整数の性質|n進数の各位の数や桁数、記数法の決定について

n進数の各位の数や桁数、記数法の決定を扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
問
(1) ある自然数 N を 5 進法で表すと 3 桁の数 abc(5) となり、3 倍して 9 進法で表すと 3 桁の数 cba(9) となる。a , b , c を求めよ。また、N を 10 進法で表わせ。
(2) n は 2 以上の自然数とする。3 進数 1212(3) を n 進法で表すと 101(n) となるような n の値を求めよ。
(3) 5 進法で表すと 3 桁になるような自然数 N は何個あるか。
問(1)の解答・解説
問(1)
ある自然数 N を 5 進法で表すと 3 桁の数 abc(5) となり、3 倍して 9 進法で表すと 3 桁の数 cba(9) となる。a , b , c を求めよ。また、N を 10 進法で表わせ。
問(1)は、各位の数字を求めたり、ある自然数を10進法で表したりする問題です。
まず、記数法の底が分かっているので、各位の数字が満たす条件を求めることができます。
問(1)の解答例 1⃣
abc(5) と cba(9) はともに 3 桁の数であり、5<9 であるので
1≦a≦5 , 0≦b≦5 , 1≦c≦5各位の数字が満たす条件は、9進法(0~8の数字)よりも5進法(0~4の数字)の方を優先しましょう。
自然数Nが5進法と9進法で表されているので、10進法で表して記数法の底を統一します。
問(1)の解答例 2⃣
⋮abc(5) と cba(9) を 10 進法で表す。
abc(5)=a⋅52+b⋅51+c⋅50よって
N=25a+5b+c⋯①また
cba(9)=c⋅92+b⋅91+a⋅90この式は自然数 N を 3 倍した数を表すので
N=a+9b+81c3⋯②自然数Nを3倍してから9進法で表していることに注意しましょう。
①,②を連立すると、a,b,cについての関係式を導出することができます。
問(1)の解答例 3⃣
⋮N=25a+5b+c⋯①⋮N=a+9b+81c3⋯②①,②より
25a+5b+c=a+9b+81c3これを整理すると
75a+15b+3c=a+9b+81c74a=78c−6b37a=39c−3b37a=3(13c–b)⋯③いつもなら未知のものの個数と同じだけ関係式を必要とします。しかし、ここでは各位の数字が満たす条件があるので、③式だけでも解くことができます。
③式において、3と37が互いに素であることを利用します。
問(1)の解答例 4⃣
⋮37a=3(13c–b)⋯③3 と 37 は互いに素であるので、a は 3 の倍数である。
1≦a≦5 より
a=3⋯④aの値を求めることができました。次は③,④式を用いて、残りのb,cの値を求めます。
問(1)の解答例 5⃣
⋮37a=3(13c–b)⋯③⋮a=3⋯④③,④より
13c=b+37⋯⑤よって、b+37 は 13 の倍数となる。
0≦b≦5 より
b=2これと⑤から
c=3これは 1≦c≦5 を満たす。
∴ a=3 , b=2 , c=3最後に、①式または②式を用いて、自然数Nを10進法で表します。
問(1)の解答例 6⃣
⋮N=25a+5b+c⋯①⋮∴ a=3 , b=2 , c=3①より、自然数 N を 10 進法で表すと
N=25⋅3+5⋅2+3=88得られる方程式が③式だけなので、③式を上手く変形するだけでなく、各位の数字が満たす条件も上手に利用する必要があります。
問(1)の記述例は以下のようになります。
問(1)の記述例
abc(5) と cba(9) はともに 3 桁の数であり、5<9 であるので
1≦a≦5 , 0≦b≦5 , 1≦c≦5abc(5) と cba(9) を 10 進法で表すと
abc(5)=a⋅52+b⋅51+c⋅50より
N=25a+5b+c⋯①また
cba(9)=c⋅92+b⋅91+a⋅90この式は自然数 N を 3 倍した数を表すので
N=a+9b+81c3⋯②①,②より
25a+5b+c=a+9b+81c3これを整理すると
37a=3(13c–b)⋯③③について、3 と 37 は互いに素であるので、a は 3 の倍数である。
1≦a≦5 より
a=3⋯④③,④より
13c=b+37よって、b+37 は 13 の倍数となる。
0≦b≦5 より
b=2また
c=3これは 1≦c≦5 を満たす。
∴ a=3 , b=2 , c=3これらと①より、自然数 N を 10 進法で表すと/p> N=25⋅3+5⋅2+3∴ N=88
問(2)の解答・解説
問(2)
n は 2 以上の自然数とする。3 進数 1212(3) を n 進法で表すと 101(n) となるような n の値を求めよ。
問(2)は、記数法の底を求める問題です。3進数とn進数が与えられていますが、記数法の底が異なります。ですから、10進法で表して底を統一します。
問(2)の解答例 1⃣
1212(3) と 101(n) を 10 進法で表すと
1212(3)=1⋅33+2⋅32+1⋅31+2⋅30=50⋯①101(n)=1⋅n2+0⋅n1+1⋅n0=n2+1⋯②①式と②式で表される数は、底が等しくなればともに同じ自然数となるはずです。このことからnについての方程式を導出します。
問(2)の解答例 2⃣
⋮1212(3)=50⋯①101(n)=n2+1⋯②①,②より
n2+1=50よって
n2=49n≧2 より
∴ n=7記数法の底は2以上の自然数(n≧2)であることは暗黙の条件なので、忘れないようにしましょう。各位の数字や底を求めるときには、底を統一することから始めましょう。
問(2)の記述例は以下のようになります。
問(2)の記述例
1212(3) と 101(n) を 10 進法で表すと
1212(3)=1⋅33+2⋅32+1⋅31+2⋅30=50⋯①101(n)=1⋅n2+0⋅n1+1⋅n0=n2+1⋯②①,②より
n2+1=50よって
n2=49n≧2 より
∴ n=7問(3)の解答・解説
問(3)
5 進法で表すと 3 桁になるような自然数 N は何個あるか。
問(3)は、桁数を利用して自然数の個数を求める問題です。指数と桁数の関係に気をつけましょう。
問(3)の解答例 1⃣
自然数 N は 5 進法で表すと 3 桁になるので
53−1≦N<53よって
25≦N<1253桁の5進数について、最も高い位は53ではなく52の位です。53の位が最高位であれば、4桁の5進数になってしまいます。
不等式から分かるように、10進数25が3桁の5進数のうち最小値になり、10進数125が4桁の5進数のうち最小値になります。この不等式を利用して個数を求めます。
問(3)の解答例 2⃣
⋮25≦N<125この不等式を満たす自然数 N の個数は
125–25=100 (個)125は4桁の5進数なので含めてはいけません。ですから個数を求めるときに1を足す必要はありません。
なお、24や124が何桁の5進数になるのかを確認してみましょう。
26や126を5進数で表す
24=20+4=4⋅51+4⋅50=44(5)25=52=1⋅52+0⋅51+0⋅50=100(5)124=100+20+4=4⋅52+4⋅51+4⋅50=444(5)125=53=1⋅53+0⋅52+0⋅51+0⋅50=1000(5)比較のために25や125も5進数で表しています。24は2桁の5進数となるので、25が3桁の5進数の最小値となります。
また、124は3桁の5進数となるので、125が4桁の5進数の最小値となります。このことから、自然数Nの取り得る範囲が正しいことが分かります。
問(3)の記述例は以下のようになります。
問(3)の記述例
自然数 N は 5 進法で表すと 3 桁になるので
53−1≦N<53よって
25≦N<125この不等式を満たす自然数 N の個数は
125–25=100 (個)問(3)の別解
別解として、場合の数を用いて求める方法もあります。
問(3)の別解例
5 進法で表すと 3 桁になる数について、各位の数字を考えると
52 の位:1~4 の 4 通り
51 の位:0~4 の 5 通りずつ
50 の位:0~4 の 5 通りずつ
の場合がある。
したがって、積の法則より
4⋅5⋅5=100 (個)どちらで解いてもそれほど難易度は変わりません。n進法では、とにかく10進法で表すことを優先しましょう。
n進法では、記数法の底を自在に変換できることがマスターへの近道!
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さいごにもう一度まとめ
- 各位の数字が満たす条件を意識しよう。
- 桁数をもとに、求めたい自然数が取りうる範囲を考えよう。
- 記数法の決定では、底を統一しよう。
- 底を統一する場合、10進法で表そう。
- 記数法の底を自由自在に変換できるようにしておこう。