物理の要点|熱と気体
目次
熱とエネルギー
熱容量と比熱
熱容量
ある物体全体の温度を $1 \ \mathrm{K}$ 変化させるのに要する熱量をその物体の熱容量という。熱容量 $C \ \mathrm{[J/K]}$ の物体の温度を $\varDelta t \ \mathrm{[K]}$ 変化させるのに要する熱量を $Q \ \mathrm{[J]}$ とすると、次のように表される。
\begin{equation*}
\quad Q =C \varDelta t
\end{equation*}
比熱
物質 $1 \ \mathrm{g}$ の温度を $1 \ \mathrm{K}$ 変化させるのに要する熱量を比熱という。比熱 $c \ \mathrm{[J/(g・K)]}$、質量 $m \ \mathrm{[g]}$ の物質の温度を $\varDelta t \ \mathrm{[^{\circ} C]}$ 変化させるのに要する熱量を $Q \ \mathrm{[J]}$ とすると、次のように表される。
\begin{equation*}
\quad Q =cm \varDelta t
\end{equation*}
また、熱容量 $C$ と比熱 $c$ の関係は
\begin{equation*}
\quad C =cm
\end{equation*}
潜熱
潜熱
物体の状態を変化させるために必要な熱量を潜熱という。潜熱には、融解熱や蒸発熱などがある。
融解熱
物質 $1 \ \mathrm{g}$ を個体から液体に状態変化させるのに要する熱量を融解熱という。
蒸発熱
物質 $1 \ \mathrm{g}$ を液体から気体に状態変化させるのに要する熱量を蒸発熱という。
気体の圧力・体積・温度の変化
ボイル・シャルルの法則
一定量の気体の体積 $V \ \mathrm{[m^{\scriptsize{3}}]}$ は、圧力 $p \ \mathrm{[Pa]}$ に反比例し、絶対温度 $T \ \mathrm{[K]}$ に比例する
\begin{equation*}
\quad \frac{PV}{T} = \ \text{一定}
\end{equation*}
ボイルの法則
温度が一定のとき
\begin{equation*}
\quad PV = \ \text{一定}
\end{equation*}
シャルルの法則
圧力が一定のとき
\begin{equation*}
\quad \frac{V}{T} = \ \text{一定}
\end{equation*}
気体がする仕事
圧力 $p \ \mathrm{[Pa]}$ の気体が、圧力一定の状態で膨張して、体積が $\varDelta V \ \mathrm{[m^{\scriptsize{3}}]}$ だけ増えたとき、気体のした仕事 $W \ \mathrm{[J]}$ は、次の式で表される。
\begin{equation*}
\quad W =p \varDelta V
\end{equation*}
熱力学第1法則
気体が外部から $Q \ \mathrm{[J]}$ の熱を与えられ、$W \ \mathrm{[J]}$ の仕事をされたとき、気体の内部エネルギーの増加量 $\varDelta U \ \mathrm{[J]}$ は、次のように表される。
\begin{equation*}
\quad \varDelta U=Q+W
\end{equation*}
気体の変化
理想気体の状態方程式
$n \ \mathrm{[mol]}$ の理想気体の圧力 $p \ \mathrm{[Pa]}$、体積 $V \ \mathrm{[m^{\scriptsize{3}}]}$、絶対温度 $T \ \mathrm{[K]}$ の間には、次の関係が成り立つ。この式を理想気体の状態方程式という。
\begin{equation*}
\quad pV=nRT
\end{equation*}
ただし、$R$ は気体定数といい、
\begin{equation*}
\quad R=8.31 \ \mathrm{J/(mol \cdot K)}
\end{equation*}
気体分子の運動
気体の圧力
気体の圧力は、気体分子が器壁に衝突するときに与える力積によって生じる。分子1個の質量を $m \ \mathrm{[kg]}$、2乗平均速度を $\sqrt{\overline{ \upsilon^{\scriptsize{2}} }}$ とすると、体積 $V \ \mathrm{[m^{\scriptsize{3}}]}$ 中に $N$ 個の分子が含まれている気体の圧力 $p \ \mathrm{[Pa]}$ は、次のように表される。
\begin{equation*}
\quad p=\frac{Nm \overline{ \upsilon^{\scriptsize{2}} }}{3V}
\end{equation*}
分子の運動エネルギー
単原子分子理想気体の分子1個の平均運動エネルギーは、気体の種類によらず、絶対温度 $T \ \mathrm{[K]}$ によって決まる。
\begin{equation*}
\quad \frac{1}{2} m \overline{ \upsilon^{\scriptsize{2}} } = \frac{3}{2} kT
\end{equation*}
ただし、$k$ をボルツマン定数という。
また、$N_{\scriptsize{A}}$ をアボガドロ定数とすると
\begin{equation*}
\quad k=\frac{R}{N_{\scriptsize{A}}}
\end{equation*}
気体の比熱
定積モル比熱
気体の比熱は、定積変化の場合と定圧変化の場合とで異なる。気体 $1 \ \mathrm{mol}$ の温度を、体積一定の状態で $1 \ \mathrm{K}$ だけ上昇させるのに必要なエネルギー $C_{\scriptsize{V}} \ \mathrm{[J]}$ を定積モル比熱という。
定圧モル比熱
気体 $1 \ \mathrm{mol}$ の温度を、圧力一定の状態で $1 \ \mathrm{K}$ だけ上昇させるのに必要なエネルギー $C_{\scriptsize{P}} \ \mathrm{[J]}$ を定圧モル比熱という。
気体の内部エネルギー
個々の気体分子がもつエネルギーの総和が、その気体の内部エネルギーである。$n \ \mathrm{[mol]}$ の気体が絶対温度 $T \ \mathrm{[K]}$ のときにもつ内部エネルギー $U \ \mathrm{[J]}$ は、次の式で表される。
\begin{equation*}
\quad U=nC_{\scriptsize{V}}T
\end{equation*}
単原子分子理想気体の場合は、
\begin{equation*}
\quad U=\frac{3}{2} nRT
\end{equation*}
物理・物理基礎のオススメ本
おすすめ その1
- 宇宙一わかりやすい高校物理(力学・波動)
- 宇宙一わかりやすい高校物理(電磁気・熱・原子)
物理入門者や、物理を苦手にしている人に導入書としておすすめです。教科書が学習の中心であるべきですが、どうしても教科書で理解できない箇所が出てきたら本書で補完すると良いでしょう。イラストが豊富なので独学でも使えます。
分冊になっているので、力学と波動以外の分野はもう1冊の方になります。
おすすめ その2
- 秘伝の物理講義[力学・波動]
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おすすめ その3
物理教室(河合塾series)
所有していますが、これ1冊で基礎から応用まで十分対応できます。理系志望者は一読してほしいのが本書です。
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問題集の『物理のエッセンス』は有名ですが、同じ河合塾seriesなので相性も良いです。
おすすめ その4
Newton大図鑑シリーズ 物理大図鑑
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