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数列の極限|漸化式と極限 -極限値を視覚的に見よう-

数学3

漸化式と極限 極限値を視覚的に見よう

今回は、漸化式と極限について学習しましょう。

漸化式は数学B「数列」で学習します。特に、隣接2項間の漸化式は入試でも頻出なので、しっかりマスターしておきたいところです。

今回は極限の話がメインなので、隣接2項間の漸化式についての詳しい解説は後述します。忘れた人はご確認下さい。

漸化式と極限を扱った問題を解いてみよう

次の問題を考えてみましょう。

例題1

a1=5 , an+1=23an+1(n=1 , 2 , 3 ,)で定義される数列 {an} についてlimnanを求めよ。

例題1の解答・解説

例題1は、数列{an}の一般項an の極限を求める問題です。極限を求めるためには、漸化式から数列{an}の一般項anを求める必要があります。

特性方程式を用いて漸化式を変形し、新しい数列の一般項から数列{an}の一般項anを求めます。

例題1の解答例 1⃣

漸化式を変形するとan+13=23(an3)数列 {an3} は初項 a13=53=2公比 23の等比数列であるので、その一般項はan3=2(23)n1よって、数列 {an} の一般項 an はan=2(23)n1+3

数列{an}の一般項anを求めたら、極限値を求めます。

例題1の解答例 2⃣

an=2(23)n1+3よって limnan= limn{2(23)n1+3}= 3

漸化式と極限の関係

例題1の結果から、一般項anの極限値について以下のことが分かります。

特性方程式の解と極限値との関係

特性方程式α=23α+1の解は α=3 であり、またa1=5 , an+1=23an+1の limnan もanα=3となる。

以上のことから、漸化式an+1=pan+q(p,qは定数,p≠1)で表される数列{an}では、その一般項anの極限値は特性方程式の解αの値に近づくことが分かります。

このことを知っていると、極限値を予測したうえで問題に取り組むことが可能になります。

極限値を視覚的に見て予測する

次は一般項anの極限値を視覚的に捉えてみましょう。特性方程式のαをxに置き換えてみます。

特性方程式のαをxに置き換える

特性方程式の α を x に置き換えるとx=23x+1

特性方程式がxについての方程式になりました。この式は以下のように解釈することができます。

グラフの交点の話に置き換える

x=23x+1は、2 つのグラフ{y=xy=23x+1の交点の x 座標を求める式である。

以上のことから、特性方程式の代わりにグラフの交点の話に置き換えると、漸化式の変形を以下のように解釈できます。

漸化式をグラフを利用して変形

1 次型の漸化式 an+1=pan+q(p , q は定数 , p1)は、2 つのグラフ{y=xy=px+qの交点の x 座標を x=α とするとan+1=pan+qan+1α=p(anα)と変形できる。

さらに先ほどの極限値の話も加えると、漸化式と極限の関係をグラフを使って以下のように解釈できます。

極限とグラフの関係

1 次型の漸化式 an+1=pan+q(p , q は定数 , p1)の limnan は、2 つのグラフ{y=xy=px+qの交点の x 座標を x=α とするとlimnan はan交点の x 座標 αとなる。

このことから、一般項anは、n→∞のとき、2つのグラフの交点のx座標に近づくことが分かります。

このように漸化式をグラフと関連付けることは、極限値が視覚的に見える(予測できる)というメリットがあります。

高校数学では抽象的な数式を扱うことが多いので、イメージの湧かない人が多いかもしれません。ですから、グラフで視覚化できると、問題に取り組みやすくなるのではないかと思います。

次は、いくつかの例をグラフを使って考えてみましょう。

極限値を予測してみよう

例題2

a1=1 , an+1=2an+3(n=1 , 2 , 3 ,)

で定義される数列 {an} について、数列 {an} が極限値 α をもつとき、α の値を求めよ。

扱いの難しそうな漸化式ですが、グラフを使えば極限値を予測することができます。

極限値をグラフで予測する

漸化式より、2 つのグラフ{y=xy=2x+3の交点の x 座標を考える。

2つのグラフを図示すると以下のようになります。

漸化式を視覚化例題2
交点のx座標が極限値

図からn→∞のとき、anは2つのグラフの交点のx座標3に近づくことが予想されます。これより、limnan=3 と予測できます。

グラフを用いずに極限値を予測するとすれば以下のようにします。

例題2の解答例

limnan=α とするとlimnan=limnan+1=αより、漸化式からα=2α+3①の両辺を 2 乗するとα2=2α+3これを解くとα=1 , 3α=1 は①を満たさないのでα=3

一般項anの極限値が3であると予測したうえで答案を作成します。実際の記述では、一般項anを求めてから、n→∞のときの極限値を求めます。

次の問題でも極限値を予測してみましょう。

例題3

a1=3 , an+1=12(an+1an)(n=1 , 2 , 3 ,)

で定義される数列 {an} について、数列 {an} が極限値 α をもつとき、α の値を求めよ。

こちらも一見して扱いにくそうな漸化式です。こんな漸化式でもグラフを使えば極限値を予測できます。

極限値をグラフで予測する

漸化式より、2 つのグラフ{y=xy=12(x+1x)の交点の x 座標を考える。なおy=12(x+1x)のグラフはy=12x , y=12xのグラフを足し合わせて図示する。

2つのグラフを図示すると以下のようになります。

漸化式を視覚化例題3
交点のx座標が極限値

図からn→∞のとき、anは2つのグラフの交点のx座標1に近づくことが予想されます。これより、limnan=1 と予測できます。

例題のような隣接2項間の漸化式であれば、グラフを用いて極限値を予測できます。極限値を予測したうえで問題に取り組めるので、ほとんどの場合で答案を手際よく作成できるようになります。

ただし、実際には漸化式から一般項を求めたり、証明が必要だったりするので、あくまでも予測として利用しましょう

例題2,3は誘導型の小問形式で出題

例題2,3のような問題は、一般に誘導型の問題になっています。たとえば例題3は、以下のような小問形式で出題されます。

例題2,3は実際は小問形式

a1=3 , an+1=12(an+1an)(n=1 , 2 , 3 ,)で定義される数列 {an} について(1) 数列 {an} が極限値 α をもつとき、α の値を求めよ。(2) (1) の α について、an1 , an+1112(an1) を示せ。(3) limnan=α であることを示せ。

小問(2),(3)はグラフを見れば明らかですが、きちんと証明する必要があります。

また、小問をひとまとめにして出題される場合もあります。そのような場合でも、小問形式の問題をしっかりマスターしておけばきちんと対応できるでしょう。

次ページでは隣接2項間の漸化式について解説しています。数学Bの数列では頻出なので、少しでも足しになれば幸いです。