整数の性質|互除法を利用して1次不定方程式を解こう

数学A

数学A 整数の性質

今回も1次不定方程式を扱いますが、ユークリッドの互除法を利用して解く方法について学習しましょう。1次不定方程式を扱った問題は頻出ですが、解き方をいくつか知っておくと対応しやすいでしょう。

互除法を利用して1次不定方程式を解こう

ユークリッドの互除法は、2つの整数の最大公約数を求める方法です。互除法を利用するとき、割り算と最大公約数の間に成り立つ定理を利用します。

割り算と最大公約数

$2$ つの自然数 $a \ , \ b \ (a \gt b)$ について、$a$ を $b$ で割った商を $q$、余りを $r$ とすると

$a$ と $b$ の最大公約数は、$b$ と $r$ の最大公約数に等しい。

このような互除法の性質を利用して、1次不定方程式を解きます。

解くと言っても、異なるのは1組の整数解を見つけ方だけで、1組の整数解を見つけた後の手順は変わりません。1組の整数解の見つけ方は、自力ではなく互除法を利用します。

互除法を利用する解法を知っていれば、自力で見つけることができなくても諦めずに済みます。互除法を利用する方法では、少しコツが必要ですが、1度掴んでしまえば簡単です。

整数解が見つからないとき、互除法の他に、1次不定方程式の係数を小さくして解く方法がある。ここでは割愛する。

さっそく例題を使って手順を確認しましょう。

例題で学ぶ互除法を利用した方程式の解法

例題

\begin{align*} &\text{次の方程式の整数解をすべて求めよ。} \\[ 5pt ] &\quad 37x-90y=4 \end{align*}

係数になっている2数の最大公約数を求める

与式のように、係数が大きくなると1組の整数解を見つけにくくなります。

入試レベルでは係数が2桁の数になることが多いです。そんなときに互除法を利用すると、1組の整数解を見つけることができます。

まず、互除法を利用して、係数である37と90の最大公約数を求めます。計算過程を利用するので、筆算よりも式を書き並べていった方が良いでしょう。

係数37,90の最大公約数を求める

\begin{align*} &\quad 37x – 90y = 4 \\[ 10pt ] &\text{$37$ と $90$ の最大公約数を互除法で求める。} \\[ 5pt ] &\quad 90 = 37 \cdot 2 + 16 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad 37 = 16 \cdot 2 + 5 \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\quad 16 = 5 \cdot 3 + 1 \quad \cdots \text{③} \\[ 7pt ] &\quad 5 = 1 \cdot 5 + 0 \end{align*}

37と90の最大公約数が1であることが分かりました。本来の目的は、最大公約数を求めることではなく、1組の整数解を見つけることなので、余りが1になった時点で終了しても構いません(③式)。

互除法の計算過程を逆に辿る

次は①~③式を使って、計算を逆に辿っていきます。すると、方程式に整数解を代入した後の式が得られます。ただし、計算を逆に辿るとき、混乱しやすいので、少し工夫します。

他の数と区別するために、係数を文字に置き換えます。また、①~③式から、余り=~」の形を導出します

互除法の計算過程を逆に辿る

\begin{align*} &\quad 90 = 37 \cdot 2 + 16 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad 37 = 16 \cdot 2 + 5 \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\quad 16 = 5 \cdot 3 + 1 \quad \cdots \text{③} \\[ 7pt ] &\text{ここで} \ m = 37 \ , \ n = 90 \ \text{とおく。} \\[ 5pt ] &\text{①より} \\[ 5pt ] &\quad 16 = 90 – 37 \cdot 2 \\[ 7pt ] &\text{$m = 37 \ , \ n = 90$ より} \\[ 5pt ] &\quad 16 = n – 2m \quad \cdots \text{①’} \\[ 7pt ] &\text{②より} \\[ 5pt ] &\quad 5 = 37 – 16 \cdot 2 \\[ 7pt ] &\text{これと①’より} \\[ 5pt ] &\quad 5 = m – (n – 2m) \cdot 2 \\[ 7pt ] &\text{整理すると} \\[ 5pt ] &\quad 5 = 5m – 2n \quad \cdots \text{②’} \\[ 7pt ] &\text{③より} \\[ 5pt ] &\quad 1 = 16 – 5 \cdot 3 \\[ 7pt ] &\text{これと①’,②’より} \\[ 5pt ] &\quad 1 = n – 2m – (5m – 2n) \cdot 3 \\[ 7pt ] &\text{整理すると} \\[ 5pt ] &\quad 1 = -17m + 7n \\[ 7pt ] &\text{$m = 37 \ , \ n = 90$ より} \\[ 5pt ] &\quad 37 \cdot (-17) -90 \cdot (-7) = 1 \\[ 7pt ] &\text{この両辺に $4$ を掛けると} \\[ 5pt ] &\quad 37 \cdot (-68) -90 \cdot (-28) = 4 \\[ 7pt ] &\text{したがって、方程式の整数解の $1$ 組は} \\[ 5pt ] &\quad x = -68 \ , \ y = -28 \end{align*}

1組の整数解が見つかったら、すでに学習した解法を利用して1次不定方程式を解きます。基本的な解法は記事をご確認下さい。

参考書や問題集によっては、③式の方から辿っていく方法で解説してあるものもあります。

どちらにしても、計算過程を逆に辿っていくことには変わりません。ただ、③式の方からだと、係数を文字に置き換えることができないので、①式からの方がやりやすいでしょう。

互除法を使って1組の整数解を見つける手順は以下のようになります。

円と直線の位置関係

  1. 2つの係数の最大公約数を互助法で求める。
  2. 2つの係数を文字で表す。
  3. 互除法で得られる式を「余り=~」に変形する。
  4. 互除法で得られた式を上から順に文字式に置き換えていく。
  5. 最後の式の右辺が与式と同じかどうかを確認。違うなら、両辺を整数倍して揃える。

次は練習問題を解いてみましょう。