運用力を鍛える英文法基礎【第3回】
不定詞または動名詞だけを目的語(O)にとる動詞
不定詞と動名詞の両方を目的語(O)にとる動詞には、「forget」のように文意が変わるものがあったり、「start」のように文意がほとんど変わらないものがあったりします。それに対して、不定詞だけ、あるいは動名詞だけを目的語(O)にとる動詞もあります。
一例は以下の通りです。あくまでも一例で、他にもたくさんあります。目的語(O)が不定詞や動名詞の句であるのを見かけたら、必ず辞書で確認しましょう。
- afford(~する余裕がある)
- attempt(~しようと試みる)
- decide(~することに決める)
- expect(~するつもりである)
- fail(~しない、~できない)
- hope(~したいと思う)
- learn(~するようになる)
- manage(なんとか~する)
- offer(~することを申し出る)
- plan(~する計画を立てる)
- pretend(~するふりをする)
- promise(~すると約束する)
- refuse(~するのを断る)
- wish(~したいと思う)
たとえば、不定詞だけを目的語(O)にとる動詞を使った例文は以下の通りです。
不定詞だけを目的語(O)にとる動詞
I hope to tell the truth some time.
「いつか話したい」
例文の要素
I / hope / to tell the truth ( some time ).
私は / したいと思う / 真実を話すことを(いつか)
- S+Vt+O:第3文型(SVO)
- 主語(S):I
- 述語動詞(Vt):hope
- 目的語(O):to tell the truth ( some time )【不定詞句・名詞的用法】
- 副詞的修飾句(M):some time【tell を修飾】
不定詞「to tell」なので、tell という動作をしようと向かっていくイメージです。動詞「hope」 は「~を望む」という意味ですが、tell という動作に向かっていくことを望んでいるので、「~したい」という日本語訳でもニュアンスとしては問題ないでしょう。
- admit(~するのを認める)
- avoid(~するのを避ける)
- consider(~することを考える)
- deny(~しないと言う)
- enjoy(~するのを楽しむ)
- escape(~するのを逃れる)
- evade(~するのを避ける)
- excuse(~するのを許す)
- finish(~するのを終える)
- imagine(~することを想像する)
- involve(伴う)
- mind(~するのを気にする)
- miss(~しこなう)
- postpone(~するのを延期する)
- stop(~するのをやめる)
熟語(句動詞)になりますが、give up(~するのをやめる)や put off(~するのを延期する)も動名詞だけを目的語にとります。
たとえば、動名詞だけを目的語(O)にとる動詞を使った例文は以下の通りです。
動名詞だけを目的語(O)にとる動詞
You should stop telling jokes.
「冗談を(言うのを)やめなさい」
例文の要素
You / should stop / telling jokes.
あなたは / 止めるべきだ / 冗談を言うのを
- S+Vt+O:第3文型(SVO)
- 主語(S):You
- 述語動詞(Vt):should stop
- 目的語(O):telling jokes【動名詞句】
動名詞「telling」なので、すでに起こした、または現在起こしているイメージです。動詞「stop」は「~をやめる」という回避的な意味をもつので、動名詞と相性の良い動詞です。
受け身の意味を表す動名詞
主題からは脱線してしまいますが、間違えやすい動名詞の表現を紹介しておきます。
動名詞は動詞に「ing」を付けた形なので、中学で学習した進行形(~しているところ)をイメージする人が多いのではないでしょうか。そのイメージが強いと、主語(S)が能動的に動作している感じを持つかもしれません。しかし、受け身(受動)の意味を持つ表現もあります。
次の例文を適切な日本語に訳せるでしょうか。
受け身(受動)の意味を表す動名詞
a) This paper needs rewriting.
b) This book is worth reading.
英文の要素や日本語訳は以下の通りです。
a) の要素
This paper / needs / rewriting.
= This paper / needs / to be rewritten.
この書類は / 必要がある / 書き直す(書き直される)
- S+Vt+O:第3文型(SVO)
- 主語(S):This paper
- 述語動詞(Vt):needs
- 目的語(O):rewriting【動名詞句】
This paper needs rewriting.「この書類は書き直す必要がある」
b) の要素
This book / is worth / reading.
= This book / needs / to be read.
この本は / 値打ちがある / 読む(読まれる)
- S+Vt+O:第3文型(SVO)
- 主語(S):This book
- 述語動詞(Vt):is worth
- 目的語(O):reading【動名詞句】
This book is worth reading.「この本は読む価値がある」
※「worth」は一般に形容詞で用いられるが、後ろに目的語(O)をとるので前置詞と見ることも可能。
日本語では能動的な訳でも通じますが、意味は能動ではなく受動の意味です。次の動詞の後ろにくる動名詞は、能動態のまま受動の意味を表します。
- want, need, require(~が必要である)
- deserve(~に値する)
間違いやすい書き換え
上の例文で受動の意味となる動名詞から不定詞へ書き換えをしました。不定詞の表現が受動態の形をとっているのは、不定詞の表現が能動の意味を表すからです。
以下の英文を不定詞を使った表現に書き換えてみましょう。
動名詞から不定詞への書き換え
The rug wants cleaning.
「その敷物は綺麗にする必要がある」
先ほどのように、動名詞の部分を不定詞の受動態に書き換えてしまうと間違いです。文法的な誤りはありませんが、意味がおかしくなります。
動名詞から不定詞への書き換え例と間違い例
The rug / wants / cleaning.
⇒ その敷物は / 必要がある / 綺麗にする(綺麗にされる)
× The rug / wants / to be cleaned.
その敷物は / もらいたがっている / 綺麗にして
〇 The rug / needs / to be cleaned.
その敷物は / 必要がある / 綺麗にする(綺麗にされる)
述語動詞(V)が「want」のままだと、主語(S)である「the rug」そのものが、自分から進んで「綺麗にしてもらいたがっている」という意味になってしまいます。主語(S)が人か物かで述語動詞(V)を変える必要があります。
動詞「want」の意味を冷静に考えれば気付きそうですが、他の語との意味のつながりを意識する習慣がないと難しいかもしれません。
動詞は日本語訳では述語に相当します。ですから、日本語訳の主語と関連付けておかなければなりません。動詞「want」の意味が「~が必要だ」であれば、主語が人でも物でも問題なさそうですが、「~を欲する」という意味であれば、人が主語でなければおかしな感じがします。
単語がつながって語句になり、そして文となるわけですから、単語とその意味だけを必死に覚えてもあまり効果がないことは予想できるでしょう。単語や熟語を覚える際には、周りの語との関係を意識しながら覚えていくことが大切です。
予備知識を確認したので、英文の文法的な誤りを訂正してみましょう。