データの分析|データの相関関係について
共分散や相関係数などを扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
問1
下の表は、$10$ 人の生徒に $50$ 点満点の $2$ 種類のテスト $A \ , \ B$ を行った得点の結果である。テスト $A \ , \ B$ の得点をそれぞれ $x \ , \ y$ とするとき、 $x$ と $y$ の相関係数 $r$ を求めよ。ただし、小数第 $3$ 位を四捨五入せよ。
\begin{align*} \begin{array}{c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c} \scriptsize{\text{生徒の番号}} & 1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 & 7 & 8 & 9 & 10 \\[ 5pt ] \hline x & 43 & 41 & 43 & 38 & 39 & 42 & 42 & 39 & 41 & 42 \\[ 5pt ] \hline y & 49 & 42 & 44 & 36 & 40 & 44 & 45 & 42 & 42 & 46 \end{array} \end{align*}問1の解答・解説
問1は、2つの変量の相関係数を求める問題です。公式を用いて相関係数を求めますが、できるだけ手際よく計算するために、表を活用します。
問1の解答例 1⃣
表の計の欄を利用して、2つの変量x,yの平均値 $\overline{x} \ , \ \overline{y}$ をそれぞれ求めます。
問1の解答例 2⃣
$x \ , \ y$ の平均値を $\overline{x} \ , \ \overline{y}$ とする。
\begin{align*} &\text{表より} \\[ 5pt ] &\quad \overline{x} = \frac{410}{10} = 41 \\[ 7pt ] &\quad \overline{y} = \frac{430}{10} = 43 \end{align*}平均値が分かったので、偏差、偏差の2乗、偏差の積を表にまとめます。
問1の解答例 3⃣
2つの変量x,yでそれぞれ偏差や偏差の2乗などを求めるので、かなり煩雑になります。ミスが増えるので注意深く取り組みましょう。
表の計の欄を利用して、相関係数を求めます。
問1の解答例 4⃣
表より、相関係数 $r$ を求めると
\begin{align*} \quad r &= \frac{49}{\sqrt{28 \cdot 112}} \\[ 10pt ] &= \frac{49}{\sqrt{ 2^{\scriptsize{2}} \cdot 7 \cdot 4^{\scriptsize{2}} \cdot 7 }} \\[ 10pt ] &= \frac{49}{2 \cdot 4 \cdot 7} \\[ 10pt ] &\fallingdotseq 0.88 \end{align*}相関係数の計算では、共分散と標準偏差ではなく、変形後の式(3行目の式)を利用しています。
表を利用するときの相関係数
相関係数を求める計算は煩雑になりやすいので、表を上手に利用して計算しましょう。
次の問題を解いてみましょう。
問2
下の表は、$2$ つの変量 $x \ , \ y$ のデータである。
$(1)$ これらのデータについて、$0.72 \ , \ -0.19 \ , \ -0.85$ のうち、$x$ と $y$ との相関係数に最も近いものはどれか。
$(2)$ 表の右端のデータの $y$ の値を $68$ に変更すると、$x$ と $y$ の相関係数の絶対値は大きくなるか、それとも小さくなるか。
\begin{align*} \begin{array}{c|c|c|c|c|c|c} x & 80 & 70 & 62 & 72 & 90 & 78 \\[ 5pt ] \hline y & 58 & 72 & 83 & 71 & 52 & 78 \end{array} \end{align*}問2は、相関係数を求める問題と、データの修正の前後の相関係数を比較する問題です。
問2(1)の解答・解説
問2(1)
下の表は、$2$ つの変量 $x \ , \ y$ のデータである。
これらのデータについて、$0.72 \ , \ -0.19 \ , \ -0.85$ のうち、$x$ と $y$ との相関係数に最も近いものはどれか。
\begin{align*} \begin{array}{c|c|c|c|c|c|c} x & 80 & 70 & 62 & 72 & 90 & 78 \\[ 5pt ] \hline y & 58 & 72 & 83 & 71 & 52 & 78 \end{array} \end{align*}問2(1)の相関係数を求めるために、修正前のデータを表にまとめます。
問2(1)の解答例 1⃣
表の計の欄を利用して、2つの変量x,yの平均値 $\overline{x} \ , \ \overline{y}$ をそれぞれ求めます。
問2(1)の解答例 2⃣
$x \ , \ y$ の平均値を $\overline{x} \ , \ \overline{y}$ とする。
\begin{align*} &\text{表より} \\[ 5pt ] &\quad \overline{x} = \frac{452}{6} = \frac{226}{3} \\[ 7pt ] &\quad \overline{y} = \frac{414}{6} = 69 \end{align*}ここで気付いたと思いますが、変量xの平均値は、割り切れずに分数になりました。このままだと、xの偏差を求めるのがとても大変です。
このようなときは散布図を実際に書いてみましょう。値の数はそれほど多くないので難しくありません。散布図は以下のようになります。
散布図から負の相関関係があることが分かります。あとはその値ですが、散布図において、点の配列にできるだけ合うように引いた直線を考えます。
点の配列に合わせて引いた直線を回帰直線と言います。点がこの直線の上やその近くに分布していればいるほど、相関関係が強い、つまり相関係数が1または-1に近い値となります。
問2(1)の解答例 3⃣
$x \ , \ y$ のデータを散布図に表す。
散布図より、点が右下がりの直線の上やその近くに分布している
よって、負の相関が強いので、相関係数は $-0.85$ と考えられる。
相関係数が問題文の中で与えられている場合、計算するのが面倒な場合があります。そのような場合は散布図を書いてみて、点の分布を視覚化してみましょう。
相関係数がすでに与えられている場合、散布図を書いて考えよう。
問2(2)の解答・解説
問2(2)
下の表は、$2$ つの変量 $x \ , \ y$ のデータである。
表の右端のデータの $y$ の値を $68$ に変更すると、$x$ と $y$ の相関係数の絶対値は大きくなるか、それとも小さくなるか。
\begin{align*} \begin{array}{c|c|c|c|c|c|c} x & 80 & 70 & 62 & 72 & 90 & 78 \\[ 5pt ] \hline y & 58 & 72 & 83 & 71 & 52 & 78 \end{array} \end{align*}問2(2)は、データに変更があったとき、相関係数がどのように変化するかを考える問題です。修正の前後で移動する点に注目します。
データが変更された点が移動すると、点の分布がより直線的になりました。変更前よりも負の相関が強くなったことが分かります。
問2(2)の解答例
散布図より、変更後の点の分布は変更前に比べてより直線的になっている。
よって、負の相関が強くなり、相関係数はより $-1$ に近づいたと考えられる。
したがって、相関係数の絶対値は大きくなる。
問2は、入試でも出題されそうな問題です。データの変更によって、相関係数や散布図がどのように変化するのかをしっかり把握することが大切です。
データに変更があったとき、変更箇所に注目しよう。
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確率編の方が先です。
さいごにもう一度まとめ
- 2つの変量の間の関係を相関関係と言う。
- 相関関係を視覚化したものが散布図。
- 散布図の点の分布によって、相関関係は3つに分類される。
- 相関関係の強弱をみる量を相関係数と言う。
- 相関係数の正負は、共分散の正負に一致する。