式と証明|比例式の値について

数学2

数学2 式と証明

今回は比例式の値について学習しましょう。比例式には特有の扱い方がありました。ここでは、その扱い方を用いて、比例式の値を求めます。

難しい計算はそれほど多くないですが、式の変形が少し特殊かもしれません。求め方の手順をしっかり理解しましょう。

比例式の値

比例式とは、比、または比の値が等しいことを示す式のことです。比例式は以下のような式です。

比例式の例

\begin{align*} &\quad A:B=X:Y \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\text{内項の積と外項の積が等しいので} \\[ 5pt ] &\quad AY=BX \\[ 7pt ] &\text{これを変形すると} \\[ 5pt ] &\quad \frac{A}{B}=\frac{X}{Y} \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\text{①,②より} \\[ 5pt ] &\quad A:B=X:Y \ \Leftrightarrow \ \frac{A}{B}=\frac{X}{Y} \end{align*}

中学では①式のことを比例式と学習します。しかし、②式のように、比の値を等号で結んだ式も比例式に含まれます。ここでは、主に比の値を用いた等式の方を扱います。

比例式の少し厄介な点は、比の値は、あくまでも割合と考えても良い)を表しており、文字そのものの値を表すわけではないということです。比の値が分数で表されるので、約分されていると考えると分かりやすいかもしれません。

このままだと扱いに困るので、工夫する必要があります。

比例式の扱い方

\begin{align*} &\quad \frac{a}{b}=\frac{c}{d}=k \\[ 5pt ] &\text{とおくと} \\[ 5pt ] &\quad \frac{a}{b}=k \ \text{より} \quad a= bk \\[ 5pt ] &\quad \frac{c}{d}=k \ \text{より} \quad c=dk \end{align*}

=k」とおくことで、他の文字を用いてはいますが、文字a,cの値を表すことができ、式に代入しやすくなります。このように「=k」とおくことが比例式特有の扱い方となります。

これを利用して比例式の値を求める問題があります。

比例式の値を求めてみよう

例題から比例式の値の求め方のポイントを考えてみましょう。

例題

\begin{align*} &\quad \frac{y+z}{x}=\frac{z+x}{y}=\frac{x+y}{z} \\[ 7pt ] &\text{のとき、この式の値を求めよ。} \end{align*}

例題の解答・解説

与式から、どの分数式の値も等しいことが分かります。ですから、どれか1つでも分数式の値が分かれば解けそうだと予想できます。

ただ、比例式の分母からどの文字の値も0ではないことは言えますが、それ以上は分かりません。そうなると、このままでは上手くいきそうにありません。

そこで、比例式特有の扱い方を利用します。

例題の解答例 1⃣

\begin{align*} &\quad \frac{y+z}{x}=\frac{z+x}{y}=\frac{x+y}{z}=k \\[ 7pt ] &\text{とおく。} \end{align*}

=k」とおいたので、文字kの値を求めることができれば、分数式や文字の値に拘らなくても比例式の値を求めることができそうです。

文字kの値を求めるために、3つの分数式から新たに関係式を導出します。

例題の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \frac{y+z}{x}=\frac{z+x}{y}=\frac{x+y}{z}=k \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad y+z=xk \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad z+x=yk \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\quad x+y=zk \quad \cdots \text{③} \end{align*}

比例式そのものにはあまり使い道がないので、このような作業を行います。比例式の値を求める問題では、ここからが本番です。3つの等式①,②,③から文字kの値を求めますが、ちょっとしたテクニックを用います。

例題の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad y+z=xk \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad z+x=yk \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\quad x+y=zk \quad \cdots \text{③} \\[ 7pt ] &\text{①,②,③について、辺々を加えると} \\[ 5pt ] &\quad 2 \left( x+y+z \right)= \left( x+y+z \right)k \quad \cdots \text{④} \end{align*}

辺々を加える」とは、等式の左辺どうし、右辺どうしをそれぞれ足し算することです。3つの等式の辺々を加えることによって、新たに④式を得ることができます。

④式には共通因数x+y+zがあります。ここで最も間違いが多いのは、何も考えずに共通因数で両辺を割ってしまうことです。

ここでは、文字x,y,zの値が不明なので、場合によっては共通因数x+y+zの値が0である可能性があります。もちろん、0ではない場合もありますが、このままでは何とも言えません。

文字や文字を含む式の値が確実に0ではないと言えなければ、簡単に割り算してはいけません。

0で割ることはできない。文字や文字を含む式の値が0になる可能性があれば、むやみに割り算しないこと。

ここからは共通因数の値によって場合分けをします。まず、共通因数x+y+zの値が0でないときを考えます。

例題の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad 2 \left( x+y+z \right)= \left( x+y+z \right)k \quad \cdots \text{④} \\[ 7pt ] &[ \ 1 \ ] \ x+y+z \neq 0 \ \text{のとき} \\[ 5pt ] &\text{④より} \\[ 5pt ] &\quad k=2 \end{align*}

④式から比例式の値(kの値)を簡単に求めることができました。簡単に求めることができましたが、場合によっては求めたkの値が不適になるときがあります。

それを確認するために、求めたkの値における連立方程式を解きます。比例式の分母が0でないことは明らかなので、もし、文字x,y,zの値がどれか1つでも0となれば、求めた比例式の値は不適となります。

例題の解答例 4⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad k= 2 \\[ 7pt ] &\text{このとき、①,②,③は} \\[ 5pt ] &\quad y+z=2x \quad \cdots \text{①’} \\[ 5pt ] &\quad z+x=2y \quad \cdots \text{②’} \\[ 5pt ] &\quad x+y=2z \quad \cdots \text{③’} \\[ 5pt ] &\text{①’-②’より、} \\[ 5pt ] &\quad y-x=2x-2y \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad x=y \\[ 7pt ] &\text{これと③’より、} \\[ 5pt ] &\quad x+x=2z \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad x=z \\[ 7pt ] &\text{したがって、} \\[ 5pt ] &\quad x=y=z \end{align*}

連立方程式を解くと、k=2のとき、文字x,y,zの値がすべて等しいことが分かりました。

文字x,y,zは比例式の分母なので、x,y,zの値が0でないことは明らかです。これらから文字x,y,zが0となるような解が得られなかったので、この場合分けで求めたkの値は題意に適することが分かります。

共通因数が0でないとき、比例式の値を求めたら、連立方程式を解いて確認。

次に、共通因数x+y+zの値が0であるときを考えます。このとき、④式では比例式の値を求めることはできないので、与式の分数式を用います。

例題の解答例 5⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &[ \ 2 \ ] \ x+y+z = 0 \ \text{のとき} \\[ 5pt ] &\quad x+y+z = 0 \\[ 7pt ] &\text{より} \\[ 5pt ] &\quad y+z=-x \\[ 7pt ] &\text{これと与式から、} \\[ 5pt ] &\quad \frac{y+z}{x}=\frac{-x}{x}=-1 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad k=-1 \\[ 7pt ] &[ \ 1 \ ] \ , \ [ \ 2 \ ] \ \text{より、} \\[ 5pt ] &x+y+z \neq 0 \ \text{のとき} \quad 2 \\[ 7pt ] &x+y+z = 0 \ \text{のとき} \quad -1 \end{align*}

この場合分けでは、k=-1のときの連立方程式を解いていません。これは、以下のように①~③式がすべて同じ式になり、解くことができないからです。

k=-1のときの連立方程式

\begin{align*} &\quad y+z=xk \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad z+x=yk \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\quad x+y=zk \quad \cdots \text{③} \\[ 7pt ] &\text{これらに $k=-1$ を代入する。} \\[ 5pt ] &\text{①は} \\[ 5pt ] &\quad y+z=-x \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad x+y+z=0 \\[ 7pt ] &\text{また、②は} \\[ 5pt ] &\quad z+x=-y \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad x+y+z=0 \\[ 7pt ] &\text{さらに、③は} \\[ 5pt ] &\quad x+y=-z \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad x+y+z=0 \end{align*}

共通因数が0であるとき、分数式を用いてkの値を求める。求めたkの値のときの連立方程式を解く必要なし。

式の値は、場合分けから分かるように、2通りあります。比例式を扱った問題であれば、まず「=k」とおいてスタートしましょう。また、基本的に場合分けが必要になるので、忘れないようにしましょう。

循環形の式の扱い方

循環形の式

\begin{align*} &\quad y+z=xk \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad z+x=yk \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\quad x+y=zk \quad \cdots \text{③} \end{align*}

「=k」とおいて得られた①,②,③の左辺は、x⇒y⇒zとおくと次の式が得られることから、文字x,y,zの循環形と言われます。

このような循環形の式では、解答例のように、辺々を加えたり引いたりすると上手くいくことが多いのが特徴です。

ただし、①,②,③の連立方程式を解く要領で文字を減らしていくのが基本なので、循環形に気付かなくても解くことは可能です。

循環形の式の連立方程式では、辺々を足したり引いたりすると上手くいくことが多い。

次は、比例式の値を扱った問題を実際に解いてみましょう。