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データの分析|データの散らばりについて その2

数学1

数学1 データの分析

分散や標準偏差などを扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

問1

10 個の自然数からなるデータ

13 , 9 , a , 12 , 9 , 13 , 11 , b , 8 , 9

がある。これらの平均値が 10 で、標準偏差が 2 であるとき、a , b の値を求めよ。

ただし、a<b とする。

問1の解答・解説

問1は、平均値や標準偏差からもとのデータの値を求める問題です。公式を用いて、a,bについての方程式を導出できるかがポイントです。

平均値や分散を求めやすいように、表を利用します。

問1の解答例 1⃣

xkxk ¯x(xk ¯x)21339911aa10(a10)2122491113391111bb10(b10)2824911a+b16(a10)2+(b10)2+30

平均値がすでに分かっているので、偏差や偏差の2乗の欄にも値を記入しておきます。

一般に、平均値、分散、標準偏差の順に計算することが多い。3つの関係に合わせて表にまとめよう。

平均値や分散から方程式を導出しますが、表の計の欄に記入した数式を利用します。

また、平均値を求めるとき、そのまま公式を用いても問題ありませんが、ここでは以下のことを利用します。

偏差の和は必ず0になる ⇒ 「平均する=偏差の和を0にする」

この性質を利用すると、平均値の計算がいくらか楽になります。

問1の解答例 2⃣

偏差の和は 0 となるので、表よりa+b16=0よってa+b=16また、標準偏差が 2 であるので、分散は 4 となる。よって110{(a10)2+(b10)2+30}=4これを整理すると(a10)2+(b10)2+30=40(a10)2+(b10)210=0

標準偏差は分散の正の平方根なので、分散は標準偏差を2乗した値です。分散から標準偏差を求めることは多いですが、その逆はあまり多くありません。気付きにくいので注意しましょう。

a,bについての方程式が2つ得られたので、これらを連立させて解きます。

問1の解答例 3⃣

a+b=16(a10)2+(b10)210=0①よりb=a+16を②に代入すると(a10)2+(a+1610)210=0(a10)2+(6a)210=0これを解くと2a232a+126=0a216a+63=0(a7)(a9)=0a=7 , 9①と a<b よりa=7 , b=9

単に公式を使うだけでなく、分散と標準偏差の意味や関係なども用いて方程式を導出する問題でした。そういう意味ではより実践的な問題でした。

次の問題を解いてみましょう。

問2

次のデータは、ある年のある年の月ごとの最低気温を並べたものである。

12 , 9 , 3 , 3 , 10 , 17 , 20 ,19 , 15 , 7 , 1 , 8 (単位は℃)

(1) このデータの平均値を求めよ。

(2) このデータの中で入力ミスが見つかった。正しくは 3 ℃が 1 ℃、3 ℃が 2 ℃、19 ℃が 18 ℃であった。この入力ミスを修正すると、このデータの平均値と分散は、修正前と比べるとどうなるか。

問2は、データの修正によって、平均値や分散がどのように変化するかを考える問題です。入試では差がつきそうな問題です。

問2(1)の解答・解説

問2(1)

次のデータは、ある年のある年の月ごとの最低気温を並べたものである。

12 , 9 , 3 , 3 , 10 , 17 , 20 ,19 , 15 , 7 , 1 , 8 (単位は℃)

このデータの平均値を求めよ。

問2(1)は、データの平均値を求める問題です。修正前のデータを表にまとめます。データの変量をxとし、データの総和を求めて表に記入しておきます。

問2(1)の解答例 1⃣

xk修正前x112x29x33x43x510x617x720x819x915x107x111x12860

表の計の欄を参考にして、データの平均値を求めます。

問2(1)の解答例 2⃣

データの総和は 60 より、平均値は6012=5 (℃)

表を利用すると、長い式を記述しなくて良いので便利です。また、値を桁を揃えて記入していけば計算しやすくなります。

問2(2)の解答・解説

問2(2)

次のデータは、ある年のある年の月ごとの最低気温を並べたものである。

12 , 9 , 3 , 3 , 10 , 17 , 20 ,19 , 15 , 7 , 1 , 8 (単位は℃)

このデータの中で入力ミスが見つかった。正しくは 3 ℃が 1 ℃、3 ℃が 2 ℃、19 ℃が 18 ℃であった。この入力ミスを修正すると、このデータの平均値と分散は、修正前と比べるとどうなるか。

問2(2)は、データに修正があったとき、修正の前後で平均値や分散がどのように変化するかを考える問題です。先程の表に修正後のデータを追記します。

問2(2)の解答例 1⃣

xk修正前修正後x11212x299x331_x432_x51010x61717x72020x81918_x91515x1077x1111x128860

修正後のデータの総和を求めても良いのですが、以下のことに注目します。

平均値の変化

平均値=データの総和データの大きさ

データの大きさが変わらなければ、平均値はデータの総和で変化する。

データの大きさは変化しないので、平均値はデータの総和によって変化します。ですから、データが変更された箇所だけに注目して、データの総和が修正の前後でどれだけ変わったかを考えます。

問2(2)の解答例 2⃣

xk修正前修正後変化量x331_+2x432_1x81918_119190データの修正による変化量は{(1)(3)}+(23)+(1819)=0 (℃)

となるので、データの修正によってデータの総和は変化しない。

よって、データの平均値は修正前と一致する。

データの値が一部変わったので、それに伴って平均値も変わりそうです。しかし、データの総和に変化がないので、平均値は修正前と変わりません。

問2のように、データの値が多かったり、正負の数が混在したりすると、計算ミスをしやすくなります。ですから、問2(2)のように、性質を上手に利用して計算を工夫することも大切です。

次は、分散を求めますが、以下のことに注目します。

分散の変化

分散=偏差の 2 乗の総和データの大きさ
データの大きさが変わらなければ、分散は偏差の2乗の総和で変化する。

データの大きさは変化しないので、分散は偏差の2乗の総和によって変化します。ですから、データが変更された箇所だけに注目して、偏差の2乗の総和が修正の前後でどれだけ変わったかを考えます。

問2(2)の解答例 3⃣

xk修正前修正前の偏差修正前の偏差の 2 乗修正後修正後の偏差修正前の偏差の 2 乗x338641_636x43242_39x8191419618_13169194264194214修正のあった値において、修正前の偏差の 2 乗の和は(35)2+(35)2+(195)2=264修正のあった値において、修正後の偏差の 2 乗の和は(15)2+(25)2+(185)2=214となる。214<264

より、偏差の 2 乗の総和は修正によって減少する。

よって、データの分散は修正前より減少する。

1つの表にまとめましたが、修正の前後で書き分けても構いません。自分なりに見やすさや扱いやすさを考えてまとめると良いでしょう。

問2(2)のような問題は、公式を覚えただけでは解くことが難しい問題です。このような問題を数多く演習することで、公式への理解が深まります。めげずに何度も挑戦しましょう。

データに修正があったとき、修正箇所に注目しよう。

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さいごにもう一度まとめ

  • データの散らばりの度合いを知るには、分散や標準偏差などを利用しよう。
  • 偏差は、各値と平均値との差。正負の数になるので注意しよう。
  • 分散は、偏差の2乗の平均値。単位は測定単位の2乗となる。
  • 標準偏差は、分散の正の平方根。単位は測定単位と同じ。
  • 偏差や偏差の2乗を表にまとめておくと、計算ミスしにくい。