図形と方程式|2つの円の位置関係について
2つの円の位置関係を扱った問題を解いてみよう
次の問を解いてみましょう。
問
$(1)$ 中心が $(-2 \ , \ 1)$ で、円 $x^{2}+y^{2}=25$ に内接する円の方程式を求めよ。
$(2)$ $2$ つの円 $x^{2}+y^{2}=r^{2} \ (r \gt 0)$ … ①,$x^{2}+y^{2}-6x+8y+16=0$ … ②が共有点をもつような $r$ の値の範囲を求めよ。
問(1)の解答・解説
問(1)
中心が $(-2 \ , \ 1)$ で、円 $x^{2}+y^{2}=25$ に内接する円の方程式を求めよ。
問(1)は、「外接する」が「内接する」に変わっただけで、例題(1)と同様の方針で解くことができます。
求める円の方程式を予め準備しておきます。
問(1)の解答例 1⃣
求める円の方程式を
\begin{align*} \quad \left(x+2 \right)^{2}+\left(y-1 \right)^{2}=r^{2} \ \cdots \ \text{①} \end{align*}とおく。
問題を解くためには、半径rの値を求めて代入すれば良いことが分かります。
また、2つの円の位置関係をイメージできるように作図しておきましょう。
ここで、円が内接するための条件を考えます。言い換えると、求める半径rの条件です。
問(1)の解答例 2⃣
\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \left(x+2 \right)^{2}+\left(y-1 \right)^{2}=r^{2} \ \cdots \ \text{①} \\[ 7pt ] &\quad \vdots \end{align*}円①が円 $x^{2}+y^{2}=25$ …②に内接するので
\begin{align*} \quad \sqrt{ \left(-2 \right)^{2} + 1^{2} } = \left| 5-r \right| \end{align*}が成り立つ。
ここで、$0 \lt r \lt 5$ より
\begin{align*} \quad \sqrt{ \left(-2 \right)^{2} + 1^{2} } = 5-r \end{align*}よって
\begin{align*} \quad \sqrt{5} = 5-r \end{align*}2つの円が内接するには、2つの円の中心の位置関係を考慮すると、円①の半径が円②の半径よりも小さくなければなりません。
また、中心間の距離は、2つの円の半径の差に等しくなります。この条件から得られるのが半径rについての一次方程式です。ただし、内接するときの方程式では、絶対値を外すために半径rの条件(0<r<5)が必要になるので注意しましょう。
半径rについての方程式を導出できたので、これを解きます。
問(1)の解答例 3⃣
\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \sqrt{5} = 5-r \end{align*}これを解くと
\begin{align*} \quad r=5-\sqrt{5} \end{align*}①より、求める円の方程式は
\begin{align*} \quad \left(x+2 \right)^{2}+\left(y-1 \right)^{2}=\left(5-\sqrt{5} \right)^{2} \end{align*}得られた半径rの値は、円②の半径よりも小さくなっていることが分かります。
また、半径rについての方程式は、簡単な一次方程式なので、きちんと条件から立式できるようにしましょう。
2つの円の位置関係
半径がそれぞれ $r \ , \ r’$ である円の中心間の距離を $d$ とする。
$2$ つの円が内接するか、一致するとき
\begin{align*} \quad d=\left| r-r’ \right| \end{align*}を満たす。
問(1)の別解例
解答例2⃣で半径rの条件を挙げて解きましたが、条件を挙げずに解くこともできます。
問(1)の別解例
求める円の方程式を
\begin{align*} \quad \left(x+2 \right)^{2}+\left(y-1 \right)^{2}=r^{2} \ \cdots \ \text{①} \end{align*}とおく。
円①が円 $x^{2}+y^{2}=25$ …①に内接するので
\begin{align*} \quad \sqrt{ \left(-2 \right)^{2} + 1^{2} } = \left| 5-r \right| \end{align*}が成り立つ。
これを整理すると
\begin{align*} \quad \left| 5-r \right| = \sqrt{5} \end{align*}さらに
\begin{align*} \quad 5-r = \pm \sqrt{5} \end{align*}よって
\begin{align*} \quad r = 5 \pm \sqrt{5} \end{align*}ここで、$0 \lt r \lt 5$ より
\begin{align*} \quad r = 5 – \sqrt{5} \end{align*}①より、求める円の方程式は
\begin{align*} \quad \left(x+2 \right)^{2}+\left(y-1 \right)^{2}=\left(5-\sqrt{5} \right)^{2} \end{align*}半径rの条件を考えずに、絶対値の性質を利用して絶対値を外し、方程式を解いています。解を求めることはできるのですが、どちらがスマートかと言えば、半径rの条件を先に挙げた解答例の方でしょう。
また、別解例でも最後に吟味しなければなりません。しかも、与えられたr>0の条件だけではどちらの解が適しているかを判断できません。
円①の半径が、円②の半径よりも小さい(r<5)という、隠された条件に気付けるかどうかがポイントです。2つの円が内接するときは、半径rの条件に気を付けましょう。
2つの円が内接するときの半径rの条件に注意しよう。
問(2)の解答・解説
問(2)
$2$ つの円 $x^{2}+y^{2}=r^{2} \ (r \gt 0)$ … ①,$x^{2}+y^{2}-6x+8y+16=0$ … ②が共有点をもつような $r$ の値の範囲を求めよ。
問(2)は、例題(2)と同様の問題です。2つの円が共有点をもつのは1個のときと、2個のときがあるので注意しましょう。
円②の方程式を変形して、中心と半径を求めておきます。
問(2)の解答例 1⃣
円①の中心は点 $(0 \ , \ 0)$ で半径は $r$ である。
また、円②の方程式を変形すると
\begin{align*} &\quad x^{2}+y^{2}-6x+8y+16=0 \\[ 7pt ] &\quad \left(x-3 \right)^{2}+\left(y+4 \right)^{2}=9 \end{align*}となるので、中心は点 $(3 \ , \ -4)$ で半径は $3$ である。
2つの円の中心と半径がそれぞれ分かったので作図しておきます。
2つの円が共有点をもつ状況をイメージできるように、円①を複数描いておきます。
ここでは、外接するとき、内接するときの2パターンを描いています。
図から、2つの円が共有点をもつのは、内接するときから外接するときまでです。
2つの円の中心間の距離を求めます。
問(2)の解答例 2⃣
$2$ つの円の中心間の距離は
\begin{align*} \quad \sqrt{ 3^{2} + \left(-4 \right)^{2} } &= \sqrt{ 25 } \\[ 7pt ] &= 5 \end{align*}2つの円の半径と中心間の距離が揃ったので、2つの円が共有点をもつときの関係式を利用して、半径rについての不等式を導出します。
問(2)の解答例 3⃣
$2$ つの円①,②が共有点をもつ条件は
\begin{align*} \quad \left| r-3 \right| \leqq 5 \leqq r+3 \end{align*}$\left| r-3 \right| \leqq 5$ から
\begin{align*} \quad -5 \leqq r-3 \leqq 5 \end{align*}よって
\begin{align*} \quad -2 \leqq r \leqq 8 \ \cdots \ \text{③} \end{align*}$5 \leqq r+3$ から
\begin{align*} \quad 2 \leqq r \ \cdots \ \text{④} \end{align*}③,④と $r \gt 0$ から共通範囲を求めると
\begin{align*} \quad 2 \leqq r \leqq 8 \end{align*}作図をすれば分かりますが、図形的に解くこともできます。検算にもなるので、作図する習慣を付けましょう。
2つの円が共有点をもつのは、内接するときから外接するときまでの範囲。
例題や問を通して注意したいのは、2つの円が外接するときを除いて、求めたい半径rについての方程式や不等式に絶対値が含まれることです。
立式することはそれほど難しくありませんが、絶対値の扱いを間違えると大変なことになります。方程式や不等式を解くときに躓かないように、絶対値の扱いをしっかりマスターしておきましょう。
2つの円の位置関係
半径がそれぞれ $r \ , \ r’$ である円の中心間の距離を $d$ とする。
$2$ つの円が共有点をもつとき
\begin{align*} \quad \left| r-r’ \right| \leqq d \leqq r+r’ \end{align*}を満たす。
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さいごにもう一度まとめ
- 2つの円の中心と半径をそれぞれ確認しよう。
- 2つの円の中心から、中心間の距離を求めよう。
- 2つの円が外接するとき、中心間の距離は半径の和に等しい。
- 2つの円が内接するとき、中心間の距離は半径の差(絶対値記号を忘れない)に等しい。
- 2つの円が内接するとき、半径の条件に注意しよう。
- 2つの円が共有点をもつのは、2つの円が内接するときから外接するときまで。
- 絶対値の扱いに注意しよう。