数学2
今回から新しい単元「複素数と方程式」について学習します。ここでは、複素数の基本について学習しましょう。
数学2で学習する「複素数」についての内容は、基本的な事柄ばかりです。ですから、複素数の有用性をほとんど感じることができないかもしれません。
本格的な内容は、数学3(複素数平面)で学習します。複素数平面まで学習すると、複素数のことがもっと分かるでしょう。ここでは複素数の定義や基本的な扱い方をマスターするのが目標になります。
複素数
複素数について、基本事項は3つあります。複素数を扱うためのお約束なので、しっかり覚えましょう。
複素数とは、実数と虚数の総称です。実数については、数学1の「数の定義」で学習済みです。
虚数単位
虚数は、実数でないもので、虚数単位を用いて表されます。虚数単位は以下のように定義されています。
虚数単位
\begin{align*}
&\text{虚数単位を $i$ とすると} \\[ 5pt ]
&\quad i^{\scriptsize{2}} = -1 \\[ 7pt ]
&\text{を満たす。}
\end{align*}
定義から分かるように、虚数単位iは、2乗すると-1になる数であり、-1の平方根です。ちなみに、実数では、2乗して負の数になるものはありません。
虚数単位
\begin{align*}
&\text{虚数単位を $i$ とすると} \\[ 5pt ]
&\quad i = \sqrt{-1}
\end{align*}
複素数の表し方
実数と虚数を含む複素数は、以下のように表されます。
複素数の表し方
$a \ , \ b$ を実数、$i$ を虚数単位とする。
このとき、複素数は
\begin{equation*}
\quad a+bi
\end{equation*}
と表される数である。
また、$a$ を複素数の実部、$b$ を複素数の虚部という。
複素数は、実数と虚数との和で表されます。このような複素数において、実数部分aを複素数の実部、虚数部分のbを複素数の虚部と言います。
この実部と虚部によって、実数と虚数を含む表し方が可能となります。
実数と虚数
\begin{align*}
&\text{$a \ , \ b$ を実数、$i$ を虚数単位とする。} \\[ 5pt ]
&\text{複素数} \ a+bi \\[ 7pt ]
&\quad =
\begin{cases}
\text{実数} \ a & ( b = 0 ) \\
\text{虚数} \ a+bi & ( b \neq 0 ) \\
\text{純虚数} \ bi & ( a=0 \ , \ b \neq 0 )
\end{cases}
\end{align*}
虚数の中でも実部を持たないものを純虚数と言います。以後、特に断りがない場合、iは虚数単位を表すものとします。
複素数に慣れよう
ここで、理解度を確認するために、色々な複素数の実部や虚部を考えてみましょう。
例題1
\begin{align*}
&\text{次の複素数の実部と虚部を答えよ。} \\[ 5pt ]
&(1) \quad 3-\sqrt{2}i \\[ 10pt ]
&(2) \quad \frac{-1+i}{2} \\[ 10pt ]
&(3) \quad 4i \\[ 10pt ]
&(4) \quad -\frac{1}{3}
\end{align*}
例題1の解答・解説
複素数の表し方を思い出しましょう。
複素数の表し方
複素数 … a+biで表される数
- a … 実数、複素数の実部
- b … 実数、複素数の虚部
- i … 虚数単位
複素数の定義に合うように、与式をそれぞれ変形します。
例題1の解答例 1⃣
複素数の定義に合うように与式を変形すると
\begin{align*}
&(1) \quad 3-\sqrt{2}i = 3+\left( -\sqrt{2} \right)i \\[ 10pt ]
&(2) \quad \frac{-1+i}{2} = -\frac{1}{2}+\frac{1}{2} i \\[ 10pt ]
&(3) \quad 4i = 0+4i \\[ 10pt ]
&(4) \quad -\frac{1}{3} = -\frac{1}{3}+0 \cdot i
\end{align*}
定義の式と見比べると、実部と虚部に相等する実数が分かります。
例題1の解答例 2⃣
複素数の定義と与式とを比較して
\begin{align*}
&(1) \quad \text{実部 $3 \quad$ 虚部 $-\sqrt{2}$} \\[ 10pt ]
&(2) \quad \text{実部 $-\frac{1}{2} \quad$ 虚部 $\frac{1}{2}$} \\[ 10pt ]
&(3) \quad \text{実部 $0 \quad$ 虚部 $4$} \\[ 10pt ]
&(4) \quad \text{実部 $-\frac{1}{3} \quad$ 虚部 $0$}
\end{align*}
(3)の複素数は純虚数を表し、(4)の複素数は実数を表しています。また、虚部について、虚数単位をつけたままにしたり、符号ミスをしたりすることが多いので気をつけましょう。
複素数の相等
2つの複素数について、等式が成り立つとき、実部と虚部に以下のような関係が成り立ちます。
複素数の相等 1⃣
\begin{align*}
&\quad a+bi = c+di \\[ 5pt ]
&\text{ならば、} \\[ 5pt ]
&\quad a=c \ \text{かつ} \ b=d \\[ 5pt ]
&\text{また、} \\[ 5pt ]
&\quad a=c \ \text{かつ} \ b=d \\[ 5pt ]
&\text{ならば、} \\[ 5pt ]
&\quad a+bi = c+di
\end{align*}
この関係を複素数の相等と言います。また、以下の事柄も成り立ちます。
複素数の相等 2⃣
\begin{align*}
&\quad a+bi = 0 \\[ 7pt ]
&\quad \Leftrightarrow \text{$a=0$ かつ $b=0$}
\end{align*}
複素数の相等については、つねに等式が成り立つことから、恒等式と捉えても良いでしょう。
複素数の相等を理解しよう
ここで、複素数の相等をより理解するために、色々な複素数の実部や虚部を考えてみましょう。
例題2
\begin{align*}
&\text{次の等式を満たす実数 $x \ , \ y$ の値を求めよ。} \\[ 5pt ]
&(1) \quad x+2i = 9-yi \\[ 10pt ]
&(2) \quad \left(2x-1 \right)+\left(y+3 \right)i=0
\end{align*}
複素数の相等を利用するための条件を思い出しましょう。
例題2の解答・解説
複素数の相等を利用して求めます。
複素数の相等
\begin{align*}
&\quad a+bi = c+di \\[ 7pt ]
&\quad \Leftrightarrow \ a=c \ \text{かつ} \ b=d \\[ 10pt ]
&\quad a+bi = 0 \\[ 5pt ]
&\quad \Leftrightarrow \ a=0 \ \text{かつ} \ b=0
\end{align*}
複素数の相等より、両辺の実部と虚部について、等式をそれぞれ導出できます。
例題2の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\text{複素数の相等を利用する。} \\[ 5pt ]
&(1) \quad x+2i = 9-yi \\[ 7pt ]
&x \ , \ y \ \text{は実数であるので} \\[ 5pt ]
&\quad x=9 \ \text{かつ} \ 2=-y \\[ 10pt ]
&(2) \quad \left(2x-1 \right)+\left(y+3 \right)i=0 \\[ 7pt ]
&2x-1 \ , \ y+3 \ \text{は実数であるので} \\[ 5pt ]
&\quad 2x-1=0 \ \text{かつ} \ y+3=0
\end{align*}
複素数の相等を利用するには、実部と虚部がともに実数であることが条件です。きちんと断っておきましょう。
たとえば「x,yは実数なので、2x-1,y+3も実数である」のように記述すれば問題ありません。
等式をそれぞれ導出できたら整理します。
例題2の解答例 2⃣
\begin{align*}
&(1) \quad \text{$x=9$ かつ $2=-y$ より、} \\[ 5pt ]
&\qquad x=9 \ , \ y=-2 \\[ 10pt ]
&(2) \quad \text{$2x-1=0$ かつ $y+3=0$ より、} \\[ 5pt ]
&\qquad x=\frac{1}{2} \ , \ y=-3
\end{align*}
今後、色々な複素数を扱うので、実部と虚部をしっかり把握できるようにしておきましょう。
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さいごにもう一度まとめ
- 複素数は実数と虚数の総称。
- 実部と虚部はともに実数。
- 複素数が実数や虚数(純虚数)になるときの条件を覚えておこう。
- 複素数では、虚数単位を用いる。
- 複素数の相等では恒等式をイメージしよう。