数学2
分数式の加法や減法を扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
問
\begin{align*}
&\text{次の計算をせよ。} \\[ 5pt ]
&(1) \quad \frac{x^{\scriptsize{2}}+2x+3}{x} – \frac{x^{\scriptsize{2}}+3x+5}{x+1} \\[ 10pt ]
&(2) \quad \frac{x+1}{x+2} – \frac{x+2}{x+3} – \frac{x+3}{x+4} + \frac{x+4}{x+5}
\end{align*}
最初はスピードのことは考えず、計算ミスの少ない計算過程を記述することを意識しましょう。
問(1)の解答・解説
問(1)
\begin{align*}
&\text{次の計算をせよ。} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{x^{\scriptsize{2}}+2x+3}{x} – \frac{x^{\scriptsize{2}}+3x+5}{x+1}
\end{align*}
問(1)は、分数式の加法です。分子の次数が分母の次数よりも大きいことに注目しましょう。割り算の基本公式を利用して、分数式を変形します。
問(1)の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\frac{x^{\scriptsize{2}}+2x+3}{x} – \frac{x^{\scriptsize{2}}+3x+5}{x+1} \\[ 10pt ]
= &\frac{x(x+2)+3}{x} – \frac{(x+1)(x+2)+3}{x+1} \\[ 10pt ]
= &\left\{ \frac{x(x+2)}{x} + \frac{3}{x} \right\} – \left\{ \frac{(x+1)(x+2)}{x+1} + \frac{3}{x+1} \right\} \\[ 10pt ]
= &\left( x+2 + \frac{3}{x} \right) – \left( x+2 + \frac{3}{x+1} \right)
\end{align*}
カッコを上手に使って、符号ミスを回避しましょう。準備ができたので、計算します。
問(1)の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\qquad \vdots \\[ 10pt ]
&= \left( x+2 + \frac{3}{x} \right) – \left( x+2 + \frac{3}{x+1} \right) \\[ 10pt ]
&= \frac{3}{x} – \frac{3}{x+1} \\[ 10pt ]
&= 3 \left( \frac{1}{x} – \frac{1}{x+1} \right) \\[ 10pt ]
&= 3 \cdot \frac{1-0}{x(x+1)} \\[ 10pt ]
&= 3 \cdot \frac{1}{x(x+1)} \\[ 10pt ]
&= \frac{3}{x(x+1)}
\end{align*}
部分分数の公式を利用する場合、分子が1になるように共通因数をくくり出すことを忘れないようにしましょう。
部分分数の公式(応用)
\begin{align*}
&\quad \frac{1}{(x+a)(x+b)} = \frac{1}{b-a} \left( \frac{1}{x+a} – \frac{1}{x+b} \right) \\[ 10pt ]
&\text{が成り立つ。} \\[ 10pt ]
&\text{両辺に $b-a$ を掛けると} \\[ 10pt ]
&\quad \frac{1}{x+a} – \frac{1}{x+b} = \frac{b-a}{(x+a)(x+b)}
\end{align*}
問(2)の解答・解説
問(2)
\begin{align*}
&\text{次の計算をせよ。} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{x+1}{x+2} – \frac{x+2}{x+3} – \frac{x+3}{x+4} + \frac{x+4}{x+5}
\end{align*}
問(2)も分数式の加法や減法が混ざった計算です。分子の次数と分母の次数が等しいことに注目しましょう。それぞれの分数式を変形します。
問(2)の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\frac{x+1}{x+2} – \frac{x+2}{x+3} – \frac{x+3}{x+4} + \frac{x+4}{x+5} \\[ 10pt ]
= &\frac{(x+2)-1}{x+2} – \frac{(x+3)-1}{x+3} – \frac{(x+4)-1}{x+4} + \frac{(x+5)-1}{x+5} \\[ 10pt ]
= &\left( \frac{x+2}{x+2} + \frac{-1}{x+2} \right) – \left( \frac{x+3}{x+3} + \frac{-1}{x+3} \right) – \left( \frac{x+4}{x+4} + \frac{-1}{x+4} \right) + \left( \frac{x+5}{x+5} + \frac{-1}{x+5} \right) \\[ 10pt ]
= &\left( 1 + \frac{-1}{x+2} \right) – \left( 1 + \frac{-1}{x+3} \right) – \left( 1 + \frac{-1}{x+4} \right) + \left( 1 + \frac{-1}{x+5} \right)
\end{align*}
分母の1次式と同じものを分子に作ります。定数項で調整するイメージを持ちましょう。また、符号ミスを防ぐために、カッコを上手に使います。
ここまでが準備です。各分数式との計算に入ります。
問(2)の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\qquad \vdots \\[ 10pt ]
&= \left( 1 + \frac{-1}{x+2} \right) – \left( 1 + \frac{-1}{x+3} \right) – \left( 1 + \frac{-1}{x+4} \right) + \left( 1 + \frac{-1}{x+5} \right) \\[ 10pt ]
&= \frac{-1}{x+2} – \frac{-1}{x+3} – \frac{-1}{x+4} + \frac{-1}{x+5} \\[ 10pt ]
&= -\frac{1}{x+2} + \frac{1}{x+3} + \frac{1}{x+4} – \frac{1}{x+5} \\[ 10pt ]
&= \frac{1}{x+3} -\frac{1}{x+2} + \frac{1}{x+4} – \frac{1}{x+5}
\end{align*}
組合せはいくつか考えられますが、ここでは前2つの分数式の計算と、後ろ2つの分数式の計算とに分けて計算します。部分分数の公式を利用します。
問(2)の解答例 3⃣
\begin{align*}
&\qquad \vdots \\[ 10pt ]
&= \frac{1}{x+3} -\frac{1}{x+2} + \frac{1}{x+4} – \frac{1}{x+5} \\[ 10pt ]
&= \frac{2-3}{(x+3)(x+2)} + \frac{5-4}{(x+4)(x+5)} \\[ 10pt ]
&= \frac{-1}{(x+3)(x+2)} + \frac{1}{(x+4)(x+5)}
\end{align*}
分母がともに2次式の分数式となりました。公式を使えないので、通分して1つの分数式にまとめます。このとき、相手の分数式の分母を見て、持っていない因数を持つように通分します。
問(2)の解答例 4⃣
\begin{align*}
&\qquad \vdots \\[ 10pt ]
&= \frac{-1}{(x+3)(x+2)} + \frac{1}{(x+4)(x+5)} \\[ 10pt ]
&= \frac{-1 \cdot (x+4)(x+5) + 1 \cdot (x+3)(x+2)}{(x+3)(x+2)(x+4)(x+5)} \\[ 10pt ]
&= \frac{-(x^{\scriptsize{2}}+9x+20) + x^{\scriptsize{2}}+5x+6}{(x+3)(x+2)(x+4)(x+5)} \\[ 10pt ]
&= \frac{-4x-14}{(x+3)(x+2)(x+4)(x+5)} \\[ 10pt ]
&= \frac{-2(2x+7)}{(x+3)(x+2)(x+4)(x+5)} \\[ 10pt ]
&= -\frac{2(2x+7)}{(x+2)(x+3)(x+4)(x+5)}
\end{align*}
分数式の加法や減法では、通分するのが基本です。
ただし、問題によっては、通分の前に分数式を変形すると計算が楽になることがあります。先に分数式を変形した方が良いかどうかは、分母と分子の次数を比べることで判断できます。
実際に出題されるとすれば、通分して計算するだけの問題よりも、変形してから計算する問題の方が多いでしょう。
もちろん、分数式の加法や減法であれば、通分できれば計算することはできます。ですから、わざわざ分数式を変形する必要はないと思うかもしれませんが、そうでもありません。
いきなり通分して計算すると、分子の次数が高くなり、計算が面倒になる場合があります。
例題(2)や問(2)では、4つの分数を一度に通分すると、分子は3次式になります。展開して整理する作業をそれぞれの分子でやる必要があります。分数式を変形するのは、分子の次数を下げて、式を扱いやすくするためです。
また、ここで学習した分数式の変形は、その他の単元(たとえば漸近線を求めるとき)でも利用されます。回りくどい計算に感じますが、しっかり変形できるようにしておいた方が良いでしょう。
ベターなのは、与式に応じて方針を使い分けできることです。数学では数式を適切に扱えて当たり前ですから、計算に関しては演習をいくらこなしても損はないでしょう。
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さいごにもう一度まとめ
- 分数式の変形してから計算した方が、そのまま計算するよりも楽な場合がある。
- 分子の次数が分母の次数以上であれば、分数式を変形しよう。
- 分数式の変形では、分子を分母で割った商と余りを利用しよう。
- 分数式の計算では、部分分数の公式も利用しよう。