数学2
今回は、2次方程式の整数解について学習しましょう。2次方程式の解について、特定の条件が与えられており、そのときの係数や定数項を定めるのがここでの主題です。
解と係数の関係について、様々な事柄を学習してきましたが、この単元が最後となります。応用的な内容で難しく感じるかもしれませんが、じっくり取り組みましょう。
2次方程式の整数解
2次方程式が整数解をもつような係数や定数項を求める問題では、一般に、2つの解法があります。
方程式の整数解
- (整数)×(整数)=(整数)の形にする。
- 不等式で範囲を絞り込む。
基本的な方針としては、「(整数)×(整数)=(整数)」の形にすることを目指しましょう。
(整数)×(整数)=(整数)の形にする
「(整数)×(整数)=(整数)」の形にする解法は、整数の組を求める問題でよく利用されます。
ただし、注意したいのは、与えられた2次方程式を使って「(整数)×(整数)=(整数)」の形にするわけではないことです。
2次方程式の解と係数の関係を利用して、新たに2つの整数解α,βについての方程式を導く必要があります。この方程式を変形して「(整数)×(整数)=(整数)」を導きます。
やはり解と係数の関係を利用します。求めるものが係数や定数項で、解に関する情報が提示してあれば、解と係数の関係を利用できないかを考えることが大切です。
不等式で範囲を絞り込む
不等式で範囲を絞り込む解法では、2次方程式の判別式を利用します。
2次方程式の係数が整数であれば、解と係数の関係から2次方程式は整数解をもちます。このとき「整数解ならば実数解であるから判別式D≧0」が成り立ちます。
判別式の条件から、係数についての不等式が得られます。この不等式を満たす整数値(係数)を求め、その中から2次方程式が整数解をもつものを絞り込んでいきます。
ただし、この解法では不等式を満たす整数値が無数にある場合があります。このような場合、整数解をもつ2次方程式を絞り込むことができません。
不等式で範囲を絞り込む解法では、上手くいく場合とそうでない場合があるということです。ですから、こちらの解法は次善の策にしておいた方が良いでしょう。
2次方程式の整数解を扱った例題
次の例題を考えてみましょう。
例題
\begin{align*}
&\text{$x$ に関する $2$ 次方程式} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}-(m-7)x+m=0 \\[ 5pt ]
&\text{の解がともに正の整数であるとき、} \\[ 5pt ]
&\text{$m$ の値とそのときの解を求めよ。}
\end{align*}
例題の解答・解説
求めたいのは、係数や定数項にある文字mの値です。それに加えて、2次方程式の解も求めます。
2次方程式の解についての条件があり、求めたいのは係数や定数項にある文字mの値です。ですから、解と係数の関係を利用します。
例題の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\text{$x$ に関する $2$ 次方程式} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}-(m-7)x+m=0 \\[ 5pt ]
&\text{の $2$ つの解を} \\[ 5pt ]
&\quad \alpha \ , \ \beta \quad (\alpha \leqq \beta) \\[ 5pt ]
&\text{とすると、解と係数の関係より} \\[ 5pt ]
&\quad \alpha+\beta=m-7 \\[ 5pt ]
&\quad \alpha \beta=m
\end{align*}
解と係数の関係から、α,βについての式を導くことができました。これらが文字mを共通にもつことに注目すると、α,βについての方程式を新たに導くことができます。
例題の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 5pt ]
&\quad \alpha+\beta=m-7 \\[ 5pt ]
&\quad \alpha \beta=m \\[ 7pt ]
&\text{$m$ を消去すると} \\[ 5pt ]
&\quad \alpha+\beta=\alpha \beta-7
\end{align*}
α,βについての方程式を変形して、「(整数)×(整数)=(整数)」の形にします。
例題の解答例 3⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 5pt ]
&\quad \alpha+\beta=\alpha \beta-7 \\[ 7pt ]
&\text{これを変形して} \\[ 5pt ]
&\quad \alpha \beta-\left( \alpha+\beta \right)=7 \\[ 7pt ]
&\quad \alpha \beta-\left( \alpha+\beta \right)+1=8 \\[ 7pt ]
&\quad \left( \alpha-1 \right) \left( \beta-1 \right)=8 \quad \text{…①}
\end{align*}
これでようやく「(整数)×(整数)=(整数)」の形を得ることができました。α-1とβ-1は、その積が8となる組合せであることが分かります。
2つの解α,βを用いて、(αの1次式)×(βの1次式)=(整数)の形を作ろう。
ここで、2次方程式の解α,βが正の整数であることに注目します。①式の左辺について、2つの整数α-1,β-1についての条件を導くことができます。
例題の解答例 4⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 5pt ]
&\quad \left( \alpha-1 \right) \left( \beta-1 \right)=8 \quad \text{…①} \\[ 7pt ]
&\text{$\alpha \ , \ \beta$ は正の整数であるので、$\alpha-1 \ , \ \beta-1$ は} \\[ 5pt ]
&\quad \alpha-1 \geqq 0 \ , \ \beta-1 \geqq 0 \\[ 7pt ]
&\text{を満たす整数である。} \\[ 5pt ]
&\text{また、$\alpha \leqq \beta$ も考慮すると} \\[ 5pt ]
&\quad \alpha-1 \leqq \beta-1
\end{align*}
解答例4⃣の作業をしておかないと、不要な組合せを考えることになります。たとえば、α-1=4,β-1=2の組合せは不要です。無駄な組合せを除くために必要なので、しっかり記述しておきましょう。
条件を考慮して、整数α-1,β-1の組を書き出します。右辺が8なので、8の正の約数を考えます。
例題の解答例 5⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 5pt ]
&\text{よって、①を満たす $\alpha-1 \ , \ \beta-1$ の組は} \\[ 5pt ]
&\quad ( \alpha-1 \ , \ \beta-1 )=( 1 \ , \ 8 ) \ , \ ( 2 \ , \ 4 )
\end{align*}
先に条件を考えたので、2組だけで済みました。αとβの組を求めます。
例題の解答例 6⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 5pt ]
&\quad ( \alpha-1 \ , \ \beta-1 )=( 1 \ , \ 8 ) \ , \ ( 2 \ , \ 4 ) \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad ( \alpha \ , \ \beta )=( 2 \ , \ 9 ) \ , \ ( 3 \ , \ 5 )
\end{align*}
最後に、文字mの値を忘れずに求めます。
例題の解答例 7⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 5pt ]
&\quad ( \alpha \ , \ \beta )=( 2 \ , \ 9 ) \ , \ ( 3 \ , \ 5 ) \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad m= \alpha \beta \\[ 7pt ]
&\text{より} \\[ 5pt ]
&\quad ( \alpha \ , \ \beta )=( 2 \ , \ 9 ) \ \text{のとき} \quad m=18 \\[ 7pt ]
&\quad ( \alpha \ , \ \beta )=( 3 \ , \ 5 ) \ \text{のとき} \quad m=15 \\[ 7pt ]
&\text{したがって} \\[ 5pt ]
&\quad \text{解が $x=2 \ , \ 9$ のとき} \quad m=18 \\[ 7pt ]
&\quad \text{解が $x=3 \ , \ 5$ のとき} \quad m=15
\end{align*}
整数の組を考えるとき、条件を出してからにしましょう。解の条件を上手に利用すれば、最低限の労力で整数の組を書き出すことができます。
例題の別解例
2次方程式を変形して、解が正の整数であることを利用して解くこともできます。2次方程式の解が整数であることを上手に利用した解法です。ただし、かなり難易度が高い解法なので、焦らずじっくり取り組みましょう。
例題の別解例
\begin{align*}
&\text{$2$ 次方程式を変形すると} \\[ 7pt ]
&\quad m \left(x-1\right)=x^{\scriptsize{2}}+7x \\[ 7pt ]
&\text{右辺について、$x$ が正の整数ならば右辺は正となる。} \\[ 5pt ]
&\text{これより左辺について、$x \neq 1$ であり、$m$ も正の整数である。} \\[ 5pt ]
&\text{両辺を $x-1 \ (\neq0)$ で割ると} \\[ 7pt ]
&\quad m =\frac{x^{\scriptsize{2}}+7x}{x-1} \\[ 7pt ]
&\text{右辺の分子を変形して} \\[ 7pt ]
&\quad m =\frac{(x-1)(x+8)+8}{x-1} \\[ 7pt ]
&\text{より} \\[ 7pt ]
&\quad m =x+8+\frac{8}{x-1} \quad \text{…①} \\[ 7pt ]
&\text{ここで、$m$ は正の整数であるので、右辺の分数も正の整数となる。} \\[ 5pt ]
&\text{よって} \\[ 7pt ]
&\quad x-1=1 \ , \ 2 \ , \ 4 \ , \ 8 \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 7pt ]
&\quad x=2 \ , \ 3 \ , \ 5 \ , \ 9 \\[ 7pt ]
&\text{このとき、①より $m$ は順に} \\[ 7pt ]
&\quad m=18 \ , \ 15 \ , \ 15 \ , \ 18 \\[ 7pt ]
&\text{したがって} \\[ 5pt ]
&\quad \text{解が $x=2 \ , \ 9$ のとき} \quad m=18 \\[ 7pt ]
&\quad \text{解が $x=3 \ , \ 5$ のとき} \quad m=15
\end{align*}
分数の変形がやや難しいですが、たとえばグラフの漸近線を求めるときによく使われる変形です。
不等式で範囲を絞り込む解法で解く
不等式で範囲を絞り込む解法で例題を解いてみましょう。この解法では、判別式の条件を利用します。
不等式で範囲を絞り込む解法では上手くいかない例
\begin{align*}
&\text{$2$ 次方程式の解がともに正の整数ならば、} \\[ 5pt ]
&\text{解はともに実数解である。} \\[ 5pt ]
&\text{$2$ 次方程式の判別式を $D$ とすると} \\[ 5pt ]
&\quad D = \bigl\{-(m-7)\bigr\}^{\scriptsize{2}}-4 \cdot 1 \cdot m \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad D = m^{\scriptsize{2}}-18m+49 \\[ 7pt ]
&\text{$D \geqq 0$ より} \\[ 5pt ]
&\quad m^{\scriptsize{2}}-18m+49 \geqq 0 \\[ 7pt ]
&\text{これを解くと} \\[ 5pt ]
&\quad m \leqq 9-4\sqrt{2} \ , \ 9+4\sqrt{2} \leqq m \quad \text{…①} \\[ 7pt ]
&\text{解と係数の関係から $m$ は正の整数となるが、} \\[ 5pt ]
&\text{①では $m$ が定まらない。}
\end{align*}
判別式から文字mについての不等式を導出して、その解を求めます。しかし、文字mの値の範囲が閉じた範囲になりません。このような場合、文字mが整数であるという条件が加わっても、その値は無数にあって定まりません。
文字mの値が無数にあれば、2次方程式も無数にあることになります。その中から整数解をもつ2次方程式を探すのは現実的ではありません。そうは言っても、この解法で上手くいく場合もあるので、全く無視して良いわけではありません。
次は、2次方程式の整数解を扱った問題を実際に解いてみましょう。