数学2
今回は、2次方程式が重解や虚数解をもつときの条件について学習しましょう。
前回と同じように、2次方程式の係数や定数項が文字を含むときを考えます。このような2次方程式が特定の解をもつために、どのような条件となれば良いのかを考えます。
2次方程式の解についての話であれば、判別式を利用します。判別式を上手に用いて、重解や虚数解をもつ条件を導きます。
2次方程式の解の種類と判別式の値との関係
2次方程式の解が重解や虚数解であるとき、どのような条件を満たせば良いでしょうか。
2次方程式の解の種類は、判別式の値によって分かります。ですから、解の種類と判別式の値との関係をしっかり連携させておかなければなりません。
2次方程式において、解の種類と判別式の値との関係は以下のようにまとめることができます。
解の種類と判別式
\begin{align*}
&\text{$2$ 次方程式} \\[ 5pt ]
&\quad ax^{\scriptsize{2}}+bx+c=0 \\[ 7pt ]
&\text{の判別式を $D$ とすると} \\[ 5pt ]
&(1) \quad \text{異なる $2$ つの実数解をもつ} \ \Leftrightarrow \ D \gt 0 \\[ 7pt ]
&(2) \quad \text{重解をもつ} \ \Leftrightarrow \ D = 0 \\[ 7pt ]
&(3) \quad \text{異なる $2$ つの虚数解をもつ} \ \Leftrightarrow \ D \lt 0 \\[ 10pt ]
&\text{なお、$(1)$ と $(2)$ をまとめて} \\[ 7pt ]
&\quad \text{実数解をもつ} \ \Leftrightarrow \ D \geqq 0
\end{align*}
ここでは、重解や虚数解をもつ条件を考えるので、(1),(2)の関係を利用します。
2次方程式が重解をもつとき
2次方程式が重解をもつならば、判別式の値は0となります。また、判別式の値が0であれば、2次方程式は重解をもちます。
重解と判別式の値
\begin{align*}
&\text{$2$ 次方程式} \\[ 5pt ]
&\quad ax^{\scriptsize{2}}+bx+c=0 \\[ 7pt ]
&\text{の判別式を $D$ とすると} \\[ 5pt ]
&\quad \text{重解をもつ} \ \Leftrightarrow \ D = 0
\end{align*}
ところで、2次方程式が重解をもつとき、その解はどのように表されるでしょうか。
重解を求める直接的な解法は、2次方程式を解くことです。しかし、毎回、方程式を解くのは面倒です。時間の短縮や計算ミスを防ぐためにも、以下のことを覚えておくと良いでしょう。
判別式は、解の公式において、根号の中の式を表します。2次方程式が重解をもつ条件は、判別式の値が0となることです。これを解の公式に代入すると、重解を得ることができます。
解の公式と重解
\begin{align*}
&\text{$2$ 次方程式} \\[ 5pt ]
&\quad ax^{\scriptsize{2}}+bx+c=0 \\[ 7pt ]
&\text{の解は} \\[ 5pt ]
&\quad x= \frac{-b \pm \sqrt{b^{\scriptsize{2}}-4ac}}{2a} \\[ 7pt ]
&\text{ここで、判別式は} \\[ 5pt ]
&\quad D = b^{\scriptsize{2}}-4ac \\[ 7pt ]
&\text{であり、重解となるのは $D=0$ である。} \\[ 5pt ]
&\text{このときの解、つまり重解は} \\[ 5pt ]
&\quad x= \frac{-b \pm \sqrt{0}}{2a} \\[ 7pt ]
&\text{より} \\[ 5pt ]
&\quad x = -\frac{b}{2a} \\[ 7pt ]
&\text{と表せる。}
\end{align*}
2次方程式が重解をもつときの問題では、そのほとんどが「そのときの解(重解)を求めよ」と指示されます。上述の式を利用すれば、方程式を解かずに重解を手早く求めることができます。
2次方程式が重解や虚数解をもつときの条件
次の例題を解いてみましょう。
例題
$2$ 次方程式 $x^{\scriptsize{2}}+(5-m)x-2m+7 = 0$ について
$(1) \quad m$ が整数のとき、虚数解をもつような定数 $m$ の値を求めよ。
$(2) \quad$重解をもつような $m$ の値と、そのときの重解を求めよ。
2次方程式の係数や定数項に、文字mが含まれています。判別式は係数や定数項を用いて表されます。判別式の値の条件を利用すると、定数mの値の条件に置き換えることができます。
例題(1)の解答・解説
例題(1)
$2$ 次方程式 $x^{\scriptsize{2}}+(5-m)x-2m+7 = 0$ について
$m$ が整数のとき、虚数解をもつような定数 $m$ の値を求めよ。
2次方程式の係数や定数項を用いて、判別式を表します。
例題(1)の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\quad x^{\scriptsize{2}}+(5-m)x-2m+7 = 0 \\[ 7pt ]
&\text{与式の判別式を $D$ とすると}
\end{align*}
\begin{align*}
\quad D &= \left(5-m \right)^{\scriptsize{2}}-4 \cdot 1 \cdot \left(-2m+7 \right) \\[ 7pt ]
&=25-10m+m^{\scriptsize{2}}+8m-28 \\[ 7pt ]
&= m^{\scriptsize{2}}-2m-3 \\[ 7pt ]
&= \left(m+1 \right) \left(m-3 \right)
\end{align*}
公式を利用するとき、符号ミスに気を付けましょう。判別式は、mについての2次式で表されます。
次に、虚数解をもつための条件を考えます。
例題(1)の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad = \left(m+1 \right) \left(m-3 \right) \\[ 7pt ]
&\text{虚数解をもつための条件は} \\[ 5pt ]
&\quad D \lt 0 \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad \left(m+1 \right) \left(m-3 \right) \lt 0
\end{align*}
虚数解をもつための条件は、判別式の値が負(D<0)であることです。このことから、mについての2次不等式を導くことができます。
この2次不等式の解を求めれば、定数mの値の範囲を得ることができます。
例題(1)の解答例 3⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \left(m+1 \right) \left(m-3 \right) \lt 0 \\[ 7pt ]
&\text{これを解くと} \\[ 5pt ]
&\quad -1 \lt m \lt 3
\end{align*}
判別式の値の条件から、定数mの値の範囲を得ることができました。これが虚数解をもつための条件となります。
大抵の問題であれば、定数mの値の範囲が出てくれば終了です。しかし、(1)では、定数mの値を求めなければなりません。定数mは整数です。与えられた条件を見落とさないようにしましょう。
例題(1)の解答例 4⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad -1 \lt m \lt 3 \\[ 7pt ]
&\text{ここで $m$ は整数であるので} \\[ 5pt ]
&\quad m = 0 \ , \ 1 \ , \ 2
\end{align*}
例題(2)の解答・解説
例題(2)
$2$ 次方程式 $x^{\scriptsize{2}}+(5-m)x-2m+7 = 0$ について
重解をもつような $m$ の値と、そのときの重解を求めよ。
(1)と同じように、2次方程式の係数や定数項を用いて、判別式を表します。
例題(2)の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\quad x^{\scriptsize{2}}+(5-m)x-2m+7 = 0 \\[ 7pt ]
&\text{与式の判別式を $D$ とすると}
\end{align*}
\begin{align*}
\quad D &= \left(5-m \right)^{\scriptsize{2}}-4 \cdot 1 \cdot \left(-2m+7 \right) \\[ 7pt ]
&=25-10m+m^{\scriptsize{2}}+8m-28 \\[ 7pt ]
&= m^{\scriptsize{2}}-2m-3 \\[ 7pt ]
&= \left(m+1 \right) \left(m-3 \right)
\end{align*}
判別式は、mについての2次式で表されます。次に、重解をもつための条件を考えます。
例題(2)の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad = \left(m+1 \right) \left(m-3 \right) \\[ 7pt ]
&\text{重解をもつための条件は} \\[ 5pt ]
&\quad D = 0 \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad \left(m+1 \right) \left(m-3 \right) = 0
\end{align*}
重解をもつための条件は、判別式の値が0(D=0)であることです。このことから、mについての2次方程式を導くことができます。
この2次方程式の解を求めれば、定数mの値を得ることができます。
例題(2)の解答例 3⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \left(m+1 \right) \left(m-3 \right) = 0 \\[ 7pt ]
&\text{これを解くと} \\[ 5pt ]
&\quad m = -1 \ , \ 3 \\[ 7pt ]
&\text{これは定数 $m$ が整数である} \\[ 5pt ]
&\text{ことを満たす。}
\end{align*}
判別式の値の条件から、定数mの値を得ることができました。これが重解をもつための条件となります。
最後に、重解を求めます。定数mの値は複数あるので、場合分けして求めます。
例題(2)の解答例 4⃣
\begin{align*}
&\quad x^{\scriptsize{2}}+(5-m)x-2m+7 = 0 \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad m = -1 \ , \ 3 \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\text{また、重解は} \\[ 5pt ]
&\quad x=-\frac{5-m}{2} \\[ 7pt ]
&\text{と表せる。} \\[ 5pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad m=-1 \ \text{のとき} \quad x=-3 \\[ 7pt ]
&\quad m=3 \ \text{のとき} \quad x=-1
\end{align*}
重解を扱った問題では、ほとんどが重解まで求めるように指示されます。
重解を求めるとき、求めたmの値を与式に代入すると、2次方程式が決まります。この2次方程式を解いて、重解を求めることもできます。
別解で解く場合、解答例3⃣の続きが別解例5⃣となります。
例題(2)の別解例 5⃣
\begin{align*}
&\quad x^{\scriptsize{2}}+(5-m)x-2m+7 = 0 \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad m = -1 \ , \ 3 \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\text{また、重解は $m=-1$ のとき、与式は} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+6x+9 = 0 \\[ 7pt ]
&\text{より、} \\[ 5pt ]
&\quad \left(x+3 \right)^{\scriptsize{2}} = 0 \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad x=-3 \\[ 7pt ]
&\text{同様に $m=3$ のとき、与式は} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+2x+1 = 0 \\[ 7pt ]
&\text{より、} \\[ 5pt ]
&\quad \left(x+1 \right)^{\scriptsize{2}} = 0 \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad x=-1 \\[ 7pt ]
&\text{したがって} \\[ 5pt ]
&\quad m=-1 \ \text{のとき} \quad x=-3 \\[ 7pt ]
&\quad m=3 \ \text{のとき} \quad x=-1
\end{align*}
それぞれのmの値に応じて、2次方程式を得られます。それぞれの方程式を解けば、重解を得ることができます。
重解をもつので、2次方程式を(1次式)2の形に必ず因数分解できます。計算自体は難しくありませんが、重解の公式に代入した方が明らかに簡単です。
2次方程式が重解をもつ=2次方程式を1次式の2乗の形に必ず因数分解できる
次は、重解や虚数解をもつ条件を扱った問題を実際に解いてみましょう。