運用力を鍛える英文法基礎【第1回】
問1の訂正例
【問1】日本語訳を参考に、次の英文の文法的な誤りを直しなさい。
We reached to the hotel around 6 p.m.
「私たちは午後6時ごろホテルに到着した」
※英文には文法的な誤りがあります
前ページから予想できるように、文法的な誤りは述語動詞(V)にあります。その誤りを指摘するには、述語動詞(V)の reached が、自動詞(Vi)なのか、それとも他動詞(Vt)なのかを判断できなければなりません。
reached は原形が reach の過去形です。動詞「reach」は「~に到着する」という意味では他動詞(Vt)として用いられます。
たとえば、「伸ばす」や「届く」などの意味では自動詞(Vi)として用いられます。このような動詞「reach」を他動詞(Vt)として述語動詞(V)に用いる場合、第1文型(SV)や第2文型(SVC)をとりません。
動詞によっては、自動詞でも他動詞でも用いられる。動詞を覚えるときは語法までしっかり確認。
述語動詞(V)に合わせる
問1の英文を、文法的に正しい英文に直すと以下のようになります。
問1の訂正例①
× We reached to the hotel around 6 p.m.
〇 We reached the hotel around 6 p.m.
「私たちは午後6時ごろホテルに到着した」
訂正例①の要素を考えると、以下のようになります。
訂正例①の要素
We / reached / the hotel ( around 6 p.m. )
私たちは / 到着した / ホテルに /(午後6時ごろ)
- S+Vt+O+(M):第3文型(SVO)+(M)
- 主語(S):We
- 述語動詞(Vt):reached
- 目的語(O):the hotel
- 副詞的修飾句(M):around 6 p.m.【reached を修飾】
英文の要素から、第3文型(SVO)の英文です。reached は他動詞(Vt)なので、後ろの前置詞「to」は不要です。
the hotel は「冠詞+名詞」の名詞句です。冠詞は「a, an, the」の3つだけで、単独では使えません。冠詞は名詞とセットで用いられるので、「冠詞+名詞」のカタマリは、わざわざ句と考えずに1つの名詞と考えた方が扱いやすいでしょう。
なお、句ということばが出てきましたが、これは節と合わせて覚えましょう。高校英語では、句と節の扱いに慣れないと大変です。
- 句:2単語以上で意味をもつカタマリ。主語(S)と述語動詞(V)をもたない。
- 節:2単語以上で意味をもつカタマリ。主語(S)と述語動詞(V)をもつ。
around 6 p.m. が副詞的修飾句(M)とありますが、「副詞と同等で、修飾の働きをする句」という意味です。単に副詞句と表現されることが多いでしょう。
ここで注意したいのは、修飾(M)は英文の要素にならないということです。修飾の働きは、説明を付け加えるための飾りつけです。ですから、英文に必ずしも必要というわけではありません。ただ、英文の要素を考える際に記号化した方が扱いやすいので、便宜上、アルファベットMを用いています。
修飾(M)の働きをする品詞は、一覧表にもあるように、形容詞と副詞です。句であれば、形容詞句や副詞句です。節であれば、形容詞節や副詞節です。
英語の品詞は、名詞を修飾するのが形容詞、名詞以外を修飾するのが副詞などのように、英文の中での働きを考えた方が分かりやすい。日本語の意味で考えると、英語では失敗することが多い。
述語動詞(V)を変更する
どうしても前置詞「to」を残したい場合は、述語動詞(V)を自動詞(Vi)に変更する必要があります。日本語訳が少し変わりますが、一例が以下の英文です。
問1の訂正例②
× We reached to the hotel around 6 p.m.
〇 We went to the hotel around 6 p.m.
「私たちは午後6時ごろホテルに行った」
訂正例②の要素を考えると、以下のようになります。
訂正例②の要素
We / went / ( to the hotel ) ( around 6 p.m. )
私たちは / 行った /(ホテルに)/(午後6時ごろ)
- S+Vi+(M)+(M):第1文型(SV)+(M)+(M)
- 主語(S):We
- 述語動詞(Vi):went
- 副詞的修飾句(M):to the hotel【went を修飾】
- 副詞的修飾句(M):around 6 p.m.【went を修飾】
went は動詞「go」の過去形です。go は、一般に自動詞(Vi)として用いられます。また、2つの副詞的修飾句は、述語動詞(V)を修飾します。
間違いやすい自動詞(Vi)や他動詞(Vt)
入試でも頻出の自動詞(Vi)や他動詞(Vt)を挙げておきます。
間違いやすい自動詞(Vi)や他動詞(Vt)の例①
「その問題について話す」
- They talk about the problem.【talk:自動詞(Vi)】
- They discuss the problem.【discuss:他動詞(Vt)】
例文の要素は以下の通りです。
例文の要素
They / talk about / the problem.
彼らは / について話す / その問題
- S+Vt+O:第3文型(SVO)
- 主語(S):They
- 述語動詞(Vt):talk about【自動詞(Vi)+前置詞=他動詞(Vt)】
- 目的語(O):the problem
They / discuss / the problem.
彼らは / について話す / その問題
- S+Vt+O:第3文型(SVO)
- 主語(S):They
- 述語動詞(Vt):discuss
- 目的語(O):the problem
動詞「talk」は単独ではなく、「talk about」という熟語(句動詞)で用いられています。talk about は、辞書によれば他動詞(Vt)とされています。talk about を1つの他動詞(Vt)扱いすれば、どちらの英文も第3文型(SVO)の英文です。
間違いやすい自動詞(Vi)や他動詞(Vt)の例②
「会議に参加する」
- They participate in the meeting.【participate:自動詞(Vi)】
- They attend the meeting.【attend:他動詞(Vt)】
例文の要素は以下の通りです。
例文の要素
They / participate / ( in the meeting ).
彼らは / 参加する /(その会議に)
- S+Vi+(M):第1文型(SV)+(M)
- 主語(S):They
- 述語動詞(Vi):participate
- 副詞的修飾句(M):in the meeting【participate を修飾】
They / attend / the meeting.
彼らは / に参加する / その会議
- S+Vt+O:第3文型(SVO)
- 主語(S):They
- 述語動詞(Vt):attend
- 目的語(O):the meeting
動詞「participate」は自動詞(Vi)としてだけ用いられます。例文では、後ろに副詞的修飾語句(M)が続くので、第1文型(SV)です。
動詞「attend」は自動詞(Vi)と他動詞(Vt)の両方あります。「会議に参加する(出席する)」という意味では、他動詞(Vt)として用いられます。よく間違うので注意しましょう。
動詞を覚えていくときには、動詞の意味や文型を、自動詞(Vi)と他動詞(Vt)とで区別して覚えましょう。
基本動詞には熟語(句動詞)が多い
talk は日常的によく使われる動詞で、文法書によっては基本動詞と言われます。このような動詞は、中学で学習した動詞に多く見られます。単語の意味はすでに知っているでしょうが、細かい語法については知らないことが多いと思います。一度は辞書で確認しておくと良いでしょう。
また、基本動詞には talk about のように、前置詞や副詞を伴ってできた熟語(句動詞)が多く存在します。熟語で1つの動詞として扱います。複数単語を一単語と見なせるので、積極的に覚えていきましょう。
句動詞と言われる熟語には、成り立ちにいくつかのパターンがあります。
- 動詞+副詞(例:come out, turn on, get back)
- 動詞+副詞+前置詞(例:put up with)
- 動詞+前置詞(例:consist of, get off)
- 動詞+名詞(例:take place, give way)
- 動詞+名詞+前置詞(例:take advantage of)
パターンすべてを覚える必要はありませんが、代名詞が関わる「他動詞+副詞」の形は頻出なので覚えておくと良いでしょう。
詳しくは運用力を鍛える英文法基礎【第9回】を参照して下さい。
正誤問題をこなす利点や注意点
中学で学習する英語は、英文の内容が単純なので、語彙力がある程度あれば対応できます。しかし、高校英語では、英文の内容が複雑になるので、語彙力だけでは通用しません。英文の内容が複雑になると、その内容を表現するために英文の構造が複雑になるからです。ですから、高校英語で躓かないためには、体系的な文法の知識がどうしても必要になります。
知識を運用できるかどうかを知りたければ、正誤問題をこなすのが良いでしょう。ただし、単に「正解だった」や「不正解だった」で終わってしまうと、正誤問題をこなした意味がありません。誤っていることが分かったとして、なぜ誤りなのかを説明できなければなりません。説明できるようになってようやく正誤問題をこなす意義が見出せます。
国語や社会などの文系科目では、マーク形式の問題だと正誤問題が多く出題されます。上述のような取り組みをせずに本番を迎えてしまうと失敗します。特に中途半端に解ける国語ではよくあります。
このような失敗をしないためにも、正誤問題で演習する際、「なぜ誤りなのか」という解答の根拠を考えるように努めましょう。そのように取り組むことで、内容の理解度や知識の習熟度などを客観的に確認できるようになります。
アウトプット中心の学習スタイルを
理解度や習熟度を自分で認識できていないのは非常に危うい状況です。よくよく分析してみると「たまたま正解だった」という状態なのに、自分の実力だと勘違いしている可能性があるからです。そのような状態は不利益にしかなりません。
自分の学力を客観的に知るための解決法は、日頃から幅広く問題をこなすことです。とにかくアウトプットすることです。たとえば、レベル別の問題をこなせば、理解度や習熟度を把握できます。また、分野別の問題をこなせば、知識の偏りを把握できます。
問題の形式に応じて、自分の学力を色々と把握できます。ただ問題を解くだけでなく、自分なりに問題を分析してみると色んな気付きがあるでしょう。この作業が後々の入試の傾向と対策につながっていきます。
文型や語法についての解説がある辞書を使おう
文法の知識は文法書で身に付けられますが、あくまでも原理原則です。個別の単語については説明不足の場合があります。そんなときに辞書があります。
辞書にも扱いやすいものとそうでないものがあります。それは個々人がもつ知識の量が原因です。高校英語の初学者だと、十分な語彙力とは言えないので、できるだけ多くの情報をまとめた辞書を持った方が無難です。
初学者にお勧めの辞書は『ライトハウス英和辞典』です。慣れもあるかもしれませんが、レイアウトがすっきりしていて、とにかく読みやすい辞書です。
語義、熟語、語法なとが分かりやすくまとめてあります。また、類義語との比較もまとめてあるので、細かなニュアンスの違いも知ることができます。
使っていて特に助かるのは、動詞の場合、例文と合わせて文型が示してあることです。 意味に合わせて文型が分かるので、単語の意味を覚えるだけにはなりません。 辞書によっては文型が示されていないので、自分で考えることになります。
個人的には『ライトハウス英和辞典』で必要十分だと思いますが、他の辞書にも独自の良さがあります。自分好みのレイアウトや、収録内容などをよく吟味して購入しましょう。
『コンパスローズ英和辞典』には文型の情報がありませんが、実用的な辞書だと思います。