数学2
今回は、余りの決定について学習しましょう。ここでは、整式の割り算で出てくる余りについて考えます。この余りを決定するときにも剰余の定理を利用します。
整式の割り算
整式に限りませんが、割り算の問題では、割り算の基本公式を利用することがほとんどです。割り算の基本公式とは、商や余りを用いてもとの数や式を表した式です。
割り算の基本公式
\begin{align*}
&\text{同じ $1$ つの文字についての $2$ つの整式} \\[ 5pt ]
&\quad A \ , \ B \quad (B \neq 0) \\[ 7pt ]
&\text{において、$A$ を $B$ で割ったときの商を $Q$} \\[ 5pt ]
&\text{余りを $R$ とすると} \\[ 5pt ]
&\quad A = BQ + R \\[ 7pt ]
&\text{ただし、$R$ は $0$ か、$B$ より次数の低い整式}
\end{align*}
割られる整式Aは、割る整式B、商Q、余りRの3つを用いて表されます。特に、余りの条件は、余りを決定する問題では必須なので、きちんと覚えておきましょう。
余りと割る式の次数の関係
\begin{align*}
&\text{余り $R$ と割る式 $B$ の次数の関係は} \\[ 5pt ]
&\quad ( \ \text{余り $R$ の次数} \ ) \ \lt \ ( \ \text{割る式 $B$ の次数} \ ) \\[ 7pt ]
&\text{となる。}
\end{align*}
たとえば、割る式が2次式であれば、余りは1次式または定数、つまり1次式以下となります。
余りを決定してみよう
次の例題を考えてみましょう。
例題
\begin{align*}
&\text{整式 $P(x)$ を $x-1$ で割ると $3$ 余り、} \\[ 5pt ]
&\text{$2x+1$ で割ると $4$ 余る。} \\[ 5pt ]
&\text{$P(x)$ を $(x-1)(2x+1)$ で割ったときの} \\[ 5pt ]
&\text{余りを求めよ。}
\end{align*}
例題の解答・解説
整式がないと式の値を求めることができません。そうなると、剰余の定理を利用して、1次式で割った余りを調べることができません。
最初にすべきことは、割り算の基本公式を利用して、整式を商や余りで表すことです。
例題の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\text{$P(x)$ を $(x-1)(2x+1)$ で割ったときの商を $Q(x)$} \\[ 5pt ]
&\text{余りを $ax+b$ とすると、次の等式が成り立つ。} \\[ 5pt ]
&\quad P(x)=\left(x-1 \right) \left(2x+1 \right)Q(x)+ax+b \quad \cdots \text{①}
\end{align*}
求めるものは2次式で割ったときの余りです。ですから、余りは1次式以下となるように定義します。
定義した余りには、2つの定数a,bが用いられています。これらの値を求めることが、余りを求めることになります。そのためには、定数a,bについての方程式が2つ必要です。
整式を1次式で割ったときの余りについて、2つの情報が与えられています。上手に活用すれば方程式を2つ用意できそうです。これらについて剰余の定理を利用します。
剰余の定理から、整式を1次式x-1で割ったときの余りは、整式にx=1を代入した式の値に等しくなります。
例題の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad P(x)=\left(x-1 \right) \left(2x+1 \right)Q(x)+ax+b \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\text{$P(x)$ を $x-1$ で割ったときの} \\[ 5pt ]
&\text{余りが $3$ であるから} \\[ 5pt ]
&\quad P(1)=3 \\[ 7pt ]
&\text{①の両辺に $x=1$ を代入すると} \\[ 5pt ]
&\quad P(1)=a+b \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad a+b=3 \quad \cdots \text{②}
\end{align*}
同じように剰余の定理から、整式を1次式2x+1で割ったときの余りは、整式にx=-1/2を代入した式の値に等しくなります。
例題の解答例 3⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad P(x)=\left(x-1 \right) \left(2x+1 \right)Q(x)+ax+b \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad a+b=3 \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ]
&\text{また、$P(x)$ を $2x+1$ で割ったときの} \\[ 5pt ]
&\text{余りが $4$ であるから} \\[ 5pt ]
&\quad P\left(-\frac{1}{2} \right)=4 \\[ 7pt ]
&\text{①の両辺に $x=-\frac{1}{2}$ を代入すると} \\[ 5pt ]
&\quad P\left(-\frac{1}{2} \right)=-\frac{1}{2}a+b \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad -\frac{1}{2}a+b=4 \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad -a+2b=8 \quad \cdots \text{③}
\end{align*}
定数a,bについての方程式を2つ導くことができました。これらを連立して解きます。
例題の解答例 4⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad P(x)=\left(x-1 \right) \left(2x+1 \right)Q(x)+ax+b \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad a+b=3 \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad -a+2b=8 \quad \cdots \text{③} \\[ 7pt ]
&\text{②+③} \\[ 5pt ]
&\quad 3b=11 \quad \text{よって} \quad b=\frac{11}{3} \\[ 7pt ]
&\text{これと②より} \\[ 5pt ]
&\quad a+\frac{11}{3}=3 \quad \text{よって} \quad a=-\frac{2}{3} \\[ 7pt ]
&\text{したがって、求める余りは} \\[ 5pt ]
&\quad -\frac{2}{3}x+\frac{11}{3}
\end{align*}
余りを決定する問題は、割り算の基本公式と剰余の定理を組み合わせた問題です。剰余の定理を利用するために、整式を商や余りを用いて表せるようになっておきましょう。
次は、余りの決定を扱った問題を実際に解いてみましょう。