数列の極限|漸化式と極限 -極限値を視覚的に見よう-

今回は、漸化式と極限について学習しましょう。
漸化式は数学B「数列」で学習します。特に、隣接2項間の漸化式は入試でも頻出なので、しっかりマスターしておきたいところです。
今回は極限の話がメインなので、隣接2項間の漸化式についての詳しい解説は後述します。忘れた人はご確認下さい。
漸化式と極限を扱った問題を解いてみよう
次の問題を考えてみましょう。
例題1
例題1の解答・解説
例題1は、数列{an}の一般項an の極限を求める問題です。極限を求めるためには、漸化式から数列{an}の一般項anを求める必要があります。
特性方程式を用いて漸化式を変形し、新しい数列の一般項から数列{an}の一般項anを求めます。
例題1の解答例 1⃣
数列{an}の一般項anを求めたら、極限値を求めます。
例題1の解答例 2⃣
漸化式と極限の関係
例題1の結果から、一般項anの極限値について以下のことが分かります。
特性方程式の解と極限値との関係
以上のことから、漸化式an+1=pan+q(p,qは定数,p≠1)で表される数列{an}では、その一般項anの極限値は特性方程式の解αの値に近づくことが分かります。
このことを知っていると、極限値を予測したうえで問題に取り組むことが可能になります。
極限値を視覚的に見て予測する
次は一般項anの極限値を視覚的に捉えてみましょう。特性方程式のαをxに置き換えてみます。
特性方程式のαをxに置き換える
特性方程式がxについての方程式になりました。この式は以下のように解釈することができます。
グラフの交点の話に置き換える
以上のことから、特性方程式の代わりにグラフの交点の話に置き換えると、漸化式の変形を以下のように解釈できます。
漸化式をグラフを利用して変形
さらに先ほどの極限値の話も加えると、漸化式と極限の関係をグラフを使って以下のように解釈できます。
極限とグラフの関係
このことから、一般項anは、n→∞のとき、2つのグラフの交点のx座標に近づくことが分かります。
このように漸化式をグラフと関連付けることは、極限値が視覚的に見える(予測できる)というメリットがあります。
高校数学では抽象的な数式を扱うことが多いので、イメージの湧かない人が多いかもしれません。ですから、グラフで視覚化できると、問題に取り組みやすくなるのではないかと思います。
次は、いくつかの例をグラフを使って考えてみましょう。
極限値を予測してみよう
例題2
で定義される数列 {an} について、数列 {an} が極限値 α をもつとき、α の値を求めよ。
扱いの難しそうな漸化式ですが、グラフを使えば極限値を予測することができます。
極限値をグラフで予測する
2つのグラフを図示すると以下のようになります。
図からn→∞のとき、anは2つのグラフの交点のx座標3に近づくことが予想されます。これより、limn→∞an=3 と予測できます。
グラフを用いずに極限値を予測するとすれば以下のようにします。
例題2の解答例
一般項anの極限値が3であると予測したうえで答案を作成します。実際の記述では、一般項anを求めてから、n→∞のときの極限値を求めます。
次の問題でも極限値を予測してみましょう。
例題3
で定義される数列 {an} について、数列 {an} が極限値 α をもつとき、α の値を求めよ。
こちらも一見して扱いにくそうな漸化式です。こんな漸化式でもグラフを使えば極限値を予測できます。
極限値をグラフで予測する
2つのグラフを図示すると以下のようになります。
図からn→∞のとき、anは2つのグラフの交点のx座標1に近づくことが予想されます。これより、limn→∞an=1 と予測できます。
例題のような隣接2項間の漸化式であれば、グラフを用いて極限値を予測できます。極限値を予測したうえで問題に取り組めるので、ほとんどの場合で答案を手際よく作成できるようになります。
ただし、実際には漸化式から一般項を求めたり、証明が必要だったりするので、あくまでも予測として利用しましょう。
例題2,3は誘導型の小問形式で出題
例題2,3のような問題は、一般に誘導型の問題になっています。たとえば例題3は、以下のような小問形式で出題されます。
例題2,3は実際は小問形式
小問(2),(3)はグラフを見れば明らかですが、きちんと証明する必要があります。
また、小問をひとまとめにして出題される場合もあります。そのような場合でも、小問形式の問題をしっかりマスターしておけばきちんと対応できるでしょう。
次ページでは隣接2項間の漸化式について解説しています。数学Bの数列では頻出なので、少しでも足しになれば幸いです。