式と証明|2つ以上の文字を含む整式の割り算について
今回は2つ以上の文字を含む整式の割り算について学習しましょう。文字が1種類だけの整式であれば扱いやすいですが、文字が2つ以上になると扱い辛くなるので、計算ミスが多くなります。
また、どの文字に着目するかで、割り算の結果が変わってしまいます。2つ以上の文字を含む整式では、これまで以上に注意して計算する必要があります。
2つ以上の文字を含む整式
2つ以上の文字を含む整式は、以下のような式です。
\begin{align*}
&\quad x^{\scriptsize{3}}+(y+1)x+2x^{\scriptsize{2}}-y \\[ 5pt ]
&\quad a^{\scriptsize{3}}-2ab^{\scriptsize{2}}+4b^{\scriptsize{3}}
\end{align*}
どちらの式も2種類の文字を含んでいます。このような整式について割り算するときを考えてみましょう。
\begin{align*}
&\quad x^{\scriptsize{3}}+(y+1)x+2x^{\scriptsize{2}}-y \\[ 5pt ]
&\text{を $x^{\scriptsize{2}}+y$ で割った商と余り}
\end{align*}
この整式にはxとyの2種類の文字が使われているので、xについての3次式、またはyについての1次式の2通りの見方ができます。
割り算をするには、降べきの順に整理しておかなければなりません。それぞれの文字について降べきの順に整理します。
\begin{align*}
&\text{$x$ について降べきの順に整理したとき} \\[ 5pt ]
&\text{(割られる式)} \quad x^{\scriptsize{3}}+2x^{\scriptsize{2}}+(y+1)x-y \\[ 5pt ]
&\text{(割る式)} \quad x^{\scriptsize{2}}+y \\[ 10pt ]
&\text{$y$ について降べきの順に整理したとき} \\[ 5pt ]
&\text{(割られる式)} \quad (x-1)y+x^{\scriptsize{3}}+2x^{\scriptsize{2}}+x \\[ 5pt ]
&\text{(割る式)} \quad y+x^{\scriptsize{2}}
\end{align*}
割られる式だけでなく、割る式についても降べきの順に整理することを忘れないようにしましょう。
文字xに着目したときの割り算は以下のようになります。文字xに着目するので、文字yを定数と同じように扱います。
\begin{align*}
&\text{$x$ に着目したとき、筆算より} \\[ 5pt ]
&\text{商は} \\[ 5pt ]
&\quad x+2 \\[ 5pt ]
&\text{余りは} \\[ 5pt ]
&\quad x-3y
\end{align*}
また、文字yに着目したときの割り算は以下のようになります。文字yに着目するので、文字xを定数と同じように扱います。
\begin{align*}
&\text{$y$ に着目したとき、筆算より} \\[ 5pt ]
&\text{商は} \\[ 5pt ]
&\quad x-1 \\[ 5pt ]
&\text{余りは} \\[ 5pt ]
&\quad 3x^{\scriptsize{2}}+x
\end{align*}
割り算の結果から分かるように、着目する文字によって商も余りも異なる場合があります。このような場合、問題では着目する文字が指定されています。ですから、指定された文字について、降べきの順に整理してから割り算しましょう。
- 着目する文字について降べきの順に整理する。
- 着目しない文字は定数として扱う。
- 着目する文字によって、商や余りが異なる場合がある。
着目する文字が指定されていないときの割り算
2つ以上の文字を含む整式の割り算であっても、問題によっては着目する文字が指定されていない場合があります。このような場合、商や余りがどのようになるのかを考えてみましょう。
\begin{align*}
&\quad a^{\scriptsize{3}}-2ab^{\scriptsize{2}}+4b^{\scriptsize{3}} \\[ 5pt ]
&\text{を $a+2b$ で割った商と余り}
\end{align*}
着目する文字が指定されていなければ、自分の扱いやすそうな文字を選ぶと良いでしょう。ここでは、文字aに着目します。
\begin{align*}
&\text{$a$ について降べきの順に整理すると} \\[ 5pt ]
&\text{(割られる式)} \quad a^{\scriptsize{3}}-2ab^{\scriptsize{2}}+4b^{\scriptsize{3}} = a^{\scriptsize{3}} \underline{-2b^{\scriptsize{2}}a} +4b^{\scriptsize{3}} \\[ 5pt ]
&\text{(割る式)} \quad a+2b
\end{align*}
文字aに着目したとき、文字bを定数と同じように扱うので、係数だと分かるようにします(下線部分)。
文字xに着目したときの割り算は以下のようになります。文字xに着目するので、文字yを定数と同じように扱います。
\begin{align*}
&\text{$a$ に着目したとき、筆算より} \\[ 5pt ]
&\text{商は} \\[ 5pt ]
&\quad a^{\scriptsize{2}}-2ab+2b^{\scriptsize{2}} \\[ 5pt ]
&\text{余りは} \\[ 5pt ]
&\quad 0
\end{align*}
割り算の結果から分かるように、余りが0となりました。文字bに着目した場合でも、商と余りが同じ結果になります。
\begin{align*}
&\text{割り算の基本公式より} \\[ 5pt ]
&\quad a^{\scriptsize{3}}-2b^{\scriptsize{2}}a+4b^{\scriptsize{3}} = (a+2b)(a^{\scriptsize{2}}-2ba+2b^{\scriptsize{2}}) +0 \\[ 5pt ]
&\text{これより、$b$ に着目したとき、} \\[ 5pt ]
&\quad 4b^{\scriptsize{3}}-2ab^{\scriptsize{2}}+a^{\scriptsize{3}} = (2b+a)(2b^{\scriptsize{2}}-2ab+a^{\scriptsize{2}}) +0 \\[ 5pt ]
&\text{となるので、商は $a$ に着目したときと一致する。}
\end{align*}
このことから、割り切れる割り算であれば、どの文字に着目しても商は同じになることが分かります。ですから、着目する文字が指定されなければ、自分の扱いやすそうな文字に着目して割り算すれば良いことが分かります。
また、着目する文字が指定されなければ、割り切れる割り算であり、かつ商は同じとなることが事前に分かるので、計算ミスにも気付くことができます。
次は、2つ以上の文字を含む整式の割り算を実際に解いてみましょう。
2つ以上の文字を含む整式の割り算を扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
\begin{align*}
&(1) \quad \text{$2x^{\scriptsize{2}}+3xy+4y^{\scriptsize{2}}$ を $x+y$ で割った商と余りを求めたい。} \\[ 5pt ]
&\quad \text{(ア)} \quad \text{$x$ についての整式とみて求めよ。} \\[ 5pt ]
&\quad \text{(イ)} \quad \text{$y$ についての整式とみて求めよ。} \\[ 10pt ]
&(2) \quad \text{$2x^{\scriptsize{2}}+xy-6y^{\scriptsize{2}}-2x+17y-12$ を $x+2y-3$ で割った商と余りを求めよ。}
\end{align*}
2種類の文字を含む整式を扱うので、どの文字に着目するのかをしっかり確認しましょう。
問(1)の解答・解説
\begin{align*}
&(1) \quad \text{$2x^{\scriptsize{2}}+3xy+4y^{\scriptsize{2}}$ を $x+y$ で割った商と余りを求めたい。} \\[ 5pt ]
&\quad \text{(ア)} \quad \text{$x$ についての整式とみて求めよ。} \\[ 5pt ]
&\quad \text{(イ)} \quad \text{$y$ についての整式とみて求めよ。}
\end{align*}
問(1)(ア)では、文字xに着目します。与式を文字xについて降べきの順に整理します。
\begin{align*}
&\text{与式を $x$ について降べきの順に整理すると} \\[ 5pt ]
&\quad 2x^{\scriptsize{2}}+3xy+4y^{\scriptsize{2}} = 2x^{\scriptsize{2}}+3yx+4y^{\scriptsize{2}} \\[ 5pt ]
&\text{これを $x+y$ で割り算すれば良い。}
\end{align*}
文字xについての整式とみて筆算すると、以下のようになります。
\begin{align*}
&\text{$x$ についての整式とみたとき、筆算より} \\[ 5pt ]
&\text{商は} \quad 2x+y \\[ 5pt ]
&\text{余りは} \quad 3y^{\scriptsize{2}}
\end{align*}
問(1)(イ)では、文字yに着目します。与式を文字xについて降べきの順に整理します。
\begin{align*}
&\text{与式を $y$ について降べきの順に整理すると} \\[ 5pt ]
&\quad 2x^{\scriptsize{2}}+3xy+4y^{\scriptsize{2}} = 4y^{\scriptsize{2}}+3xy+2x^{\scriptsize{2}} \\[ 5pt ]
&\text{これを $y+x$ で割り算すれば良い。}
\end{align*}
文字yについての整式とみて筆算すると、以下のようになります。
\begin{align*}
&\text{$y$ についての整式とみたとき、筆算より} \\[ 5pt ]
&\text{商は} \quad 4y-x \\[ 5pt ]
&\text{余りは} \quad 3x^{\scriptsize{2}}
\end{align*}
2つの割り算の結果から分かるように割り切れないので、着目する文字が変わると商と余りが異なることが分かります。
問(2)の解答・解説
\begin{equation*}
(2) \quad \text{$2x^{\scriptsize{2}}+xy-6y^{\scriptsize{2}}-2x+17y-12$ を $x+2y-3$ で割った商と余りを求めよ。}
\end{equation*}
問(2)では、着目する文字が指定されていません。このような割り算では、余りが0となって割り切れます。つまり、どの文字に着目しても商が一致します。ここでは、文字xに着目して割り算します。
\begin{align*}
&\text{与式を $x$ について降べきの順に整理すると} \\[ 5pt ]
&\quad 2x^{\scriptsize{2}}+xy-6y^{\scriptsize{2}}-2x+17y-12 = 2x^{\scriptsize{2}}+(y-2)x-6y^{\scriptsize{2}}+17y-12 \\[ 5pt ]
&\text{これを $x+2y-3$ で割り算すれば良い。}
\end{align*}
文字xについての整式とみて筆算すると、以下のようになります。
筆算での計算がやや難しく感じるかもしれませんが、分配法則や乗法公式を使って計算しましょう。
\begin{align*}
&\text{商が $2x$ のときの計算} \\[ 5pt ]
&\quad (x+2y-3) \times 2x \\[ 5pt ]
&= x \times 2x + (2y-3) \times 2x \\[ 5pt ]
&= 2x^{\scriptsize{2}} + (4y-6)x \\[ 10pt ]
&\text{商が $-3y+4$ のときの計算} \\[ 5pt ]
&\quad (x+2y-3) \times (-3y+4) \\[ 5pt ]
&= x \times (-3y+4) + (2y-3) \times (-3y+4) \\[ 5pt ]
&= (-3y+4)x-6y^{\scriptsize{2}}+17y-12
\end{align*}
計算ミスをしやすいので、丁寧に計算しましょう。筆算から商と余りが得られます。
\begin{align*}
&\text{$x$ についての整式とみたとき、筆算より} \\[ 5pt ]
&\text{商は} \quad 2x-3y+4 \\[ 5pt ]
&\text{余りは} \quad 0
\end{align*}
事前に予想した通り、余りが0となって割り切れました。文字yに着目した場合でも、割り切れ、商が一致します。割り切れることは事前に分かっているので、丁寧に筆算し、計算ミスのないようにしましょう。
文字が2つ以上になると複雑になったような感じがしますが、実際にはそれほど複雑ではありません。むしろ、複雑にならないように、特定の文字に着目し、それ以外の文字を定数として扱うわけです。
このような整式の割り算を難しく感じる原因は、このレベルの数式を扱う機会の少なさ、つまり演習の少なさにあります。演習が少ないと習熟度が上がりません。その結果、数式を思うように扱えなくなります。そして、段々と苦手意識をもつようになるでしょう。そうならないためには、学習しているうちに徹底的に演習することが大切です。
式と証明で学習する内容は、これから扱う数式に慣れるための演習のようなものです。今後はもっと複雑で量の多い計算が増えます。ここで数式の扱いに慣れておかないと、数式の扱いで躓いてしまうので、学習すべきことに意識を割くことができなくなります。そのときになって後悔しないためにも、しっかり演習をこなしておきましょう。
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さいごにもう一度まとめ
- 2つ以上の文字を含む場合、着目する文字について降べきの順に整理しよう。
- 着目する文字によって、商や余りが異なる場合があるので注意しよう。
- 割れれる場合、着目する文字にかかわらず、商は一致する。