物理のヒント集|ヒントその6.物体に働く力を正しく図示しよう
問題を解き直してみよう
問題を解き直す前に、力の作用図を描くときのコツを確認しておきましょう。
物体に働く力を判断しよう
力の作用図を描くためには、実際にどんな力が物体に働いているのかを判断する必要があります。判断のコツは「物体が何と接触しているか」にあります。
- 物体とばねが接触=ばねの弾性力
- 物体と糸が接触=糸の張力
- 物体と床が接触=垂直抗力や摩擦力
重力以外の張力、弾性力、垂直抗力、摩擦力は、すべて物体と接触していることで発生する力
言い換えると、重力以外の力は、物体に接触していないと発生しないということです。このことを忘れなければ、物体にどんな力が働いているかを判断することができるはずです。
重力以外の力は物体と接触することで働く。それに対して、重力は物体と非接触でも働く。重力だけは別格。
問題に再チャレンジ
問題とメガネ君の答案をもう一度見てみましょう。
今ならメガネ君の答案のどこが間違っているのか分かるはずです。
小球Aと接触しているのは、ばねと糸です。ですから、重力のほかに、ばねの弾性力と糸の張力が小球Aに働きます。小球Bに働く重力は、小球Bに働くのであって、小球Aには働きません。
小球Aに働く力
- 重力…小球Aの中心から、鉛直下向きに働く。
- ばねの下端と接触=ばねの弾性力…ばねの下端から、ばねが縮む方向(=鉛直上向き)に働く。
- 糸の上端と接触=糸の張力…糸の上端から、糸の方向(=鉛直下向き)に働く。
また、小球Bと接触しているのは糸だけです。ですから、重力のほかに、糸の張力が小球Bに働きます。ばねとは接触していないので、ばねの弾性力は働きません。
小球Bに働く力
- 重力…小球Bの中心から、鉛直下向きに働く。
- 糸の下端と接触=糸の張力…糸の下端から、糸の方向(=鉛直上向き)に働く。
このことを踏まえて、小球A,Bに働く力を図示してみるとどうなるでしょうか?
正しくは以下のようになります。物体A,Bに働く力が異なるので、別々に図示しましょう。なお、図(3),(4)では、見やすさを優先して矢印を配置しています。
ちなみに、図(3),(4)の力の作用図を利用すると、鉛直方向の力関係が分かります。力のつり合いが分かれば、簡単に立式することができます。
小球Aについて
- 鉛直上向き:ばねの弾性力 $kx$
- 鉛直下向き:重力 $mg$ と糸の張力 $T$ の合力
小球Bについて
- 鉛直上向き:糸の張力 $T$
- 鉛直下向き:重力 $Mg$
たとえば、①,②式から張力Tを消去すれば、ばねの伸びを求めることができます。なお、小球A,Bにそれぞれ働く糸の張力は等しいことに注意しましょう。
「伸びない軽い糸の両端での張力は等しい」とみなして良いことになっている。
さいごにもう一度
どうじゃ、分かったかの?
はいっ! 力のことをちゃんと理解していませんでした。
そうじゃな。これも定義を正しく覚えていないことから起こる間違いじゃの。
不徳の致すところです(>_<)
メガネ君は難しい言葉を知っとるのぅ。
とても参考になったのが、重力以外の力が接触していないと発生しないということです。次は正解できそうなので、さっそく矢印書きたくなりましたっ!
単純な複合物体なら簡単にこなせるじゃろう。もっと複雑なものもあるから、まぁ要練習じゃの。
分かりましたっ! 次こそは正解してみせますっ!
メガネ君は相変わらずメンタル強いのぅ。次回も楽しみじゃ。
お任せくださいっ!
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