式と証明|複数の文字に関する恒等式について

数学2

数学2 式と証明

複数の文字に関する恒等式を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

次の等式が $x$ についての恒等式となるように、定数 $a \ , \ b \ , \ c$ の値を定めよ。

\begin{align*} &(1) \quad x^{\scriptsize{2}}+axy+by^{\scriptsize{2}} = (cx+y)(x-4y) \\[ 10pt ] &(2) \quad x^{\scriptsize{2}}-xy-2y^{\scriptsize{2}}+ax-y+1 = (x+y+b)(x-2y+c) \end{align*}

問(1)の解答・解説

問(1)

次の等式が $x$ についての恒等式となるように、定数 $a \ , \ b \ , \ c$ の値を定めよ。

\begin{equation*} \quad x^{\scriptsize{2}}+axy+by^{\scriptsize{2}} = (cx+y)(x-4y) \end{equation*}

問(1)は、例題と同じ形式の問題です。文字が複数あっても、両辺の同類項の係数を比較することができます。

与式の右辺を展開して整理します。右辺を整理するとき、左辺を参考します。

問(1)の解答例 1⃣

右辺を展開して整理すると

\begin{align*} \text{(右辺)} &= (cx+y)(x-4y) \\[ 7pt ] &= cx^{\scriptsize{2}}+(-4c+1)xy-4y^{\scriptsize{2}} \end{align*}

よって、与式は

\begin{align*} &x^{\scriptsize{2}}+axy+by^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ] &\quad = cx^{\scriptsize{2}}+(-4c+1)xy-4y^{\scriptsize{2}} \end{align*}

両辺の同類項の係数を比較します。

問(1)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &x^{\scriptsize{2}}+axy+by^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ] &\quad = cx^{\scriptsize{2}}+(-4c+1)xy-4y^{\scriptsize{2}} \end{align*}

この等式が $x \ , \ y$ についての恒等式となるのは、両辺の各項の係数が等しいときであるので

\begin{align*} \quad \left\{ \begin{array}{l} 1 =c \quad \cdots \text{①} \\ a =-4c+1 \quad \cdots \text{②} \\ b =-4 \quad \cdots \text{③} \end{array} \right. \end{align*}

連立方程式を解きます。

問(1)の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \left\{ \begin{array}{l} 1 =c \quad \cdots \text{①} \\ a =-4c+1 \quad \cdots \text{②} \\ b =-4 \quad \cdots \text{③} \end{array} \right. \\[ 7pt ] &\text{①,②から} \\[ 5pt ] &\quad a=-3 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad a=-3 \ , \ b=-4 \ , \ c=1 \end{align*}

例題レベルなので、解法の手順を確認しながら解きましょう。

問(2)の解答・解説

問(2)

次の等式が $x$ についての恒等式となるように、定数 $a \ , \ b \ , \ c$ の値を定めよ。

\begin{equation*} \quad x^{\scriptsize{2}}-xy-2y^{\scriptsize{2}}+ax-y+1 = (x+y+b)(x-2y+c) \end{equation*}

問(2)も(1)と同じ要領で解きます。

与式の右辺を展開して整理します。右辺を整理するとき、左辺を参考します。

問(2)の解答例 1⃣

右辺を展開して整理すると

\begin{align*} \text{(右辺)} &= (x+y+b)(x-2y+c) \\[ 7pt ] &= x^{\scriptsize{2}}-xy-2y^{\scriptsize{2}}+(b+c)x+(-2b+c)y+bc \end{align*}

よって、与式は

\begin{align*} &x^{\scriptsize{2}}-xy-2y^{\scriptsize{2}}+ax-y+1 \\[ 7pt ] &\quad = x^{\scriptsize{2}}-xy-2y^{\scriptsize{2}}+(b+c)x+(-2b+c)y+bc \end{align*}

両辺の同類項の係数を比較します。

問(2)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &x^{\scriptsize{2}}-xy-2y^{\scriptsize{2}}+ax-y+1 \\[ 7pt ] &\quad = x^{\scriptsize{2}}-xy-2y^{\scriptsize{2}}+(b+c)x+(-2b+c)y+bc \end{align*}

この等式が $x \ , \ y$ についての恒等式となるのは、両辺の各項の係数が等しいときであるので

\begin{align*} \quad \left\{ \begin{array}{l} b+c =a \quad \cdots \text{①} \\ -2b+c =-1 \quad \cdots \text{②} \\ bc =1 \quad \cdots \text{③} \end{array} \right. \end{align*}

連立方程式を解きます。計算が少し難しいかもしれませんが、文字を1つずつ消去していきます。

問(2)の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \left\{ \begin{array}{l} b+c =a \quad \cdots \text{①} \\ -2b+c =-1 \quad \cdots \text{②} \\ bc =1 \quad \cdots \text{③} \end{array} \right. \\[ 7pt ] &\text{②,③から $c$ を消去すると} \\[ 5pt ] &\quad b(2b-1)=1 \\[ 7pt ] &\text{これを整理すると} \\[ 5pt ] &\quad 2b^{\scriptsize{2}}-b-1=0 \\[ 7pt ] &\text{これを解くと} \\[ 5pt ] &\quad (b-1)(2b+1)=0 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad b=-\frac{1}{2} \ , \ 1 \\[ 7pt ] &\text{①,③から} \\[ 5pt ] &\text{$b=-\frac{1}{2}$ のとき} \\[ 5pt ] &\quad c=-2 \ , \ a=-\frac{5}{2} \\[ 7pt ] &\text{$b=1$ のとき} \\[ 5pt ] &\quad c=1 \ , \ a=2 \\[ 7pt ] &\text{したがって} \\[ 5pt ] &(a \ , \ b \ , \ c) = \left(-\frac{5}{2} \ , \ -\frac{1}{2} \ , \ -2 \right) \ , \ (2 \ , \ 1 \ , \ 1) \end{align*}

計算ミスをしやすいので注意しましょう。

これまでは定数の値と言えば、1組しか出てきませんでした。しかし、問(2)のように、連立方程式から2次方程式や3次方程式などが得られる場合があります。

このような場合、解が複数組になることもあります。定数の値は1組とは限らないので注意しましょう。

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さいごにもう一度まとめ

  • 複数の文字に関する恒等式では、両辺の同類項の係数が、それぞれ等しい。
  • 上の証明は、1つの文字について係数比較法を用いることを繰り返して証明できる。
  • 一方の整式を参考にしながら、他方を展開して整理する。