数学2
比例式が条件の等式の証明を扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
問
\begin{align*}
&(1) \quad a:b=c:d \\[ 7pt ]
&\quad \text{のとき、等式} \\[ 5pt ]
&\qquad \frac{pa+qc}{pb+qd}=\frac{ra+sc}{rb+sd} \\[ 7pt ]
&\quad \text{が成り立つことを証明せよ。} \\[ 10pt ]
&(2) \quad \frac{a}{b}=\frac{c}{d}=\frac{e}{f} \\[ 7pt ]
&\quad \text{のとき、等式} \\[ 5pt ]
&\qquad \frac{a+c}{b+d}=\frac{a+c+e}{b+d+f} \\[ 7pt ]
&\quad \text{が成り立つことを証明せよ。}
\end{align*}
比例式が条件として与えられています。比例式の扱い方に従って解きましょう。
問(1)の解答・解説
問(1)
\begin{align*}
&\quad a:b=c:d \\[ 7pt ]
&\text{のとき、等式} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{pa+qc}{pb+qd}=\frac{ra+sc}{rb+sd} \\[ 7pt ]
&\text{が成り立つことを証明せよ。}
\end{align*}
条件として与えられた比例式は、2つの比が等しいことを表す等式です。このままだと「=k」とおくことができないので、2つの比の値が等しいことを表す比例式に置き換えます。
問(1)の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\quad a:b=c:d \\[ 7pt ]
&\text{より} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{a}{b}=\frac{c}{d}
\end{align*}
2つの比の値が等しいことを表す比例式から、「=k」とおいて新たな等式を導出します。
問(1)の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \frac{a}{b}=\frac{c}{d} \\[ 7pt ]
&\text{ここで} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{a}{b}=\frac{c}{d}=k \\[ 7pt ]
&\text{とおくと} \\[ 5pt ]
&\quad a= bk \ , \ c=dk
\end{align*}
これらを等式の左辺と右辺にそれぞれ代入して整理します。
問(1)の解答例 3⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad a= bk \ , \ c=dk
\end{align*}
\begin{align*}
\quad (\text{左辺}) &= \frac{p(bk)+q(dk)}{pb+qd} \\[ 10pt ]
&= \frac{k(pb+qd)}{pb+qd} \\[ 10pt ]
&= k \\[ 10pt ]
\quad (\text{右辺}) &= \frac{r(bk)+s(dk)}{rb+sd} \\[ 10pt ]
&= \frac{k(rb+sd)}{rb+sd} \\[ 10pt ]
&= k
\end{align*}
\begin{align*}
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad (\text{左辺}) = (\text{右辺})
\end{align*}
左辺と右辺はともに同じ式で表すことができるので、等式が成り立ちます。
比から比の値への置き換え
ところで、比例式と言っても、比を用いたものと比の値を用いたものがあります。
比の値を用いたものであれば良いのですが、比を用いた比例式であれば、比の値を用いた比例式に置き換える必要があります。
置き換えの方法はいくつかあって、よく利用されるのは以下の2つです。
比から比の値への置き換え
\begin{align*}
&\text{置き換えその1} \\[ 5pt ]
&\quad a:b=c:d \\[ 7pt ]
&\quad \Leftrightarrow \frac{a}{b}=\frac{c}{d} \\[ 10pt ]
&\text{置き換えその2} \\[ 5pt ]
&\quad a:b=c:d \\[ 7pt ]
&\quad \Leftrightarrow \frac{a}{c}=\frac{b}{d}
\end{align*}
【その1】の比の値は、中学で学習する比の値です。上述の解答例でも利用しています。
それに対して、【その2】の比の値は、両辺の前の比から得られる比の値と、後ろの比から得られる比の値です。
どちらも成り立つことは、内項の積と外項の積の性質から明らかです。
内項の積と外項の積の性質を利用
\begin{align*}
&a:b=c:d \ \text{より} \\[ 5pt ]
&\quad ad=bc \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{a}{b}=\frac{c}{d} \\[ 10pt ]
&\text{また} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{a}{c}=\frac{b}{d}
\end{align*}
連比から比の値への置き換え
【その2】の比の値が効果的なのは、3つの数量の比(連比)を比の値に置き換えるときです。
連比から比の値へ
\begin{align*}
&\quad a:b:c=p:q:r \\[ 7pt ]
&a:b=p:q \ \text{より} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{a}{p}=\frac{b}{q} \\[ 7pt ]
&b:c=q:r \ \text{より} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{b}{q}=\frac{c}{r} \\[ 7pt ]
&a:c=p:r \ \text{より} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{a}{p}=\frac{c}{r} \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{a}{p}=\frac{b}{q}=\frac{c}{r}
\end{align*}
a:b:cのことをa,b,cの連比と言います。このように連比を用いた比例式であれば、【その2】の方で比の値を用いた比例式に置き換えます。
問(1)の別解例
別解として、【その2】の置き換え方での解答例を紹介しておきます。
問(1)の別解例
\begin{align*}
&a:b=c:d \ \text{より} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{a}{c}=\frac{b}{d}=k \\[ 7pt ]
&\text{とおくと} \\[ 5pt ]
&\quad a= ck \ , \ b=dk \\[ 7pt ]
&\text{これらを左辺と右辺に} \\[ 5pt ]
&\text{それぞれ代入すると}
\end{align*}
\begin{align*}
\quad (\text{左辺}) &= \frac{p(ck)+qc}{p(dk)+qd} \\[ 10pt ]
&= \frac{c(pk+q)}{d(pk+q)} \\[ 10pt ]
&= \frac{c}{d} \\[ 10pt ]
\quad (\text{右辺}) &= \frac{r(ck)+sc}{r(dk)+sd} \\[ 10pt ]
&= \frac{c(rk+s)}{d(rk+s)} \\[ 10pt ]
&= \frac{c}{d}
\end{align*}
\begin{align*}
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad (\text{左辺}) = (\text{右辺})
\end{align*}
問(2)の解答・解説
問(2)
\begin{align*}
&\quad \frac{a}{b}=\frac{c}{d}=\frac{e}{f} \\[ 7pt ]
&\text{のとき、等式} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{a+c}{b+d}=\frac{a+c+e}{b+d+f} \\[ 7pt ]
&\text{が成り立つことを証明せよ。}
\end{align*}
(2)でも条件が比例式です。条件の比例式は連比から得られる式です。
連比と比の値
\begin{align*}
&\quad \frac{a}{b}=\frac{c}{d}=\frac{e}{f} \\[ 7pt ]
&\quad \Leftrightarrow \ a:c:e=b:d:f
\end{align*}
比例式を定石通りに扱います。比例式=kとおいて変形します。
問(2)の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\quad \frac{a}{b}=\frac{c}{d}=\frac{e}{f}=k \\[ 7pt ]
&\text{とおくと、} \\[ 5pt ]
&\quad a= bk \ , \ c=dk \ , \ e=fk
\end{align*}
これらを等式の左辺と右辺にそれぞれ代入して整理します。
問(2)の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad a= bk \ , \ c=dk \ , \ e=fk
\end{align*}
\begin{align*}
\quad (\text{左辺}) &= \frac{bk+dk}{b+d} \\[ 10pt ]
&= \frac{k(b+d)}{b+d} \\[ 10pt ]
&= k \\[ 10pt ]
\quad (\text{右辺}) &= \frac{bk+dk+fk}{b+d+f} \\[ 10pt ]
&= \frac{k(b+d+f)}{b+d+f} \\[ 10pt ]
&= k
\end{align*}
\begin{align*}
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad (\text{左辺}) = (\text{右辺})
\end{align*}
左辺と右辺はともに同じ式で表すことができるので、等式が成り立ちます。
比例式が条件として与えられれば、とにかく「比例式=k」とおくことが基本です。比例式のままでは上手く使えないことがほとんどだからです。与式に代入するにしても変形してからになります。
「比例式=k」とおく解法では、特に難しい変形や計算がないので完答を目指しましょう。
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さいごにもう一度まとめ
- 条件付きの等式では、条件式を代入して「条件式のない等式の証明」に帰着させよう。
- 条件が比例式のとき、「比例式=k」とおいて新たな条件式を導こう。
- 比例式において、比から比の値への置き換え方は主に2通り。
- 連比を用いた比例式には注意しよう。