数学2
今回は条件付きの等式の証明について学習しましょう。
恒等式の単元でも条件付きの場合の扱い方を学習しています。ですから、それほど難しく感じることはないでしょう。
ポイントになるのは条件式の使い方です。条件式の上手な使い方をしっかり理解しましょう。
条件付きの等式を証明してみよう
次の例題を解いてみましょう。例題から学習のポイントを掴みましょう。
例題
$a+b+c=0$ のとき、次の等式が成り立つことを証明せよ。
\begin{equation*}
\quad bc \left(b+c \right)+ca \left(c+a \right)+ab \left(a+b \right)=-3abc
\end{equation*}
単なる等式の証明問題ではありません。「a+b+c=0」という条件があります。
与えられた条件のことは置いておき、等式の左辺を展開してみます。
左辺を展開してみる
\begin{align*}
(\text{左辺}) &= b^{\scriptsize{2}}c+bc^{\scriptsize{2}}+c^{\scriptsize{2}}a \\[ 7pt ]
&\quad +ca^{\scriptsize{2}}+a^{\scriptsize{2}}b+ab^{\scriptsize{2}}
\end{align*}
左辺を展開してみましたが、果たして右辺と同じ式を導くことができるでしょうか? 残念ながら、どのように変形しても右辺と同じ式を導くことはできません。
ここで、重要な役割を担うのが条件式です。
問題には「条件式のような関係があるとき、等式が成り立つことを証明せよ」とあります。ですから、条件式を考慮しなければ、等式が成り立つことはないのです。
条件式を考慮するとは、条件式の関係を与式に組み込むことです。そのために、条件式の形を変えて、与式に代入します。これによって、「条件付きの等式の証明」から「条件なしの等式の証明」へと帰着させることができます。
ここでは、条件式の代入方法、つまり条件式の使い方を学習します。条件式の上手な使い方をマスターしましょう。
条件式の使い方
条件式の使い方にはいくつかあります。使い方によって、簡単な計算になる場合もあれば、複雑な計算になる場合もあります。
どちらになるかは解く人の腕次第です。どのようにすれば最も負担の少ない計算で済むかを考えることが大切です。
文字の種類を減らすために条件式を使う
条件式を使うときに意識したいことは、等式に含まれる文字の種類を減らすことです。これが条件式の使い方の最も基本的な考え方です。
例題
$a+b+c=0$ のとき、次の等式が成り立つことを証明せよ。
\begin{equation*}
\quad bc \left(b+c \right)+ca \left(c+a \right)+ab \left(a+b \right)=-3abc
\end{equation*}
例題に戻りましょう。たとえば、条件式を以下のように変形します。
例題の解答例 1⃣
\begin{align*}
&a+b+c=0 \ \text{より} \\[ 5pt ]
&\quad c=-\left(a+b \right)
\end{align*}
文字cについて変形しました。これを等式の左辺と右辺にそれぞれ代入すると、文字cを消去できます。これで、条件式を考慮したことになります。
与式の左辺と右辺に、変形した条件式をそれぞれ代入して整理します。
例題の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad c=-\left(a+b \right)
\end{align*}
\begin{align*}
(\text{左辺}) &= b \left\{ -\left(a+b \right) \right\} \left\{ b-\left(a+b \right) \right\} \\[ 7pt ]
&\qquad -\left(a+b \right)a \left\{ -\left(a+b \right)+a \right\}+ab\left(a+b \right) \\[ 7pt ]
&= ab\left(a+b \right)+ab\left(a+b \right)+ab\left(a+b \right) \\[ 7pt ]
&= 3ab\left(a+b \right) \\[ 7pt ]
(\text{右辺}) &= -3ab \left\{ -\left(a+b \right) \right\} \\[ 7pt ]
&= 3ab\left(a+b \right)
\end{align*}
\begin{align*}
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad (\text{左辺}) = (\text{右辺})
\end{align*}
この使い方は連立方程式でお馴染みの代入法です。条件式が与えられた問題では、まず特定の文字を消去することを考えましょう。
条件式の最も多い使い方は、文字の種類を減らすこと。
多項式を単項式に置き換えるために条件式を使う
特定の文字を消去するために条件式を使うのが基本です。しかし、この使い方だと、置き換えた部分が単項式から多項式になってしまうことがあります。
上述の解答例では、単項式cを多項式-(a+b)に置き換えたので、代入後の式が複雑になりました。
式が複雑になることを避けるために、代入する式をもう少し工夫します。
例題の別解例その1 1⃣
\begin{align*}
&a+b+c=0 \ \text{より} \\[ 5pt ]
&\quad b+c=-a \\[ 7pt ]
&\quad c+a=-b \\[ 7pt ]
&\quad a+b=-c
\end{align*}
これらを等式の左辺に代入します。
例題の別解例その1 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad b+c=-a \\[ 7pt ]
&\quad c+a=-b \\[ 7pt ]
&\quad a+b=-c
\end{align*}
\begin{align*}
(\text{左辺}) &= bc \cdot \left(-a \right) + ca \cdot \left(-b \right) + ab \cdot \left(-c \right) \\[ 7pt ]
&= -abc-abc-abc \\[ 7pt ]
&= -3abc \\[ 7pt ]
&= (\text{右辺})
\end{align*}
この使い方であれば、置き換えた部分が多項式から単項式になります。代入後の式がスッキリするので、整理しやすくなります。
ここでは別解として挙げましたが、こちらの解法で解けるようになっておいた方が良いでしょう。
多項式を1つのカタマリとして見れなければ、なかなかこの使い方はできません。多項式を1つの文字に置き換えることがありますが、それと同じことをしています。
高校数学では、このようなことをよく行います。多項式に代入した方が簡単な計算で済むので、しっかりとマスターしておきましょう。
条件式をそのまま使う
条件式を変形せず、そのまま使うこともできます。
等式の基本的な証明のやり方は、左辺と右辺の差を計算することです。差が0になれば、等式が成り立つことを示せます。
例題の別解例その2 1⃣
\begin{align*}
&(\text{左辺})-(\text{右辺}) \\[ 7pt ]
&= bc \left(b+c \right)+ca \left(c+a \right)+ab \left(a+b \right)-\left(-3abc \right) \\[ 7pt ]
&= \left\{ bc \left(b+c \right)+abc \right\}+\left\{ ca \left(c+a \right)+abc \right\}+\left\{ ab \left(a+b \right)+abc \right\} \\[ 7pt ]
&= bc \left(a+b+c \right)+ca \left(a+b+c \right)+ab \left(a+b+c \right) \\[ 7pt ]
&= \underline{\left(a+b+c \right)} \left(bc+ca+ab \right) \\[ 7pt ]
&= 0 \cdot \left(bc+ca+ab \right) \\[ 7pt ]
&= 0
\end{align*}
\begin{align*}
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad (\text{左辺}) = (\text{右辺})
\end{align*}
この解法では、a+b+cをつくるのが目標です。そのためには、3abcの扱いがポイントになります。
式を変形するのに、このような発想も必要だと言うことです。式の因数分解の問題でも出題されることもあるので、知っておくと良いでしょう。
条件式の使い方は、上述のように3通りあります。問題に応じて、条件式を適切に使いましょう。
条件式の使い方は3パターン
- 左辺または右辺の文字の種類を減らすために条件式を使う。
- 左辺または右辺の多項式を単項式に置き換えるために条件式を使う。
- 左辺と右辺の差をつくる基本的な解法に、条件式をそのまま使う。
次は、条件付きの等式の証明を扱った問題を実際に解いてみましょう。