \\[ 7pt ]
&\text{これを解くと} \\[ 5pt ]
&\quad \left(2x^{\scriptsize{2}}+1 \right)\left(2x^{\scriptsize{2}}-1 \right)=0 \\[ 7pt ]
&\quad \left(\sqrt{2}x+1 \right)\left(\sqrt{2}x-1 \right)\left(2x^{\scriptsize{2}}+1 \right)=0 \\[ 7pt ]
&2x^{\scriptsize{2}}+1 \neq 0 \ \text{より} \\[ 5pt ]
&\quad x = \pm \frac{1}{\sqrt{2}} \\[ 7pt ]
&x=\frac{1}{\sqrt{2}} \ \text{のとき} \\[ 5pt ]
&\quad y = \frac{1}{2} \cdot \frac{1}{x} \\[ 7pt ]
&\quad \ = \frac{1}{2} \cdot \sqrt{2} \\[ 7pt ]
&\quad \ = \frac{1}{\sqrt{2}} \\[ 7pt ]
&x=-\frac{1}{\sqrt{2}} \ \text{のとき} \\[ 5pt ]
&\quad y = \frac{1}{2} \cdot \frac{1}{x} \\[ 7pt ]
&\quad \ = \frac{1}{2} \cdot \left( -\sqrt{2} \right) \\[ 7pt ]
&\quad \ = -\frac{1}{\sqrt{2}} \\[ 7pt ]
&\text{したがって、求める複素数は} \\[ 5pt ]
&\quad z=\frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{1}{\sqrt{2}} i \ , \ -\frac{1}{\sqrt{2}}-\frac{1}{\sqrt{2}} i
\end{align*}
係数が平方根になりますが、実数の範囲での因数分解を学習していれば問題ないはずです。
複号同順について
なお、求めた複素数の表記をまとめることができます。この場合、複号同順ということばを添えておきましょう。問の解答例であれば以下のようになります。
2つの複素数をまとめて記述する
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad z=\frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{1}{\sqrt{2}}i \ , \ -\frac{1}{\sqrt{2}}-\frac{1}{\sqrt{2}}i \\[ 7pt ]
&\text{これをまとめて表すと} \\[ 5pt ]
&\quad z=\pm \frac{1}{\sqrt{2}} \pm \frac{1}{\sqrt{2}}i \quad \text{(複号同順)} \\[ 7pt ]
&\text{または} \\[ 5pt ]
&\quad z=\pm \left(\frac{1}{\sqrt{2}} + \frac{1}{\sqrt{2}}i \right) \quad \text{(複号同順)}
\end{align*}
複号同順は、数字が同じで符号が異なるときに利用できる表記です。
たとえば、+A+Bと-A-Bの場合、A,Bは同じですが、符号の組合せが異なります。2組の符号の組合せが分かるように、1つにまとめて±A±Bと記述します。符号の組合せは、上に並んだ組(+と+)と下に並んだ組(-と-)です。
他の例を挙げると、もし2つの複素数が+A-Bと-A+Bであれば、±A∓Bとまとめて記述できます。
座標と同じような表記をすることもできます。色々な表記の仕方があるので、覚えておきましょう。
複号同順
\begin{align*}
&\quad x=2 \ \text{のとき} \quad y=2 \\[ 5pt ]
&\quad x=-2 \ \text{のとき} \quad y=-2 \\[ 5pt ]
&\text{を座標のように} \\[ 5pt ]
&\quad (x \ , \ y)=(2 \ , \ 2) \ , \ (-2 \ , \ -2) \\[ 7pt ]
&\text{と書くことがある。} \\[ 5pt ]
&\text{さらに、この場合を} \\[ 5pt ]
&\quad (x \ , \ y)=(\pm 2 \ , \ \pm 2) \quad \text{(複号同順)} \\[ 7pt ]
&\text{と書くことがある。}
\end{align*}
複号同順の表記を覚えると、読みやすい答案の作成に役立ちます。
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さいごにもう一度まとめ
- 複素数を2乗するとき、虚数単位の扱いに注意しよう。
- 複素数の相等では、実部と虚部がともに実数であることが条件。
- 少し難しい連立方程式でも解けるように練習しよう。