複素数と方程式|2次方程式の整数解について

数学2

2次方程式の整数解を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

\begin{align*} &\text{$2$ 次方程式} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}+(2+a)x+3-a=0 \\[ 5pt ] &\text{が $2$ つの整数解 $\alpha \ , \ \beta$ をもつとき、} \\[ 5pt ] &\text{$a$ の値をすべて求めよ。} \end{align*}

問の解答・解説

例題と同じ要領で進めていきます。「文字aの値をすべて求めよ」とあるので、求める文字aの値は複数あると考えましょう。

2次方程式の解についての条件があり、求めたいのは係数や定数項にある文字aの値です。2次方程式の解と係数の関係を利用します。

問の解答例 1⃣

\begin{align*} &\text{解と係数の関係より} \\[ 5pt ] &\quad \alpha+\beta=-a-2 \quad \text{…①} \\[ 7pt ] &\quad \alpha \beta=-a+3 \quad \text{…②} \end{align*}

解と係数の関係から、2つの整数解α,βについての式が2つ得られました。これらは文字aを共通にもちます。このことに注目して、α,βについての方程式を新たに導きます。

問の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 5pt ] &\quad \alpha+\beta=-a-2 \quad \text{…①} \\[ 7pt ] &\quad \alpha \beta=-a+3 \quad \text{…②} \\[ 7pt ] &\text{②-①より} \\[ 5pt ] &\quad \alpha \beta-\left( \alpha+\beta \right)=5 \end{align*}

α,βについての方程式を変形して、「(整数)×(整数)=(整数)」の形にします。

問の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 5pt ] &\quad \alpha \beta-\left( \alpha+\beta \right)=5 \\[ 7pt ] &\text{この両辺に $1$ を加えると} \\[ 5pt ] &\quad \alpha \beta-\left( \alpha+\beta \right)+1=6 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad \left( \alpha-1 \right) \left( \beta-1 \right)=6 \quad \text{…③} \end{align*}

(整数)×(整数)=(整数)」、すなわち「(αの1次式)×(βの1次式)=(整数)」の形を得ることができました。α-1とβ-1は、その積が6となる組合せであることが分かります。

解と係数の関係の式から、(αの1次式)×(βの1次式)=(整数)の形を導こう。

ここから例題と少し異なります。2次方程式の解α,βは整数ですが、正負や大小関係が不明です。ここに注意しましょう。α-1,β-1の組合せを考えるための条件を考えましょう。

問の解答例 4⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 5pt ] &\quad \left( \alpha-1 \right) \left( \beta-1 \right)=6 \quad \text{…③} \\[ 7pt ] &\text{ここで、$\alpha \ , \ \beta$ はともに整数であるので、} \\[ 5pt ] &\text{$\alpha-1 \ , \ \beta-1$ も整数である。} \\[ 5pt ] &\text{また、$\alpha \leqq \beta$ とすると} \\[ 5pt ] &\quad \alpha-1 \leqq \beta-1 \end{align*}

α,βが整数であるという条件では、例題のようにα-1,β-1がともに0以上であるとは言えません。注意しましょう。また、αとβに大小関係をつけたのは、解の組合せが同じであれば文字aの値も同じになるからです。

α-1,β-1の組を書き出します。右辺が6なので、6の約数を考えましょう。

問の解答例 5⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 5pt ] &\text{よって、③を満たす $\alpha-1 \ , \ \beta-1$ の組は} \\[ 5pt ] &\quad ( \alpha-1 \ , \ \beta-1 )=( 1 \ , \ 6 ) \ , \ ( 2 \ , \ 3 ) \ , \ ( -3 \ , \ -2 ) \ , \ ( -6 \ , \ -1 ) \end{align*}

α,βが整数であるので、α-1,β-1は負の整数となることもあります。

整数:負の整数、0、正の整数(自然数)

α-1,β-1の組合せからα,βの組を求めます。

問の解答例 6⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 5pt ] &\quad ( \alpha-1 \ , \ \beta-1 )=( 1 \ , \ 6 ) \ , \ ( 2 \ , \ 3 ) \ , \ ( -3 \ , \ -2 ) \ , \ ( -6 \ , \ -1 ) \\[ 7pt ] &\text{すなわち} \\[ 5pt ] &\quad ( \alpha \ , \ \beta )=( 2 \ , \ 7 ) \ , \ ( 3 \ , \ 4 ) \ , \ ( -2 \ , \ -1 ) \ , \ ( -5 \ , \ 0 ) \end{align*}

最後に、文字aの値を忘れずに求めます。

問の解答例 7⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 5pt ] &\quad \alpha+\beta=-a-2 \quad \text{…①} \\[ 7pt ] &\quad \alpha \beta=-a+3 \quad \text{…②} \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 5pt ] &\quad ( \alpha \ , \ \beta )=( 2 \ , \ 7 ) \ , \ ( 3 \ , \ 4 ) \ , \ ( -2 \ , \ -1 ) \ , \ ( -5 \ , \ 0 ) \\[ 7pt ] &\text{①より} \\[ 5pt ] &\quad a= -\left( \alpha+\beta+2 \right)\\[ 7pt ] &\text{であるので} \\[ 5pt ] &\quad a=-11 \ , \ -9 \ , \ 1 \ , \ 3 \end{align*}

①式ではなく、②式を利用して文字aの値を求めても構いません。なお、蛇足ですが、文字aの値と2次方程式の解との関係は以下のようになります。

文字aの値と2次方程式の解との関係

\begin{align*} &\quad \text{$a=-11$ のとき、解は $x=2 \ , \ 7$} \\[ 7pt ] &\quad \text{$a=-9$ のとき、解は $x=3 \ , \ 4$} \\[ 7pt ] &\quad \text{$a=1$ のとき、解は $x=-2 \ , \ -1$} \\[ 7pt ] &\quad \text{$a=3$ のとき、解は $x=-5 \ , \ 0$} \end{align*}

問のα,βが整数という条件は、例題の正の整数に比べると広い条件です。ですから、別解の解法では0で割る変形が含まれてしまい、aについて変形できません。また、不等式で範囲を絞り込む解法(判別式の利用)も上手くいきません。

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さいごにもう一度まとめ

  • 2次方程式の解や係数の問題では、解と係数の関係を利用してみよう。
  • 解と係数の関係から得られた2つの式から、新たな式を導こう。
  • (整数)×(整数)=(整数)の形を導こう。
  • 左辺や右辺の値についての条件も忘れずに考慮しよう。
  • 整数の組は約数を考えよう。