運用力を鍛える英文法基礎【第5回】
大学別の個別試験のような記述形式の試験では、いくら知識があっても、その運用力がなければ上手くいきません。センター試験から共通テストに変わって、思考力・表現力・判断力を問われる問題がより一層増えることが考えられます。
これからの受験生にとって、運用力は大切な能力となるでしょう。応用力のある人は、知識を適切に運用できる運用力をもつ人のことです。たくさんの知識を蓄え、それを適切に運用できる応用力のある人になりましょう!
文法的に誤りのある英文を訂正してみよう
次の英文は、問題のない英文に見えます。しかし、文法的な誤りがあります。どこに文法的な誤りがあるのか分かるでしょうか。また、文法的に正しい英文に訂正できるでしょうか。
【問5】日本語訳を参考に、次の英文の文法的な誤りを直しなさい。
One of the girls helped my son, so I gave a candy.
「女の子の一人が息子を手伝ってくれたので、キャンディーをあげた」
※英文には文法的な誤りがあります
誤文訂正に必要な知識
少なくともこの問題を解くのに必要な知識は以下の通りです。
- 目的語を2つとる動詞
- give 型の動詞
- buy 型の動詞
目的語を2つとる動詞
第4文型(SVOiOd)
「私は彼にそれを説明した」という意味を表す英文を考えてみましょう。
「私は彼にそれを説明した」
I explained it to him.
例文の要素
I / explained / it / ( to him ).
私は / 説明した / それを /(彼に)
- S+Vt+O+(M):第3文型(SVO)
- 主語(S):I
- 述語動詞(Vt):explained
- 目的語(O):it
- 副詞的修飾句(M):to him
上の例文は、第4文型(SVOO)ではなく、第3文型(SVO)の英文です。日本語訳から考えると、「彼に」と「それを」の2つは目的語(O)と考えられます。しかし、第3文型(SVO)をとる動詞は、目的語(O)を1つしかとらない他動詞(Vt)です。
例文の「explain」もその1つで、「A(人)にBを~する」という意味になりますが、A(人)を目的語にとらない動詞です。間違いやすいので注意しましょう。
- admit(認める)
- explain(説明する)
- introduce(紹介する)
- say(言う)
- suggest(提案する)
- confess(告白する)
「~を」にあたる目的語(O)だけをとる述語動詞(V)であれば、「彼に」という意味の語句を副詞的修飾句「to him」の形で補うしかありません。
それに対して第4文型(SVOO)では、「~に」「~を」の順に2つの目的語(O)を並べた文型となるので、述語動詞(V)は2つの目的語(O)をとります。第4文型(SVOO)の述語動詞(V)のことを授与動詞と言います。
第4文型(SVOO)をとる動詞は、他動詞(Vt)で、目的語(O)を2つとる。
2つの目的語
第4文型(SVOO)では、2つの目的語(O)は、名詞やそれに相当する語句です。文法書によっては、2つの目的語(O)を区別するために、SVOiOdと表記されることもあります。
「~に」にあたる1番目の目的語は間接目的語(Oi)と言われます。また、「~を」にあたる2番目の目的語は直接目的語(Od)と言われます。一般に「Oi=人」「Od=物」となります。
このような第4文型(SVOiOd)をとる英文は、「SはOiにOdをVする」という意味を表します。
- S+Vt+Oi+Od:「SはOiにOdをVする」
- Oi:間接目的語(indirect object)、一般に人
- Od:直接目的語(direct object)、一般に物
第4文型(SVOO)をとる動詞は、「~に」という意味の違いで分類されます。この違いは、第3文型(SVO)に言い換えると分かります。
give 型の動詞
第4文型から第3文型(SVO)に言い換えたとき、「S+V+Od+to+Oi」という文型になる動詞があります。
このときの間接目的語(Oi)は、受領者(物を受け取る人)を表します。ですから、第3文型(SVO)に言い換えると、「Oi に」にあたる部分が着点を表す「to」を用いて前置詞句「to+Oi」となります。
give 型の動詞
「私は彼女にプレゼントをあげた」
a) I gave her a present.
b) I gave a present to her.
a) 第4文型:S+V+Oi+Od
b) 第3文型:S+V+Od+to+Oi
第3文型(SVO)に言い換えたときの前置詞句「to+Oi」は、述語動詞(V)を修飾する副詞的修飾句(M)となり、英文の要素になりません。
このような動詞の筆頭になるのが「give」です。give と同じように言い換えできる動詞をまとめて「give 型の動詞」と言います。
- allot(割り当てる)
- award(与える)
- give(与える)
- grant(かなえてやる)
- hand / pass(手渡す)
- lend(貸す)
- offer(提供する)
- owe(〔お金を〕借りている)
- pay(支払う)
- sell(売る)
- send(送る)
- award(与える)
- show(見せる)
- teach(教える)
- tell(言う、伝える)
- write(〔手紙などを〕書く)
上に挙げた動詞のうち下線の引かれたものは、この意味では原則として間接目的語(Oi)を省略できません。
間接目的語(Oi)を省略できない動詞
[誤] He gave a book.【直接目的語(Od)だけ】
[正] He gave me a book.【第4文型(SVOO)なら間接目的語(Oi)が必要】
[正] He gave a book to me.【第3文型(SVO)なら「to+Oi」の形で】
buy 型の動詞
第4文型(SVOO)から第3文型(SVO)に言い換えたとき、「S+V+Od+for+Oi」という文型になる動詞があります。
このときの間接目的語(Oi)は、受益者(利益を受け取る人)を表します。ですから、第3文型(SVO)に言い換えると、「Oi に」にあたる部分が「~のために」という意味を表す「for」を用いて前置詞句「for+Oi」となります。
buy 型の動詞
「父は私に自転車を買ってくれた」
a) My father bought me a bike.
b) My father bought a bike for me.
a) 第4文型:S+V+Oi+Od
b) 第3文型:S+V+Od+for+Oi
このような動詞の筆頭になるのが「buy」です。この buy と同じように言い換えできる動詞をまとめて「buy 型の動詞」と言います。
- build(建てて〔造って〕あげる)
- buy(買う)
- call(呼んであげる)
- choose(選ぶ)
- cook(料理する)
- find(見つける)
- get(手に入れる)
- keep(取っておいてあげる)
- make(作ってあげる)
- prepare(こしらえてあげる)
- save(とっておいてあげる)
- sing(歌う)
- send(送る)
- show(見せる)