複素数と方程式|2次方程式の解が存在する範囲について

数学2

2次方程式の解が存在する範囲を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

\begin{align*} &\text{$x$ についての $2$ 次方程式} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}-(a-1)x+a+6=0 \\[ 7pt ] &\text{が次のような解をもつように、実数 $a$ の} \\[ 5pt ] &\text{値の範囲をそれぞれ求めよ。} \\[ 7pt ] &(1) \quad \text{$2$ つの解がともに $2$ 以上である} \\[ 5pt ] &(2) \quad \text{$1$ つの解は $2$ より大きく、他の解は $2$ より小さい} \end{align*}

問(1)の解答・解説

問(1)

\begin{align*} &\text{$x$ についての $2$ 次方程式} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}-(a-1)x+a+6=0 \\[ 7pt ] &\text{が次のような解をもつように、実数 $a$ の} \\[ 5pt ] &\text{値の範囲をそれぞれ求めよ。} \\[ 7pt ] &\quad \text{$2$ つの解がともに $2$ 以上である} \end{align*}

2次方程式の解の存在する範囲に関する問題です。放物線を図示すると以下のようになります。

問(1)の放物線

解答例では、実数解の符号問題へ帰着させる解法で解きます。判別式や解の和と積など、解くのに必要な式の値を求めておきます。

問(1)の解答例 1⃣

\begin{align*} &\quad x^{\scriptsize{2}}-(a-1)x+a+6=0 \\[ 7pt ] &\text{$2$ 次方程式の $2$ つの解を $\alpha \ , \ \beta$} \\[ 5pt ] &\text{判別式を $D$ とする。} \\[ 5pt ] &\quad D = \left\{ -\left(a-1 \right) \right\}^{\scriptsize{2}}-4 \left(a+6 \right) \\[ 7pt ] &\text{より} \\[ 5pt ] &\quad D =a^{\scriptsize{2}}-6a-23 \\[ 7pt ] &\text{また、解と係数の関係より} \\[ 5pt ] &\quad \alpha+\beta =a-1 \\[ 7pt ] &\quad \alpha \beta =a+6 \end{align*}

放物線をx軸方向に-2だけ平行移動させます。これで、解の符号問題へ帰着させることができます。帰着させたら、条件を書き出します。

問(1)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \alpha \geqq 2 \ , \ \beta \geqq 2 \\[ 7pt ] &\text{すなわち} \\[ 5pt ] &\quad \alpha-2 \geqq 0 \ , \ \beta-2 \geqq 0 \\[ 7pt ] &\text{であるための条件は} \\[ 5pt ] &\quad \begin{cases} D \geqq 0 \\[ 7pt ] \left(\alpha-2 \right)+\left(\beta-2 \right) \geqq 0 \\[ 7pt ] \left(\alpha-2 \right) \left(\beta-2 \right) \geqq 0 \end{cases} \end{align*}

判別式について「異なる2つの~」という条件がないので、等号を含みます。

3つの条件をそれぞれ解いて、実数aの値の範囲を求めます。

問(1)の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad D =a^{\scriptsize{2}}-6a-23 \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \alpha+\beta =a-1 \\[ 7pt ] &\quad \alpha \beta =a+6 \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \begin{cases} D \geqq 0 \\[ 7pt ] \left(\alpha-2 \right)+\left(\beta-2 \right) \geqq 0 \\[ 7pt ] \left(\alpha-2 \right) \left(\beta-2 \right) \geqq 0 \end{cases} \\[ 7pt ] &\text{$D \geqq 0$ より} \\[ 5pt ] &\quad a^{\scriptsize{2}}-6a-23 \geqq 0 \\[ 7pt ] &\text{ここで、$a^{\scriptsize{2}}-6a-23=0$ の解は} \\[ 5pt ] &\quad a=3 \pm 4 \sqrt{2} \\[ 7pt ] &\text{となるので} \\[ 5pt ] &\quad a \leqq 3-4 \sqrt{2} \ , \ 3+4 \sqrt{2} \leqq a \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\text{また} \\[ 5pt ] &\quad \left(\alpha-2 \right)+\left(\beta-2 \right) \geqq 0 \\[ 7pt ] &\text{すなわち} \\[ 5pt ] &\quad \alpha+\beta-4 \geqq 0 \\[ 7pt ] &\text{より} \\[ 5pt ] &\quad \left(a-1\right)-4 \geqq 0 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad 5 \leqq a \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\text{さらに} \\[ 5pt ] &\quad \left(\alpha-2 \right) \left(\beta-2 \right) \geqq 0 \\[ 7pt ] &\text{すなわち} \\[ 5pt ] &\quad \alpha \beta-2 \left(\alpha+\beta \right)+4 \geqq 0 \\[ 7pt ] &\text{より} \\[ 5pt ] &\quad \left(a+6 \right)-2 \left(a-1 \right)+4 \geqq 0 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad a \leqq 12 \quad \cdots \text{③} \end{align*}

平方根を含む値がありますが、このような場合、おおよその値を用いるのが最も簡単です。

平方根のおおよその値を覚えておこう

\begin{align*} &\text{$\sqrt{2} = 1.41$ とすると} \\[ 5pt ] &\quad \quad 3-4\sqrt{2}=3-5.64=-2.64 \\[ 7pt ] &\quad \quad 3+4\sqrt{2}=3+5.64=8.64 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad 3-4\sqrt{2} \lt 5 \\[ 7pt ] &\quad 5 \lt 3+4\sqrt{2} \lt 12 \end{align*}

①~③式の共通の範囲を求めます。数直線を利用しましょう。

共通範囲を求める

3つの範囲の共通部分なので、共通部分は横線が3つ重なる範囲です。

3つの範囲の共通部分を探します。範囲の共通部分は、横線が3つ重なる範囲です。

問(1)の解答例 4⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad a \leqq 3-4 \sqrt{2} \ , \ 3+4 \sqrt{2} \leqq a \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad 5 \leqq a \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad a \leqq 12 \quad \cdots \text{③} \\[ 7pt ] &\text{①,②,③より共通範囲を求めると、実数 $a$ の値の範囲は} \\[ 5pt ] &\quad 3+4\sqrt{2} \leqq a \leqq 12 \end{align*}

問(1)の別解例

別解例では、基本的な解法で解きます。

問(1)の作図(別解)

図示したグラフを見ながら、2つの解がともに2以上となるための条件を書き出します。

問(1)の別解例

\begin{align*} &\quad f(x)=x^{\scriptsize{2}}-(a-1)x+a+6 \\[ 7pt ] &\text{のグラフを利用すると} \\[ 5pt ] &\quad \begin{cases} D=a^{\scriptsize{2}}-6a-23 \geqq 0 \\[ 7pt ] \text{軸} \quad x=\frac{a-1}{2} \geqq 2 \\[ 7pt ] f(2)=4-2(a-1)+a+6 \geqq 0 \end{cases} \\[ 7pt ] &\text{が成り立てばよい。} \\[ 5pt ] &\text{$D \geqq 0$ より} \\[ 5pt ] &\quad a \leqq 3-4 \sqrt{2} \ , \ 3+4 \sqrt{2} \geqq a \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\text{また、軸の位置について} \\[ 5pt ] &\quad \frac{a-1}{2} \geqq 2 \\[ 7pt ] &\text{より} \\[ 5pt ] &\quad a \geqq 5 \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\text{さらに $f(2) \geqq 0$ より} \\[ 5pt ] &\quad a \leqq 12 \quad \cdots \text{③} \\[ 7pt ] &\text{①,②,③から共通範囲を求めると} \\[ 5pt ] &\quad 3+4\sqrt{2} \leqq a \leqq 12 \end{align*}

2次方程式の実数解の符号問題への帰着が難しく感じるのであれば、放物線とx軸の位置関係を利用しましょう。こちらの方が基本的な解法なので、数学1の知識で解くことができます。

問(2)の解答・解説

問(2)

\begin{align*} &\text{$x$ についての $2$ 次方程式} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}-(a-1)x+a+6=0 \\[ 7pt ] &\text{が次のような解をもつように、実数 $a$ の} \\[ 5pt ] &\text{値の範囲をそれぞれ求めよ。} \\[ 7pt ] &\quad \text{$1$ つの解は $2$ より大きく、他の解は $2$ より小さい} \end{align*}

グラフを図示すると以下のようになります。

解答例では、問(1)と同じように実数解の符号問題へ帰着させる解法で解きます。問(1)の結果も利用します。

問(2)の解答例 1⃣

\begin{align*} &\quad \alpha \lt 2 \lt \beta \\[ 7pt ] &\text{すなわち} \\[ 5pt ] &\quad \alpha-2 \lt 0 \lt \beta-2 \\[ 7pt ] &\text{となるための条件は} \\[ 5pt ] &\quad \left(\alpha-2 \right) \left(\beta-2 \right) \lt 0 \quad \cdots \text{④} \\[ 7pt ] &\text{これは $\beta \lt 2 \lt \alpha$ のときも同様。} \end{align*}

2つの解α,βの大小関係に条件がないので、どちらの場合についても言及しておきましょう。この条件から、実数aについての式を導きます。式があつだけなので、ミスなく変形しましょう。

問(2)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \left(\alpha-2 \right) \left(\beta-2 \right) \lt 0 \quad \cdots \text{④} \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\text{④を整理すると} \\[ 5pt ] &\quad \alpha \beta-2 \left(\alpha+\beta \right)+4 \lt 0 \\[ 7pt ] &\text{(1)から} \\[ 5pt ] &\quad \left(a+6 \right)-2 \left(a-1 \right)+4 \lt 0 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad 12 \lt a \\[ 7pt ] &\text{したがって、実数 $a$ の値の範囲は} \\[ 5pt ] &\quad a \gt 12 \end{align*}

問(2)は、実数解の符号に関する問題の中でも解きやすいので、必ず完答しましょう。

問(2)の別解例

2次関数のグラフと x 軸との位置関係から条件を導くと、以下のようになります。

問(2)の別解例

\begin{align*} &\quad f(x)=x^{\scriptsize{2}}-(a-1)x+a+6 \\[ 7pt ] &\text{のグラフを利用すると} \\[ 5pt ] &\quad \alpha \lt 2 \lt \beta \\[ 7pt ] &\text{または} \\[ 5pt ] &\quad \beta \lt 2 \lt \alpha \\[ 7pt ] &\text{となるための条件は} \\[ 5pt ] &\quad f(2)=4-2(a-1)+a+6 \lt 0 \\[ 7pt ] &\text{が成り立てばよい。} \\[ 5pt ] &\text{これを解くと} \\[ 5pt ] &\quad 12 \lt a \\[ 7pt ] &\text{したがって、実数 $a$ の値の範囲は} \\[ 5pt ] &\quad a \gt 12 \end{align*}

放物線とx軸の位置関係を利用した解法は、基本的な解法だけあって条件を書き出しやすいのが特徴です。

それに対して、解の符号問題へと帰着させる解法は、解α,βの和と積をそのまま用いることができないので、混乱しやすいかもしれません。

混乱を防ぐには、放物線を図示することです。放物線を平行移動させると、共有点も平行移動するので、αとβをそのまま使えないことに気付くはずです。

どちらの解法でも間違う可能性はゼロではありません。ですから、自分の間違いやすい箇所を把握して、それを防ぐ対策を考えておくことが大切です。

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さいごにもう一度まとめ

  • 2次方程式の解の存在範囲では、2次関数のグラフを上手に利用しよう。
  • 2次方程式の解の存在範囲では、グラフとx軸との位置関係から条件を書き出すのが基本的な解法。
  • 2次方程式の解の存在範囲では、グラフを平行移動させると、解の符号問題へと帰着させることができる。
  • 解の符号問題へ帰着させる解法では、解α,βではなく、α-k,β-kの和と積を使おう。